Trademark Appeal Case
商標の類似性と先願・周知
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900285(T2012−900285/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5503970号商標(以下「本件商標」という。)は、「CDMSmith」の欧文字を標準文字で表してなり、平成24年1月24日に登録出願、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備,電子応用機械器具の修理又は保守,土木機械器具の修理又は保守,電動機の修理又は保守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守,発電機の修理又は保守,測定機械器具の修理又は保守,化学機械器具の修理又は保守,工業用炉の修理又は保守,貯蔵槽類の修理又は保守,水質汚濁防止装置の修理又は保守,浄水装置の修理又は保守,廃棄物圧縮装置の修理又は保守,廃棄物破砕装置の修理又は保守,化学プラントの修理又は保守,原子力発電プラントの修理又は保守,し尿処理槽の清掃,貯蔵槽類の清掃,土木機械器具の貸与」、第39類「ガスの供給,電気の供給,水の供給,熱の供給」、第40類「除染,木材の加工,浄水処理,廃棄物の再生,浄水装置の貸与,廃棄物圧縮装置の貸与,廃棄物破砕装置の貸与,化学機械器具の貸与,材料処理情報の提供,廃棄物の収集・分別及び処分」及び第42類「気象情報の提供,建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究」を指定役務として、平成24年6月7日に登録査定、同年6月29日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証を提出している。
1 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、米国法人である申立人が2011年12月8日に変更した商号(CDM Smith Inc.)の要部と実質的に同一の商標であり、申立人が使用する商標であることを知りながら、申立人のわが国における使用を妨害する等の意図・目的に基づいて、2012年1月24日に申立人の承諾を得ずに登録出願し、その登録を受けたものであるから、本件商標の出願・登録は著しく社会的妥当性を欠くものであり、商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するものに該当する。
2 商標法第8条第1項について
本件商標は、「CDMSmith」の欧文字を普通文字で横書きしてなるのに対し、本件先願商標は、「CDM SMITH」の欧文字を普通文字で横書きしてなるところ、両者は、「CDM」の後のスペースの有無及び「Smith」又は「SMITH」の2文字目以降の文字が大文字か小文字かという点でのみ異なるにすぎないから、実質的同一の商標である。また、指定役務も互いに抵触するものである。そして、本件商標の出願日(平成24年1月24日)は、本件先願商標の優先日(平成23年9月2日)よりも後である。
3 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同法第8条第1項に違反してなされたものであるから、同第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
第3 本件商標についての取消理由
当審において、本件商標権者に対し、平成26年9月5日付け取消理由通知書をもって通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
1 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)申立人の使用に係る商標の周知性について
ア 申立人の提出した証拠(甲1〜甲52)及び申立ての理由によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)申立人である米国法人「シーディーエムスミス インコーポレイテッド」(以下「シーディーエムスミス社」という。)は、水、環境、輸送、エネルギー及び施設の持続的・統合的なソリューションを提供する会社(米国マサチューセッツ州法人)である。
(イ)同社は、1947年にThomas Camp氏、Herman Dresser氏及びJack McKee氏が前身となる事業を立ち上げ、1970年に法人化した際に、3氏にちなんで、「Camp Dresser and McKee Inc.」が商号とされた(甲4)。
(ウ)同社のホームページによれば、「2011年、シーディーエムとウィルバー・スミス・アソシエイトとの合弁により、5,000名以上の専門家を擁し、水、環境、輸送、エネルギー及び施設について統合的な解決策を提供する、コンサルティング、エンジニアリング、建設及び事業サービスの大手世界企業、シーディーエムスミスが誕生しました。」の記載がある(甲4訳文)。
(エ)甲第3号証は、シーディーエムスミス社のホームページであるところ、これには、同社の事業内容を紹介するとともに、「CDM Smith」の文字(以下「使用商標」という場合がある。)が使用されている。
