Trademark Appeal Case
複合商標の要部認定
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2014−8051(T2014−8051/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第43類「アルコールを主とする飲食物の提供,飲食物の提供」を指定役務として、平成25年3月15日に登録出願されたものである。
2 引用商標
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第4735222号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成13年11月28日に登録出願、第42類「中華そばを主とする飲食物の提供」を指定役務として、同15年12月19日に設定登録され、その後、同25年12月24日に商標権の存続期間の更新登録がされたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
3 当審の判断
(1)本願商標
本願商標は、別掲1のとおり、赤色の二重線で表された横長長方形(四隅は、内向き弧線で表されている。)の内側に該赤色長方形よりもわずかに小さな黒色の横長長方形を配してなるものであって、該黒色長方形の内側には、視覚上、看者の注意を強く惹くように黒色の太字をもって大きく顕著に表された「昭和食堂」の文字と、その上方に該文字の約5分の1の高さ及び約4分の1の幅をもって極めて小さく赤色で表された「なつかし処」の文字とを配し、また、上記赤色長方形と黒色長方形との間に存する左右の間隙部には、該「なつかし処」の文字とおよそ同じ大きさをもって極めて小さく黒色で縦書きされた「株式会社 海帆」(左側)及び「酒 類 全 般」(右側)の各文字があり、さらに、該「酒 類 全 般」の文字の下方には、該文字よりも一層小さく赤色で縦書き3列に表された「名古屋」、「懐かし」及び「の味」の各文字を内包する赤色正方形が配されているものである。
ところで、本願の指定役務を提供する業界においては、その提供に当たり、個別の店名とは別に、自己の提供に係る飲食物の種類を需要者が容易に看取、把握できるように、例えば、「和食処」、「洋食処」、「そば処」、「鮨処」、「酒処」等のように、飲食物の種類を具体的に表す語と「処」の語とを組み合わせてなる表示を付記的に用いることが一般に広く行われているほか、飲食物を提供するに際して意図したコンセプトやそれを反映させた店舗の雰囲気等を表現すべく、例えば、「うまい処」、「味わい処」、「振る舞い処」、「楽食処」、「癒酒処」、「だんらん処」、「和み処」、「集り処」等のように、上記コンセプト等を表現する語と「処」の語とを組み合わせてなる表示を付記的に用いることも少なからず行われているというのが実情である。
そうすると、本願商標の構成中の略中央に位置する「なつかし処」及び「昭和食堂」の各文字部分のうち、「なつかし処」の文字部分は、その文字の大きさや配置とあいまって、これに接する需要者をして、上記飲食物の提供に際して意図したコンセプトないし店舗の雰囲気等を表現した付記的な表示として看取、理解される場合も少なくないというのが相当であり、自他役務の識別標識として、看者にさほど強い印象を与えることはないものといえる一方、「昭和食堂」の文字部分は、その文字自体、特定の意味を有することのない造語といい得るものであって、個別の店名を表したものとして看取、理解され得るものである上、上記のとおり、看者の注意を強く惹くように黒色の太字をもって大きく顕著に表されていることから、自他役務の識別標識として、看者に強く支配的な印象を与えるものといえる。そして、上記「なつかし処」の文字部分と「昭和食堂」の文字部分との組合せ全体をもって特定の観念が生じるとはいい難く、また、両文字部分が常に一体不可分のものとしてのみ認識されるとみるべき特段の事情も見当たらない。
また、本願商標の構成中の「酒 類 全 般」の文字部分は、本願の指定役務との関係においては、その提供に係る飲食物の種類を表したものといえるから、該文字部分は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものといえる。
さらに、本願商標の構成中の「名古屋」、「懐かし」及び「の味」の各文字を内包する赤色正方形部分は、本願商標の構成全体にあって、とりわけ小さく表されていて、容易に視認し難いものである上、該各文字全体から生じる「名古屋において親しみある味」程の意味合いに照らせば、自他役務の識別標識としての機能が極めて弱い又はその機能を果たし得ないものといえる。
