Trademark Appeal Case
周知商標と不正登録
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900332(T2013−900332/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件商標は、「CoCoナース」の文字を標準文字で表してなり、平成25年1月24日に登録出願され、第44類「医療看護,医業,介護」を指定役務として、平成25年5月30日に登録査定、同年7月5日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第55号証を提出した。
1 引用商標
本件商標が商標法第4条第1項第15号、同項第7号及び同項第19号に違反して登録されたとして、申立人が引用する商標は、申立人が2012年4月に役務「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」の提供を開始して以来、現在に至るまで、その役務について使用している、別掲(A)のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び別掲(B)のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)である(甲2〜甲6)
2 商標法第4条第1項第15号について
引用商標1及び2が本件商標の登録出願前から申立人の提供する役務「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」を表す商標として日本国内において需要者の間に広く認識されていること、本件商標と引用商標1及び2とは類似すること、本件商標の指定役務「医療看護,医業,介護」と申立人の提供する役務「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」とは、役務の提供関係、役務提供の実態、及び多角経営の可能性の観点から密接な関係性が認められること、並びに「ココナース」の語は明らかに造語標章であることから、本件商標をその指定役務について使用した場合、申立人の業務に係る役務である、又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標の出願人は、申立人の使用する周知の造語商標(引用商標1及び2)を申立人がいまだ商標登録出願を行っていないことを奇貨として、申立人の使用する役務と密接関連性を有し、混同を生じ得る役務について、無断で登録出願を行ったものであり、かかる経緯からすれば、本件商標の出願人が申立人の業務上の信用にフリーライドする目的、あるいは、その他不正の目的(商標の先取りにより不正の利益を得る目的など)をもって、登録出願したものであるから、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている引用商標1及び2と同一又は類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同項第7号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2の規定により、その登録が取り消されるべきである。
第3 取消理由通知
当審において、平成26年3月31日付けで、商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
1 申立人及び申立人が使用する商標について
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、エヌ・デーソフトウェア株式会社と株式会社三菱総合研究所の出資により2003年に設立された法人であって、介護報酬インターネット電子請求サービス、介護報酬早期資金化支援サービス、国保連伝送サービス等を事業内容としており(介護報酬インターネット電子請求サービスは会社設立前の2000年から株式会社三菱総合研究所・他によって提供されていた。)、訪問介護等を行う事業所数が平成25年5月時点で全国約20万(介護サービスに係る給付費を請求する事業者数から算出)であるのに対し、申立人の各種サービスを利用する介護事業所数は、2012年6月現在、約12,000に達し、当該業界における申立人のシェアは相当高い(甲1,甲2,甲5)。
イ 申立人は、2012年4月に役務「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」の提供を開始して以来、現在に至るまで、上記役務について、別掲(A)のとおりの構成からなる商標(引用商標1)及び別掲(B)のとおりの構成からなる商標(引用商標2)を使用している(甲2〜甲6)。
なお、「ASP(Application Service Provider)」とは、インターネットを利用したサービスであり、複数事業所と連携する際も専用回線の構築は必要なく、自宅からでも利用できるものである旨の説明がされ、また、「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」とは、訪問看護ステーションの管理者又は該ステーションを拠点に活動する看護師等に対し、医療保険・介護保険の請求処理、訪問予定表の作成、訪問実績データ、各種文書の作成、主治医・関係機関情報等の訪問看護を管理するためのシステムを、インターネットを介して提供するものである旨の説明がされている。
