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Trademark Appeal Case

アンドロイドとアンドロイドール称呼類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2013−890048(T2013−890048/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5436076号商標(以下「本件商標」という。)は、「アンドロイドール」の片仮名を標準文字で表してなり、平成23年3月9日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録音済みビデオディスク」、第16類「印刷物」及び第25類「被服,履物」を指定商品として、同年8月10日に登録査定、同年9月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が引用する商標登録は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。

(1)登録第5132404号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ANDROID」の欧文字を標準文字で表してなり、2007年10月31日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成19年11月9日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」を指定商品として、同20年4月25日に設定登録されたものである。

(2)登録第5132405号商標(以下「引用商標2」という。)は、「アンドロイド」の片仮名を標準文字で表してなり、平成19年11月9日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」を指定商品として、同20年4月25日に設定登録されたものである。

(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 引用商標の周知・著名性について

(1)引用商標は、請求人が携帯電話用ソフトウェアプラットフォーム(携帯電話用プログラム)について使用し、我が国及び世界において広く知られるに至っている著名商標である。

引用商標に係る「アンドロイド(ANDROID)」は、米国に本拠地を置き、全世界で事業を展開するIT関連企業であり、インターネット上で検索エンジン「Google(グーグル)」を提供している請求人が、規格団体のOHA(Open Handset Alliance)を通じて2007年(平成19年)11月5日(米国時間)に無償による提供を発表した、携帯電話向けのオープンソースライセンスによるソフトウェアプラットフォームの名称である(甲第4号証)。また、OHAは、「アンドロイド(ANDROID)」の普及のために請求人が中心となって世界の主要な携帯電話メーカーや通信事業者の33社と組んで設立した業界団体であり、我が国の企業としては、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ、KDDI株式会社が設立当初より参加しており(甲第4号証)、後にソフトバンクモバイル株式会社が参加している。

(2)「アンドロイド(ANDROID)」は、携帯電話の機能を最大限使えるアプリケーションの実行環境の構築実現を可能にするプラットフォームを世界的な大手IT企業がオープンソースで無償提供する点が極めて衝撃的であったため、携帯電話の大変革をもたらす重大事件として受け取られ、2007年(平成19年)11月の発表と同時に世界中のモバイル業界で爆発的に話題となり、我が国を含む世界中のインターネットや業界誌等で大々的に取り上げられた(甲第5号証)。

請求人は、OHAを通じて2007年(平成19年)11月12日(米国時間)に「ANDROID」のソフトウェア開発キット(SDK)の早期版を公開し、OHAのWebサイトなどを経由してダウンロードできるよう提供し(甲第5号証)、同時に、「ANDROID」のアプリケーション開発コンテスト「Android Developer Challenge」の開催を発表した。該コンテストの賞金総額は1,000万米ドルであり、受付期間の2008年(平成20年)1月2日から同年3月3日の間に応募があった1,788作品の中で、最終選考で上位10作品に27万5,000米ドルを、それに続く10作品に10万米ドルを、それぞれ賞金として授与した(甲第6号証)。

(3)「アンドロイド(ANDROID)」は、ITの世界的企業であるグーグルが仕掛ける携帯電話用ソフトウェアプラットフォームであることに加え、それらが無償で提供され、今日では一般的なものといえるまでに市場に浸透した「ケータイのパソコン化」を目指したものであったところから、当初より大変注目を集め、IT関連誌や経済誌において、「アンドロイド(ANDROID)」を取り上げた特集記事やコラムが多数発表されている(甲第7号証)。

また、「アンドロイド(ANDROID)」に関連した記事は、世界中からインターネット上で毎日のように配信され、「アンドロイド(ANDROID)」に関するウェブサイトも無数に存在している。

こうした記事やコラムが発表される中で、「ANDROID」は、請求人が提供する携帯電話の開発プラットフォームを表す用語として各種雑誌等に掲載されようになり、着実に市場に浸透していった(甲第8号証)。

