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Trademark Appeal Case

商標の類否と広告利用

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号判定2014−600024(T2014−600024/J6)
審判種別記載はありません。
結論other

結論テキスト

「インターネットを媒体として発信している動画」に使用するイ号標章は、登録第4939356号商標の商標権の効力の範囲に属しない。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4939356号商標(以下「本件商標」という。)は、「あそびま書」の文字を標準文字で表してなり、平成17年7月27日登録出願され、第16類「印刷物,書画,文房具類」及び第41類「技芸・書道の教授,語学の教授,その他の知識の教授,図書及び記録の供覧,美術品の展示,電子出版物の提供,雑誌・新聞の供覧,インターネットによるその他の技芸・スポーツ又は知識の教授」を指定商品及び指定役務として、同18年3月24日に設定登録されたものである。

2 イ号標章

株式会社資生堂(以下「被請求人」という。)が、「インターネットを媒体として発信している動画」に使用する標章は、別掲のとおり「美と、あそびま書。」(以下「イ号標章」という。)の文字からなるものである。

3 請求人の主張

請求人は、被請求人がインターネットを媒体として発信している広告役務に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)判定請求の必要性

ア 請求人(商標権者)は、被請求人がインターネットにより標章「美と、あそびま書。」を発信・配信していること(甲1の1〜3)について、平成26年4月28日、被請求人に対し、本件の商標権を侵害するものである旨の警告を発した(甲2)。

その後、被請求人は商標権に抵触するものではない旨の回答書(甲3)を提示し現在も使用している。

イ YouTubeで公開された動画がきっかけとなって、注目をあびた資生堂書体を染め出した風呂敷(甲4及び甲9の1〜5)を販売し、拡大の一途をたどっている。

風呂敷は包装容器第24類に該当するが、包装容器という従来の領域をはるかに超え、文字を知らしめるための技芸の教授、その他の知識の教授の意図が大きく、第16類の印刷物の商標権にも抵触するものである。

ウ イ号標章「美と、あそびま書。」は、被請求人がインターネット及び大企業の宣伝広告の力を発揮して使用し、真の商標権者の権利を大きく剥奪するものと思料する。

それにより請求人の信用が大きく失墜させられ、契約を失う、また、あたかも商標権者が被請求人の模倣をしている等の間違った評価を受ける等々の損失・損害を被っている。

(2)イ号標章の説明

ア 被請求人は、平成26年4月1日頃より、イ号標章「美と、あそびま書。」をインターネットで発信・配信している(甲1の1〜3)

イ 請求人は、平成8年頃より、書道の教授の屋号に本件商標の使用を開始し、その後も継続して使用し現在に至っている。

ウ 本件商標は請求人が長年使用しているもので、権利侵害を予防するために、インターネットにおける自身のホームページのタイトルバーに登録商標であることをわざわざ明示している。

エ 大企業と一個人の差、故に広告宣伝又は規模の上においては比較対象にもならないが、故の必要性を考慮し商標に登録している。

(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明

ア 請求人からの回答書(甲3)によればYouTubeのタイトルとして使用しているもので商標権に抵触するものではないとあるが、タイトルは標題に同じであり、また商いをするための標(しるべ)営業標識と考える。

イ WebページのタイトルはWebブラウザのタイトルバーに表示される性質上「資生堂」と「あそびま書」をセットで世界中に知らしめる広告源となっており、商標権者の権利を著しく侵害するものである。

ウ インターネット中、イ号標章「美と、あそびま書。」が「広告」のカテゴリーに入っているため(甲5の1〜4)、商標権者の役務の広告的機能を侵害するものである。

エ 商標を広告に使用することにより、商標権者の専有を需要者に伝え、その役務の購買・利用の動機を促進する目的で権利取得しているにもかかわらず、大手企業だから故に真の商標権者からその機能を剥奪している状態となっている。

オ 商標の文字をそのまま、広告という広く積極的に営利を目的とする手段のタイトルに流用するものが、その商標権に抵触しないとは到底受け入れられない。

カ 被請求人が商標法第26条の商標権の効力が及ばない範囲での使用(普通に用いられる方法での使用)との主張であれば、全世界に向けた大企業の広告(甲5の1〜4)タイトルが普通に用いられる範ちゅうでないということは自明と言わざるを得ない。