ウ 申立人の提供に係る上記役務については、その内容を説明する2種類のパンフレットが作成されており、いずれもその表紙に引用商標1又は2が大きく表示されている(甲5,甲6)。
そして、株式会社南和から申立人宛ての平成24年3月1日付け「ご請求書」には、「2012/2/15」の日付とそれに対応する「配送手数料」と「COCOナース メール便配送費」、「手数料収入」と「COCOナース メール便作業費」及び「COCOナース封筒資材費」、「2012/2/19」の日付とそれに対応する「配送手数料」と「日本ケアコミュニケーションズ メール便配送費」等の記載が見られること(甲44)、同じく平成25年2月1日付け「ご請求書」には、「2013/1/31」の日付とそれに対応する「配送手数料」と「A4圧着DM メール便配送費」、「手数料収入」と「A4圧着DM メール便作業費」の各記載が見られること(甲49)からすると、上記各パンフレットは、平成24年2月頃から平成25年1月頃にかけて、申立人によって株式会社南和を通じて顧客に頒布されたものとみても不自然ではない。
エ 申立人の提供に係る上記役務については、引用商標1を表示した広告が以下の新聞、雑誌等に掲載されている(甲7〜甲39)。
(ア)株式会社環境新聞社発行「シルバー新報」(平成24年4月6日付け)
(イ)株式会社シルバー産業新聞社発行「シルバー産業新聞」(平成24年7月10日付け)
(ウ)株式会社高齢者住宅新聞社発行「高齢者住宅新聞」(平成24年1月5日付け、同月15日付け、同月25日付け、同年2月5日付け、同月15日付け、同年4月5日付け、同年5月25日付け、同年6月5日付け及び同年7月15日付け)
(エ)株式会社日本医療企画発行「介護ビジョン」(2012年7月号、同年8月号、2013年2月号、同年4月号、同年5月号及び同年6月号)
(オ)株式会社環境新聞社発行「月刊ケアマネジメント」(2012年5月号及び同年7月号)
(カ)一般社団法人全国訪問看護事業協会発行「訪問看護ステーションニュース」(2012年7月号)
(キ)財団法人日本訪問看護振興財団発行「平成24年度日本訪問看護振興財団事業のご案内」
(ク)公益財団法人日本訪問看護財団発行「平成25年度日本訪問看護財団事業のご案内」
(ケ)公益財団法人日本訪問看護財団発行「ほうもん看護」(2012年4月15日付け、同年5月15日付け、同年6月15日付け、同年7月15日付け、同年9月15日付け、同年10月15日付け、同年11月15日付け、同年12月15日付け、2013年1月15日付け、同年2月15日付け及び同年3月15日付け)
オ 申立人は、2012年7月18日ないし20日に東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ2012」に出展し、申立人のブースにおいて申立人の役務が紹介され、引用商標1が大きく表示されたほか、雑誌「最新介護経営介護ビジョン」2012年7月号及び雑誌「最新医療経営フェイズ・スリー」2018年8月号合同特別付録「国際モダンホスピタルショウ2012」のガイドブック「今年の目玉はコレだ!見どころガイド」において、申立人の役務について引用商標1とともに紹介された。
なお、上記「国際モダンホスピタルショウ2012」には、その会場案内図によれば、「医療情報システムゾーン」において、申立人のほか、日本アイ・ビー・エム(株)、ヤマハ(株)、NEC、メディカルデータベース(株)、富士通(株)、(株)日立製作所、日立メディカルコンピュータ(株)、東芝メディカルシステムズ(株)等のコンピュータソフトウェア関連の業務を行っていると推認される企業が多数出展している。
上記「国際モダンホスピタルショウ2012」の来場者数は、3日間合計81,550人となった。(以上、甲40〜甲43)。
カ 申立人は、ウェブサイトを開設し、引用商標1を表示するとともに、「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」について説明しているほか、一般社団法人全国訪問看護事業協会のウェブサイトにおいて、「低価格・高機能・ASP訪問看護ステーション支援サービス」との表示によりバナー広告をし、申立人の上記ウェブサイトにリンクできるようにしている(甲4,甲51)。
キ 他方、本件商標権者は、訪問看護ステーションセレーノとして、訪問看護サービスの役務を提供している(甲53)。そして、本件商標権者は、申立人のダイレクトメールを見た上で平成25年2月27日に申立人の提供に係る役務に関するデモンストレーションを申立人に依頼し、該デモンストレーションが同月28日に設定され、その後、同年3月29日に申立人の提供に係る役務「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」の利用を申し込んだ(甲54,甲55)。
ク コンピュータソフトウェアを提供する企業と推認されるエヌ・デーソフトウェア株式会社は、ソフトウェア事業のみならず、「ほのぼのケアサービス」として平成11年10月頃から介護支援事業も行っている(甲52)。
(2)上記(1)の事実によれば、引用商標1及び2は、申立人の業務に係る役務「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」を表示する商標として、本件商標の登録出願時には既に、介護支援業界を始めとする医療・福祉関連の分野における取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)上記1のとおり、引用商標1及び2は、申立人の業務に係る役務「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、介護支援業界を始めとする医療・福祉関連の分野における取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