(4)「アンドロイド(ANDROID)」が使用される商品は、携帯電話やそのプログラムの中でも「スマートフォン」と呼ばれる商品群に属するものであるところ、我が国においては、先行する他社の製造、販売する「iPhone」及びそのソフトウェアプラットフォームである「iOS」に続き、外国製のスマートフォンが販売されていたが、平成21年11月に、国内メーカーが次々とソフトウェアプラットフォームに「アンドロイド(ANDROID)」を採用した高機能携帯電話(スマートフォン)を発表した(甲第9号証)。

その後、ソフトウェアプラットフォームに「アンドロイド(ANDROID)」を採用したスマートフォンは、着実に市場に浸透していき、「iPhone(ソフトウェア「iOS」)」を競合商品として、人気を二分するまでになり、そのことが大変話題となって、多くの新聞、雑誌(IT関連誌や経済誌など)において、特集記事やコラムとして取り上げられた(甲第10号証)。

(5)スマートフォンが普及するにつれて、携帯電話全体の売上高におけるスマートフォンが占める割合が急速に高まっているところ、請求人の携帯電話プラットフォーム「アンドロイド(ANDROID)」を採用したスマートフォンは、その販売開始時期との関係で、他社製品「iPhone」を追随する形となっているが、年々シェアを高め(甲第11号証)、最近では、該「iPhone」用のソフトウェアプラットフォームである「iOS」を追い抜き、スマートフォンにおけるソフトウェアプラットフォームの代表格となりつつある(甲第12号証)。

2 本件商標と引用商標との類似性について

(1)称呼について

本件商標は、その構成文字に相応して、「アンドロイドール」の称呼を生ずるものである。

他方、引用商標は、その構成文字に相応して、「アンドロイド」の称呼が生ずるものである。

そこで、本件商標から生ずる「アンドロイドール」と引用商標から生ずる「アンドロイド」の称呼とを比較するに、両称呼における差異は、わずかに語尾における「ー(長音)」及び「ル」の音の有無にあるが、語尾音は、ほかの音に比べて明確さを欠く発声をもって発音されるのが通例であり、しかも、「ー(長音)」及び「ル」の音は、ともに前に位置する「ド」の音に吸収されて余韻として残る程度の極めて弱い音となることから、明確に聴取し難く、その差異は一層薄れがちとなる。

むしろ、両称呼は、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音を含む大部分の音である「アンドロイド」を共通にしており、しかも、これらの音は、印象の薄い上記差異音とは異なって、明瞭に強く発音されるので、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が極めて近似したものとなり、互いに聞き誤るおそれがある。

(2)観念について

引用商標に係る「アンドロイド(ANDROID)」の文字は、「2007年に米国グーグル社が発表した、スマートホン・タブレット型端末向けの実行環境。」の意味を有する外来語「アンドロイド」(株式会社小学館発行「大辞泉」)として、我が国において馴染まれ、知られているので、引用商標は、「米国グーグル社が発表した、スマートホン・タブレット型端末向けの実行環境」に関連する商品との観念が生じるといえる。

他方、本件商標を構成する「アンドロイドール」の文字は、既成語とはいえないものではあるが、本件商標の構成中に含まれる「アンドロイド」の文字が、請求人の商標として我が国において周知、著名な商標であり、国語辞典にもその事実が掲載されていることに鑑みれば、これに接する取引者,需要者をして、本件商標が「アンドロイド」の文字を含んでいることを容易に理解させるだけでなく、「アンドロイド」の部分が強く印象付けられて、これに接する取引者,需要者の注意を特に強く惹くこととなる。

そうすると、本件商標は、「米国グーグル社が発表した、スマートホン・タブレット型端末向けの実行環境」に関連する商品との観念を生じる場合があり、少なくとも、「米国グーグル社が発表した、スマートホン・タブレット型端末向けの実行環境」である「アンドロイド」を想起、連想する。

(3)外観について

本件商標は、特に引用商標1(審判注 正しくは「引用商標2」と思われる。)との関係において、その構成する文字の大部分である「ア」、「ン」、「ド」、「ロ」、「イ」及び「ド」において共通しており、外観構成上の差異は、わずかに「ー(長音)」及び「ル」の文字の有無にすぎず、近似したものとなっている。

