Trademark Appeal Case
称呼の類似性と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−685011(T2013−685011/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件国際登録第1117603号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、2011年(平成23年)11月11日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2012年5月10日に国際商標登録出願され、第6類に属する別掲(B)のとおりの商品を指定商品として、平成25年1月23日に登録査定、同年3月15日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第5454301号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(C)のとおりの構成からなり、平成22年9月22日に登録出願、第6類「自動車用金属製鍵,鍵,金属製金具,鉄及び鋼,非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製包装用容器,金属製立て看板」及び第7類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同23年10月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由(要旨)
1 本件の商標権者と申立人の競合関係について
申立人は、鍵の製造等の分野において、1770年以来約240年の歴史があり、日本国登録商標(引用商標:甲1)を所有している。そして、申立人のグループ会社であるイタリア法人「KEYLINE S.p.A」は、「KEYLINE」商標を、日本を含む世界50か国以上で現に「鍵、電子鍵、電子鍵ヘッド、鍵製造機、鍵複製機」及びその関連事業において大々的に使用している。
一方、本件商標権者である「Kaba AG」は、スイス所在の法人であって、約150年以上の歴史を有する「セキュリティシステム」に関する企業であるところ(甲63)、そのグループ会社には申立人等と同じく「イタリア・トレヴィーゾ」に住所を有する「Silca S.p.A」があり、同社は、申立人等と完全に競合する商品「鍵、鍵製造機」などの商品を製造・販売している(甲63〜甲65)。
鍵の製造等といった非常に限られた商品分野において、申立人等の商標「KEYLINE」と語尾の一文字しか相違しない本件商標「KEYLINK」が、第三者によって使用された場合、混同が生ずるおそれがあることは明白である。
そして、かかる限られた商品・事業分野で、しかもイタリアの同一地域内に所在する「Silca S.p.A」が、申立人等の「KEYLINE」商標を本件商標の登録出願前から知っていたことは明らかである。かかる状況において、本件商標の登録を「Silca S.p.A」をそのグループ内に有する商標権者が行っているのは、申立人及び「KEYLINE」社の業務を何らかの形で妨害することを目的としている以外には考えられない。
2 「KEYLINE」商標の周知・著名性について
「KEYLINE S.p.A」(以下「KEYLINE社」ともいう。)は、自動車、建具などの金属製の鍵のほか、自動車、オートバイなどで使用される電子キー、電子キー用ヘッド、鍵用アクセサリー、鍵の製造・複製機の生産など、「鍵」に関連する事業を広く行っているイタリア法人であって、申立人のグループ企業である。その使用する商標は、我が国では申立人の名義により引用商標として登録をされているほか(甲1)、下記の甲第2号証ないし甲第62号証のとおり、世界的に大々的に使用されている。
(1)甲第2号証は、2010年度版の「KEYLINE社」製品に関する総合パンフレットの写しである。その表紙において記載されているとおり、(a)申立人は鍵の製造等の分野においては1770年以来約240年の歴史がある、(b)KEYLINE社は、申立人であるビアンキ社のグループ会社であり、オリジナルやスペアキー、機械鍵及び電子鍵の複製機のデザイナー及び製造者、自動車のトランスポンダーキー(電子鍵)の分野におけるリーダーとして世界的な名声を得ている、(c)KEYLINE社の商品の販売は、50か国以上にわたっており、2009年には約5000万の鍵と3000の鍵製造機・複製機が販売され、イタリア、ドイツ、米国、中国に直営子会社を有している、といった状況である。
