Trademark Appeal Case
周知商標と要部類似
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2014−900233(T2014−900233/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5671274号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成25年8月26日に登録出願、第4類「潤滑油,モーターオイル,切削油」を指定商品として、同26年3月24日に登録査定され、同年5月23日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
(1)申立人が引用する商標
申立人が引用する商標(以下「引用商標」という。)は次のとおりであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
[引用商標]
国際登録第955050号商標
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品 第12類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2008年(平成20年)1月23日
優先権主張 Germany 2007年8月22日
設定登録日 平成21年12月4日
(2)具体的理由
ア 商標の類似性
(ア)本件商標について
本件商標は、これをその指定商品に使用したときには、「ENGINE」の文字が、商品の用途を示すものと看取・認識され、大きく顕著に表された「UP」が自他商品の出所識別標識としての機能を果たすものである。
(イ)引用商標
引用商標「UP!」は、申立人が自動車の商標として2007年から使用し、本件商標の出願日前には周知・著名となっていたものである。
(ウ)商標の類似性について
本件商標と引用商標は、全体の外観において違いが見られるものの、その要部は「UP」で共通し、書体も特殊なものでもないことから、その外観は類似するというべきであり、「UP」から生ずる「アップ」の称呼と「上へ」等の観念も共通するものである(甲3、甲4)。
してみれば、本件商標は、引用商標と要部の外観が類似し、称呼と観念を共通にするので、引用商標と類似の商標である。
イ 引用商標の周知著名性と独創性
引用商標は、申立人が商品「自動車」について使用し、本件商標登録出願日前には、需要者間において、申立人の取扱いに係る商品を表示する商標として広く認識され周知著名となっていたものである。
(ア)引用商標は、申立人が、2007年9月のフランクフルトモーターショーで発表した自動車の名称(商標)として採択したものであり、同年10月の東京モーターショー、同年11月のロサンゼルスオートショーに、この「UP!」を出展している(甲5)。
(イ)自動車「UP!」は、2012年1月には「日本カーデザイン大賞」の「ゴールデンマーカー・トロフィー」を受賞(甲6)し、同年4月には「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー 2012」に選出され(甲7)、同年11月には日本の「RJCカー・オブ・ザ・イヤー インポート賞」を受賞しており(甲8)、自動車の需要者・取引者に限らず日本全国において優秀な自動車として広く知られるようになり、瞬く間に周知・著名性を獲得したものである。
(ウ)自動車「UP!」は、2011年から欧州で販売が開始され、日本においては2012年10月1日の販売開始となったが、発売開始月に外国メーカー車モデル別登録台数で首位を獲得し(甲9)、2013年には12,322台が新車登録され、年間の同モデル別新車登録台数で第5位(甲10)となっている。
(エ)自動車「UP!」は、申立人の子会社「フォルクスワーゲン グループ ジャパン 株式会社」が全国に展開するディーラーを始めとして、自動車を取り扱う販売店(中古車販売店を含む)にて2012年10月以降販売されているのみならず、販売された車は、「UP!」のマーク(商標)が付された状態で日本各地で走行し、また、駐車場等に置かれていることからすれば、需要者・取引者のみならず一般人も目にするところであり馴染みのあるものとなっている。
(オ)以上の事実からすれば、引用商標「UP!」は、本件商標登録出願日前には、申立人の商標として周知著名なものとなっていたことは疑念のないところである。
ウ 商品の関連性
本件商標の指定商品は、引用商標に係る商品「自動車」と同一又は類似の関係にあるとはいえないが、指定商品中「潤滑油,モーターオイル」は、自動車とは極めて密接な関係にある商品であり、自動車の使用者(需要者でもある)にとっては馴染みの深い商品である。
エ 本件商標の使用態様と取引の実情
本件商標は、通常は使用に係る商品の容器や包装に表示されるものであり、当該商品の需要者・取引者は、商品の容器等の表示を目印として商品を購入するのが実情である。
そして、本件商標の指定商品中「潤滑油,モーターオイル」は、自動車に使用されるものであるところ、自動車メーカーは自己の自動車のエンジン等に適した潤滑油やモーターオイルの使用を需要者に取扱説明書等で提唱していること、自動車メーカーやメーカー系列の自動車販売事業者等が当該メーカー名を表示した自動車部品や潤滑油、モーターオイル等を販売していること、メーカー系列の自動車販売事業者等では販売店に修理工場等の修理点検部門を併設しており、これら修理工場等ではメーカー名や車種名等の表示された自動車用部品や潤滑油、モーターオイルが使用されていること等からすれば、本件商標を指定商品中の「潤滑油,モーターオイル」に使用したときには、これに接する需要者・取引者は、自動車「UP!」を連想又は想起し、自動車「UP!」のエンジン用「潤滑油,モーターオイル」であると認識するといえる。
オ 商標法第4条第1項第15号該当性