(オ)甲第33号証〜甲第41号証は、2011年及び2012年の米国のマグロウヒル(McGraw Hill)社の建設雑誌「ENR」であり、これには、シーディーエムスミス社を表示する「CDM SMITH」の文字が、建設業界におけるランキング中に記載されており、例えば同社は、「設計会社トップ500」には2011年23位及び2012年22位に、「工事会社トップ400」には2011年・2012年165位に、「マネジメント企業トップ50」には2012年15位に、「環境ビジネス企業トップ200」には2011年14位及び2012年15位に登場している。
なお、マグロウヒル社の建設雑誌「ENR」は、米国の有力な建設雑誌である(甲48〜甲50)。
(カ)甲第45号証及び甲第46号証は、2012年1月9日及び同月23日の建設雑誌「ENR」の6頁及び7頁に掲載された広告であり、これには、同社の事業内容を紹介するとともに、「CDM Smith」の文字が表示されている。
イ 上記アの事実からすれば、シーディーエムスミス社は、2011年にシーディーエムとウィルバー・スミス・アソシエイトとの合弁により、建設事業に関する大手企業として誕生した。そして、同社は、そのホームページに事業内容を紹介するとともに、「CDM Smith」の文字を表示し、また、米国の有力な建設雑誌である「ENR」にも該「CDM Smith」の文字を表示した広告を行っている。また、シーディーエムスミス社は、2011年に誕生したものの、建設業界におけるランキングにおいて、「設計会社トップ500」では、2011年23位及び2012年22位に位置する企業として、その知名度はかなりなものであると推認される。
してみると、「CDM Smith」の文字からなる使用商標は、申立人の会社の業務に係る建設関連の役務を表示するものとして、本件商標の登録出願日である平成24年1月24日には、少なくとも米国の取引者、需要者の間に広く認識されていた商標であると認めることができる。
(2)本件商標と申立人の使用商標との類否について
本件商標は、「CDMSmith」の文字からなるところ、これよりは、その構成文字に相応して「シーディーエムスミス」の称呼を生じるものである。
他方、使用商標は、「CDM Smith」の文字からなるところ、これよりは、その構成文字に相応して「シーディーエムスミス」の称呼を生じるものである。
そこで、本件商標と使用商標の類否についてみるに、外観においては、本件商標と使用商標とは、いずれも、「CDM」と「Smith」の欧文字からなるものであって、その差異は、両文字間におけるスペースの有無のみである。
そうとすれば、本件商標と使用商標とは、外観において酷似する商標といわなければならない。
次に、本件商標と使用商標との観念についてみるに、「CDMSmith」及び「CDM Smith」の欧文字は、英和辞典、仏和辞典、独和辞典等の辞典類には掲載されていない語であり、しかも、その綴り字もこれに類した親しまれた語を想起し得るものでもないことから、これより直ちに特定の観念が生じるものとはいえないが、上記1のとおり、米国の建設業界においては、「CDM Smith」の文字は、申立人及び申立人の業務に係る建設関連の役務を表示するものとして使用され、広く知られていることが認められる。
そうとすれば、「CDM」及び「Smith」の綴り字からなる本件商標及び申立人の使用商標は、「シーディーエムスミス」の同一の称呼を生じ、「シーディーエムスミス社」程の観念を想起せしめるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標と使用商標とは、外観において類似し、称呼及び観念を共通にする相紛らわしい類似の商標というべきものである。
(3)不正の目的について
申立人の主張及び提出された証拠によれば、商標権者である「CDMインフラ環境株式会社」(以下「CDMインフラ環境」という。)は、平成15年(2003年)4月2日に設立され、環境汚染の浄化、アセスメント及び防止に関する事業等を目的とする会社であり、代表取締役は、「東田信一」氏である(甲6)。
そして、申立人が2002年1月28日に吸収合併した「Applied Geotechnology Inc.」は、「東田信一」氏が社長をしていた「ATD Incorporated」と、1994年4月15日に合弁事業契約を行っていた関係にあった(甲7)。
申立人は、2011年2月に「Wilbur Smith Associates」を買収し(甲4)、同年12月8日に商号を「CDM Smith Inc.」に変更した。その商号変更の実施に先立ち、申立人は、2011年9月2日に新商号に対応する、「CDM SMITH」の文字を書してなる商標を米国において出願している(甲13)。さらに、申立人は、これを基礎にして、日本を含む13カ国を指定国として、同一の商標について国際登録出願(後記の引用商標)を行い、国際事務局に2012年2月16日受理された(甲14)。
なお、この「CDM Smith Inc.」という商号は、申立人の創設者であるCamp氏、Dresser氏及びMcKee氏の3氏の頭文字をとった「CDM」と、「Wilbur Smith Associates」の「Smith」を組み合わせたものであって、独創性の高い商標ということができる。
これに対し、商標権者は、申立人の商号が「CDM Smith Inc.」に変更された約1ヶ月半後である2012年1月24日に本件商標を出願した(甲1)。
以上によれば、申立人が吸収合併した「Applied Geotechnology Inc.」は、「東田信一」氏が社長の「ATD incorporated」からすれば、合弁事業の相手先であり、これ以後、「東田信一」氏は、申立人を知ることになったものと優に推認できるものである。
