sokuhyo

Trademark Appeal Case

記述的工法名の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2013−900131(T2013−900131/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5555058号商標の指定役務中の第37類「建設工事,建築工事に関する助言」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務についての商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5555058号商標(以下「本件商標」という。)は,「靱性モルタルライニング工法」の文字を標準文字により表してなり,平成24年7月4日に登録出願,第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定役務として,同年12月13日に登録査定,同25年2月8日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由の要点

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標の登録は取り消されるべきである旨申立て,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第41号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4第1項第16号について

本件商標は,「靱性を有するモルタルを張り付ける施工方法」又は「靱性モルタルを使用したライニング工法」程の意味合いを認識させるものであり,これを本件指定役務中の上記意味合いに照応する役務に使用するときには,単に役務の質,用途,態様,提供の方法等を表示するにすぎず,また,上記役務以外の役務に使用するときには役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。

2 商標法第3条第1項第1号及び同第2号について

本件商標は,本件指定役務の質,用途,態様,提供の方法等を端的に示す語であり,その業界において一般用語として多数使用されていることから,本件指定役務の関係における普通名称又は慣用商標となっている。

第3 本件商標に対する取消理由

1 本件商標は,前記第1のとおり「靱性モルタルライニング工法」の文字からなるところ,これは,「靱性」「モルタル」「ライニング」及び「工法」の語を結合したものと容易に認識し得るものであり,各語の建築用語としての語義は,次のとおりである(「建築大事典第2版〈普及版〉」株式会社彰国社発行)。

(1)「靱性」は,粘り強さのこと。靱性に富む材料は弾性限度を超えても,破壊するまでに大きく変形することが可能である。鋼材はこの代表的なもの。「粘り強さ」ともいう。

(2)「モルタル」は,広くは細粒の骨材と結合硬化材を練り混ぜたもの。一般にセメント,砂,水を練り混ぜたセメントモルタルをいう。このほか,石灰モルタル,アスファルトモルタルなどがある。

(3)「ライニング」は,タンク,管などの内側壁を耐熱材,耐薬品材などで被覆すること。例えば管のビニルライニング,ゴムライニングなどがある。

(4)「工法」は,建物の組立て方,造り方,施工の方法。

そうすると,本件商標は,前記各語の語義から,「靱性(粘り強さ)のあるモルタルによりライニング(被覆)する施工の方法」ほどの意味合いを想起させるものである。

2 申立人の提出した証拠及び職権調査によれば,「靱性モルタルライニング工法」の文字及びこれを構成する文字に関連し,以下の使用事実がある。

(1)「靱性モルタル」について

ア 平成12年頃に「高靱性モルタル」と称される「鋼繊維混入率の高い鋼繊維補強モルタル」が開発され(土木学会第55回年次学術講演会(平成12年9月);甲6の2),その「高靱性モルタル」の文字が,「高靱性セメント複合材」「繊維入りモルタル」などの説明とともに,高い靱性を有するモルタルを表すものとして,「コンクリート工学年次論文集第26巻第2号2004年/社団法人日本コンクリート工学協会」「日本建築学会大会学術講演概集(東北)2009年8月」などの論文や平成21年12月24日,同22年9月8日発行の特許公報において紹介されている(甲7の1,2,甲8の1〜3,甲9の1,2)。

イ 「コンクリート技術シリーズ/複数微細ひび割れ型繊維補強モルタルの評価と利用/土木学会/平成17年7月」及び「土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)/FRPグリッドと吹付け靱性モルタルによる下面増厚補強はりの耐力」には,「高靱性セメント複合材である靱性モルタル」「引張応用力下でひずみ硬化の性質を持ち,かつ,複数微細ひび割の特徴を有する靱性モルタル」などのように,「靱性モルタル」の文字が,靱性を有するモルタルを表すものとして使用されている(甲6の1,3)。

ウ 近畿農政局・大和紀伊平野農業水利事務所作成の「平成17年度/大和紀伊平野農業水利事業(二期)/紀伊平野藤崎井水路粉河工区その2改修工事/特別仕様書」(甲21の1)のほか複数の行政機関が発注する水路の補修工事に関する書類に,「靱性モルタル」の文字が,水路の表面被覆工事に用いる被覆材の名称として使用されている(甲21〜24,27(枝番号を含む。))。

