Trademark Appeal Case
パッシブデザインの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2014−12197(T2014−12197/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「passiv design」の文字を標準文字で表してなり、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」及び第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究」を指定役務として、平成24年8月6日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『passiv design』の文字を標準文字で表してなるところ、この文字は、『パッシブデザイン』の文字をドイツ語表記したものと認められる。そして、近年、建築を取り扱う業界において、環境に配慮した住宅が注目され、『風や光など自然エネルギーを活用する住宅設計手法』を表すものとして『パッシブデザイン』、『passive design』の文字がしばしば使用されている実情がある。そのような実情によれば、たとえ本願商標の文字が『passive design』(『パッシブデザイン』の英語表記)でないとしても、『passive design』の文字よりなるものと誤認されることも、少なくないものと認められる。そうすると、本願商標を、その指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、『風や光など自然エネルギーを活用する住宅設計手法(パッシブデザイン)を採用して建築された建物の管理,風や光など自然エネルギーを活用する住宅設計手法(パッシブデザイン)を採用した建設工事,風や光など自然エネルギーを活用する住宅設計手法(パッシブデザイン)を採用した建築物の設計』等のように、『風や光など自然エネルギーを活用する住宅設計手法(パッシブデザイン)を採用して建築された建物に関する役務,風や光など自然エネルギーを活用する住宅設計手法(パッシブデザイン)で建築される建物に関連した役務』程の意味合いを容易に理解、認識するにとどまり、自他役務の識別標識としては認識しないとみるのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、「passiv design」の欧文字からなるところ、その構成中の「passiv」の文字は、「受動的な、受け身の」程の意味のドイツ語であり、また「design」の文字は、「デザイン」の意味のドイツ語(いずれも、「新アポロン独和辞典」株式会社同学社発行)であるから、全体として、「パッシブデザイン」と読まれ、同様の意味を有する英語である「passive design」のドイツ語表記と理解させるものである。
ところで、本願の指定役務を取り扱う建設や住宅関連の業界において、「パッシブデザイン」及び「passive design」の文字は、「建築の設計手法の一。特別な機械装置を使わずに、建物の構造や材料などの工夫によって熱や空気の流れを制御し、快適な室内環境をつくりだす手法。」(大辞林第3版 株式会社三省堂発行)の意味を有する語であって、普通に使用されているものである。
そして、該「パッシブデザイン」及び「passive design」の文字の使用の事実については、原審で示した事実のほか、以下に示す、新聞記事及びインターネット情報からも、裏付けられるところである。
<新聞記事情報>(下線は、合議体による。)
ア 2003年(平成15年)9月16日付け「日刊建設工業新聞」(2頁)に、「建築設備綜合協会/第2回環境・設備デザイン賞、応募要領は9月17日からHPで」の見出しの下、「・・・建築・設備統合デザイン部門は、設備機器、設備システムが建築全体として融合され、建築形態の中に設備が統合化されているデザインを表彰。建築環境デザイン部門は、太陽光、風といった自然エネルギーの利用や
パッシブデザイン
など環境共生への積極的な取り組みを評価する。・・・」の記載がある。
イ 2007年(平成19年)11月20日付け「建設通信新聞」に、「きょうから建築設備総合内覧会/松下電工」の見出しの下、「松下電工は、20、21日の2日間、名古屋市千種区の吹上ホールで、建築設備総合内覧会『SUPER BOX 2007』を開く。『
PASSIVE DESIGN