そして、「東田信一」氏が代表取締役となっている「CDMインフラ環境」(商標権者)は、米国において周知な建設関連の企業である「CDM Smith Inc.」の使用商標に類似する本件商標を出願し、その登録をしたものである。
上記の経緯に照らせば、本件商標権者は、本件商標の登録出願当時、米国内において申立人の業務に係る建設関連の分野において使用商標が広く知られていることを十分に知りながら、未だ使用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、申立人の国内参入を阻止したり、あるいは、日本進出に際し、本件商標権者との合弁事業契約の締結を視野に入れるなどの不正の目的のために、使用商標と類似する本件商標を先取り的に登録出願し、設定登録を受けたものと推認せざるを得ない。
したがって、本件商標権者は、本件商標を使用するについて不正の目的を有していたというべきである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、申立人の業務に係る建設関連の役務を表示するものとして、米国の取引者、需要者の間に広く認識されていた使用商標と極めて類似する商標であって、不正の目的をもって使用する商標というべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものと認める。
2 商標法第8条第1項該当性について
(1)引用商標
国際登録第1143638号商標(以下「引用商標」という。)は、「CDM SMITH」の欧文字を書してなり、2011年9月2日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2012年(平成24年)2月16日に国際商標登録出願、別掲のとおり、第35類、第36類、第37類、第39類、第40類、第42類及び第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務を指定役務として,平成26年6月6日に設定登録されたものである。
(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、「CDMSmith」の文字からなるところ、これよりは、その構成文字に相応して「シーディーエムスミス」の称呼を生じるものである。
他方、引用商標は、「CDM SMITH」の文字からなるところ、これよりは、その構成文字に相応して「シーディーエムスミス」の称呼を生じるものである。
そこで、本件商標と引用商標の類否についてみるに、外観においては、本件商標と引用商標とは、いずれも、「CDM」と「Smith」又は「SMITH」の欧文字からなるものであって、その差異は、該「Smith」と「SMITH」の欧文字における小文字と大文字の相違であり、また、両文字間におけるスペースの有無にすぎないものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、「CDM」と「Smith」又は「SMITH」の欧文字の綴りを共通にするものであり、外観において近似する商標といわなければならない。
次に、本件商標と引用商標との観念についてみるに、「CDMSmith」及び「CDM SMITH」の欧文字は、英和辞典、仏和辞典、独和辞典等の辞典類には掲載されていない語であり、しかも、その綴り字もこれに類した親しまれた語を想起し得るものでもないことから、これより直ちに特定の観念が生じるものとはいえないが、申立人の提出に係る甲各号証によれば、米国の建設業界においては、「CDM Smith」の文字は、申立人及び申立人の業務に係る建設関連の役務を表示するものとして使用され、広く知られていることが認められる。
そうとすれば、「CDM」と「Smith」又は「SMITH」の綴り字からなる本件商標及び引用商標は、「シーディーエムスミス」の同一の称呼を生じ、「シーディーエムスミス社」程の観念を想起せしめるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において類似し、称呼及び観念を共通にする相紛らわしい類似の商標というべきものである。
また、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似の役務である。
(3)本件商標と引用商標の登録出願の日等について
前記第1及び第3、2(1)のとおり、本件商標は、引用商標の登録出願(平成23年9月2日)より後に登録出願(平成24年1月24日)されたものであり、また、本件商標の登録査定時には、引用商標は、設定登録されていなかったものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第8条第1項に違反してされたものと認める。
第4 本件商標権者の意見
商標権者は、前記第3の取消理由に対し、指定した期間内に何ら意見を述べるところがない。
第5 当審の判断
本件商標についてした先の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第19号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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