(4)小括

以上を踏まえて、本件商標及び引用商標について、異なる時間、場所を想定した隔離観察を行った場合、両商標は、称呼上及び観念上のみならず、外観上も近似する場合があり、しかも、本件商標の構成中の「アンドロイド」の文字が、請求人の商標として著名である事実に鑑みれば、これに接する取引者、需要者をして、「アンドロイド」の文字が強く印象付けられ、需要者等の通常の注意力のみをもってしては、本件商標と引用商標とを区別することは必ずしも容易ではない。

してみれば、本件商標と引用商標とは、互いに紛れるおそれの高い類似の商標である。

3 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、上記2のとおり、引用商標と類似する商標であり、また、その指定商品のうち、第9類の「電子計算機用プログラム」は、引用商標の指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」と同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、引用商標との関係において、その指定商品中、第9類の「電子計算機用プログラム」について商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 商標法第4条第1項第15号について

(1)本件商標と引用商標との類似性について

本件商標は、上記2のとおり、引用商標との関係において、称呼上、互いに聞き誤るおそれがあるものであり、また、観念上も類似するものであり、さらに、引用商標1(審判注 正しくは「引用商標2」と思われる。)との関係においては、外観上も紛れるおそれの高いものである。

(2)引用商標の著名性及び独創性

引用商標に係る「ANDROID」又は「アンドロイド」の文字が、請求人の商標として、我が国はもちろんのこと、世界中で著名である事実は、既に述べたとおりであり、その著名性は、携帯電話ソフトウェアプラットフォームの代表格として取り扱われている程高いものである(甲第4号証ないし甲第12号証)。

また、「ANDROID」又は「アンドロイド」の文字は、「SFなどに登場する、高い知性をもつ人間型ロボット。ヒューマノイド。」の意をも有する既成語であって、造語商標ほどの独創性があるとまではいえないとしても、請求人の商標として著名であって、その事実が国語辞書にも掲載されているほどである(株式会社小学館発行「大辞泉」)。

さらに、引用商標は、その指定商品との関係で何ら直接的に商品の品質等の内容を示唆するものではなく、このような文字を採択すること自体、高い顕著性を有しているのであり、十分に独創的であるといえる。

(3)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との関連性の程度

引用商標の指定商品は「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」であるところ、引用商標は、特に「携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム(プログラム)」及び「(そのプログラムを記憶した)携帯電話」との関係で周知又は著名なものとなっている。

ア 本件商標の指定商品中の「電子計算機用プログラム」との関係について

本件商標の指定商品中の第9類「電子計算機用プログラム」は、引用商標の指定商品と同一又は類似のものであり、関連性の高さは疑いのないところである。

イ 本件商標の指定商品中の「レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録音済みビデオディスク」との関係について

引用商標の使用に係る商品は、既に述べたとおり、携帯電話やそのプログラムの中でも「スマートフォン」と呼ばれる商品群に属するものであるところ、スマートフォンは、いわば小さなパソコンともいうべき商品である。すなわち、スマートフォンは、携帯電話としての機能にとどまらず、デジタルカメラやデジタルビデオカメラとしての機能も、それら単体の商品と匹敵するような性能を有しており、また、大容量の記憶媒体を内蔵していることから、音楽等の音声データやビデオ等の画像・映像データを、無線LAN等によるインターネット接続を通じてダウンロードし、保存、再生を容易に行うことができる多機能の携帯端末でもあることは自明の事実である。

そして、スマートフォンの爆発的な普及により、スマートフォンやそのソフトウェアプラットフォームは、音楽等の音声データやビデオ等の画像・映像データの再生等に用いられることが多くなっている。

したがって、本件商標の指定商品中の上記レコード等と引用商標の使用に係る商品との関連性は、スマートフォンの登場により、非常に高いものとなっている。

ウ 本件商標の指定商品中の「印刷物」との関係について

携帯端末やソフトウェアプラットフォームの高機能化、高性能化が進むにつれ、需要者は、新しい携帯端末機種、ソフトウェアのバージョンアップがなされる度に、それらに関する知識を書籍等の印刷物に求めることが多いといえ、このような事情は、「ANDROID」の解説書や「アンドロイド(ANDROID)」をめぐるモバイル業界に関する書籍等が一般に刊行されるようになったところからも見て取れる(甲第13号証)。

