Trademark Appeal Case
色彩の識別性と記述性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2013−22062(T2013−22062/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第11類「電球類及び照明用器具」を指定商品として、平成24年10月17日に立体商標として登録出願されたものである。
そして、その指定商品については、当審における平成26年7月23日付け手続補正書により、第11類「自動車用電球」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、直方体をオレンジ色と青色とに塗り分けた立体的形状からなるにすぎず、全体として特色のある構成態様であるとは認めがたいものであるから、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、自他商品の識別標識とは理解しえず、何人の業務に係る商品であるかを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした審尋及び証拠調べ通知
(1)平成26年6月10日付け審尋により、請求人に対し、本願を拒絶する適用条文である商標法第3条第1項について、原査定では、本願商標が同項第6号に該当するものとしたことに対し、当審においては、本願商標が同項第3号に該当するものである旨の通知をした。
(2)本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果を別掲2に示す事実として、請求人に対し、平成26年6月10日付け審尋及び同年9月9日付け証拠調べ通知によってこれを開示し、期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。
4 審尋及び証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、前記3の審尋及び証拠調べ通知に対して、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第15号証ないし甲第32号証を提出した。
(1)商標法第16条違反
商標法第55条の2第2項本文で準用する同法第16条の規定により、審判官は、政令で定める期間内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは、商標登録をすべき旨の審決をしなければならないとされる。商標法施行令第2条第1項によれば、この「政令で定める期間」とは、商標登録出願の日から1年6月とされている。
本願の出願日は、平成24年10月17日であるところ、出願日から1年6月後に該当する同26年4月17日を経過した後である同年6月13日付けで発送された前記3の審尋において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨を新たに通知することは許されないというべきであるから、同号に該当するとの理由によって拒絶されることはない。
審判合議体は、本願商標が商標法第3条第1項第6号には該当しないことを自認している以上、本願について登録審決をすべきである。
(2)審尋で示された包装容器について
前記3の審尋において示された包装容器のうち、黒色をベースとして、これに照明の色を表す色彩を施してなるもの(甲16ないし甲18、別掲2(1)アないしウ。)、黒色とのコントラストにおいて、電球色、昼白色、昼光色を表す目的で赤色、緑色、青色がそれぞれ用いられているもの(甲21、別掲2(1)エ。)、明かりの色を切り替えることができる商品であることを示す目的で薄桃色を基調としての白、薄橙色を基調としての白が用いられているもの(甲22、別掲2(1)オ。)、白色とのコントラストにおいて、電球色、昼白色を表す目的で、それぞれ青色や橙色が用いられていることを端的に示すもの(甲23、別掲2(1)キ。)については、これらの色彩は包装容器の内容物(商品)の品質を表示するものである。
また、甲第24号証(別掲2(1)カ)の包装容器に用いられている色彩は、直ちに内容物の品質を表示するものであると理解されることはないかもしれないが、この僅か1例のみをもって、本願商標の登録性を否定するにはあまりに根拠に乏しいものである。
これらに対し、本願商標における青色と赤色とは、いずれも照明の色を表すために用いられ得るものであるから、この2色が同時に用いられている本願商標にあっては、当該色彩が内容物である蛍光灯ないし電球の色彩を表す目的で用いられているものと認識されることはないと解するのが相当である。
この点において、審尋において示された例と本願商標とは大きく事情を異にし、本願の指定商品との関係において、青色と赤色を本願商標のように塗りつぶしてなる立体的形状は、その形状それ自体は包装容器としてありふれた形状といい得るとしても、その色彩の特殊性に鑑みれば、十分に自他商品識別標識としての機能を発揮し得るものと解するのが相当である。
なお、審尋において示された包装容器は一般の電球に係るものであるから、前記1のとおり「自動車用電球」のみに補正された本願の指定商品に係る分野の包装容器には該当しないものである。
(3)証拠調べ通知書で示された包装容器について
審判合議体は、前記3の審尋において、本願商標について、「第1図の左手前(第2図の右手奥)5分の2程の上面及び側面が青色で、第1図の右手奥(第2図の左手前)5分の3程の上面及び側面が赤色でそれぞれ矩形状に塗りつぶされているもの」であると特定しているのであり、色彩こそ違うとしても本願商標と同じように色彩が配されたデザインの包装容器の例が示されてしかるべきところ、前記3の証拠調べ通知書により示された包装容器において、かかる例は皆無に等しいと評価せざるを得ず、これのみでは、本願商標のデザインと「同程度のものが、商品の包装容器の装飾的又は背景的なデザインとして多数存在する」とは到底いい得ない。
(4)本願商標の継続的な使用
本願商標は、遅くとも昭和49年(1974年)9月には、請求人の商品に係る識別標識として使用されていたものであり(甲26ないし甲30)、その後40年を経過した現在においても請求人の商品に係る識別標識として使用され続けているものである(甲31及び甲32)。
