Trademark Appeal Case
「リスク均等」の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2014−10717(T2014−10717/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,「リスク均等」の文字を標準文字で表してなり,第36類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成24年3月8日に登録出願されたものである。
そして,指定役務は,原審における平成25年2月5日受付けの手続補正書により,第36類「有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券等清算取次ぎ,有価証券の売出し」に補正されたものである。
第2 原査定の理由
原査定は,「本願商標は,その指定役務との関係において,『リスクの分散を最大の目的として,投資対象資産のリスクが均等になるように配分比率を決める運用方法』程の意味合いを容易に理解させる『リスク均等』の文字を表してなるものであるから,これを本願指定役務中,前記文字に照応する役務,例えば『有価証券の売買』等に使用しても,『投資対象資産のリスクが均等になるように配分比率を決める運用方法による有価証券の売買』等であることを理解させるに止まり,単に役務の質,内容,効能を表示するにすぎないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権による証拠調べをした結果,別掲のとおりの事実を発見したので,商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対し,平成26年9月25日付けで証拠調べ通知書を送付した。
第4 請求人の意見
前記第3の証拠調べ通知に対し,請求人は,平成26年10月28日受付けの意見書において,要旨以下のように主張した。
1 本願商標は,意見書と同時に提出した手続補正書により,拒絶理由に該当していた指定役務を削除する補正を行った。
2 本願商標は,「リスク均等」の文字からなるところ,その構成中の「リスク」の文字に「危険。危険度。」の意味があり,「均等」の文字に「[名・形動]二つ以上の物事の間が互いに平等で差がないこと。また,そのさま。」等の意味があるとしても,「リスク均等」の文字全体は,デジタル大辞泉にも,ウィキペディアフリー百科事典にも何ら記載がなく,親しみのある語とはいえない。
本願商標は,全体として「投資対象資産のリスクが均等になるように配分比率を決める運用方法」程の意味合いを暗示させる場合が例えあったとしても,証拠調べの結果として示されたインターネット情報(以下「インターネット情報」という。)の別掲(5)及び(6)には,「リスク均等」の語の記載も示唆もなく,「リスク均等」の語の具体的な意味合いを示す記載も示唆もないことから,「リスク均等」の語が,需要者をして,本願の指定役務についての質等を直接的かつ具体的に表示したものとして一般的に理解されていることを裏付ける証拠資料足り得ないと思料する。
「リスク・パリティ」の語を記載したインターネット情報は高々4件提示できたとしても,「リスク均等」の語を記載したインターネット情報は全く提示されていないものである。
そして,インターネット情報の別掲(1)ないし(4)からは,「リスク均等」の語に接する需要者をして,本願の指定役務についての質等を直接的かつ具体的に表示したものとして一般的に理解されるとはいい難いものであり,むしろ,構成全体をもって一体不可分の一種の造語として認識されるものとみるのが相当である。
また,該インターネット情報からは,本願商標が,その指定役務を取り扱う業界において,役務の質等を表示するものとして,取引上,普通に採択,使用されている事実を発見できなかった。
してみれば,本願商標は,需要者に役務の質・内容等を表すものとして認識され得るものではなく,全体をもって,一種の造語を表したものとして認識されるとみるのが相当であり,これをその指定役務に使用しても,自他役務の識別標識としての機能を十分に果し得るものであり,かつ,役務の質について誤認を生ずるおそれもないものである。
したがって,本願商標が,商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶せんとする判断は,妥当でなく,取消しを免れない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は,「リスク均等」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中,「リスク」の文字は,「危険,恐れ」等の意味を有する英語の「risk」の読みを,「均等」の文字は,「平等で差のないこと。平均していること。」を意味する語であることから,「リスク均等」の文字からは,「危険が平均していること」程の意味合いを理解させるものである。
そして,本願指定役務の対象である「有価証券の売買」等について,別掲のとおりのインターネット情報(5)及び(6)のほか,ファンドが投資している「有価証券」について以下の情報がある。