また,株式会社興和(甲13)のほか複数の建設業者のホームページにおいて,「高靱性繊維補強セメント複合材」「多量の特殊繊維を混入」などの説明とともに,「靱性モルタル」の文字が,水路の表面被覆工事に用いる被覆材の名称として使用されている(甲12〜19)。

(2)「モルタルライニング工法」について

平成6年8月17日から同17年12月9日の間に公告又は登録された特許の明細書に,「モルタルライニング工法」の文字が,構造物にモルタルをライニング(被覆)する施工方法を表すものとして使用されている(甲36の2〜6)。

(3)「靱性モルタルライニング工法」について

ア 「靱性モルタルライニング工法」は,商標権者を開発者として,2011年(平成23年)7月21日に,国土交通省の管理する「新技術情報提供システム(NETIS)」に登録されている(SK−110007−A)。そして,その副題には「高靭性繊維補強複合材を利用した補修補強工法」と記載されている(http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Search/NtDetail1.asp?REG_NO=SK-110007)。

イ 近畿農政局・大和紀伊平野農業水利事務所作成の「平成17年度/大和紀伊平野農業水利事業(二期)/紀伊平野藤崎井水路粉河工区その2改修工事/工事数量表」のほか複数の行政機関が発注する水路の補修工事に関する書類に,「靱性モルタルライニング工法」又は「靱性モルタルライニング工」の文字が,水路の表面被覆工事の施工方法を表すものとして使用されている(甲21〜30(枝番号を含む。))。

また,掲載日は特定できないが,株式会社興和(甲13)のほか複数の建設会社のホームページに,「靱性モルタルライニング工法」又は「靱性モルタルライニング」の文字が水路の表面被覆工事の施工方法を表すものとして使用されている(甲13〜20)。

そして,これら行政機関の発注する工事関連の書類や建築会社のホームページには,「靱性モルタルライニング工法」「靱性モルタルライニング工」などの文字とともに,その工事の被覆材として「靱性モルタル」の記載がある。

ウ 平成20年4月に,株式会社レックス,株式会社興和,日本サミコン株式会社,株式会社福田組,第一建設工業株式会社コンクリート事業部及び株式会社デーロス・ジャパン新潟営業所を正会員とする「新潟県靱性モルタルライニング工法協会」が設立された。同協会は,施工主を行政機関などとする「靱性モルタルライニング工法」と称する施工方法による水路補修工事などの工事を,平成20年度に28件,平成21年度に30件行った(甲39の1〜5)。

3 判断

以上のとおり,「靱性モルタルライニング工法」は,商標権者を開発者として2011年(平成23年)7月21日に国土交通省の管理する「新技術情報検索システム(NETIS)」に登録されていることが認められる。

しかしながら,「靱性モルタルライニング工法」の文字は,その登録前から,「高靱性繊維補強セメント複合材」などの靱性を有するモルタルを使用した水路の表面被覆工事の施工方法を表すものとして,当該工事を発注する行政機関や施工業者などにより,使用されていたことが認められる。

加えて,「靱性」などの本件商標を構成する各語の語義から想起する意味合い並びに「靱性モルタル」及び「モルタルライニング工法」の文字の使用状況などを総合考慮すれば,本件商標は,「靱性を有するモルタルをライニング(被覆)する施工方法」の意味合いを認識させるものである。

そうすると,本件商標は,これをその指定役務中の「靱性を有するモルタルをライニング(被覆)する工事,当該工事に関する助言」に使用をするときには,役務の質,提供の方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,また,これを前記以外の「建設工事,建築工事に関する助言」に使用するときは,その役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標と言わざるを得ない。

したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

4 むすび

以上のとおり,本件商標は,その指定役務中の「建設工事,建築工事に関する助言」について,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。

第4 商標権者の意見

商標権者は,前記第3の取消理由について,指定した期間内に意見を述べていない。

第5 当審の判断

前記第3のとおり,本件商標は,その指定役務中の「建設工事,建築工事に関する助言」について,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。

しかしながら,本件商標は,これをその指定役務中の「建築設備の運転・点検・整備」について使用しても,役務の質,提供の方法等を普通に用いられる方法で表示する商標とはいえず,かつ,役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標ともいえないから,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。また,そうである以上,商標法第3条第1項第1号及び同第2号にも該当しない。

したがって,本件商標の指定役務中,第37類「建設工事,建築工事に関する助言」についての登録は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものである。

しかし,その余の指定役務についての登録は,取り消すべき理由はないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきものである。

よって,結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。