したがって、本願商標は、識別標識としての機能を発揮し得ると考えられるものであり、かつ、このように現に識別標識として使用され続けているものであるから、本願商標について登録を認めないとすれば、これに類する商標の使用を適切に排除できず、需要者が誤認混同を生ずる状況を放置する結果を招くことになり、このような事態は、需要者の利益保護も目的とする商標法の精神に悖るものである。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、青色と赤色の色彩を施された横長の直方体からなる立体的形状を2枚の斜視図(以下、別掲1記載順に「第1図」及び「第2図」という。)により表してなるところ、第1図の左手前(第2図の右手奥)5分の2程の上面及び側面が青色で、第1図の右手奥(第2図の左手前)5分の3程の上面及び側面が赤色でそれぞれ矩形状に塗りつぶされているものである。
そして、本願商標は、その指定商品が「自動車用電球」であることに請求人の主張を併せみれば、商品「自動車用電球」の包装用容器の形状からなるものを表したものと認められる。
ところで、商品又は商品の包装(以下「商品等」という。)の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。そうすると、商品等の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である(知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)10215号同20年5月29日判決参照。)。
これを本件についてみるに、一般に、直方体は、極めて簡単で、かつ、ありふれた立体的形状と認識され得るものであって、そのような立体的形状に平面的な標章が付されている場合、その標章が明らかに自他商品の識別標識としての使用態様で用いられているものとは認められないときは、構成全体としても自他商品の識別標識としての機能を有しないものということができるところ、多くの商品が直方体状の包装容器に収納されて取引に資され、通常、それらの包装容器には、何らかの色彩が施されている実情がある。
また、商品を販売するにあたって、その商品の包装容器に商品名及び製造販売業者名等の表示をする場合に、需要者の注意や注目を惹くために、その表示文字を際立たせること、需要者の購買意欲を高めるために、包装容器の美観を向上させること、又は、商品の品質等のイメージを伝えることに、色彩を用いた装飾的又は背景的図形を施すことも一般的に行われている実情にある。
さらに、前記3の審尋及び証拠調べ通知で示した別掲2のとおりの当審における職権調査によれば、指定商品「自動車用電球」及び「電球類及び照明用器具」に係る分野の包装容器においても同様の実情がうかがえる。
以上よりすれば、本願商標は、商品の包装容器としてありふれた形状といえる直方体からなるものであり、これに色彩が施された本願商標の構成全体について、その立体的形状に付された青色と赤色からなる矩形部分も、本願の指定商品に係る分野においては、同程度のものが商品の包装容器の装飾的又は背景的なデザインとして多数存在するものであるから、これが本願商標の立体的形状に使用されたときには、需要者が、本願の指定商品の包装容器において、通常採択しうる範囲での美感を高めるためのデザインと認識するに止まるものというのが相当である。
したがって、本願商標は、その指定商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他商品の識別標識としての機能を有さないものであるといわざるを得ないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
請求人は、前記4(4)のとおり、本願商標が自他商品の識別標識としての機能を発揮し得るものであり、かつ、現に識別標識として使用され続けているものであるから、商標登録されるべきと主張し、証拠方法として、甲第26号証ないし甲第32号証を提出した。
ア 請求人の主張及び提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人に係る商品カタログの写しである昭和49年9月付け(甲26)及び同50年3月付け(甲27)の「KOITO 自動車用電球」、並びに、昭和50年3月付け(甲28)、同年9月付け(甲29)及び同52年10月付け(甲30)の「KOITO AUTO−ACCESSORIES」において、「KOITO」及び「自動車用電球」の文字並びに電球の図形が書され、背景色として青色と赤色の色彩を施された横長の直方体からなる包装容器と、その包装容器の内容物である電球とが一緒に撮影された写真が掲載されている。
(イ)請求人に係る商品カタログの写しである「KOITO AUTO PARTS & ACCESSORIES VOL.9」(甲31)において、「四輪車HIDバルブ」、「四輪車ハロゲン前照灯用」、「二輪車ハロゲン前照灯用」及び「ハロゲンフォグランプ用」の電球(ノーマルバルブ)が紹介されており、それぞれの欄に、「KOITO」及び「HALOGEN」等の文字並びに電球の図形が書され、背景色として青色と赤色の色彩を施された横長又は縦長の直方体からなる包装容器と、その包装容器の内容物である電球の写真が掲載されている。
(ウ)2014年10月17日に紙出力された日付のある請求人のウェブサイトの写し(甲32)において、「自動車用電球」の見出しの下、「フォグランプ用純正交換ハロゲンバルブ」及び「ヘッドランプ用純正交換ハロゲンバルブ」が紹介されており、それぞれの欄に、「KOITO」及び「HAROGEN」等の文字並びに電球の図形が書され、背景色として青色と赤色の色彩を施された横長の直方体からなる包装容器と、その包装容器の内容物である電球の写真が掲載されている。
イ 本願商標と使用に係る商標との同一性について
上記アによれば、請求人は、昭和49年9月から現在まで、本願の指定商品「自動車用電球」の包装容器に、「KOITO」等の文字や商品の図形が書され、背景色として青色と赤色の色彩が施された横長又は縦長の直方体からなる立体的形状を使用していることが推認できるものの、「KOITO」等の文字や商品の図形を除いた青色と赤色の色彩が施された横長又は縦長の直方体からなる立体的形状が、それのみで自他商品の識別標識としての機能を発揮する態様により使用されている例を見いだすことはできない。