(7)「三井住友アセットマネジメント」のウェブサイトにおいて,「ファンドのリスクおよび留意点」の頁において,「■信用リスク」の項目の下,「ファンドが投資している有価証券や金融商品に債務不履行が発生あるいは懸念される場合に,当該有価証券や金融商品の価格が下がったり,投資資金を回収できなくなったりすることがあります。これらはファンドの基準価額が下落する要因となります。」の記載がある。
(http://www.smbcnikko.co.jp/inv/item/pdf/risk/3962.pdf#search=’有価証券懸念投資’)
(8)「ベイビュー・アセット・マネジメント株式会社」のウェブサイトにおいて,「ファンド情報」の「投資リスク」には,「信用リスク」の項目の下,「組入れられる株式や債券等の有価証券やコマーシャル・ペーパー等短期金融商品は,発行体に債務不履行が発生あるいは懸念される場合には価格が下がることがあり,また,投資資金を回収できなくなることがあります。」の記載がある。
(http://www.bayview.co.jp/fund_info/risk/index.html)
上記のとおり,金融商品である「ファンド(投資信託)」の管理運用においては,投資する各資産(例えば,有価証券等)の値動きが,ファンド全体に与える影響(リスク寄与度)により,投資資金を回収できなくなるリスクがあり,そのリスクを,概ね「均等」とするように資産配分の調整を行なう運用方法があり,例えば,「各資産それぞれの価格変動がポートフォリオ全体のパフォーマンスに与える影響度(=リスク寄与度)がおおむね均等となるように配分比率を調整する運用戦略」(同(2)),「ファンドでは各資産の基準価額への影響度が均等となるように資産配分の調整を行ないます。」(同(3)),「リスク・パリティとは組入資産クラスにリスクを均等配分することを意味します。リスクを一部の資産に偏らないように配分すること・・・」(同(4))のように記載されている実情からすれば,「リスク」の語と「均等」の語とを一連に「リスク均等」と表した文字からは,これに接する需要者に,ファンド(投資信託)の「投資対象資産のリスクが概ね均等になるように配分比率を調整する運用方法」程を表すものと理解,認識させるものということができる。
そして,本願指定役務の対象である「有価証券」は,「私法上の財産権を表示する証券で,その権利の移転が証券によってなされるべきもの。手形・小切手・貨物引換証・船荷証券・倉庫証券・株券・債券・商品券・抵当証券の類。」(広辞苑第六版)であって,インターネット情報(5)ないし(8)によれば,上場有価証券等の売買等にあたっては,投資信託,投資証券,受益証券発行信託の受益証券等の裏付けとなっている株式,債券,投資信託,不動産,商品等の価格や評価額の変動に伴い,上場有価証券等の価格が変動することによって損失が生じるおそれがある。
そうとすれば,「リスク均等」の文字からなる本願商標を,投資対象資産のリスクが概ね均等になるように配分比率を調整する運用方法による「有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券等清算取次ぎ,有価証券の売出し」に使用する場合には,役務の質(内容)を表すものと理解,認識させるにすぎず,自他役務の識別標識としての機能は果たし得ないものと認められる。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
請求人は,「『リスク均等』の語に接する需要者をして,本願の指定役務についての質等を直接的かつ具体的に表示したものとして一般的に理解されるとはいい難いものであり,むしろ,構成全体をもって一体不可分の一種の造語として認識されるものとみるのが相当である。また,該インターネット情報からは,本願商標が,その指定役務を取り扱う業界において,役務の質等を表示するものとして,取引上,普通に採択,使用されている事実を発見できない」旨の主張をしている。
しかしながら,商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは,平成12年(行ケ)第76号(「負圧燃焼焼却炉」判決)において,「商標法3条1項3号は,取引者,需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき,それ故に登録を受けることができないとしたものであって,該表示態様が,商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか,現実に使用されている等の事実は,同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」旨判示されているものであり,例え,「リスク均等」の文字を記載したインターネット情報がないとしても,上記1のとおり,「ファンド(投資信託)」の管理運用においては,「投資対象資産のリスクが概ね均等になるように配分比率を調整する運用方法」による役務の提供が行われている実情がある。
そうとすれば,本願商標は,これを,ファンド(投資信託)の管理運用と関連する「有価証券」等を対象とする本願指定役務について使用する場合,取引者,需要者は,「投資対象資産のリスクが概ね均等になるように配分比率を調整する運用方法」による役務の提供であることを表すものと理解,認識するものというべきである。
よって,請求人の主張は,採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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