そして、同パンフレットには、KEYLINE社が製造・販売している商品が掲載されており、金属製の鍵製造機(Key Cutting Machine:商品名「304」,「CARAT」)、電子鍵製造機(Electronic Key Cutting Machine:商品名「VERSA」,「994 Laser」,「dezmo」)、電子鍵複製機(Cloning Device:商品名「884 decryptor ultegra」)などが紹介されている。
甲第3号証は、複数の言語による「半自動鍵製造機(semi−automatic key cutting machines)」のパンフレットであり、「EASY」、「LUPO」、「FOCUS」、「PUNTO」といった鍵製造機が掲載されている。
以上のような複数の商品を掲載した総合型パンフレットとは別に、個々の商品に係るパンフレットも用意されており、商品によっては複数の言語で作成されている(「CARAT」(甲4〜甲7),「dezmo」(甲8〜甲10),「VERSA」・「VERSA/the first LUM」(甲11〜甲13),「884 decryptor ultegra」・「883 decryptor」(甲14〜甲18),「994 Laser」(甲19〜甲21))。
このほか、総合パンフレットに掲載されていない商品についても、パンフレットが作成されている(鍵の製造・複製機に関する商品「BIANCHI 101−4」・「104BIANCHI FRANCE」・「BIANCHI 201」・「BIANCHI 202」・「BIANCHI 203」・「BIANCHI 204」・「BIANCHI 105」・「RS 206」・「KEYLINE BI 893」・「KEYLINE BI 303−304」(甲22〜甲31),自動車用電子鍵・電子鍵用ヘッド及びその複製機「RK60」・「TK100」・「BI884」(甲32〜甲36),電子鍵製造機・複製機に使用されるソフトウェア(甲37,甲38),鍵及び鍵用アクセサリー(キーホルダーなど)(甲39〜甲49),鍵及び鍵製造・複製機を収納・展示するための棚(甲50),プラスチックや金属の表面に彫刻・マーキングをするための機械「GIOTTO」(甲51))。
これらのパンフレットには、全て「KEYLINE」商標が表紙その他の取引者・需要者の目を惹く部分に大きく表示されている。当該商標が世界的に広く使用さていることを示すものである。
(2)上記の状況は、我が国においても例外ではない。KEYLINE社は日本語のホームページを開設しているほか(http://www.keyline.it/jpn/)、我が国においても「KEYLINE」商標を大々的に使用している(鍵製造・複製機、自動車用電子鍵、自動車用電子鍵ヘッドに関する日本語による説明が記載された商品パンフレット(甲52〜甲60))。
なお、「KEYLINE」の電子鍵ヘッドは、トヨタ、日産、三菱、マツダ、いすゞ、ダイハツ、ホンダ、川崎といった国内自動車・二輪自動車会社のほか、BMW、Audi、FORD、その他の世界の主要な自動車会社の車種で使用可能となっており、その数は約50社に上っている(甲60)。KEYLINE社の鍵が自動車鍵の取引者間で世界的に広く使用されていることを示す一例といえる。
甲第61号証及び甲第62号証は、我が国への商品輸入の事実を示すインボイスであり、輸入商品の大半が「Key Blanks」、「ELECTRONIC HEAD」となっているが、これは既に鍵製造・複製機が現に我が国に納入されていることを示すものである。
(3)以上のとおり、「KEYLINE」商標は、日本国内外を問わず、鍵、鍵製造機、鍵複製機、電子鍵用電子ヘッド、キーホルダーなどに大々的に使用されているほか、その関連商品においても大々的に使用されており、「鍵の製造」等といった限られた事業分野においては、同商標は、取引者・需要者の間で広く知られたものであるといえる。
3 本件商標権者とそのグループ会社「Silca S.p.A」の事業と申立人等の関係について
(1)本件商標権者である「Kaba AG」は、スイス所在の法人であって、約150年以上の歴史を有する「セキュリティシステム」に関する企業であるところ(甲63)、その事業の一つとして、「Silca」ブランドの下、「Key blanks(未加工鍵);transponder keys(トランスポンダーキー,電子鍵);mechanical,electronic and industrial key cutting and coding machines(機械・電子・工業鍵製造及び電子鍵複製機);key duplication machines(鍵複製機);software for the cutting process(鍵製造過程用のソフトウェア)」といった、申立人等と完全に競合する商品を取り扱っている(甲63,10ページ目)。これら「Silca」ブランドの商品は、「Kaba AG」のイタリアにあるグループ会社である「Silca S.p.A」が製造等を行っており(甲64)、現にSilca社企業プロフィール(甲65)には、申立人等と完全に競合する商品である「Key blanks,key cutting machines,duplication machines」等が掲載されている。
