Trademark Appeal Case
データ復旧クラウドの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2013−20390(T2013−20390/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,「データ復旧クラウド」の文字を標準文字で表してなり,第42類「コンピュータに於けるサーバーの記憶装置の記憶領域の貸与,コンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機等を用いて行う情報処理,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,ウェブサイトの作成叉は保守,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,検索エンジンの提供,情報処理システム(情報ネットワークを含む。)の設計・開発及びコンサルティング,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として,平成24年11月19日に登録出願されたものである。
そして,指定役務については,当審における平成26年6月26日及び同月30日受付けの手続補正書により,第42類「クラウドコンピューティングを利用したHDD・SDD内の寿命により壊れかけたデータを復旧するための電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,クラウドコンピューティングを利用したHDD・SDD内の寿命により壊れかけたデータを復旧するために電子計算機等を用いて行う情報処理」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『データ復旧クラウド』の文字を表してなるところ,その構成前半の「データ復旧」の文字部分は,『データをもと通りにすること』程の意味合いを認識させるものであり,後半の『クラウド』の文字部分は,コンピュータとの関係においては『クラウドコンピューティング(Webブラウザーを起動し,インターネット上にあるWebサービスを利用するだけで,パソコンで実行しているような処理や機能がすべて利用できる)』程の意味合いを表すものとして使用されており,近年,クラウドコンピューティングを利用した様々なサービスが提供され,クラウドサービスを使ったデータの復旧が行われていることをうかがい知ることができる。そうとすれば,これを本願指定役務に使用しても,『クラウドコンピューティングシステムを使ったデータの復旧,データ復旧に関するクラウドサービス』程の意味合いを表したものと理解させるにすぎず,需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当し,前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので,同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて,職権による証拠調べをした結果,出願時の指定役務について,「データ復旧」及び「クラウド」の文字が使用されている別掲のとおりの事実を発見したので,商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対し,平成26年5月16日付けで証拠調べ通知書を送付した。
4 請求人の意見
前記3の証拠調べ通知に対し,請求人は,平成26年6月26日付けで意見書を提出し,要旨以下のように主張した。
(1)本願商標の指定役務である「クラウドコンピューティングを利用したHDD・SDD内の寿命により壊れかけたデータを復旧するための電子計算機のプログラム」とは,クラウドコンピューティングを利用した顧客のコンピュータに内蔵された寿命により壊れかけたデータを復旧する電子計算機プログラムをいう。寿命により壊れかけたデータが発見された場合,データを内蔵するコンピュータ自体も壊れかけており,完全に壊れてしまう前に,上記電子計算機プログラムにより,寿命により壊れかけたデータ(地震等の災害により喪失したコンピュータ及びその中に貯蔵されたデータとは異なる。)を復旧するものである。
したがって,データバックアップによるデータ復旧とは全く別異の役務であり,かつ,クラウドの事業者サーバー内のデータ復旧するものではなく,顧客のコンピュータに内蔵された寿命により壊れかけたデータを復旧するものである。
(2)本願商標の構成中の「データ」の文字には「コンピュータの処理の対象となる事実。状態・条件などを表す数値・文字・記号。」の意味があり,「復旧」の文字には「前の状態にもどすこと。こわれた物や乱れたものがもとの状態にもどること。」の意味がある。
また,「バックアップ」の語には,「コンピュータで扱うデータやプログラムの破壊・紛失・盗難に備え,あらかじめ複製をとっておくこと。複製そのものをバックアップと呼ぶこともある。」の意味があるので,「復旧」と「バックアップ」の意味合いは全く相違する点に留意すべきである。
「クラウド(cloudとcrowd)」の語の意味合いは,「(1) 雲。(2)煙・ほこりなど雲状のもの。」,「群衆。人ごみ。大衆。」(デジタル大辞林)とあるところ,「大辞林」には,IT用語辞典の内容が何ら記載されておらず,「クラウド」の語が,本願指定役務との関係において,具体的,かつ,特定の意味合いを表すものとして定着していないというのが相当である。
また,本願指定役務においては,「クラウドコンピューティング自体は手段であって,あくまでも提供サービスは,「データ復旧」であり,指定役務の内容は,審判官説示の「データ復旧サービスのためのクラウドコンピューティング」であるとするのは事実認定を誤ったものである。
(3)提示された資料等からは,「クラウド型データ復旧サービス」,「クラウド対応のデータ復旧」の使用例であるが,「対応の」,「サービス」の語を省略したとしても,「クラウドデータ復旧」に帰することはあっても,「データ復旧クラウド(データ復旧雲)」には想到不可能であり,本願商標は語順においても商標として十分特徴を有するとするのが妥当である。