(4)むすび

ア 被請求人が警告文を受け取った後、インターネットを操作し、「あそびま書」の検索では被請求人資生堂が発信したものが検索でヒットしないように操作し、かつ検索履歴までをもすべて消し去った(甲6)。

イ 警告文に対する回答書の期日を設定したが、期日を何の連絡もないままに過ぎ、回答書が届いたのは期日の翌々日。書留の追跡調査(甲7)と回答文書の日付を参照願いたい。

ウ 最高責任者である執行役員社長宛(甲8)で警告文を出しているにもかかわらず、回答書は何の役職名を持たない名前で届いた。

このような現実を鑑みると、誠意のない対応と言わざるを得ない。

請求人は、仕事をするに当たり最重要な事項に挙げていることの一つが“信用”である。こんな形で世界中に大規模に発信されてしまった「あそびま書」を、そして「信用」をどうすれば修正・克服できるのか、想像さえも出来ないが、非公開のこの制度を利用することにより、「信用」をこれ以上失速させる事なく商標権を守る判定を願うものである。

4 被請求人の答弁

被請求人は,結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)並びに検乙第1号証及び検乙第2号証を提出した。

(1)判定請求の趣旨について

請求人は、請求の趣旨を「被請求人がインターネットを媒体として発信している広告役務『美と、あそびま書。』のイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する」としているが、請求人が有している商標権は、第16類及び第41類の指定商品及び指定役務であり、その権利の範囲には、第35類「広告」は含まれていない。よって、本件判定請求はそもそもその根拠を有していないと思料する。

(2)被請求人のイ号標章の使用について

被請求人は、標章「美と、あそびま書。」を以下の態様において使用している。

ア 「動画」の制作、公開

被請求人が過去100年近くにわたって継承され、製品、広告宣伝に使用されてきた和文ロゴタイプ「資生堂書体」を紹介するための動画を制作し、平成26年4月1日からYouTubeで公開している。

該動画は、「資生堂書体『美と、あそびま書。』」との題名が付されている(乙1、乙2、検乙1)。

該動画は、単に資生堂書体を紹介するに過ぎないものであり、何らかの知識を教授するものではない。また、該動画は、販売される商品ではなく、ダウンロードは不可となっている。

イ 「資生堂書体」の展示

被請求人は、平成26年1月〜3月の期間、資生堂銀座ビル(東京都中央区銀座7−5−5)において、「資生堂書体」で制作された、パッケージ、ポスター、看板、社報、宣伝広告物等を展示しつつ、資生堂書体の歴史、沿革、作成過程等を紹介する展示を行うと共に、1階ウインドーに資生堂書体をディスプレーしたが、前記動画は、この展示においては公開されていない。展示は無料で公開され、入場者の制限はなかった(乙3)。

ウ 「風呂敷」の販売

被請求人は、「資生堂書体」をデザインした風呂敷を、平成26年4月17日から、資生堂ザ・ギンザにおいて限定販売している。デザインは、「美」「あそびましょ」及び「つらつらつばき」の文字を資生堂書体で表現したものである(乙4、検乙2)。なお、この風呂敷に表記された標章は、「あそびましょ」であり、本件商標「あそびま書」とは、文字の構成や態様が異なっている。

エ 「資生堂書体」について

資生堂書体は、細長く長体のかかったフォルムを特徴とする和文ロゴタイプであり、1923年に開発を開始し、5年の歳月をかけて1927年に完成した資生堂独自の書体であり、被請求人が製造販売する商品のパッケージ、その宣伝広告物、刊行物、看板、ポスター等に幅広く使用されてきている。

動画は、資生堂の美へのこだわりを知ってもらえるように、美と遊ぶような心をもって、「美と、あそびま書。」のテーマで制作されたものである(乙5)。

(3)イ号標章は、権利範囲に属さないことについて

ア 「動画」について

動画「資生堂書体『美と、あそびま書。』」は、被請求人が長年にわたって継承し、使用してきた資生堂独自の書体「資生堂書体」を説明するために作成されたものであり、その題名は、動画の内容を表すために用いられている表示であり、動画の出所を示すための表示、すなわち商標ではない。