(2)そして、申立人の上記役務は、訪問看護ステーションの管理者又は該ステーションを拠点に活動する看護師等を対象とするものであって、訪問看護ステーションを始め医療看護、介護等の役務を提供する者とは役務の提供者と利用者(需要者)の関係にあること、上記役務には訪問看護支援業務の管理に関するもののほか、医療関連情報の提供等も含まれていること、上記役務は介護関連の専門誌において紹介されていること、申立人を始め医療・福祉向けのシステムを提供するソフトウェア関連企業が医療・福祉関連展示会において出展し、訪問看護ステーション等の介護業界に進出していること、などからすると、申立人の上記役務と本件商標の指定役務である「医療看護,医業,介護」とは、密接な関連性を有するものといえる。
(3)ところで、引用商標1は、別掲(A)のとおり、「CoCo」及び「Nurse」文字を横一連に書し、その上段に「ココナース」の片仮名及び十字を付した看護帽と思しき図形を配した構成からなるものであるが、「CoCoNurse」の文字は、大きく明確に表されており、「Nurse」の文字が「看護師」の意味を有するよく知られた英単語であることから、該文字部分からは「ココナース」の称呼が無理なく生ずるものであって、「ココナース」の片仮名部分も上記欧文字部分の読みを特定する役割を果たしているといえるものであり、引用商標1は、その構成全体から、「ココナース」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じないものの、「看護に関係するもの」程度の意味合いを認識させるものである。
また、引用商標2は、別掲(B)のとおり、「ココ」、「CoCo」及び「ナース」の文字を3段に表してなるものであるところ、全体として「ココナース」の称呼を生ずること明らかであり、また、「ナース」の片仮名は、「看護師」の意味を有するよく知られた外来語であることから、特定の観念は生じないものの、「看護に関係するもの」程度の意味合いを認識させるものである。
他方、本件商標は、前記第1のとおり、「CoCoナース」の文字からなるものであるから、「ココナース」の称呼を生ずること明らかであり、また、特定の観念は生じないものの、「看護に関係するもの」程度の意味合いを認識させるものである。さらに、本件商標は、引用商標2の顕著に表された「CoCo」及び「ナース」の文字部分とは綴りを同一にするものである。
そうすると、本件商標は、引用商標1とは称呼、観念を共通にし、引用商標2とは称呼、観念及び外観を共通にするものであり、それぞれ相紛らわしい類似の商標といわなければならない。
(4)以上を総合勘案すると、本件商標をその指定役務について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、広く認識されている引用商標1及び2を連想、想起し、該役務が申立人又は申立人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標権者は、前示のとおり、取引者、需要者間に広く認識されている引用商標1及び2の使用に係る役務「ASP型訪問看護ステーション業務支援サービス」の対象であり、該役務と密接な関連性を有する訪問看護ステーションの事業を行っていること、申立人の上記役務に関するダイレクトメールを見てデモンストレーションの依頼をしていること、などからすると、申立人並びに引用商標1及び2の存在を知悉していたものというべきであり、申立人の上記役務と密接な関連性を有する「医療看護、医業、介護」について引用商標1及び2が商標登録されていないことを奇貨として、先取りし、剽窃的に本件商標を登録出願したものといわざるを得ない。
本件商標権者のかかる行為は、「商標登録出願について先願主義を採用し、また、現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても、健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり、また、商標法の目的(商標法1条)にも反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであるから」(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10297号、平成22年8月19日判決参照)、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標に該当するというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に違反して登録されたものである。
第4 商標権者の意見
前記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。
第5 当審の判断
本件商標についてした前記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に違反して登録されたものであるといわざるを得ないから、その他の登録異議の申立ての理由について判断するまでもなく、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。