さらに,「クラウド(cloudとcrowd)」の語の意味合いについて,日本では,共に称呼は「クラウド」であり,共に意味合いも共通するものがあり,「クラウドコンピューティング」と「クラウドソーシング」は,「クラウド」の綴りは異なり,意味合いも異なるものの,「クラウド」の意味合いを曖昧にしているところ,全体として「データ復旧雲」程の意味合いを認識させるとするのが妥当であり,本願商標は,審判官説示のごとき意味合いを直ちに認識させるものとはいい難く,これが,その指定役務との関係において,直ちに特定の役務の質・内容等を直接的,かつ,具体的に表示したものとはいえないというのが相当である。
また,出願人側において調査するも,本願の指定役務を取り扱う業界において,「データ復旧クラウド」の文字が,役務の質・内容等を表示するものとして,取引上一般に使用されていると認めるに足りる事実を見いだすことはできなかった。
してみれば,本願商標は,需要者に役務の質・内容等を表すものとして認識され得るものではなく,全体をもって,「データ復旧雲」程の意味合いを有する一種の造語を表したものとして認識されるとみるのが相当であり,これをその補正後の指定役務に使用しても,自他役務の識別標識としての機能を十分に果し得るものであり,かつ,役務の質について誤認を生ずるおそれもないものである。
したがって,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶するとした判断は,妥当ではなく,取消しを免れない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は,前記1のとおり,「データ復旧クラウド」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中,前半の「データ復旧」の文字は,「復旧」の文字が「もと通りになること。もと通りにすること。」(広辞苑第六版)の意味を有するものであることから,「データをもと通りにすること」程の意味合いを容易に認識させるものであり,後半の「クラウド」の文字は,IT用語辞典(別掲(1)参照)の「クラウド【cloud】」の項によれば,「雲,大群,集団などの意味を持つ英単語。全体像の不明確なもやもやした塊・集まりを比喩的に表すことが多い。ソフトウェアやハードウェアの利用権などをネットワーク越しにサービスとして利用者に提供する方式を『クラウドコンピューティング』(cloud computing)と呼び,データセンターや,その中で運用されているサーバ群のことをクラウドという。」の意味を有するものである。
そして,別掲のとおり,インターネット上でデータを管理するクラウドが導入されていること,クラウドに保存されているデータ等は,インターネット経由でデータセンターから復旧が可能であること,該サービスを,「クラウド型データ復旧サービス」,「クラウド対応のデータ復旧サービス」などと記載して,複数の事業者によって,「データ復旧」に関する役務が提供されている実情を窺い知ることができるものである。
そうとすると,「データ復旧クラウド」の文字からは,「データをもと通りにするためのクラウド(クラウドコンピューティング)」程の意味合いを理解,認識させるものというのが相当である。
加えて,本願商標の指定役務は,「クラウドコンピューティングを利用した(HDD・SDD内の寿命により壊れかけた)データを復旧するため」の「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」及び「電子計算機等を用いて行う情報処理」の提供である。
してみれば,本願商標をその指定役務に使用しても,これに接する需要者は,上記指定役務の内容を端的に表現したキャッチフレーズのような文言として理解,認識するに止まり,何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というべきであるから,本願商標は,自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は,「全体として『データ復旧雲』程の意味合いを認識させるとするのが妥当であり,本願商標は,審判官説示のごとき意味合いを直ちに認識させるものとはいい難く,これが,その指定役務との関係において,直ちに特定の役務の質・内容等を直接的,かつ,具体的に表示したものとはいえない」旨主張する。
しかしながら,「クラウド」の文字は,本願商標の指定役務との関係においては,「クラウドコンピューティング(cloud computing)」又は「データセンターや,その中で運用されているサーバ群」のことを表すものと容易に認識させるというのが相当である。
そして,本願の指定役務が,「クラウドコンピューティングを利用したHDD・SDD内の寿命により壊れかけたデータを復旧するため」の役務の提供であることからすれば,本願商標は,その役務の提供の目的である「データ復旧」の文字と,手段である「クラウドコンピューティング」を表す「クラウド」の文字とを一連に表したものと理解させるにすぎないものであるから,上記(1)のとおり,「データをもと通りにするためのクラウド(クラウドコンピューティング)」程の意味合いを理解,認識させるものである。
また,本願商標は,その指定役務との関係において,キャッチフレーズのように理解され,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであって,商標法第3条第1項第6号に該当すると認定判断されるものであるから,本願商標が直ちに特定の役務の質・内容等を直接的,かつ,具体的に表示したものとはいえない旨の主張は,当を得たものではなく,採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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