よって、本願商標は、提出に係る各証拠によっては、本願商標と使用に係る商標が同一性を有しているということはできない。
ウ 使用による識別力の獲得について
上記イのとおり、「KOITO」等の文字や商品の図形が付された包装容器は、本願商標と同一とは認められないものであり、使用に係る商標において、自他商品の識別標識としての機能を発揮している部分は「KOITO」の文字部分であるから、請求人提出の証拠は、本願商標がその指定商品について使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるものになっていることを証明するものではない。
そして、当審において職権により調査しても、本願の指定商品を取り扱う業界において、本願商標が請求人又は請求人の取扱いに係る商品を表わすものとして、取引者、需要者において一般に広く知られている事実を発見することができない。
エ したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえない。
(3)請求人の主張について
ア 商標法第16条違反について
請求人は、商標法第55条の2第2項本文で準用する同法第16条の規定により、審判官は、政令で定める期間内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは、商標登録をすべき旨の審決をしなければならないとされるところ、前記3の審尋において通知された本願商標が同法第3条第1項第3号に該当するものである旨の拒絶の理由は、政令で定める期間経過後に初めて発見された拒絶の理由であるから、本願商標が同号に該当するとの理由によって、本願が拒絶されることはない旨主張している。
そこで検討するに、商標法第3条は、商標登録の要件を定めたものであって、同条第1項は、自己の業務に係る商品又は役務についての出所表示機能を欠くとする商標を列挙するものであるところ、その規定の体裁及び内容等からみて、同項第1号から第5号までの規定は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」とみなすものを例示的に列挙するものであり、同項第6号の規定は、同項第1号から第5号までにおいて例示的に列挙されたもの以外に、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」と認められるものを総括的、概括的に規定しているものと認められる。
本願においては、拒絶査定で援用された拒絶理由通知書は、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものとし、前記3の審尋の内容(上記(1)と同旨の内容である。)は、本願商標が同項第3号に該当するものとしているところ、商標法第3条第1項の該当性の判断に関しては、本願商標が青色と赤色(拒絶理由通知書ではオレンジ色。なお、色彩については原本参照のこと。)の色彩を施された直方体からなる立体的形状であることを前提として、拒絶理由通知書においては、全体として特色のある構成態様であるとは認めがたく、本願の指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、自他商品の識別標識とは理解し得ないとし、本件審尋の内容は、本願の指定商品の分野における取引の実情をも考慮すれば、直方体は商品の包装容器としてありふれた形状であり、本願商標の色彩部分は、商品の包装容器について通常採択しうる範囲での美感を高めるためのデザインと認識するに止まるものであるから、全体として指定商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであって、自他商品の識別標識としての機能を有さないとするものである。
すなわち、原審における拒絶の理由と本件審尋の内容とは、いずれも本願商標を直方体と青色と赤色(オレンジ色)の色彩によって構成された立体的形状と認定し、これを本願の指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を有するものではなく、商標法第3条第1項所定の商標登録の要件を欠く商標に該当するという共通の結論に至るものであるから、両者は、その判断内容において実質的に相違するものではなく、本件審尋が、新たな拒絶理由を示したものではない。
そうすると、本件審尋が原審における拒絶理由と異なる拒絶理由を示すものであることを前提とする請求人の上記主張は、採用することができない。
イ 指定商品の分野における包装容器について
請求人は、前記3(2)の証拠調べ通知書により示された包装容器の例について、本願商標と同じように色彩が配されたデザインの包装容器の例は皆無に等しいと評価せざるを得ず、これのみでは、本願商標のデザインと「同程度のものが、商品の包装容器の装飾的又は背景的なデザインとして多数存在する」とは到底いい得ない旨主張している。
しかしながら、証拠調べ通知書は、本願の指定商品「自動車用電球」の包装容器の形状・デザインの例を示しているところ、これらの例が本願商標と色彩又は色彩部分の形状(立体的形状に占める割合)において実質的に同一ではないものであるとしても、これらは、本願の指定商品を取り扱う業界において、装飾的又は背景的なデザインとして色彩が施された直方体の立体的形状からなる商品の包装容器が多数存在することを証するものであること上記(1)のとおりであるから、これらの取引の実情に鑑みれば、取引者、需要者が、本願商標から容易に指定商品の包装容器を表したものと看取、理解し、これを商品の包装の形状を表示したものとして認識するにとどまるものであるというのが相当であり、また、請求人は上記のとおり主張し、請求人に係る商品カタログの写し等を提出するのみで、本願商標が単独で自他商品の識別標識としての機能を有することを立証する具体的な証拠を何ら提出していないものであるから、請求人の主張は採用できない。
(4)まとめ
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、同条第2項の要件を具備するものとはいえないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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