加えて、本願商標の構成中の「株式会社 海帆」の文字部分は、法人名であって、本願商標の使用に係る役務の提供者を表したものとして認識され得るものの、その文字の大きさや配置が上記のとおりであることに鑑みれば、視覚上、看者の注意を強く惹くとまではいい難く、また、該文字部分が本願商標の構成中の略中央に位置する「なつかし処」及び「昭和食堂」の各文字部分と常に一体不可分のものとしてのみ認識されるともいい難い。
以上を総合勘案すれば、本願商標の構成中の「なつかし処」及び「昭和食堂」の各文字部分と「株式会社 海帆」の文字部分とは、それぞれ自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであるものの、両者は、分離して観察され得るものであり、また、該「なつかし処」文字部分と「昭和食堂」の文字部分とについてみても、後者の方が、前者に比して、より強く支配的な印象を与えるものであって、かつ、分離して観察され得るものであるから、本願商標は、その構成中の「昭和食堂」の文字部分をもって取引に資する場合も少なくないとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、その構成中の「なつかし処」及び「昭和食堂」の各文字部分に相応する「ナツカシドコロショウワショクドウ」の称呼並びにその構成中の「株式会社 海帆」の文字部分に相応する「カブシキガイシャカイハン」若しくは「カブシキガイシャウミホ」の称呼を生じるほか、該「昭和食堂」の文字部分に相応する「ショウワショクドウ」の称呼をも生じるものであり、また、該「株式会社 海帆」の文字部分に相応する「海帆という名の株式会社」の観念を生じるものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、黒色の太字をもって大きく顕著に表された「昭和食堂」の文字と、その上方に該文字の約4分の1の大きさをもって小さく黒色で表された「支那そば」の文字を配し、さらに、上記「昭和食堂」の文字の右方に白抜きで2段に表された「AGE」及び「DINING」の各文字を内包する黒色四角形様の図形(該図形は、上記「昭和食堂」の文字の約4分の1の大きさで表されている。)を配してなるものであるところ、その構成中の「支那そば」の文字は、「中華そば」を意味する語として、一般に広く知られているものであって、引用商標の指定役務との関係においては、その提供に係る主たる飲食物の種類を表したものといえるから、引用商標の構成中の該文字部分は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものといえる。
また、引用商標の構成中の上記図形部分は、その構成中にある「AGE」及び「DINING」の各文字(英語)の有する「年齢」及び「食事」といった意味を併せ考慮しても、特定の意味合いを生じるものとはいい難い上、その構成及び配置をも勘案すれば、該図形部分と引用商標の構成中の「昭和食堂」の文字部分とが常に一体不可分のものとしてのみ看取、把握されるとは認められない。
そうとすると、引用商標は、その構成中、黒色の太字をもって大きく顕著に表された「昭和食堂」の文字部分が分離、独立して観察され、自他役務の識別標識として強く支配的な印象を与えるといえるものであり、該文字部分をもって取引に資する場合も少なくないとみるのが相当である。
そして、上記「昭和食堂」の文字については、本願商標におけるそれと同様に、特定の意味を有することのない造語といい得るものであって、個別の店名を表したものとして看取、理解され得るものである。
してみれば、引用商標は、その構成中の「昭和食堂」の文字部分に相応する「ショウワショクドウ」の称呼並びにその構成中の黒色四角形様の図形内にある「AGE」及び「DINING」の各文字に相応する「エイジダイニング」の称呼を生じるものであって、そのいずれからも特定の観念を生じることのないものである。
(3)本願商標と引用商標との類否
本願商標と引用商標とは、それぞれ別掲1及び別掲2のとおりの構成態様からなるものであるところ、両商標の構成全体をもって比較するときは、外観上、区別し得る差異が存するものの、両商標は、上記(1)及び(2)のとおり、いずれもその構成中の「昭和食堂」の文字部分が黒色の太字をもって大きく顕著に表されており、該文字部分が看者に強く支配的な印象を与えるものであるから、この点において、酷似した印象を与えるものである。
また、本願商標と引用商標とは、いずれもその構成中の「昭和食堂」の文字部分に相応する「ショウワショクドウ」の称呼を生じるものであるから、称呼において共通する。
さらに、本願商標はその構成中の「株式会社 海帆」の文字部分から「海帆という名の株式会社」の観念を生じるのに対し、引用商標は特定の観念を生じることのないものであるから、両商標は、観念において相紛れるおそれはない。