また、書籍は、従来、消費者個人が実際に書店を巡り、商品を探し出すことに膨大な労力を要していたものであるが、近年におけるインターネットの普及により、インターネットを通じた検索サービスを用いて書籍等の販売を行うことが、市場のニーズと合致し、急速に発展した。

さらに、スマートフォンの普及により、携帯電話の利用者は、商品の販売者が提供するアプリケーションソフトウェアをダウンロードし、その機能を用いて、外出先からでも手軽に書籍等の商品を購入することができることとなっている。

したがって、携帯電話の利用者にとって、携帯電話及びそのプログラムと書籍等の商品とは、密接な関連性を有するものである(甲第14号証及び甲第15号証)。

エ 本件商標の指定商品中の「被服,履物」との関係について

携帯電話及びそのソフトウェアは、主に他人と通信するための道具(機械)であるが、近年においては、極めて多数の者が常に携行するようになり、需要者等は、その主たる機能や目的を超えて、高いデザイン性やファッション性を求めるようにもなった。

また、近年において、インターネットを通じて行われる各種商品の通信販売が盛んとなっていることは既に述べたとおりであるが、このことは、被服や履物についても例外ではない。被服や履物のインターネットを通じた通信販売は、従来、その商品の質感をディスプレイで知ることが困難であり、試着ができない等、普及するまでには障害が多いと考えられてきたが、商品の販売者が、自らの工夫により、タイムセール等の割引特典を提供したり、サイズ違いによる交換が可能であることを強くアピールすること等により、急速に発展した。

さらに、スマートフォンの普及により、携帯電話の利用者は、外出先からでも手軽に被服や履物等の商品を購入できることとなっている。

したがって、携帯電話の利用者にとって、携帯電話及びそのプログラムと被服や履物等の商品とは、密接な関連性を有するものである(甲第16号証)。

オ 以上のとおり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との間の性質、用途及び目的における関連性の程度は、極めて高いというべきである。

(4)取引者・需要者の共通性その他の取引の実情

ア 請求人の行った調査によれば、本件商標の商標権者は、本件商標に係る「アンドロイドール」の文字を用いてウェブサイトを運営しているところ、同サイトにおいては、登録ユーザーに対して、請求人の提供する携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム「アンドロイド(ANDROID)」上で動作するアプリケーションソフトウェアの投稿、保存及びダウンロードを可能にする利便性を提供するとともに、各種アプリケーションソフトウェアのユーザーによる評価等の情報の掲示が行われている(甲第17号証ないし甲第19号証)。

すわなち、本件商標の商標権者が取り扱う商品及びサービスは、いずれも請求人の提供する携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム「アンドロイド(ANDROID)」に関連するものばかりであって、完全に同一の商品といっても過言ではない。

そうすると、本件商標の商標権者の上記業務に係る取引者、需要者は、紛れもなく、請求人の提供する携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム「アンドロイド(ANDROID)」の取引者となるアプリケーションソフトウェアの開発業者や、該ソフトウェアプラットフォームを採用した携帯電話の利用者となることから、本件商標の取引者、需要者と引用商標のそれらとは、完全に同じものということになる。

なお、本件商標の商標権者の上記業務に係る需要者等は、携帯電話の利用者であって、老若男女を含む一般消費者であるから,その注意力の程度は決して高くはない。

イ 請求人は、既に述べたとおり、携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム「アンドロイド(ANDROID)」のソースコードを公開し、各種アプリケーションソフトウェアの自由な開発を認めているものであるが、そのことをもって直ちに、他人であるその開発をした者に対し、その他人固有の商標として、「ANDROID」の文字や「アンドロイド」の文字をそのまま構成中に含む商標を使用することまで許可するものではない。

