sokuhyo

Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2014−890024(T2014−890024/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5222176号商標(以下「本件商標」という。)は、「J.ESTINA」の文字を標準文字で表してなり、平成20年6月11日に登録出願、第14類「時計,宝飾品,身飾品」を指定商品として、同21年3月3日に登録査定され、同年4月10日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第45号証を提出した。

(1)請求人が引用する商標

請求人が引用する登録第4354076号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成5年1月25日に登録出願、第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同12年1月21日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

(2)具体的な理由

ア 商標法第4条第1項第11号について

(ア)本件商標から生ずる称呼

本件商標は「J」と「ESTINA」の欧文字の間に「.」を配した構成からなり、外観上「J」と「ESTINA」に分離して把握されるものであって、欧文字1文字は商品の種別・型式を表すための類型の一つであるから、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標を「J」という型番の「ESTINA」という名称の商品であると認識する場合も少なくないものである。

また、本件商標からは「ESTINA」をファミリーネーム(苗字)とする人名を表したものと認識されることも考えられるが、その場合も、苗字を重視する傾向にある我が国においては、「ESTINA」の部分をもって略称されることは否定できないものである。

現に、本件商標と引用商標の指定商品中に共通する「時計」のように、ファッション性、デザイン性が重視される商品分野においては、「SOTIRIO BULGARI」と「BURGARI」、「GIORGIO ARMANI」等と「ARMANI」などのように、そのデザイナーの名称とファミリーネームの両方がブランド名として使用され、あるいは認識されているケースが多々見受けられる(甲5〜甲26)。

したがって、本件商標は、「ジェイエスティナ」の一連の称呼の他に、「ESTINA」の文字に相応して「エスティナ」の称呼も生じるものである。

このことは、本件商標と同様、語頭の欧文字1文字あるいは2文字と他の文字との間に「.」を配した構成からなる商標から生ずる称呼について、以下のような審決で判断されていることからも明らかである(甲27〜甲32)。

a 昭和51年審判第504号審決(商標「J.Magnin」)

b 昭和54年審判第8555号審決(商標「B.Elie」)

c 昭和58年審判第12496号審決(商標「T.B.SUNNEX」)

d 平成10年審判第4119号審決(商標「L.L.Bear」)

e 異議2001−90685決定(商標「e.Balance/E.バランス」)

f 平成5年審判第14145号審決(商標「G.BINDA」)

(イ)本件商標と引用商標との類否

引用商標は、別掲のとおりの構成からなるものであって、その構成中「FESTINA」の文字部分に相応して「フェスティナ」の称呼を生じるものである。

そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、両者からそれぞれ生じる「エスティナ」と「フェスティナ」の称呼は、語頭において「エ」と「フェ」の音の差異のみを有するものである。この点、「フェ」の音が比較的弱い無声摩擦音である「f」を子音とすることから、「e」の母音が相対的に強く聴取されるものであって、「エ」の音と近似した音として聴取されるものである。

したがって、両称呼は、語頭以外の「スティナ」の3音を共通にするものであるから、時と処を異にして称呼した場合には、互いに相紛らわしいものであって、称呼上類似するものである。

また、本件商標の指定商品及び引用商標の指定商品は、共に「時計」をその指定商品に有するものであるから、両者が同一又は類似の関係にあること明らかである。

さらに、本件商標は、引用商標の後願、後登録に係るものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

イ 商標法第4条第1項第10号について

(ア)引用商標の周知・著名性について

請求人(以下「フェスティナ社」ということがある。)は、1902年にスイスにおいて設立されて以来100年以上の歴史を持つ会社であって、スペイン、フランス、スイスに自社工場を有して年間400万本以上の時計を生産しており、スイス、フランス、ドイツ、イダリア、ベルギー、アメリカ等、世界で65を超える国々で販売している。

請求人は世界的なスポーツイベントのスポンサー活動にも積極的に取り組んでおり、オリンピック、サッカーワールドカップとともに世界三大スポーツイベントの1つに数えられる「ツール・ド・フランス」のオフィシャルタイムキーパーになったことで一躍メジャーブランドに躍進し、特にヨーロッパでは、「フェスティナ(FESTINA)」は、ロレックスに次ぐブランドとして広く知られているものである。