してみれば、本願商標と引用商標とは、観念において相違するものの、称呼において共通するものであり、かつ、外観においても酷似した印象を与えるものであるから、これらを総合勘案すれば、互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきであり、また、本願の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似のものである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標について、視覚上、まとまりよく一体的な構成からなるものであり、また、本願商標の構成中の「なつかし処」の文字と「昭和食堂」の文字とは観念的に極めて結び付きの強い語句であって、両文字は一体の文字列として看取されるから、本願商標は、その構成全体から「株式会社海帆が提供する、なつかしい昭和の雰囲気のある食堂」の観念を生じ、その構成中の「なつかし処」及び「昭和食堂」の両文字部分から「なつかしい昭和時代の食堂」の観念を生じるものであり、「昭和食堂」の文字部分のみが抽出され、独立して認識されることはない旨主張する。
しかしながら、本願商標は、上記(1)において認定したとおり、各種の文字及び図形の組合せからなるものであって、それらの文字の大きさや配置のみならず、それぞれの文字構成及びそれに相応して生じる意味等を踏まえつつ、本願の指定役務を提供する業界における取引の実情をも総合勘案すれば、需要者がその構成中の「昭和食堂」の文字部分をもって取引に資する場合も少なくないというのが相当なものであるから、該文字部分をもって他人の商標との類否を判断することが認められるというべきである。
したがって、上記請求人の主張は、採用することができない。
イ 請求人は、本願商標を自己の業務に係る一事業(居酒屋)の数多くの店舗において使用し、かつ、広告宣伝も積極的に行っていることから、該居酒屋は東海エリア(愛知、岐阜、三重)において既に周知性を獲得しているといえる一方、引用商標の商標権者は、「昭和食堂」を使用した店舗を石川県及び富山県に3店舗有し、そのうちの1店舗においてのみ引用商標を使用しているようであり、さらに、請求人の本願商標に係る店舗と引用商標の商標権者の店舗とでは、その業態及び役務の提供エリアが全く異なる上、請求人としては北陸エリアに事業展開をする予定もないことからすれば、本願商標をその指定役務に使用しても、需要者が引用商標の使用に係る役務との間で出所の混同を生じるおそれはない旨主張する。
しかしながら、請求人の提出に係る甲各号証をみても、請求人の事業に係る沿革として、2003年(平成15年)4月ないし2013年(平成25年)3月の間に「昭和食堂○○店」(「○○」は特定の地名又は場所を表す文字)を愛知県周辺に40店舗開店したこと、2013年(平成25年)7月及び8月に発行された地域情報誌3誌(ただし、その具体的な発行部数や配布した地域及び数は明らかでない。)に広告掲載したこと、2012年(平成24年)12月の1日から15日までの間の専ら早朝又は深夜時間帯に名古屋テレビ放送で15秒間のテレビコマーシャルが各日1回放送されたこと、2012年(平成24年)12月13日付け「中部経済新聞」(1面)に来春から年3店を目途として「なつかし処昭和食堂」を中心に九州へ進出する旨の記事が掲載されたことはうかがえるものの、請求人の業務における本願商標の具体的な使用の開始時期及び期間並びに地域、本願商標の使用に係る具体的な営業規模等を把握することはできず、よって、請求人の主張する本願商標に係る周知性を推し量ることはできない。
また、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情とは、その指定役務全般についての一般的、恒常的な取引実情であるから、該商標が現在使用されている具体的な使用態様などの個別的、一時的な事情のみをもって、対比される両商標が役務の出所につき混同を生ずるおそれがあるか否かを判断すべきではないところ、本願の指定役務には、引用商標の指定役務と同一の役務が含まれていることは明らかであり、さらに、登録商標の効力の範囲は日本全国に及ぶものであるから、本願商標の使用地域と引用商標の使用地域が現在において異なるとしても、このことをもって、本願商標と引用商標とをそれぞれその指定役務に使用したときに出所の混同を生ずるおそれがないということはできない。
したがって、上記請求人の主張は、採用することができない。
(5)むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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