被請求人が引用商標の存在並びにその周知、著名性について知悉していたことは明らかであり、また、本件商標が引用商標に化体した名声にあやかり、あるいは、信用にただ乗りする目的で採択されたものであることは明白である。

(5)事業の多角化の可能性

請求人は、インターネット検索サービス等のインターネット関連事業、携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム及びそのアプリケーションソフトウェア並びに携帯電話及び携帯用電子計算機の提供及び販売を主たる事業として展開しており、近年においては、ダウンロード可能な映像や書籍の販売、各種商品の電子商取引の事業の展開に向けて意欲的に取り組んでいる(甲第20号証ないし甲第22号証)。

また、請求人は、既に述べたとおり、携帯電話用のソフトウェアプラットフォームをオープンソースとして無償で提供しているところ、その商品の市場への普及を促進するためのマスコットキャラクターとして採択した「アンドロイド図形」(甲第23号証)についても自由に使用を認め、商品化事業の推進を図っている。現に、ファッショングッズ等の販売も行っている事業者が存在している(甲第24号証)ことからすれば、そのような商品の開発、販売を行っている事業環境が現にあるといえるのであり、将来において、請求人自らが、これら商品化事業を独自に展開することも充分に考えられる。

(6)小括

以上の事情を総合的に勘案すれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者に対し、引用商標を連想させるものであって、商品の出所について誤認を生じさせ、不当に需要者等を誘導するためのものであり、その登録を認めた場合には、引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や、その希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たるというべきである。

5 商標法第4条第1項第19号について

請求人とは何らの関係を有しない他人が著名な引用商標と類似する本件商標を採択することは、本来自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を著名商標に化体した信用にただ乗り(フリーライド)することによって得ようとするものであり、同時に、著名商標「アンドロイド(ANDROID)」に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれがあるものといえるところ、本件商標の商標権者が引用商標の存在並びにその周知、著名性について知悉していたことは明らかであるので、本件商標は、引用商標に化体した名声、信用にただ乗りする目的で採択されたものと理解するのに格別の困難を要しない。

してみれば、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものということができ、商標法第4条第1項第19号に該当する。

6 まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第41号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について

被請求人は、引用商標が請求人に係る携帯電話用ソフトウェアプラットフォームの名称として世界的に著名な商標であるか否かにつき、不知である。

仮に、引用商標が請求人の主張するように著名な商標であるとしても、本件商標と引用商標とは、以下のとおり、称呼、観念及び外観のいずれにおいても近似するものとは到底いえず、互いに紛れるおそれのある類似の商標ということはできない。

(1)本件商標と引用商標との非類似性について

ア 称呼上の相違

(ア)本件商標から生ずる「アンドロイドール」の称呼と引用商標から生ずる「アンドロイド」の称呼とを比較すると、両称呼の差は、語尾における「ー(長音)」と「ル」の音の有無にあるところ、両称呼は、全体で6音ないし8音という短い音構成からなり、その中での2音もの相違は非常に顕著であって、称呼全体への影響は決して小さいものとはいえないから、本件商標と引用商標のそれぞれを一連に称呼した場合、音調、音感が著しく異なり、両称呼は、十分に聴別し得るものと考える。

したがって、上記音の差異をわずかな差異とし、語尾音であることなどを理由に不明確に発音されるとする請求人の主張は、妥当とはいえない。

(イ)本件商標「アンドロイドール」は、日本人にも古くから親しまれた英単語「アンドロイド(android)」(人造人間等の意)の語及び「ドール(doll)」(人形の意)の語を組み合わせた一種の造語として容易に認識されると考えられ、その意味合い(いわば「人造人間のような人形」等)のユニークさや面白さから、単なる「アンドロイド」(人造人間)の語との違いが印象付けられ、むしろ「ドール」部分ははっきりと強調されて発音されることから、語尾の「ル」まで明確に発音されるものである。

また、「アンドロイドール」の称呼は、称呼全体での発音のしやすさから、「アンドロイ」の「イ」の音の終わりの部分でわずかに詰まってから、「ドール」とはっきりと称呼されるので、「ド」を伴う長音(ー)と語尾の「ル」の音は、明瞭に発音されるとみるのが自然である。

