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Trademark Appeal Case

微細な差異と図形類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2013−890042(T2013−890042/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5208283号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成20年6月27日に登録出願、第25類「帽子,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」を指定商品として、同21年1月9日に登録査定、同年2月27日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標

請求人が引用する登録第5253962号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成18年8月8日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」ほか、第3類、第9類、第18類及び第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として同21年8月7日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張の要点

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。

1 無効理由の要点

本件商標は、引用商標と類似する商標であって、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似である。

そして、引用商標の登録出願日は、本件商標の登録出願日の前である。

したがって、本件商標は、商標法第8条第1項に違反して登録されている。

2 詳細な無効理由

(1)本件商標及び引用商標の類否

本件商標は、男性の左側からみた胸部より上方を黒一色で単純に塗りつぶしたシルエット状の図形からなるものである。

一方、引用商標は、商標中に極めて大きく目立つように、男性の左側からみた胸部より上方を黒一色で単純に塗りつぶしてなるシルエット状の図形を顕著に有するものである。

ア 共通点

以上のとおり、両商標の基本構成は、男性の左側からみた胸部より上方を黒一色で単純に塗りつぶしてシルエット状に表したものということができる。

さらに、具体的にみると、該シルエットにおける頭部の形状及び鼻や口といった顔部分の形状などについても、非常に近似したものである。人物の横顔をシルエット状に描く際に、最もその形状を特徴付けるのは、頭髪などの形状、鼻及び口の凹凸の具合であるが、両商標の頭部の形状は、頭髪がほぼ無い頭部を描いたとおぼしき丸みを帯びた形状であり、また、鼻の凸具合及び口部分の凹凸の程度も非常に近似している。

イ 差異点

極めて子細に観察すれば、本件商標には、顎部分に髭のようなシルエットが確認できるが、引用商標には、それが確認できない。

両商標は、この髭の有無について相違している。

(2)本件商標及び引用商標の指定商品に属する分野

本件商標及び引用商標に係る指定商品は、それぞれ第25類の被服等の商品である。特に、本件商標は、主に「帽子」について使用されている実情がある(甲第5号証)。

そして、帽子を含む被服等の分野においては、商標は、タグや商品の一部にワンポイントとして小さく付されるのが一般的であって、現に、甲第5号証に挙げた例をみても、小さくワンポイントとして、本件商標が使用されている。

本件商標に係る商品にあっては、高額な高級ブランド商品の購入にあたる場合に特にブランドロゴに注意を払って購入の要否を決定するという事情とは違い、需要者は、該商品に付された商標について、そこまで子細に注意を払って確認することはない。

(3)第25類における登録例

甲第6号証は、特許電子図書館において、「頭部、上半身(男性)」又は「男性の影又はシルエット」に係るウィーン分類について、第25類を指定して行った検索結果である。

これらの例からわかるように、「男性の胸部から上方を単色で単純に塗りつぶした図形」からなる登録例は、極めて少なく、帽子などの特徴を有するものを除けば、引用商標の登録出願前において、ほぼ皆無といっても過言ではない。

よって、需要者に、「男性の胸部から上方を単色で単純に塗りつぶした図形」は、非常に斬新な印象を与え、この点において強く印象付けられる。

(4)総括

両商標の差異点は、該シルエットの顎の部分に髭のような形状の差異が存在するが、該差異点は、該シルエット全体に占める割合としては、極めて微細であり、両商標の指定商品の分野においては、高級、有名ブランド品に係るような特段の事情がない限り、需要者は、商標について、子細に観察して購入の要否を決するものではない。

そうとすれば、両商標における差異点である部分は、もともとその大きさが小さく微細なことも手伝って、軽々と埋没してしまう程度のものであり、需要者に何ら印象を残すものではない。

さらに、当該指定商品の属する分野においては、「男性の左側からの胸部から上方を単色で単純に塗りつぶしてシルエット状に描いた」という商標は、需要者にとって、非常に斬新であり、強く印象付けられるものであるから、特に注目されるものである。

