Trademark Appeal Case
「ボール」の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900255(T2013−900255/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5577535号商標(以下「本件商標」という。)は、「ボール」の片仮名を標準文字で表してなり、平成24年6月4日に登録出願、第29類「食肉,肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,納豆,カレー・シチュー又はスープのもと,肉又は肉製品を主材とする惣菜,野菜又は野菜の加工品を主材とする惣菜」を指定商品として、同25年3月22日に登録査定、同年4月26日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
本件の指定商品においては、1960年代頃から、ミンチ肉やつなぎを練り合わせて球状に成形した「ミートボール」が子供の大好きなおかずとしてよく知られている。「肉などを球状に成形したもの」として広く認識され使用されているわけであるから、この場合、「ボール」は、「球状に成型したもの」という認識である。
そして、近年では、加工食品における「ボール」は「ミートボール」のみに限らず、様々な素材において「○○ボール」と称し販売されている(合鴨つくねボール,いわしボール,フィッシュボール,魚ボール,すり身ボール,ささみボール等;甲2〜甲11)。
「ボール」という商標に一個人の独占権を与えることは、あまりに大きな権利を与えることであり、これら品質を示す「原材料名+ボール」という構成からなる表示を他人が行うことを躊躇させるものであって、到底看過されるべきではない。「○○ボール」の構成の商標に係る登録出願が拒絶になっている事例は、過去に極めて多数存在する(甲12)。
近年、ネット上で多数開示されている企業のホームページや料理レシピなどにおいて、原材料をこねて球状のつくねやハンバーグなどを作ることを示すときに、かつてよく使われていた「球状に丸める」よりは「ボール状に丸める」あるいは単に「ボールにする」というような言い方のほうが一般的になっているという事実が存在する(甲13〜甲17)。
したがって、「肉の加工品、加工水産物、あるいはこれらを使用した惣菜、カレー・シチュー又はスープのもと」等の本件指定商品において、「ボール」と表示されれば、これは形状を示す語であるにすぎないことは明白である。
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきものである。
第3 取消理由通知
当審において、平成26年6月13日付けで、商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
1 「ボール」の語について
(1)申立人の提出に係る証拠及び当審における職権調査によれば、以下の事実が認められる。
ア 「ボール」の語の意味等について
(ア)「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店発行)によれば、「ボール」の見出し語で、「【ball】(1)ゴムまたは革などで作ったまり。球。また、球状のもの。(2)野球で、ストライクにならない投球。」との記載がある。
(イ)「新明解国語辞典第七版」(株式会社三省堂発行)によれば、「ボール」の見出し語で、「〔ball〕(1)たま。まり。(2)〔野球で〕ストライクにならない投球。」との記載がある。
(ウ)「大辞林第三版」(株式会社三省堂発行)によれば、「ボール」の見出し語で、「【ball】(1)球形のもの。球状のもの。(2)スポーツや遊戯に使う、ゴム・革などで作った丸いもの。まり。球。(3)野球で、打者に対する投球のうち、ストライク−ゾーンを通過せず、打者もバットを振らなかったもの。」との記載がある。
イ 加工食品業界における「ボール」の語に係る取引の実情について
(ア)「Amazon」のウェブページにおいて、「コックフーズ)合鴨つくねボール 500g」及び「商品の仕様 ・規格(内容量):500g(約45個入) ・1個の大きさ:Φ約2.5cm ・ケース入数:20入」の記載がある(甲2)。
(イ)「シュガーレディECストア」のウェブページにおいて、「合鴨つくねボール」及び「合鴨肉のつくね。鍋物、お吸い物にぴったりです。・・・【冷凍】250g(約23個)」の記載がある(甲3)。
(ウ)「らく食」のウェブページにおいて、「野菜つくねボール」の記載がある(甲4)。
(エ)「株式会社プレコフーズ」のウェブページにおいて、「プレコフーズのつくねボール」及び「国産鳥挽き肉と玉ねぎを原料にしたつくねです。」の記載がある(甲5)。
(オ)「共栄食品オンラインショップ」のウェブページにおいて、「紅茶鴨つくねボール《冷凍》」の記載がある(甲6)。
(カ)「株式会社サトー商会」のウェブページにおいて、「ミニフィッシュボール」及び「ミニいわしボール」の記載がある(甲7)。
(キ)「Amazon」のウェブページにおいて、「和光堂 グーグーキッチンBIG 魚ボールの寄せ鍋風 100g×6個」及び「商品の説明 原材料・成分 野菜(・・・)、じゃがいも、白身魚ボール[魚肉すり身(たら、ほっけ、砂糖)、たまねぎ、でん粉、パン粉、大豆たん白、なたね油、食塩]、しいたけ、・・・」の記載がある(甲8)。
(ク)「Amazon」のウェブページにおいて、「北風鮮魚 愛媛県産ハモすり身ボール(20g×50個)×2P」の記載がある(甲9)。
(ケ)「Amazon」のウェブページにおいて、「キューピー ユニットカロリーグルメきのことチキンボールのクリーム煮セット 440g」の記載がある(甲10)。
(コ)「健康生活マルシマオンラインショップ」のウェブページにおいて、「中華風野菜大豆ボール」及び「玉葱、キャベツを主に若干の卵白を用いて作った中華風のミートボール状植物たんぱく食品です。」の記載がある(甲11)。
