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Trademark Appeal Case

L字図形商標の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2014−890041(T2014−890041/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5599442号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5599442号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成24年11月13日に登録出願、第10類「磁気治療器,その他の医療機械器具,磁気によるマッサージ効果を利用した家庭用電気マッサージ器,その他の家庭用電気マッサージ器,業務用美容マッサージ器」を指定商品として、同25年6月14日に登録査定、同年7月19日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2379526号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成元年5月26日に登録出願、第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同4年2月28日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同15年10月29日に、第10類「聴診器具その他の医療用機械器具」と指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第4号証(枝番を含む。)を提出している。

1 無効理由

本件商標は、以下の理由のとおり、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録を無効にされるべきである。

2 請求人の周知著名性

請求人は、1902年に米国にて設立され、1929年以来米国外でビジネスを展開しており、現在では、60カ国以上に139の工場を有すると共に系列会社を有し、189カ国以上に販売拠点を有し、200カ国以上で活動しており、その従業員数は7万9千人以上におよび、これらの系列会社では、3Mの名称を冠し、3Mのマークを使用してその製品を販売している。

また、5万種類以上の商品を取り扱っており、その分野は、電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通関連、産業関連、オフィス関連にわたり、請求人はニューヨーク証券取引所に上場している会社の中でも、主要な優良株の会社で構成されているダウジョーンズエ業株30種平均の一社及びS&P500を構成する一社となっている。

上述のように、請求人は、日本及び国際的にも名声を有する周知著名な企業である。

3 引用商標の周知著名性

(1)引用商標は、1967年に米国にて販売開始され、その後日本も含めて世界中で請求人において製造・販売されている主要商品であるリットマン聴診器に付されている図形商標であって、リットマン聴診器の歴史は以下のとおりである。

ア 1963年にデビット リットマン医学博士が音響学的に大きく改善した新しい画期的聴診器の特許を取得。

イ 1967年に請求人は、リットマン、カーディオソニック社を買収、リットマンの商標名で聴診器を販売。デビット リットマンは、引き続き請求人のコンサルタントとして勤務。

ウ 1987年に請求人は、リットマン心臓専門の聴診器を開発導入。

エ 1990年に請求人は、リットマンマスタークラシック聴診器を導入、片面チェストピースデザインを一般診察用に。

オ 1992年にリットマンマスター ブラックとゴールド版のMaster聴診器を導入してから25周年。

カ 2001年に請求人は、リットマン エレクトロニックステソスコープ4000を導入。

キ 2005年に請求人は、リットマン エレクトロニックステソスコープ3000と4100を導入。

(2)日本での2002年から2013年の間における引用商標が使用されたリットマン聴診器の販売高及び販売数量は、例えば、2002年に7億8457万2千円、76.572本、2006年に10億1690万7千円、104,509本、2013年に12億1100万円、124,000本となっている。

(3)請求人は世界中で、引用商標を使用した商品について広告宣伝活動を行っており、その媒体は新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、ダイレクトメール及びトレードショー等多肢にわたる。また、引用商標の周知著名性を立証すべくカタログ(甲1)及び広告宣伝の一部を証拠(甲2)として提出する。

(4)さらに、引用商標が使用されているリットマン聴診器は、長年にわたり愛好されている製品の中から選ばれる「ロングライフデザイン賞」を2012年度に受賞している。

(5)以上より、長年に亘り愛好されている商品に使用されている引用商標が日本国内及び国際的に周知著名商標であることは明らかである。

4 商標法第4条第1項第11号について

本件商標と引用商標とは、外観において、円が一重か二重かの差異は有するが、共に実質的に同一の図案化した欧文字「L」を円内に配置するという同一のモチーフを有するものである。

図形の中心に配置され、看者の注意を惹く要部を形成する図案化された欧文字「L」が酷似ないし実質的に同一であり、一重円か二重円かは、時と所を異にする間接対比観察においては微差にすぎず、取引者・需要者において混同を生じるおそれが存することは明らかである。

よって、本件商標は引用商標と外観において類似する。

また、本件商標及び引用商標のいずれからも「エル」の称呼が生じるから、本件商標は引用商標と称呼において類似する。

さらに、本件商標及び引用商標のいずれも英語のアルファベットである「L」という観念を想起させるものである。

したがって、本件商標は引用商標と観念においても類似する。

加えて、引用商標は本件指定商品である聴診器(医療機械器具)との関係において周知著名なものである。

したがって、本件商標は引用商標と類似するものであり、商標法第4条第1項第11号に該当する。

5 商標法第4条第1項第10号について

引用商標は、聴診器との関係で周知著名商標である。

そこで、本件商標との類否につき考察すると、前記4のとおり、外観において、本件商標と引用商標とは、円が一重か二重かの差異は有するが、共に実質的に同一の図案化した欧文字「L」を円内に配置するという同一のモチーフを有するものである。