このように、両商標は、「男性の左側からの胸部から上方を単色で単純に塗りつぶしてシルエット状に描いた」という基本的な構成において、その斬新さも手伝って、需要者に強く印象付けられるものであり、さらに具体的な部分に着目しても、頭部の形状、鼻、口などの凹凸形状といった、横顔のシルエットを特に特徴付ける部分においても近似しているものであるから、両商標は、需要者に共通する印象を与えるものである。

3 答弁に対する弁駁

(1)本件商標と引用商標とは、詳細に観察すれば、差異が存在する。

しかしながら、図形商標を観察した場合、本件商標に接する需要者は、まず、「黒塗りのシルエットであること」、「男性であること」、「横顔であること」、次いで、「帽子等、何か身に着けているか」、「髪型はどうか」というように、商標の中でも目に付きやすい大きな特徴から捉えていくものである。

被請求人が主張するように、商標に接した需要者が、初めから「頭頂部は、後頭部側が膨出した前後非対称な半卵形状である」などという、詳細なポイントに注目することは決してない。

(2)被請求人は、基本的構成に関して、「両商標に係る図形の概念的構成を抽象的にいい表したものにすぎないこと」、「引用商標が図形と文字との結合商標であるということ」及び「シルエットは人物を表現した伝統的なシルエットとして極めてありふれたものであること」を理由として、「男性の左側からの胸部から上方を単色(黒色)で単純に塗りつぶしてシルエット状に描いた」という点を基本的構成ということはできない旨主張する。

しかしながら、両商標は、「概念的構成を抽象的にいい表したもの」であっても、それをもって、商標の基本的構成としてはならない理由などなく、商標の基本的構成となることを否定することにはならない。特に、本件のような比較的単純な図形同士の類否の場合、その基本的構成は、ある程度抽象的にならざるを得ない。

また、「引用商標が図形と文字との結合商標であるということ」については、該文字部分は、引用商標の上部に、図形と比較して極めて小さく、また、該図形とは、はっきりと分離された状態で表されているものであり、このような場合、商標の類否を検討するにあたって、図形同士を比較検討するのは、当然のことである。

さらに、「シルエットは人物を表現した伝統的なシルエットとして極めてありふれたものであること」について、被請求人は、乙第1号証を挙げたうえで、両者の類否判断にあたって重視すべきでない旨述べる。

しかしながら、本件は、あくまで「商標の類否」であり、「シルエットという表現方法そのものが古くから知られている、ありふれている」ということは、商標の類否判断には、関係がない。また、ありふれたモチーフ、表現方法であっても、それが「商標として使用されている事実及びその頻度等」が、重視されるべきであり、「商標として使用されている例がない、若しくはその例が極めて少ない」のであれば、ありふれたモチーフ、表現方法であっても、需要者に強い印象を与えるのは、想像に難くない。

(3)基本的構成について

引用商標の基本的構成は、あくまで、「男性の左側からの胸部から上方を単色で単純に塗りつぶしたシルエット状に描いた」という点であって、本件商標及び引用商標は、ともに特徴的な頭髪のないスキンヘッドのシルエットからなり、間違いなく男性のシルエットであると一瞥で認識されるものであり、「男性の左側からの胸部から上方を単色で単純に塗りつぶしたシルエット状に描いた」という基本的構成が揃うのは、当該被服等の分野の商標においては、本件商標と引用商標しか発見できない。

また、被請求人が提出する乙第2号証ないし乙第4号証に挙げる例は、いずれも、「パイプをくわえている」、「帽子をかぶっている」若しくは「特徴的な髪型をしている」等の一見してわかりやすい特徴を図形中に大きく、目立つように配してなるから、本件の事例とはあまりに乖離する点が多く、適当ではない。