(2)ここで注目すべきは、Silca社の所在地である。同社は「Via Podgora 20 Z.I.31029 Vittorio Veneto (TV) Italy」に所在するところ(甲65,最終ページ)、申立人及び「KEYLINE S.p.A」の所在地も「Via Camillo Bianchi,2,31015 Conegliano (TV) Italy」となっており(甲66)、「イタリア・トレヴィーゾ」地方に所在する点まで共通している。
鍵の製造等といった非常に限られた商品分野において、しかもイタリアの同一地域内に所在する「Silca S.p.A」が「KEYLINE」商標を本件商標の登録出願前から知っていたことは明らかである。「Silca S.p.A」の所在地と申立人等の所在地を地図で表したものを添付するが、完全に同一地域といって差し支えないほどに近接しているのである(甲67,甲68)。
かかる状況において、「KEYLINE」商標と語尾の1文字しか相違のない本件商標の登録を「Silca S.p.A」をそのグループ内に有する商標権者が行っているのは、申立人及びKEYLINE社の業務を何らかの形で妨害することを目的としている以外には考えられないものである。
4 本件商標の登録が取り消されるべき理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、欧文字「KEYLINK」を左横書きにしてなるものである。
一方、引用商標は、欧文字「KL」を白抜きで表示した楕円形図形及び「KEYLINE」と読める欧文字の組み合わせからなるものである。ここで、引用商標は、楕円形図形部分とそれに続く「KEYLINE」の部分とは外観上の態様が明らかに相違していることから、これが必ずしも一体不可分にのみにみられる特段の理由はなく、上記甲第2号証ないし甲第62号証に示した実際の使用態様からしても「KEYLINE」の文字が分離して認識されるものである。
そして、本件商標「KEYLINK」と引用商標中の「KEYLINE」とを称呼、外観、観念において比較すると、まず、外観において、本件商標と「KEYLINE」は、何れも7文字の欧文字からなる点で共通するだけでなく、1文字目から6文字目までは全く同一である。最後尾において、「K」と「E」の相違はあるが、簡易迅速を旨とする商取引においては、7文字中の最初の6文字が共通していれば、両者を同一のものと誤解する可能性が大いに考えられ、混同を生じさせるおそれが極めて大きいといえる。
加えて、申立人の「KEYLINE」商標は、鍵、鍵の製造機・複製機その他鍵に関連する事業分野において世界的にかつ大々的に使用されており、我が国でも例外ではない。「鍵及びその製造機」等の分野においては、語頭の数文字を見ただけでも取引者・需要者は申立人の商標を想起し得る状況といえ、本件商標のように、全7文字中6文字が申立人商標と共通する場合には、混同のおそれはなおさら大きいといえる。このような実際の取引実情からしても、本件商標と引用商標は、外観上類似するものといえる。
次に、観念においては、本件商標及び引用商標は、共に本来的には造語であって、特段の観念が生じるものではない。したがって、観念上の区別はできないものである。
最後に称呼については、本件商標からは「キーリング」の称呼が生じる一方、「KEYLINE」商標の本件指定商品の分野における著名性からすれば、「キーライン」と誤って称呼される可能性も否定できないものである。
したがって、本件商標と引用商標は、外観及び称呼が類似するとともに、観念においては区別することができないことから、総合的にみた場合にも相互に類似する商標といえる。
そして、本件商標に係る指定商品中、「金属性貯金箱及び金庫」以外の商品、すなわち「金属製錠(電気式のもの及び鍵を除く),金属製金具、すなわち自動車用・窓用・スーツケース用及び家具用の金属製の付属品,扉・その部品及びその金属製部品(本類に属するもの),建築用金属製建具又は金具,鍵用の金属製の輪(貴金属製のものを除く。),乗物用金属製錠,乗物用の鍵,乗物用安全錠(金属製のもの)」は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、引用商標との関係において商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
「KEYLINE」商標は、上述のとおり、鍵、鍵製造機、鍵複製機、電子鍵用電子ヘッド、キーホルダーその他の鍵に関連する商品について大々的に使用されており、「鍵」に関連する特定の分野における取引者・需要者には、著名な商標といえる。そして、本件商標の指定商品は、「鍵」そのものである「金属製錠(電気式のもの及び鍵を除く),鍵用の金属製の輪(貴金属製のものを除く。),乗物用金属製錠,乗物用の鍵,乗物用安全錠(金属製のもの)」、鍵の主たる原料である「金属性の商品」並びに鍵が不可欠な商品である「金属製貯金箱及び金庫」などであって、KEYLINE社の業務と密接に関連するものである。