よって、動画の題名は、本件商標の権利範囲に属するものではない。

書籍、映画、動画等の題名は、その内容を示すための表示であり、出版社、作成者の商品であることを識別するための商標として付されたものではない、とされている(「POS事件」昭和62年(ワ)第9572号昭和63年9月16日東地裁判決、判例時報1292号141頁)。

イ 「資生堂書体」の展示について

資生堂書体の展示は、「美と、あそびま書。」との名称で開催されたものではない。

該展示は、商標法に規定する業としての役務の提供ではなく、単なる企業キャンペーンに過ぎない。

ウ 「風呂敷」について

風呂敷は、第24類「布製身の回り品」に属する商品であり、本件商標の権利範囲に属する商品ではない。

(4)標章「あそびま書」について

標章「あそびま書」は、乙第6号証に見られるように複数の人が夫々別個に使用している事実が見られ、商標権者のみが独占的に使用している標章ではない。

(5)むすび

以上のとおり、本件判定請求は、その請求の趣旨においてそもそも商標権の権利範囲ではない役務について判定を求めるものであり、請求に根拠がない。また、被請求人が使用しているイ号標章はいずれも商標の使用には該当せず、本件商標権の権利範囲に属するものではない。

5 当審の判断

(1)本件商標とイ号標章の類否について

本件商標は、上記1のとおり、「あそびま書」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応し、「アソビマショ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語とみるのが相当である。

他方、イ号標章は、別掲のとおり、「美と、あそびま書。」の文字を書してなるものであるところ、格別冗長とはいえない構成中に読点「、」と句点「。」が配されていることから、標章全体をつながりのある一体のものと認識されるというのが相当である。

してみれば、イ号標章は、その構成文字全体に相応する「ビトアソビマショ」の称呼のみを生じるものであり、また、一種の造語の組み合わせとして認識され特定の観念を生じないものと認められる。

そこで、本件商標とイ号標章の外観を対比すると、両者は、構成文字が異なることから、外観上判然と区別し得るものである。

また、本件商標から生じる称呼「アソビマショ」とイ号標章から生じる称呼「ビトアソビマショ」の称呼について比較するに、前者は5音、後者は7音からなり、両者は構成音数の差異により、それぞれの称呼を一連に称呼した場合において、称呼全体の語調、語感が相違したものとなり、称呼上相紛れるおそれはないものである。

また、両者はいずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上相紛れるおそれはないものである。

してみれば、本件商標とイ号標章とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても非類似のものといわざるを得ない。

(2)イ号標章の使用商品又は使用役務について

イ号標章は、本件商標の指定商品又は指定役務に使用されていると認め得る証拠の提出はない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人の主張全体からすると、被請求人がインターネット上で使用している「美と、あそびま書。」の表示中、「あそびま書」の文字が綴りにおいて一致しているから、本件商標の商標権に抵触する旨を主張しているものと解される。

しかしながら、上記(1)のとおり、本件商標とイ号標章とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても非類似のものである。

また、被請求人がインターネット上で公開している動画の内容も、被請求人が「資生堂書体」を紹介するものであって、特定の商品又は役務の広告などであると認めることもできない。

イ 請求人は、「YouTubeで公開された動画がきっかけとなって、資生堂書体を染め出した風呂敷は、包装容器という従来の領域をはるかに超え、文字を知らしめるための技芸の教授、その他の知識の教授の意図が大きく、第16類の印刷物の商標権にも抵触するものである」旨を主張している。

しかしながら、当該「風呂敷」に表示された文字は、イ号標章と構成態様が異なるものであるから、これについては判断を要しない。

なお、付言すれば、「風呂敷」は、「印刷物」の一種ということはできないものであって、本件商標の指定商品中「印刷物」と被請求人の商品「風呂敷」とは、それぞれの製造者、取引者、需要者及び商品の販売場所等を異にするものであるから、これらの商品は、互いに類似しないものである。

ウ 小括

以上からすれば、請求人の主張は採用できない。

(4)まとめ

以上のとおり、本件商標とイ号標章とは、非類似のものであって、イ号標章は、本件商標の指定商品及び指定役務に使用されるものではないから、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものといわざるを得ない。

よって、結論のとおり判定する。

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