(4)指定商品の分野、取引の実情等の観点から

当該被服等の分野における商標は、タグや下げ札に比較的小さく付されることが多い。そして、本件についてみても、特に被請求人の主力商品である帽子等については、商品そのものの大きさが小さく、その傾向はもっと強い。

そのように小さく付された商標について、被請求人が挙げているような具体的な特徴にまで需要者が詳細に観察するとするのは疑問である。本件における商標にあっては、需要者は、被請求人が主張する程度のレベルまで掘り下げた詳細な特徴及びそれらの組合せから生ずる印象ではなく、まず、一見して分かりやすく捉えやすい基本的構成及びこの基本的構成を特徴付けるような大きな特徴から強い印象を受けるものである。

上述したとおり、需要者は、まず「黒塗りのシルエットであること」、「男性のシルエット(スキンヘッド若しくは坊主頭であるため。)であること」若しくは「帽子その他の身飾品は一切ない」等の、すぐに分かりやすい特徴から捉えられていくものであって、まさに、こういったすぐに需要者の目を引くポイントが、引用商標の基本的構成であり、類否判断における特徴的部分である。

(5)引用商標の上記基本的構成は、該商標の属する分野においては、珍しく、需要者の目を引き、注目されるポイントであって、本件においては、需要者の目を引く、この特徴的部分が共通するものである。また、このような基本的特徴を特徴付ける「頭髪(髪型)」や「シルエットに表れる鼻や口といった要素やその具合」も共通するものである。

その一方で、両商標における差異は、極めて詳細に観察しなければ、需要者に印象を残さない程度のものにすぎなく、このような差異が需要者に与える影響は、一見して明らかで強い印象を需要者に与える共通部分と比較して小さいものである。

4 むすび

以上のとおり、本件商標及び引用商標は、極めて近似した類似の商標であり、引用商標の登録出願日は、本件商標の登録出願日の前であって、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に違反するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録が無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第16号証を提出している。

1 本件商標について

本件商標は、男性の左側から見た胸部より上方を、縦横比約1対1のシルエット状図形で表してなり、具体的構成として、頭部は、(あ)頭頂部は、後頭部側が膨出した前後非対称な半卵形状であり、(い)額は、眉のやや上部が前方へ出っ張っており、(う)鼻筋は、鼻先が鷲の嘴のように曲がっているいわゆる鷲鼻であり、(え)唇は、上唇と下唇が共に厚くくっきりと表されており、(お)顎は、前方へ大きく突き出ると共に、(か)顎下に下方に伸びる髭を蓄えており、(き)前記(い)〜(か)に至るフェイスラインは起伏に富んだ形状を呈しており、頭部全体は丸みのあるがっしりとした形状を呈している。

そして、胸部は、(A)正面が斜め下方45度で傾斜して下部がフェイスラインと同じ垂直面にまで達すると共に、(B)背面が後頭部よりも後方へ円弧状に膨出してなり、胸部全体は頭部の約1.2倍の幅を有するがっしりとした形状を呈している。

これに対して、頚部はほとんど目立たないほどに太く短く形成されているが、これにより一層、がっしりとした体格の男性を印象付けるものとなっている。

以上より、本件商標は、看者に「髭を蓄えた起伏に富んだメリハリの利いた顔のがっしりとした体格の男性のシルエット状図形」ほどの観念を生じさせるものである。

他方、本件商標は、その構成上、特定の称呼は生じないものである。

2 引用商標について

引用商標は、同一書体でまとまりよく書してなる「GIACOMO VALENTINI」の文字部分と、その下方に配された、男性の左側から見た胸部より上方を、縦横比約8対5のシルエット状図形とからなり、具体的構成として、頭部は、(ア)頭頂部は、前後対称な半楕円形状であり、(イ)額は、後方へ反り上がっており、(ウ)鼻筋は、鼻先がツンと上を向いているいわゆるアップノーズであり、(エ)唇は、下唇のみが薄くうっすらと表されており、(オ)顎は、小さく引っ込んでおり、(カ)上記(イ)〜(オ)に至るフェイスラインは起伏に乏しい形状を呈しており、頭部全体は痩せ型でのっぺりとした形状を呈している。