(サ)「MEET A RECIPE/YOKOHAMA SOZOKAIWAI」のウェブページにおいて、「第5回今井かまぼこ」の「TODAY’S RECIPE」の表題の下、「さつま揚げの作り方を二代目のご主人が披露してくれた。タラやホッケ、サメなど約10種類の魚を丁寧に下ごしらえした魚のすり身を、熟練の手つきで一定の量とり、チーズを挟んでいく、<チーズ巻>だ。続いて<イカボール>。イカを混ぜたすり身を、ボール状に丸める。鮮やかな手さばきで、あっという間に同じ大きさのボールがたくさん並べられていく。」の記載がある(甲13)。
(シ)「babycom」のウェブページにおいて、「アミノ酸、カルシウム、DHAかまぼこの栄養の中身」の表題の下、「世界のすりみプロダクト」の項に、「ヨーロッパ/クネール(quenelle):鶏肉や子牛肉、魚肉、エビなどの肉に塩を入れてすりつぶし、・・・。これを絞り出し器やスプーンなどでボール状にして、茹でたり、・・・」、「マレイシア/魚ボール(Bebola ikan):白い外観の魚肉ボールで、・・・。ボール状に成形して茹でたり、スープにいれて食べます。」、「フィリッピン/魚ボール(Bola−bola):白身魚のすり身にコーンスターチ、ベーキングパウダーを加え、ボール状にして茹で、水切りしてから油で揚げます。」、「シンガポール/魚ボール(Hi−ei):・・・すり身に食塩1.5%、砂糖1.5%、コーンフラワー1.5%を加えてボール状にして茹でたもの。」、「タイ/魚ボール(Luk−chin Pla):魚のすり身に食塩2.5%と氷を混ぜて練り、ボール状にして茹でたもの。」及び「中国/魚団:すり身に塩、デンプンその他調味料などを入れて練り、ボール状にしてから茹でます。」の記載がある(甲14)。
(ス)「瀬戸内水産加工有限会社」のウェブページにおいて、「創業明治二十年、瀬戸内潮流が育んだ『味の波』を守り続ける瀬戸内水産有限会社です。ひとつひとつ職人が手作りで作った手にぎりちくわ・平ちくわ・ガス天・えび天・いか天・野菜ボール(サラダボール)・製造技術の研鑽と伝承を大切にしております。」の記載、そして、「野菜ボール(サラダボール)」の欄に商品写真の画像とともに「えび天、いか天、同様に新鮮なすり身に、キャベツ、玉ねぎ、にんじんを加えボール状に形を整えて油で揚げた天ぷらです。」の記載がある(甲15)。
(セ)「BIO商品の紹介」のウェブページにおいて、販売者が「四宮蒲鉾店」の記載がある欄に、商品名「おでんセット」として、商品紹介文欄に「練り物のおでん種、ごぼう巻き、イカ天、一口天、ボール揚げ、小ちくわをセットにしたお徳用商品です。」の記載があり、同じく、商品名「お花見だんご(練り物)」として、規格欄に「カツボール2、野菜ボール2、イカボール2、モロヘイヤボール2」、商品紹介文欄に「色々な味をひと口サイズのボール状に仕上げました。」の記載がある(甲16)。
(ソ)「株式会社蒲鉾の八木橋」のウェブページにおいて、「伝統の技」の表題の下、「さつまあげやはんぺんなどは、せっかいを使用し木型に詰めて成形します。また、木型に詰めずに手形を直接つけるもの、手で搾り出してボール状にするものなど様々です。」の記載がある(甲17)。
(タ)「ヤマサ醤油株式会社」のウェブページにおいて、「Happy Recipe」の表題の下、「福袋おでん」の材料として、「大根、こんにゃく、ゆで卵」等のほか、「おでん種(ちくわ、ボールなど)」の記載がある(http://www.yamasa.com/recipes/72/)。
(2)以上によれば、「ボール」の文字は、英語「ball」の外来語であって、「球、球状のもの」等を表す語として、一般に親しまれているといえる。
そして、加工食品業界においては、「つくねボール」、「いわしボール」、「魚ボール」、「すり身ボール」、「野菜ボール」等、食品の原材料名や料理名と結合し、その商品が球形のものであることを意味するものとして、「ボール」の文字が一般に広く使用されている。また、上記の球形の商品を総称して「ボール」と呼ばれている実例もある。
さらに、それらの商品の成形過程を表す語として、「ボール状に形を整える」旨の言い回しが実際に広く使用されている現況にあるといえる。
2 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、「ボール」の片仮名を標準文字で表してなるところ、一般によく知られた「球、球状のもの」の意味を有する「ボール」の文字からなるものであると直ちに看取、認識されるものである。
そして、上記1(2)のとおり、加工食品業界においても、「ボール」の文字は、商品の形状が球形であることを意味する語として一般に使用されているといえるものである。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合、取引者、需要者をして、該商品が「球状のもの」であることを認識させるにすぎないものであり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商品の形状、品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
第4 商標権者の意見
前記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。
第5 当審の判断
本件商標についてした前記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、その指定商品について、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたといわざるを得ないから、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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