我が国においても「フェスティナ(FESTINA)」製品は、平成15年頃から各種小売店、インターネット等を通じて販売されており、スポーツ愛好者を中心として広く知られるに至っているものである(甲33〜甲45)。

このように、「フェスティナ(FESTINA)」ブランドは、商品「時計」の分野においては、世界的に広く知られた商標である。そして、遅くとも本件商標の出願時点では、既に、外国及び我が国において周知性を獲得していたものである。

(イ)本号の該当性について

上記ア(イ)のとおり、本件商標は引用商標と類似するものである。そして、引用商標は、遅くとも本件商標の出願の時点においては、我が国において、本件商標の指定商品と同一又は類似の関係にある商品「時計」について周知性を獲得していたものである。

そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

ウ 総括

以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第10号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条の規定に基づき無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第27号証を提出した。

1 答弁の理由

被請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第10号のいずれにも該当するものではなく、本件商標の登録を無効とすべきではないと考えるので、以下その理由を述べる。

2 具体的理由

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 本件商標について

(ア)本件商標の欧文字「J.ESTINA」は、「J」の文字の後にピリオド「.」が配されているとしても、その構成各文字は、同一の大きさ、同一の書体で外観上まとまりよく一体的に構成されている。また、これより生ずると認められる「ジェイエスティナ」の称呼は、冗長というほどのものではなく、よどみなく一連に称呼できるものであるから、構成中の「ESTINA」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見出せない。

もし、本件商標を、「J」と「ESTINA」との結合商標であると解する場合でも、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されない(最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決)。

また、請求人は、苗字を重視する傾向にある我が国においては、本件商標は「ESTINA」の部分をもって略称されることは否定できないと述べているが、本件商標は、これが使用される商品のデザイナーの氏名を示すものでもなく、また、欧米人の氏名を表したものと、取引者、需要者に認識されているという特段の事情は見当たらない。したがって、本件商標における「ESTINA」の文字部分を、いわゆるファミリーネームとして分離して取り出さなければならない理由は存在しない。

(イ)取引者、需要者の認識

本件商標が使用される場合は、乙第1号証ないし乙第13号証に示すように、多くの場合にその称呼に相当する「ジェイエスティナ」の片仮名が付されている。

これらによれば、取引者、需要者は、本件商標を「ジェイエスティナ」の称呼のみによって認識されるものであり、それ以外の称呼、例えば「エスティナ」の称呼により認識され、取引において用いられている事実を見出すことはできない。すなわち、現実の取引においては、「J.ESTINA」は「ジェイエスティナ」であると、取引者、需要者に広く認知されていることが理解される。

(ウ)取引者、需要者認識の検証

「J.ESTINA」についてインターネット検索を行い、検索結果上位50件のウェブサイトのトップページにアクセスし、当該商標が実際の日本市場において日本語(片仮名)表記上、どのように表現・認識されているのかを確認した(乙27)。

a 検索条件

a)検索日時:2014年7月31日

b)ブラウザ:Google Chrome

c)検索エンジン:Google

d)検索範囲:日本語のページのみを対象

e)検索語句:J.ESTINA(完全一致検索)

f)検索結果:約216,000件

g)確認手法:ブラウザの検索機能を使用。検索結果の上位50件のウェブサイトにそれぞれアクセスし、ブラウザの検索窓にカタカナで「エスティナ」と人力して検索を実施し、ヒットした箇所の記載がどのように表記されているかを確認した。

b 検索結果

上位50件の検索結果のうち、全てのウェブサイトが権利者の販売する商品等に関連するものであった。

なお、請求人が、本件商標と類似することを主張する「FESTINA」に関連するウェブサイトは1件もヒットしなかった。

上位50件のうち、上記a g)の確認手法によってヒットしたウェブサイト、すなわち片仮名の日本語表記があるウェブサイトは13件、ヒット箇所は合計で170箇所であった。上記170箇所の記載を確認すると以下のように表記されていた。

a)「エスティナ」と単独で表記されていた箇所:0箇所

b)「ジェイエスティナ」と一体で表記されていた箇所:122箇所

c)「Jエスティナ」「ジェイ・エスティナ」と表記されていた箇所:47箇所

d)その他の表記1箇所

以上のように、日本市場においては、「J.ESTINA」は日本語表記(片仮名)では「ジェイエスティナ」と表記される場合が圧倒的多数であり、このことから当然に、同様の称呼によって広く市場に浸透しているものと考えられる。