そして、胸部は、(a)顎下から頭部を経由して胸に至る正面が後方へ大きく凹んだ略円弧状を呈すると共に、(b)背面は後頭部よりも後方が垂直に寸断されてなり、胸部全体は高さ、前後幅共に頭部の約0.7倍でほっそりとした形状を呈している。

以上より、引用商標の図形部分は、看者に「起伏に乏しいのっぺりとした顔の痩せ型の男性のシルエット状図形」ほどの観念を生じさせるものである。

さらに、引用商標は、「GIACOMO VALENTINI」の文字部分よりイタリアの特定人の名称を表した如き観念を生じさせるので、全体として「起伏に乏しいのっぺりとした顔の痩せ型のイタリア人男性のシルエット状図形」ほどの観念を生じさせるものである。

他方、「GIACOMO VALENTINI」の文字部分は、「ジャコモヴァレンティーニ」と長音を含めて9音とやや冗長であるものの、よどみなく一連に称呼し得るものであり、引用商標からは「ジャコモヴァレンティーニ」の称呼を生ずるものである。

3 本件商標と引用商標との類否

(1)請求人は、両商標の基本的構成は、「男性の左側からの胸部から上方を単色で単純に塗りつぶしてシルエット状に描いたものである」と述べている。

しかし、当該表現は、本件商標及び引用商標の図形部分の概念的構成を抽象的にいい表したものにすぎず、これをもって両者の基本的構成とすることはできない。

しかも、引用商標は、一瞥でイタリアの特定人の名称と判別できる「GIACOMO VALENTINI」の文字部分と痩せ型のイタリア人男性を想起させる図形部分との結合商標であり、本件商標と基本的構成を共通にするものではない。

また、当該表現によりいい表されるシルエットは、人物を表現した伝統的なシルエットとして極ありふれたものであることからすると(乙第1号証)、両者の概念的構成を当該表現によりいい表し得ることを、両者の類否を判断するにあたって重視すべきではない。

(2)請求人は、両商標のシルエットは、「頭髪等の形状及び鼻及び口の凹凸の具合などといった、横顔のシルエットを特に特徴付ける各要素についても、非常に近似したもの」であり、「顎の部分に髭の様な形状の差異が存在するとしても、当該差異点は、当該シルエット全体に占める割合としては極めて微差である」と述べている。

しかし、本件商標は、前記(あ)〜(き)及び前記(A)〜(B)の特徴点が有機的に組み合わさることにより、看者に「髭を蓄えた起伏に富んだメリハリの利いた顔のがっしりとした体格の男性のシルエット状図形」の印象を与えるのに対して、引用商標は、前記(ア)〜(カ)及び前記(a)〜(b)の特徴点が有機的に組み合わさることにより、看者に「起伏に乏しいのっぺりとした顔の痩せ型の男性のシルエット状図形」の印象を与えるものであり、両者は全く別異の印象を看者に与えるものであり、両商標のシルエットが近似するとはいえない。

また、請求人が両者の差異点と認める本件商標の顎下に存在する豊かな髭は、これを目にした者に「髭を蓄えた起伏に富んだメリハリの利いた顔のがっしりとした体格の男性」をより強く印象づける作用をもたらすものであり、かかる髭の有無を「シルエット全体に占める割合としては極めて微差である」ということはできない。

(3)請求人は、「被服等の分野においては、高級・有名ブランド品に係るような特段の事情がない限り、需要者は、それ程ブランドロゴ等の商標について、それ程子細に観察して購入の要否を決するものではない」と述べている。