さらに、本件商標を称呼する場合、上記のとおり、「イ」の部分でわずかに詰まるものの、本件商標全体の文字構成が同種、同大の片仮名で一連に「アンドロイドール」と書した外観からなるため、本件商標は、語頭の「ア」から語尾の「ル」まで分離されることなく、その全体をもって「アンドロイドール」と一気一連に発音されるものであって、殊更に「アンドロイド」の部分だけが強調されて称呼されることもない。

したがって、本件商標と引用商標との称呼上の相違点である「ー(長音)」及び「ル」の音の有無について、明確に聴取し難く、その差異は一層薄れがちなどとする請求人の主張は、妥当とはいえず、本件商標と引用商標とは、称呼上、非類似である。

イ 観念上の相違

請求人は、引用商標に係る「アンドロイド(ANDROID)」の文字が請求人に係るスマートホン・タブレット型端末向けの実行環境の意味合いを表す外来語として国語辞典に掲載されていることなどを根拠に、引用商標は、上記実行環境に関連する商品であるとの観念が生じるとした上で、本件商標の構成中の「アンドロイド」の文字部分からも同様の観念が想起されると主張する。

しかしながら、引用商標から上記意味合いが看取される場合があるとしても、そもそも「アンドロイド」の文字は、「人造人間」といった意味合いの言葉として日本人に馴染みのあるものであるから、常に必ず請求人と関連付けて理解されるわけではない。

また、本件商標「アンドロイドール」は、その構成全体として、一つの造語であり、上記したように、本件商標から「アンドロイド」の文字部分だけを抽出して認識すべき事情もない。

仮に、本件商標から何らかの意味合いが想起されるとすれば、いわば「人造人間のような人形」などといった、ユニークかつ面白みのあるまとまった特徴的な意味合いが認識されるものである。

よって、本件商標と引用商標とは、観念上、全く異なるものであり、非類似である。

ウ 外観上の相違

本件商標「アンドロイドール」と引用商標1「アンドロイド」及び引用商標2「ANDROID」とは、その文字数や文字種において顕著に相違することは明らかであり、両商標が、外観上、非類似であることはいうまでもない。

エ 過去の特許庁の判断について

上記被請求人の主張が妥当であることは、「glassco」と「GLASCOL/グラスコール」とが非類似と判断された例(乙第1号証)のほか、「○○○○ール」と「○○○○ー」との非類似例が枚挙に暇がないなど、過去の特許庁の判断例、併存登録例(乙第2号証ないし乙第41号証)からしても明白である。

特に、商標「MAXIDOR/マキシドール」(乙第2号証)と「MAXIDO」(乙第3号証)のように、「○○○ドール」の称呼と「○○○ド」(又は「○○○ドー」)の称呼とが相互に非類似と判断されていることからすれば、本件商標と引用商標も非類似と判断されるべきである。

(2)小括

以上のとおり、本件商標と引用商標とが類似しないことは明らかであり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとの請求人の主張が失当であることは、明らかである。

2 商標法第4条第1項第15号について

そもそも「アンドロイド」は、古くから知られた既成語であって、請求人の創作に係るものなどでは決してなく、仮に請求人に関係する標章として広く知られているとしても、ほかの文字と組み合わせた場合にまで、「アンドロイド」の部分だけが浮かび上がるようなものでは全くない。

既に述べたとおり、本件商標の語尾にある「ー(長音)」及び「ル」の音が殊更に不明瞭に発音されるべき特別な事情はなく、「アンドロイドール」と語尾の「ル」まではっきりと発音されるものであって、本件商標の称呼と引用商標の称呼とは、明確に異なるものである。

また、本件商標は、既述したように造語であるが、多くの日本人に馴染みのある「アンドロイド」の語と「ドール」の語とを結合し、連続する「ド」の一方を省いてなるものと容易に認識でき、その構成全体として、いわば「人造人間のような人形」などといったユニークかつ面白みのあるまとまった意味合いを認識できるものである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、観念上も非類似であることは明らかであり、密接な牽連性がないとして本件商標の「アンドロイド」部分を抽出して捉えようとする請求人の上記主張は、何ら根拠がない。