かかる分野において、「KEYLINE」と語尾の1文字しか相違のない本件商標「KELINK」が、紛らわしいものであるのは明らかであって、KEYLINE社の業務に係る商品との関係で具体的な混同を生じさせる蓋然性の極めて大きいものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
仮に、本件商標の指定商品中に、KEYLINE社の業務との具体的な混同を生じさせないような商品が含まれていたとしても、そのような商品との関係では、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
すなわち、本件商標権者である「Kaba AG」及び「Silca S.p.A」は、申立人とそもそも競合関係のある鍵の製造等の事業を行っており(甲63等)、しかも「Silca S.p.A」の所在地は、上述のとおり、申立人等と非常に近接しているから、本件商標権者が本件商標の登録出願前から「KEYLINE」商標の存在を知っていたことは明らかである。
かかる状況において、「KEYLINE」商標と語尾の1文字しか相違のない本件商標の登録を行ったのは、申立人及びKEYLINE社の業務を何らかの形で妨害し、KEYLINE社に損害を与える目的、すなわち不正の目的で登録しているとしか考えられない。
したがって、本件商標は、日本国内又は外国における「鍵,鍵製造機,鍵複製機,電子鍵用電子ヘッド,キーホルダーその他の鍵に関連する商品」の需要者間に広く認識されている「KEYLINE」商標に類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」には、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合のほか、商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるとされている(商標審査基準、東京高判平成11年行(ケ)第394号など)。どのような場合に「社会公共の利益に反する」といえるかは、一義的にこれを決めることは困難であるが、使用することによって商取引の秩序を乱す場合、社会公共の利益に反するとして本号を適用すべしとするのが上記判決であり、近年の通説である。
そして、特に最近では、他人が採択した(又は採択しようとしている)商標であることを知りながら、これを剽窃的に登録する行為は公正な取引秩序を乱すものであるとして、本号を適用した審決・判決が続出しており、もはや確立した考え方になっているといっても過言ではない。また、公正な取引秩序の維持を究極の法目的とする商標法の精神から考えても、かかる行為は認められるべきではない。
他人が使用している商標であることを知りながら登録した場合に、公序良俗違反として4条1項7号を適用した裁判例・審決は枚挙にいとまがないほど多い(東京高判平成10年(行ケ)第18号,東京高判平成10年(行ケ)第185号,知財高裁平成17年(行ケ)第10668号,平成11年異議第91112号,平成10年異議第90668号,異議2000−90260号,平成11年審判第35441号,無効2000−35217号,無効2006−89013号,異議2002−90177号,異議2002−90646号,異議2001−90949号,平成10年審判第35450号,平成10年審判第35206号,平成9年審判第1418号,平成9年審判第1721号,平成6年審判第15289号,平成5年審判第21211号,無効2002−35136号,無効2001−35432号,無効2001−35430号,無効2001−35260号,平成11年審判第35666号,平成11年審判第35257号,平成11年審判第35093号,無効2002−35077号,無効2001−35429号,平成9年審判第19995号など)。
本件では、上述のとおり、本件商標権者である「Kaba AG」及び「Silca S.p.A」は、申立人等と競合関係のある鍵の製造等の事業を行っており(甲63)、上述のとおり、本件商標権者が本件商標の登録出願前から「KEYLINE」商標の存在を知っていたことは明らかである。かかる状況において、「KEYLINE」商標と語尾の1文字しか相違のない本件商標の登録を行っているのは、申立人及びKEYLINE社の業務を何らかの形で妨害することを目的としている以外には考えられない。このような登録は、国際商業道徳に反するものというべきであって、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものである。