しかし、被服等を取り扱う業界においては、需要者は、デパート等の店頭で自ら商品を手に取り購入するものであり、タグ等に比較的小さく表示された商標であっても至近距離で目にすることとなる。そのため、需要者は、商品の購入の際には価格の確認におけるのと同じくらいの注意を商標の外観についても払うのが通常であり、そうとすると、前記の如く全く別異の印象を与える本件商標と引用商標について需要者が誤認混同を生じるおそれはないものである。

(4)請求人は、多数の登録例を引用して、「当該指定商品の属する分野においては、『男性の左側からの胸部から上方を単色で単純に塗りつぶしてシルエット状に描いた』という商標自体の数が極めて少ない」ので、このような商標は、「需要者にとって非常に斬新であり、強く印象付けられるものである」と述べている。

しかし、需要者は、多数の登録商標があることを認識して商標の類否を判断するものではない。しかも、前述のとおり、このようなシルエット自体は人物を表現した伝統的なシルエットとしては極ありふれたものであり(乙第1号証)、需要者にとって特に印象に残るものではない。さらには、第25類を指定商品とするものに限定しても、このようなシルエット状の登録商標が複数存在しており(乙第2号証ないし乙第4号証)、このようなシルエット状の商標が「需要者にとって非常に斬新であり、強く印象付けられるもの」とまではいえない。

なお、請求人は、シルエット状の商標の類否判断において、帽子やパイプの有無を「極めて特徴的な要素」として過剰に重視するきらいがあるが、これらは頭部の輪郭や顎髪の有無等と同様にその人物の特徴、雰囲気等を創出する一要素であり、商標の類否判断における一考慮要素である。

(5)以上のとおりであり、本件商標と引用商標とは、外観において前記のとおりの差異点を有することにより、互いに相紛れるおそれのない非類似のものである。

また、本件商標は、特定の称呼を生じないのに対し、引用商標は、「ジヤコモヴァレンティーニ」の称呼を生ずることから、両商標は、称呼において互いに相紛れるおそれのない非類似のものである。

さらに、本件商標は、「髭を蓄えた起伏に富んだメリハリの利いた顔のがっしりとした体格の男性のシルエット状図形」ほどの観念を生じさせるのに対し、引用商標は、「起伏に乏しいのっぺりとした顔の痩せ型のイタリア人男性のシルエット状図形」ほどの観念を生じさせるものであり、両商標は、観念において互いに相紛れるおそれのない非類似のものである。

以上より、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれについても相紛れるおそれのない非類似の商標である。

4 本件商標の使用実績について

被請求人は、1997年にバッグや帽子のOEM生産を始めて以来、指定商品について本件商標を継続して使用している。乙第5号証ないし乙第7号証は、被請求人がインドネシアの帽子製造業者PT.HINI DAIKI(乙第8号証)に対して商品の製造を依頼する際に発行したものであり、乙第5号証は、2002年発行の量産仕様書兼発注書、乙第6号証は、2004年発行の指示書、乙第7号証は、2008年発行のサンプル依頼書である。これにより、被請求人が引用商標の出願前から本件商標の使用を開始しており、その後も継続して使用してきたことがわかる。

その後も、大丸梅田店、天満屋福山店及び高松店、福屋八丁堀本店及び広島駅前店、三越恵比寿店等に被請求人ブランド専門の売り場スペースを設けると共に、展示会への出品も積極的に行うなど(乙第9号証)、本件商標の周知に努めた結果、本件商標を付した商品は「2008年度版注目のヒット大賞!」に選出されるに至った(乙第10号証)。

さらに、各種専門雑誌への掲載(乙第11号証ないし乙第14号証)やテレビ番組を通じた宣伝活動(乙第15号証及び乙第16号証)も精力的に行い、本件商標の使用を継続している。

被請求人は、今後も本件商標を大切に使用し続け、信用の蓄積に努める所存である。

以上のとおり、本件商標は、引用商標の出願前から、今日まで継続して使用されており、保護されるべき信用が化体しているものである。

5 総括

以上より、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものではなく、同法第46条の規定に該当しないものである。