−共生するデザイン』をコンセプトに、従来の照明・情報・映像機器の内覧会と集合住宅向け設備の内覧会を統合し、数多くの専門性と独自技術を結集させた。」の記載がある。
ウ 2008年(平成20年)6月2日付け「日刊建設工業新聞」(10頁)に、「書籍案内/『住まいの中の自然−
パッシブデザイン
のすすめ』/小玉祐一郎著」の見出しの下、「7月の北海道洞爺湖サミットのメーンテーマは『地球環境問題』。温室効果ガスの排出量を減らし、自然と人間の持続可能な関係を築いていくことが急務の課題だ。日本では、温室効果ガスの総排出量の3分の1は建築関連分野からと言われている。この分野の責任は重く、低環境負荷がこれからの建築の必要条件になっていくだろう。本書は、住まいと自然環境についてのエッセー。太陽や風など自然のポテンシャルを生かしながらエネルギー使用量を減らす『
パッシブデザイン
』の手法、事例などを写真や図、データで解説。自然と共生する住まい、自然を楽しむ住宅のヒントが詰まっている。」の記載がある。
エ 2011年(平成23年)4月3日付け「中国新聞」に、「光や風感じる理想の家
パッシブデザイン
提唱者・野池さん広島でセミナー」の見出しの下、「・・・提唱者の一人が、コンサルタント会社『住まいと環境社』(大阪府池田市)代表の野池政宏さん(50)。考え方に共鳴する広島市西区大宮の工務店エヌテックとともに、広島県内の建築例などを紹介する『
PASSIVE DESIGN(パッシブ・デザイン)
』を刊行。記念のセミナーを広島市中区のRCC文化センターで開いた。野池さんは、これまでの住宅は、心地よさを冷暖房や照明などの設備に頼りすぎてきたと指摘する。『建物だけで2千万円を超える買い物なのに、故障したら終わりという設備代に多くを割いている。光や風などを生かせば、設備が故障しても、エネルギー代が高騰しても快適さが損なわれることはない』と訴える。・・・」の記載がある。
オ 2012年(平成24年)6月12日付け「住宅新報」に、「パッシブ協が一般社団化 アドバイザー認定も視野に」の見出しの下、「・・・パッシブとは建築学的には、太陽や風、水、地熱といった自然の力を引き出し、住宅における室内環境の快適性を高める技術や仕組みのこと。協議会は
パッシブデザイン
に取り組む企業や個人がネットワークを構築し、その普及に寄与することを目的として11年6月に発足した。今回、信頼性の向上などを目指し一般社団法人に移行したという。今後は
パッシブデザイン
の設計に携わるアドバイザーの認定制度や、専用アプリの開発を行う予定。新築住宅だけでなく、パッシブの発想を取り入れた中古住宅の改修にも取り組んでいく考えだ。6月27日に開催予定の『
パッシブデザイン
未来会議』(完全招待制)で、具体的な取り組み方針を発表するという。」の記載がある。
カ 2013年(平成25年)6月18日付け「鉄鋼新聞」に、「YKKの吉田CEOが会見/『ローエネまちづくりに挑戦』」の見出しの下、「YKKは既報の通り黒部市三日市にある社宅跡地を自然エネルギーを活用したローエネの『パッシブタウン黒部モデル』として再開発すると発表した。4〜5階建ての賃貸集合住宅を、第1期計画で60戸分を2015年までに建設。25年までに全250戸800人の入居を予定している。
パッシブデザイン
とは1970年代半ば頃から考案され、換気や冷暖房に使用されるハイエネルギーの消費を抑制するため太陽や風などローエネルギーを活用し、快適な室内環境を作る建築設計手法のこと。同タウンではこの手法を活用し、世帯あたりのエネルギー消費を6割削減する計画だ。」の記載がある。
<インターネット記事情報>
キ「一般社団法人パッシブデザイン協議会
Passive Design
Conference」のウェブサイトにおいて、「協議会の目的」の見出しの下、「当法人は、建築や住宅、ライフスタイル等において、地域の自然環境が持つポテンシャルを積極的に活用する『
パッシブデザイン
』の思想を持ち、
パッシブデザイン
に取り組む様々な企業・団体・研究者・個人がネットワークを構築し、情報やノウハウを共有し、さらにアクティブとの融合も図りながら、効果的な
パッシブデザイン
の普及に寄与することを目的としています。」の記載がある。
(http://www.passive-design.jp/about/vision.php)
ク「共建築設計事務所」のウェブサイトにおいて、「
パッシブデザイン
+省エネ=『自然へ開かれた暮らし』/
PassiveDesign