さらに、引用商標1(審判注 正しくは「引用商標2」と思われる。)との比較で、外観上、本件商標の語尾の「ー(長音)」及び「ル」の文字を無視すべき理由も全くない。

してみれば、本件商標と引用商標とは、何ら類似するものでなく、相紛れるものではない。

そして、仮に、請求人のいうように、引用商標の著名性、取引者や需要者の共通性に加え、請求人の事業の多角化の可能性(もっとも、引用商標は、請求人のハウスマークではないから、多角化に際してこれを使用する蓋然性も不明である。)などがあったとしても、本件商標は、これに接する取引者、需要者に対して、引用商標を連想させ、商品の出所について誤認を生じさせるものに該当するとは到底考えられないし、また、当然ながら不当に需要者等を誘導するためのものでもない。

したがって、本件商標と引用商標とは、全く異なるものであり、引用商標の有する顧客吸引力へのただ乗り(フリーライド)やその稀釈化(ダイリュージョン)をするものではないから、請求人の主張には全く理由がない。

3 商標法第4条第1項第19号について

本件商標と引用商標とは、既に述べたとおり、全く類似するものでなく、相紛れるものとは到底考えられない。

また、本件商標と引用商標とが非類似の商標である以上、本件商標は、当然ながら、請求人の業務上の信用にただ乗りするものでもないし、その価値を稀釈化するものでもない。

したがって、被請求人が引用商標の存在やその周知性を知りながら本件商標を使用したとしても何ら問題はなく、本件商標が不正の目的をもって使用されるものとして商標法第4条第1項第19号に該当するとする請求人の主張は、失当である。

4 まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当しない。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

本件商標は、前記第1のとおり、「アンドロイドール」の片仮名を標準文字で表してなるところ、該文字は、同じ書体及び大きさをもって、等間隔にまとまりよく一体的に表されているものであって、視覚的に一連一体のものとして看取、把握され得るものである。

また、本件商標の構成文字全体から生ずる「アンドロイドール」の称呼も、無理なく一気に称呼し得るものといえる。

そうとすると、本件商標は、その構成全体をもって、一体不可分のものとして認識されるとみるのが相当であるから、その構成中の「アンドロイド」の文字部分のみが分離、抽出されて認識されることはないというべきである。

そして、本件商標を構成する「アンドロイドール」の文字は、辞書類に掲載されている既成の語とは認められず、また、特定の意味合いを有する語として慣れ親しまれているものともいえないから、これより、特定の観念を生じることはない。

してみれば、本件商標は、その構成文字に相応する「アンドロイドール」の称呼を生じ、特定の観念を生ずることのないものである。

(2)引用商標

引用商標1及び引用商標2は、それぞれ前記第2のとおり、「ANDROID」の欧文字又は「アンドロイド」の片仮名を標準文字で表してなるところ、これらの文字は、いずれも「人間型ロボット」程の意味を有する英語又は外来語として、一般に広く慣れ親しまれたもの(「小学館ランダムハウス英和大辞典」(株式会社小学館発行)、「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店発行)、「コンサイスカタカナ語辞典第4版」(株式会社三省堂発行))である。

したがって、引用商標は、その構成文字に相応して、「アンドロイド」の称呼及び「人間型ロボット」の観念を生ずるものである。

(3)本件商標と引用商標との類否について

ア 外観

本件商標は、「アンドロイドール」の片仮名を標準文字で表してなるのに対し、引用商標1は、「ANDROID」の欧文字を標準文字で表してなるものであるから、両商標は、その構成文字の種類において明らかに相違し、外観上、相紛れるおそれはない。

また、引用商標2は、「アンドロイド」の片仮名を標準文字で表してなるところ、これを本件商標と比較した場合、両商標は、語尾における長音「ー」と「ル」の文字の有無に差異があるものであって、6文字又は8文字という比較的短い文字構成からなる両商標において、その差異は容易に看取、把握されるといえるから、互いに見誤るおそれはない。