本号についての知財高裁判決や最高裁判決(平成10年(行ヒ)第85号)の判示事項に即して、本件商標について検討すると、本件商標は、指定商品中「潤滑油,モーターオイル」に使用した場合、申立人の商品「自動車」を示すものとして周知・著名な引用商標と類似するものであること、引用商標は、馴染みのある語ではあるが、「自動車」の分野では申立人の商品を示すものとして周知・著名であること、さらに、該指定商品は自動車と取引者及び需要者が共通すること等に照らせば、商標権者が本件商標を指定商品中「潤滑油,モーターオイル」に使用した場合、これに接する取引者・需要者は自動車「UP!」を想起し又は連想し、当該商品が申立人の子会社、関係会社若しくは系列会社など営業上緊密な関係にある者、又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所について誤認を生じさせるものである。
また、本件商標は、申立人の表示の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招く結果を生じかねないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の「混同を生ずるおそれがある商標」にあたるといえるものである。
(3)結論
上記したとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
よって、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきである
3 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)申立人は、2007年9月のフランクフルトモーターショーでコンセプトカーとして「concept up!」を発表し、同年10月の東京モーターショーに「space up!」なる自動車、同年11月のロサンゼルスオートショーに「space up! blue」なる自動車を出展した(甲5)。
(イ)申立人の自動車「フォルクスワーゲン『up!』」(以下「申立人自動車」という。)は、2012年1月に「日本カーデザイン大賞」の「ゴールデンマーカー・トロフィー」、同年4月に「ワールド カー オブ ザ イヤー 2012」、同年11月に「2013年次 RJCカーオブザイヤーインポート」を受賞した(甲5〜甲8)。
(ウ)申立人自動車は、2011年(平成23年)から欧州で販売が開始され、我が国では2012年(平成24年)10月から販売開始され、発売開始月に外国メーカー車モデル別販売台数で首位を獲得し、2013年には12,322台が新車登録され、年間の外国メーカー車モデル別新車登録台数で第5位となった(甲5〜甲10)。
(エ)申立人自動車は、外国メーカー車モデル別新車登録台数で、販売が開始された2012年(平成24年)下半期9位、2013年(平成25年)上半期5位、同年下半期7位、2014年(平成26年)上半期10位、同年下半期9位であった。(職権調査 http://www.jaia-jp.org/wp-content/uploads/Model_halfyear.pdf)。
(オ)申立人提出の甲各号証及び職権調査のデータには、申立人自動車が「up!」及び「アップ!」と表わされている。
イ 上記アの事実に加え、引用商標が別掲2のとおり通常の書体といい得る「UP!」の文字からなるものであること、引用商標と上述の申立人自動車を表す文字「up!」とは大文字と小文字の差はあるものの、同一文字であって、かつ外観において近似する文字からなるものであることをあわせ考慮すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時前から、申立人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして、その需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は本件商標の登録査定時においても継続していたものと判断するのが相当である。
なお、「up」及び「UP」の文字は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標は、別掲1のとおり、「ENGINE」と「UP」の文字からなり、その構成態様から、顕著に表された「UP」の文字が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであり、該「UP」の文字に相応して「アップ」の称呼及び「上へ」等の観念も生じるものである。
イ 引用商標は、別掲2のとおり「UP!」の文字からなり、該文字に相応し「アップ」の称呼及び「(自動車のブランドとしての)UP!」の観念を生じるものである。
ウ そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、前者の構成中「UP」の文字部分と後者との比較においては、両者は外観において、2文字と3文字の少ない文字構成にあって語尾の「!」の有無の差異によって容易に区別し得るものとみるのが自然である。また、称呼においては「アップ」の称呼を共通にするものである。さらに、観念においては前者の「上へ」等と後者の「(自動車のブランドとしての)UP!」とは、相紛れるおそれのないことは明らかである。
そうとすれば、両者は、称呼を共通にするものの、外観において容易に区別し得、観念においては相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似のものであって、別異のものと判断するのが相当である。
また、本件商標の構成全体と引用商標とは、さらに非類似の商標であって、別異の商標というべきものであることは明らかである。
(3)商標法第4条第1項第15号の該当性について
引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前から需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標と引用商標が非類似の商標であって別異の商標であることは上記(2)のとおりであり、加えて、「UP」の文字が我が国で親しまれた語であることにより、本件商標は、看者をして引用商標を想起又は連想するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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