第5 当審の判断

1 本件商標について

本件商標は、前記第1のとおり、男性の左側から見た胸部より上方を、シルエット状図形で表してなり、一見して彫りの深いフェイスラインを有し、顎下に下方に伸びる髭を蓄えており、その頚部はほとんど目立たないほどに太く短く形成されていることから、がっしりとした体格の男性を印象付けるものとなっている。

そうすると、本件商標は、「髭を蓄えた彫りの深い顔のがっしりとした体格の男性のシルエット状図形」ほどの外観を看取させるものというべきである。

そして、本件商標は、その構成上、特定の称呼及び観念は生じないものである。

2 引用商標について

引用商標は、前記第2のとおり、同一書体でまとまりよく書してなる「GIACOMO VALENTINI」の文字部分と、その下方に配された、男性の左側から見た胸部より上方のシルエット状図形との組合せからなり、図形部分は、一見して凹凸の少ないフェイスラインを有し、首の長いほっそりとした男性を印象付けるものとなっている。

そうすると、引用商標の図形部分は、「凹凸の少ないフェイスラインを有し、首の長いほっそりとした男性のシルエット状図形」ほどの外観を看取させるものというべきである。

そして、「GIACOMO VALENTINI」の文字部分は、「ジャコモヴァレンティーニ」と長音を含めて9音とやや冗長であるものの、よどみなく一連に称呼し得るものであり、引用商標からは、「ジャコモヴァレンティーニ」の称呼を生じるものである。

3 本件商標と引用商標との類否

(1)本件商標は、前記のとおり、「髭を蓄えた彫りの深い顔のがっしりとした体格の男性のシルエット状図形」ほどの外観を看取させるのに対して、引用商標は、その構成中の図形部分について、「凹凸の少ないフェイスラインを有し、首の長いほっそりとした男性のシルエット状図形」ほどの外観を看取させるものであり、両者は、男性のシルエットを表したものという点で共通しているとしても、その表し方において全く別異の印象を看者に与えるものといい得るから、両者のシルエット状図形が類似するとはいえない上に、引用商標においては、文字部分を有していることから、両商標は、全体的印象を全く異にし、外観において、紛れるおそれはないというべきである。

また、引用商標は、「GIACOMO VALENTINI」の文字部分を有するものであるから、該文字に相応して「ジャコモヴァレンティーニ」の称呼を生じるものであり、本件商標からは、特定の称呼及び観念を生じるとはいい得ないから、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において類似するとはいえない。

してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において相違し、称呼及び観念において類似する商標とはいえないから、両商標は非類似の商標である。(2)請求人の主張について

請求人は、被服等の分野において使用される商標は、タグや下げ札に比較的小さく付されることが多いため、需要者が詳細に観察するとはいえない旨主張している。

しかしながら、被服等の分野において、商標が比較的小さく付されていることがあるとしても、上記のとおり、外観上その構成において顕著な差異を有する両商標の図形部分を需要者において見誤るおそれがあるとはいい難く、被服等の商品の取引者、需要者は、全体の特徴をもって識別して取引に当たるというのが相当であり、両商標は、全体的印象を全く異にするものであるから、両商標を被服等の分野において、時と処を異にして観察したとしても、外観において紛れるおそれはないというべきである。

4 指定商品の類似性について

本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品中、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」と同一又は類似の商品といい得るものである。

5 登録出願日について

本件商標の登録出願日は、平成20年6月27日であり、引用商標の登録出願日は、同18年8月8日であるから、引用商標の登録出願日は、本件商標の登録出願日の前である。

6 むすび

以上のとおり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であって、引用商標の登録出願日が本件商標の登録出願日より前のものであるとしても、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の登録は、商標法第8条第1項に違反してされたものではなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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