上記検索結果のとおり、「J.ESTINA」を「エスティナ」と単独で日本語表記したケースは1件も存在していなかった。この結果からも明白なように、実際の市場では、「エスティナ」(ESTINA)が、「J.ESTINA」の略称として取引者、需要者に認識されているという事情は存在しないと考えられる。

このような状況下において、本件商標から敢えて「J」(ジェイ)の部分を分離し、残りの部分「ESTINA」から「エスティナ」の称呼が生じるとは到底考えられず、請求人の主張は妥当ではない。

よって、本件商標は、取引者、需要者に「ジェイエスティナ」と一連不可分のものとして認識されていることは明白である。

(エ)「.」を含む商標

請求人の掲げた審決例は、それぞれの背景や具体的諸事情が異なるものであり、本件商標について、直ちにこれらと同様に考えられるわけではない。

請求人が掲げた審決例とは反対に、中間に「.」を配した構成からなる商標について、全体を一連不可分のものと判断された審決例としては、次のようなものがある(乙14〜乙17)。

a 不服2006−22069号(商標「V.SMILE」)

b 平成10年異議第90060号(商標「J.CREW」)

c 不服2005−21914号(商標「T.C.Terminal」)

d 不服2006−3109号(商標「V.A.C. ATS」)

(オ)結合商標(文字商標)の類否判断の傾向

ところで、近年の審決や判決では、「.」(ピリオド)のみならず、「−」(ハイフン)、「・」(中黒記号)、「/」(スラッシュ記号)、スペース等を有する文字商標の類否判断では、次のように実際の取引における取引者、需要者の認識を考慮して、判断対象たる商標全体を一連不可分のものとして全体観察がされる傾向にある(乙18〜乙22)。

換言すれば、その一部の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、通常、一連不可分の造語として認識し把握される。

a 不服2003−8298号(商標「M・SURF」)

b 不服2002−4830号(商標「Lstyle」)

c 異議2012−900067号(商標「サクラ・ラボラトリー」)

d 異議2007−900460号(商標「V−BALANCE」)

e 不服2003−7707号(商標「D/Smart」)

(カ)小括

上記のような理由から、本件商標は、その構成中の「ESTINA」の文字部分のみを取り出して観察すべき事情を見出すことはできないから、当該部分だけを比較の対象として類否の判断をすることは不自然である、といわざるを得ない。

よって、本件商標について、「J」と「ESTINA」を分離して観察すべき理由は存在しない。

イ 引用商標と本件商標中の「ESTINA」の文字部分の対比

仮に、本件商標を「J」と「ESTINA」とに分離して観察し、本件商標から「エスティナ」の称呼が生じるとしても、両者は、語頭音において「フェ」と「エ」の相違がある。すなわち、「フェ」音は、無声両唇摩擦音である「f」を子音とするものであるものの、これらは語頭における「フェ」と「エ」の相違であるため、称呼上、明確に区別できるものであるから、本件商標と引用商標は非類似である(予備的主張)。

このことは、商標登録第2043677号「ESTINA\エスティナ」と商標登録第3168919号「図形\FESTINA」、商標登録第3190515号「図形\FESTINA」及び国際登録第1156333号「FESTINA」(乙23〜乙26)とが併存している事実からも、引用商標と「ESTINA」の文字商標とは、相紛らわしいものでなく、本件商標と引用商標とは、互いに非類似の商標であると考えられる。