したがって、仮に、申立人等の「KEYLINE」商標が周知・著名ではなかったとしても、本件商標はその指定商品全てとの関係で商標法第4条第1項第7号に該当することが明らかである。
(5)商標法第4条第1項第19号及び同第7号に係る補足
甲第71号証は、KEYLINE社のアジア・パシフィック販売担当副社長のカルロ・アルパゴ(Carlo Alpago)氏と、「Silca S.p.A」の日本国内の販売代理店である「株式会社クローバー」(以下「クローバー社」という。所在地:大阪府豊中市原田中1丁目2番40号)の知的財産権担当と称する「カンゾウ・ヤマモト」(kanzo Yamamoto)氏間の電子メールの写しである。同号証では、便宜的に(1)〜(3)に分けて表示しているが、(2)、(3)でアルパゴ氏からクローバー社社長のナカイ氏あてにメールを出したところ、(1)としてヤマモト氏がナカイ社長に代わってアルパゴ氏に返信をした内容となっている。
概略すると、(3)は、クローバー社がKEYLINE社の商標である「Dezmo」及び「Versa」(甲8〜甲13参照)を、「デズモ」、「ベルサ」という日本語表記にて剽窃的に日本で商標登録したこと(甲72,甲73)をアルパゴ氏が非難するとともに、一方ではその非礼を許し解決策(KEYLINE社の日本国内の代理店である「株式会社トラストワン」(以下「トラストワン社」という。)等を通して、特別価格で商品を販売すること)として提案する内容となっている。このメールの約1年前、クローバー社がKEYLINE社と直接取引することを希望して接触してきたものの、KEYLINE社はその要請を断わったという背景がある。その後になって、KEYLINE社は、クローバー社が「デズモ」、「ベルサ」の商標を登録したことを知り、このメールを送ったものである。(2)は、(3)の内容中で不明確と思われる点を、確認的に説明した内容となっている。
これに対するクローバー社の回答(1)は、KEYLINE社からの提案を完全に拒絶するものであった。提案されたトラストワン社との取引は、クローバー社がトラストワン社と敵対関係にあることを理由に拒否する旨述べるだけでなく、あらゆる手段を使って同社を攻撃することを宣言し、もしKEYLINE社がトラストワン社を守るためにクローバー社と敵対するような行動を取った場合には、KEYLINE社に対してもあらゆる手段を用いて攻撃を行うことを主張している。
本件商標の登録は、このような背景もあった上でなされたものである。上述したとおり、クローバー社は、「Silca S.p.A」の日本国内代理店であり、この点は両者のホームページの記載からも明らかである(甲74,甲75)。そして、本件国際登録の基礎登録であるスイス商標の登録日は2011年11月11日、国際登録日は翌年2012年5月10日であって、クローバー社が日本で「デズモ」、「ベルサ」商標の出願を行った時期(出願日:2012年1月24日)とちょうど重なっている。クローバー社と「Silca S.p.A」、そして本件商標権者である「Kaba AG」の間で共謀し、申立人と「KEYLINE」社、更には日本のトラストワン社の事業を妨害することを目的として、「KEYLINE」とは語尾の一文字しか相違しない本件商標「KEYLINK」の出願を行ったことを強く推認させるものといえる。
なお、クローバー社は、甲第71号証の(1)の中で「当初、KEYLINE社の商品を輸入する予定であったため、『デズモ』等の商標を取得したことには理由がある」としているが、取引関係を持つ気が全くないと宣言しているトラストワン社の商号要部と実質的に同一の「Trust−one」という商標まで出願している事実がある(甲76:商願2011−54688号)。トラストワン社の事業の妨害を目的として出願したのは明らかであり、上記「デズモ」や「ベルサ」(甲72,甲73)、そして、本件「KEYLINK」についても、トラストワン社の事業を妨害することを目的、ひいてはその輸入元である「KYELINE」社の事業を妨害する目的で出願・登録したことは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」をもって使用されるものであり、また、同項第7号に規定する「公序良俗」に違反して登録されたものである。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号及び同第7号に違反してされたものであるから、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきである。
なお、本件国際登録に対しては、同様の登録異議申立がノルウェー、中華人民共和国でなされ、両国においては、既に全ての商品との関係で異議申立に基づく暫定拒絶通報がなされている(甲69,甲70)。
第4 当審の判断
1 「KEYLINE」商標の周知・著名性について