図形の中心に配置され、看者の注意を惹く要部を形成する図案化された欧文字「L」が酷似ないし実質的に同一であり、一重円か二重円かは、時と所を異にする間接対比観察においては微差にすぎず、取引者・需要者において混同を生じるおそれが存することは明らかであり、前記4のとおり、本件商標は称呼、観念においても類似する。

したがって、本件商標は引用商標と類似するものであり、商標法第4条第1項第10号に該当する。

6 商標法第4条第1項第15号について

本件商標と引用商標の類似性について考えると、前記4のとおり、両者は外観において類似する。また、称呼、観念においても類似する。

また、請求人は、広汎な分野で多岐にわたる商品を製造販売していることで有名な企業であり、現に、上述のように、5万種類以上の商品を取り扱っており、その分野は、電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通関連、産業関連、オフィス関連にわたっている。

このような取引の実情を考慮すれば、本件商標をその指定商品について使用すると、取引者及び需要者において、同商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の提供する商品であると混同するおそれがあるというべきである。

以上からすると、引用商標の周知著名性、本件商標との類似性、請求人の多角経営という取引の実情等を斟酌すれば、混同のおそれが生じるものであることは明らかである。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

7 商標法第4条第1項第19号について

本件商標に接した需要者は、引用商標の著名性故に、引用商標を想起するものであり、請求人所有の周知著名商標と類似する本件商標を採択した本件商標権者は明らかに請求人所有の著名な引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する目的で使用するものであるといえる。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 被請求人の主張

被請求人は、何ら答弁していない。

第5 当審の判断

1 請求人の使用に係る商標の著名性について

請求人の提出に係る甲第1号証及び甲第2号証並びに請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 請求人製造の聴診器に係る「3M リットマン スプリングキャンペーン」とするカタログ(甲1の1ないし7)及び「3M リットマン ステソスコープ スプリングキャンペーン」とするカタログ(甲1の8ないし15)は、2001年から2012年までの毎年3月1日から5月31日の間及び2013年2月18日から5月31日におけるスプリングキャンペーン用の聴診器に関するカタログと認められ、該カタログには、別掲3のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が聴診器のサスペンデッド・ダイアフラム部に付されている写真が掲載されている。

イ 請求人製造の聴診器に係る「3M Littmann\STETHOSCOPES\リットマン ステソスコープ」とするカタログ及び総合カタログ(甲1の16ないし21)は、各表紙に使用商標が付されている聴診器の写真が掲載され、リットマンの各機能を有する聴診器の説明とともに聴診器のサスペンデッド・ダイアフラム部に使用商標が付されている写真が掲載されている。また、甲第1号証の18、19及び21の発行日は、それぞれ2012年6月、同年10月、2013年11月と認められる。

ウ 「3M リットマン エレクトロニック ステソスコープ」、「Model3100/Model3200」のパンフレット(甲1の22)は、2011年3月発行のパンフレットと認められ、該パンフレットの右上に使用商標が表示されている。また、「3M リットマン エレクトロニック ステソスコープ\Model3100/3200」のカタログ(甲1の23及び24)は、2011年6月及び2013年6月発行のカタログと認められ、Model3100及び3200の聴診器の説明とともにダイアフラム部に使用商標が付されている写真が掲載されている。

エ 「3M リットマン ステソスコープ\看護学生・看護学校用」のカタログ(甲1の25ないし29)は、2009年2月、2010年3月、同年6月、2011年3月及び2013年2月発行、また、「3M リットマン ステソスコープ\医学生向け」のカタログ(甲1の30)は、2013年2月発行のリットマン聴診器に関するカタログと認められ、サスペンデッド・ダイアフラム部及び楕円形のチェストピース部等に使用商標が付された聴診器の写真が掲載され、1頁又は表紙には「3M リットマン ステソスコープは、40年にわたり世界中の医師をはじめとする多くの医療従事者の皆様に信頼され、ご愛用いただいている聴診器です。」等の記載がある。