/『陽射しのぬくもり』、『窓からのそよ風』=”自然に開かれた心地よさ”『エアコン』で、コントロールされた室温=”自然から閉じた心地よさ”はたして、この二つの心地よさは同じものなのでしょうか?『エネルギーがなければ心地よく感じられない?』シミュレーションツール、<ENERGYPLUS>によって、温熱環境の基本を学び、自然室温で暮らせる『開かれた心地よさ』を、目指します。」の記載がある。
(http://www.tomoken.biz/)
ケ「小松工務店」のウェブサイトにおいて、「
Passive Design
」の見出しの下、「
パッシブデザイン
の家で暮らす」、「summer/軒の出・庇・葦簀(よしず)、簾(すだれ)の利用、さらには緑のカーテンなど、夏の陽ざしを家の中に入れない工夫と、涼しい風を通すための窓の設計と植栽の計画等をトータルで考えます。/winter/南面には大きな窓(高性能樹脂サッシを使用)を取り、冬の陽ざしを精一杯取ります。一度取り入れた熱は外へ逃がさない工夫も必要になってきます。」の記載がある。
(http://www.komatsu-koumuten.co.jp/passive2.htm)
コ「設計依頼.com」のウェブサイトにおいて、「森建築設計 森 健一郎さんのプロフィール」の見出しの下、「・太陽光や通気、地熱や冷熱などを効果的に活用し、陰影を意識した
PassiveDesign(パッシブ デザイン)
が大好きです」の記載がある。
(http://www.sekkeiirai.com/explore1243689474/navigations1567514223/123-architect/kanagawa/598-morikenichiro)
そうとすれば、「パッシブデザイン」及び「passive design」の文字は、「建築の設計手法の一。特別な機械装置を使わずに、建物の構造や材料などの工夫によって熱や空気の流れを制御し、快適な室内環境をつくりだす手法。」の意味を有する語として、本願の指定役務を取り扱う建設や住宅に関連する業界において、一般的に使用され、知られている語というのが相当である。
そして、たとえ、本願商標がドイツ語の「passiv design」であるとしても、これを、その指定役務中、例えば、第36類「建物の売買」、第37類「建設工事,建築工事に関する助言」及び第42類「建築物の設計」等に使用したときには、取引者、需要者は、「パッシブデザインによる建物の売買,パッシブデザインによる建物の建設工事,パッシブデザインによる建物の建築工事に関する助言,パッシブデザインによる建築物の設計」という程の意味合いを表すものと理解し、認識するにすぎず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、本願商標は、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、また、その指定役務中、前記した役務以外のパッシブデザインによる建物等に関連しない役務に使用するときは、パッシブデザインによる建物等に関連する役務であるかのように役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標であるから、同法第4条第1項第16号に該当するものである。
(2)請求人の主張
なお、請求人は、本願商標は「passive design」の「passive」の文字部分の、語尾である「e」の文字を抜いた語として認識され、「passive design」の表示と似た造語として認識、把握される旨主張するが、前記(1)に示したとおり、本願商標の「passiv」と「design」の語は、ドイツ語の成語であるから、「passive design」の同義語としてのドイツ語表記と理解されるものである。
さらに、請求人は、本願商標を数年に渡り使用した結果、「passiv design」の文字は、請求人の提供するサービスを表したものと認識されている旨主張し、証拠方法として、証拠資料1を提出しているが、上記したとおり、本願商標は「passive design」の同義語として、理解されるものであるから、その使用は、あくまで、「パッシブデザイン」の意味を理解させるにすぎないものであって、それ以上に請求人のサービスを表すものとして認識されるに至ったものということはできない。
よって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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