申立人の提出に係る証拠によれば、(a)申立人は、ビアンキ家が1770年にプロスペロ・ビアンキがイタリア北部にある「Cadore Valleys」において鍛鉄鍵の製造のために職人工場を設立して以来、鍵及び鍵製造機の事業に携わっていること、(b)KEYLINE社は、申立人のグループ会社であり、金属製の鍵、自動車・オートバイ用電子キー、鍵の製造・複製機などの生産を行っていること、(c)KEYLINE社は、イタリア、ドイツ、米国、中国に直営子会社を有しており、日本を含む世界の多くの国において同社の商品が販売されていること、(d)KEYLINE社が製造・販売している商品のパンフレットには個別の商品に付される商標が表示されているほか、表紙等において、引用商標の構成と同一であると認め得る「KEYLINE」商標が表示されていることが認められる。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠は、そのほとんどが申立人のグループ会社であるKEYLINE社の作成に係るパンフレットの写しであって、一般紙、業界紙、雑誌等における記事掲載など「KEYLINE」商標の周知・著名性に係る証拠の提出はない。
以上によれば、「KEYLINE」商標は、鍵及び鍵製造機に係る業界の取引者、需要者の間において、一定程度知られていることは認められるが、申立人の提出に係る証拠によっては、「KEYLINE」商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又はそのグループ会社の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲(A)のとおり、「KEYLINK」の欧文字を横書きしてなるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさをもって等間隔にまとまりよく表されているものの、その構成中の「KEY」の文字が「鍵,キー」、「LINK」の文字が「(鎖の)輪,環,結び付けるもの」の意味を有する英単語として一般に広く知られているものであるから、本件商標を「KEY」及び「LINK」の2語を結合したものであると直ちに理解、認識するといえるものである。
そうすると、本件商標は、その構成態様から特定の語義を有することのない一種の造語として認識され、特定の観念は生じないものの、本件商標の使用される商品が鍵及びそれに関連する商品であることも相まって、看者をして、「KEY」及び「LINK」の2語の有する意味を強く認識させるものであり、そして、2語の英単語の読みを連結させた「キーリンク」の称呼を生じるものである。
イ 引用商標
引用商標は、別掲(C)のとおり、黒塗りの楕円形中に白抜きで「K」と「L」の欧文字のモノグラムを表してなる図形の右方に近接して「KEYLInE」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、図形中のモノグラム部分の縦の長さと「KEYLInE」の欧文字の縦の長さを等しくするものであること、モノグラム部分が楕円形の右方に寄っていること、「KEYLInE」の文字中の「n」の文字のみが小文字であることなどに特徴を有するものである。
そして、引用商標中の「KEYLInE」の欧文字は、等間隔にまとまりよく表されているものの、その構成中の「KEY」の文字が「鍵,キー」、「LInE」の文字が「線,ライン」の意味を有する英単語として一般に広く知られているものであるから、引用商標を「KEY」及び「LInE」の2語を結合したものであると直ちに理解、認識するといえるものである。
そうすると、引用商標は、その文字部分について、特定の語義を有することのない一種の造語として認識され、特定の観念は生じないものの、引用商標の使用される商品が鍵及びそれに関連する商品であることも相まって、看者をして、「KEY」及び「LInE」の2語の有する意味を強く認識させるものであり、そして、2語の英単語の読みを連結させた「キーライン」の称呼を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは、それぞれ上記の構成からなるものであり、文字部分における最後尾の「K」と「E」の文字の差異のみならず、その外観において明らかに相違しているものであるから、外観上、両者が相紛れるおそれはない。
また、本件商標から生ずる「キーリンク」の称呼と引用商標から生ずる「キーライン」の称呼とを比較すると、両称呼は、前半の「キー」の音を同じくするものの、後半部の「リンク」と「ライン」の音はその音構成が明らかに相違し、互いに聴き誤るおそれはない。
さらに、本件商標と引用商標とは、それぞれ特定の観念が生じないものであるものの、本件商標が「KEY」及び「LINK」、引用商標が「KEY」及び「LInE」の2語の有する意味をそれぞれ認識させるものであって、それらは明らかに相違するものであるから、両商標は、観念において紛れるおそれはない。