オ 「3M リットマン ステソスコープ\ピンクリボンキャンペーン」のパンフレット(甲1の31ないし35)は、2010年から2013年の各年10月1日から11月30日をキャンペーン期間とするパンフレットと認められるところ、1葉目に使用商標が表示され、使用商標が付されている聴診器の写真が掲載されている。

カ 日経BP社が2012年3月10日、同年4月10日、同年12月10日、2013年2月10日、同年3月10日、同年10月10日及び同年11月10日に発行の「日経メディカル」(甲2の1及び2、甲2の4ないし6,8及び9)には、「3M リットマン\エレクトロニック ステソスコープ\Model3100/3200」の表示、使用商標が付された聴診器の写真が掲載されており、また、「2011年度グッドデザイン金賞受賞」(甲2の1及び2)及び「3M リットマン聴診器が\2年連続でグッドデザイン特別賞を受賞。」、「2012年度のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞。」(甲2の4及び5)と記載されている。

キ 日本において2002年から2013年の間の使用商標が使用されたリットマン聴診器の販売高は、例えば、2002年に7億8457万2千円、76.572本、2006年に10億1690万7千円、104,509本、2013年に12億1100万円、124,000本といえる。

ク 以上からすると、使用商標は、2001年から請求人の業務に係る「聴診器」について使用され、リットマン聴診器と称され、該聴診器の販売高も年々増加の傾向にあり、商品キャンペーン等の広告宣伝活動が行なわれており、使用商標が付された聴診器は、「2011年度グッドデザイン金賞」(甲2の1及び2)及び「2012年度のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞していることなどから、本件商標の登録出願時には医療機械器具を取り扱う分野の取引者、需要者間において広く知られていたものというべきであり、その状態は登録査定時においても継続していたものと認められる。

2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)本件商標と使用商標の類似性について

本件商標は、前記第1のとおり、筆記体風の欧文字「L」の末尾部をのばして全体を左回りに丸く「L」を囲むように一筆書きに表し、その末尾部を「L」の末尾部と接続しないような構成からなるものであり、円形を有する筆記体風の欧文字「L」を図形化したものと把握され得るものといえ、特定の称呼及び観念を生ずることのないものである。

これに対し、使用商標は、別掲3のとおり、二重円の内側の円に筆記体風の欧文字「L」の右上と左下の一部が重なるように表し、それが外側の円に収まるようにした構成及び内側と外側の円内には、上部の方に「LITTMANN」と下部の方に「QUALITY」の欧文字が配された構成からなるものであり、円形を有する筆記体風の欧文字「L」を図形化したもの及び「LITTMANN」、「QUALITY」の欧文字からなるものと把握され得るものといえ、その構成中の欧文字部分に相応して「リットマンクオリティー」又は「リットマン」の称呼を生じ、広く知られている「請求人の業務に係るリットマン聴診器」ほどの観念を生じるといえ、円形を有する筆記体風の欧文字「L」を図形化した部分と文字部分とは分離して看取される場合も少なくないものといい得る。

してみれば、本願商標と使用商標とは、子細にみれば相違する点があるとしても、円形を有する筆記体風の欧文字「L」を図形化してなる点において構成上の軌を一にするものであるから、両商標に接する取引者・需要者が時と処を異にして離隔的に観察した場合には、両商標は、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。

(2)本件商標の指定商品と使用商標に係る聴診器との関連性について

本件商標の指定商品は、前記第1のとおりであって、使用商標は、聴診器に係るものである。

そして、使用商標に係る聴診器は、本件商標の指定商品中の医療用機械器具と同一又は類似の商品であって、かつ、本件商標のその余の指定商品は、治療の一端を担う商品にもなるものであるから、聴診器とは、密接に関連のある商品といえるものである。

(3)需要者、取引者の共通性

本件商標の指定商品は、主に医師、看護師等の医療機械器具を直接使用する者、又は治療器具等を取り扱う者が需要者、取引者というのが相当である。

一方、使用商標に係る聴診器は、主に医師、看護師、又はその学生等の医療従事者において使用され、或いは、医療関連商品を取り扱う者が需要者、取引者と認められるから、両商品は、医療関連商品を取り扱う者が需要者、取引者とするという点で共通するものといえる。

(4)出所の混同のおそれ

前記1で認定した使用商標の著名性の程度、本件商標と使用商標の類似性の程度及び需要者の共通性を総合的に判断すると、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、これをその指定商品に使用した場合、その商品が、請求人が営む業務又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その余の無効理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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