イ 称呼

本件商標から生ずる「アンドロイドール」の称呼と引用商標から生ずる「アンドロイド」の称呼とを比較すると、両称呼は、末尾における「ド」の音に続く長音及び「ル」の音の有無に差異があるものであるところ、該長音は、響きの強い有声破裂音「ド」の音の母音「o」を1拍分延ばして長母音化するものであり、また、これに続く「ル」の音も、有声の弾音であって明瞭に聴取され得るものであることからすれば、これらの音の有無が称呼全体に及ぼす影響は決して少なくなく、それぞれを一連に称呼するときは、語感、語調が相違し、互いに聞き誤るおそれはないというべきである。

ウ 観念

本件商標は特定の観念を生ずることのないものであるのに対し、引用商標は「人間型ロボット」の観念を生ずるものであるから、観念上、両商標を比較することはできない。

(4)小括

本件商標と引用商標とは、上記アないしウのとおり、外観及び称呼において相紛れるおそれはなく、また、観念においては比較することのできないものであるから、これらを総合勘案すれば、両商標は、非類似の商標というべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)引用商標の周知・著名性について

ア 申立人の提出に係る甲各号証によれば、引用商標の周知・著名性について、以下の事実が認められる。

(ア)引用商標は、2007年11月5日に、申立人が国内外の携帯電話メーカーや通信事業者など33社と共同で発表したLinuxベースのOS(Operating System)、ミドルウェア、ユーザーインターフェース、メーラーやWebブラウザ、カレンダーといった基本アプリケーションを含んだ携帯電話向けプラットフォームの総称であって、その開発は、上記申立人及び33社がOHA(Open Handset Alliance)を設立して進めてきたものである。

また、申立人は、2007年11月12日に、上記プラットフォームのプログラミングツールをダウンロード公開するとともに、これを利用した携帯電話用のソフトウェア作成についてのコンテスト開催を発表し、翌年にその実施をするなどして、開発促進を図った。

(イ)上記プラットフォームは、携帯電話メーカーやソフトウェア開発者がその開発環境を無償で利用できることから、世界中において広く注目を集め、我が国においても多数の新聞や雑誌等に取り上げられた。

(ウ)2009年(平成21年)11月には、国内の携帯電話メーカーがOSに「Android(アンドロイド)」を採用した高機能携帯電話(スマートフォン)の発売を発表し、その後、該スマートフォンは、市場への浸透が進み、近時においては、競合他社のOS「iOS」を採用するスマートフォンと人気を二分するまでになり、そのことが多数の新聞や雑誌等に取り上げられた。

イ 上記アにおいて認定した事実によれば、引用商標は、申立人等が開発した携帯電話向けのプラットフォームの総称として、本件商標の登録出願時(平成23年3月9日)において既に、その需要者の間で広く認識されていたといい得るものであって、その状態は、本件商標の登録査定時(同年8月10日)においても継続していたものと認められる。

(2)出所の混同を生ずるおそれについて

本件商標と引用商標とは、上記1のとおり、非類似の商標であって、十分に区別し得る別異の商標というべきものである。

また、引用商標は、上記(1)のとおり、申立人等の開発した携帯電話向けのプラットフォームの総称として、本件商標の登録出願時において既に、その需要者の間で広く認識されていたものと認められるものの、引用商標を構成する「ANDROID」及び「アンドロイド」の各文字は、本来、いずれも「人間型ロボット」程の意味を有する英語又は外来語として、一般に広く慣れ親しまれたものである。

以上を踏まえれば、本件商標は、これに接する需要者をして、直ちに引用商標を連想、想起するとまではいえないものとみるのが相当であり、ほかに商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき特段の事情を見いだすこともできない。

してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する需要者において、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるということはできないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

3 商標法第4条第1項第19号該当性について

本件商標と引用商標とが互いに紛れるおそれのない非類似の商標であることは、上記1のとおりである。

また、請求人の提出に係る証拠のいずれを見ても、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る又は他人の著名商標に蓄積された信用若しくは名声にフリーライドする等の不正の目的をもって使用すると認めるに足る事実は見いだすことができない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとは認められないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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