ところで、申立人は、引用商標の構成と同一であると認め得る「KEYLINE」商標の周知・著名性により、関連取引者・需要者は、本件商標の構成中の共通する6文字「KEYLIN」を見ただけで「KEYLINE」商標を想起し得る状況にあるといえるのであって、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において類似するものである旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、申立人の提出に係る証拠によっては、「KEYLINE」商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又はそのグループ会社の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできないものであるから、「KEYLINE」商標の周知・著名性を前提にする申立人の上記主張は、採用することができない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれも相紛れることのない非類似の商標といわざるを得ない。
したがって、本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品を含むものであるといえるが、本件商標と引用商標とは、上記のとおり、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第15号及び同第19号該当性について
上記1のとおり、申立人の提出に係る証拠によっては、「KEYLINE」商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又はそのグループ会社の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできないものである。
また、「KEYLINE」商標は、引用商標の構成と同一であると認め得るところ、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれも相紛れることのない非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品が申立人又はそのグループ会社の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。
また、以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号所定のほかの要件について論及するまでもなく、同号に該当しない。
4 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標権者である「Kaba AG」及び「Silca S.p.A」は、申立人等と競合関係のある鍵の製造等の事業を行っており、本件商標権者が本件商標の登録出願前から「KEYLINE」商標の存在を知っていたことは明らかであり、「KEYLINE」商標と語尾の1文字しか相違のない本件商標の登録を行っているのは、申立人及びKEYLINE社の業務を何らかの形で妨害することを目的としている以外には考えられないから、このような登録は、国際商業道徳に反するものというべきであって、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものである旨述べている。
しかしながら、「KEYLINE」商標は、引用商標の構成と同一であると認め得るところ、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれも相紛れることのない非類似の商標であること、上記2のとおりである。
してみれば、商標権者が不正の利益を得るために使用する目的で本件商標を登録出願し、商標登録を受けたものということはできないから、かかる行為が、直ちに公正な取引秩序を乱すものであって、ひいては商標法の精神に反し、商取引の秩序に反するものともいえないものであり、また、国際信義に反し公の秩序を害するものであるともいえない。
その他、本件商標が、不正な意図をもって登録出願されたものとして、その経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあるということもできない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標といえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号及び同第7号のいずれにも違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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