ウ 本件商標と引用商標との類否

本件商標の一連不可分の「ジェイエスティナ」の称呼と、引用商標の「フェスティナ」の称呼とは、語頭における「ジェイエ」と「フェ」の大きな差異がある。

また、両者は、いずれも特定の観念が生じない造語として認識されるので、観念において両者は相紛れるおそれがない。

さらに、引用商標は、下段の「FESTINA」の文字の他に、上段に「FESTINA」の文字を含む図形を含む構成であり、外観上、本件商標と引用商標とは大きく相違しているので、互いに明確に区別し得るものである。

よって、両者は称呼、観念、外観のいずれにおいても異なっており、相紛れるおそれがない非類似の商標というべきものであるから、商標法第4条第1項第11号にいう「類似」する商標であるということはできない。

仮に、本件商標を「J」と「ESTINA」とに分離して観察したとしても、前述のとおり本件商標と引用商標は非類似であり、結論は同様である。

(2)商標法第4条第1項第10号について

前記(1)ウで述べたとおり、本件商標と引用商標とは、特段の観念を生じるものではなく、外観、称呼においても異なるものであり、全体として類似する商標であるということはできないから、引用商標が、仮に、請求人が製造販売する「時計」を表示する商標として需要者の間において相当程度知られていたとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号にいう「類似」するものに該当するとはいえない。

(3)むすび

以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似であり、商標法第4条第1項第10号及び同第11号のいずれにも該当しない。

第4 当審の判断

1 引用商標の周知・著名性について

(1)請求人は、引用商標が我が国の需要者の間に広く知られているものであることの証左として、甲第33号証ないし甲第45号証を提出している。

それらは、いずれも本件商標の登録査定日後である平成26年4月7日又は9日にプリントアウトされたウェブページであるが、それらによれば次のとおりである。

ア 記載内容から本件商標の登録出願日前に掲載されたものと認め得るもの

(ア)甲第33号証は平和堂貿易株式会社のウェブページであり、2007年(平成19年)9月14日付けのニースリリースには、「スイス生まれのスペインウオッチ『フェスティナ』『カリプソ』の日本初のオンリーショップがプランタン銀座にオープン」のタイトルの下、「ヨーロッパ最大規模のウオッチブランドグループ『フェスティナ・グループ』。その本拠は現在スペイン バルセロナに置かれ、時計のメッカ・スイスやフランス、・・・アメリカなど世界65カ国に進出、年間400万本を販売するメガ・グループです。」「『フェスティナ』は1902年スイス ラ・ショードフォンで誕生したフェスティナ・グループを代表するブランドであり、たくさんのスポーツ競技のスポンサーとなっています。特に、世界的自転車レース『ツール・ド・フランス』のオフィシャル・タイムキーパーとして広く知られており、毎年ツール・ド・フランスモデルを発表しています。日本国内におきましても、スポーツ愛好家を中心に認知度がアップしてまいりました。」の記載があり、さらに、文末の「<ショップ概要>」には、「店名:プランタン銀座 フェスティナウオッチショップ」「オープン日:2007年9月14日(金)」の記載がある。

また、腕時計が並べられたケースの上に引用商標と同一の構成と思われる商標が掲示された店舗内の写真、及び腕時計とその横に引用商標と同一の構成と認められる商標が表示された写真が掲載されている。

(イ)甲第40号証は「CycleStyle」と称するウェブページであり、日付の記載はないものの、「今年も熱いレースを繰り広げ、幕を閉じたツール・ド・フランス2007。そのツール・ド・フランスの歴史に名を刻む時計ブランドがある。ツールオフィシャルタイマーとして世界中の自転車ファンに親しまれている『フェスティナ』だ。」の記載から、2007年に掲載されたものとみて差し支えない。さらに、そこには「1902年、スイスで設立したフェスティナは2002年に創業100周年を迎えました。25年前に設立したフェスティナグループの主要ブランドとして大きく成長し、現在、ヨーロッパではロレックス、スウォッチ・グループに続く第3位の売上を誇る総合時計メーカーとして年間400万個以上の時計販売を達成。」などの記載がある。

イ 記載内容から本件商標の登録出願日から登録査定日の間に掲載されたものと認め得るもの

(ア)甲第42号証は、プランタン銀座のウェブページであり、2008年(平成20年)7月20日付けで、「フェスティナの『ツール・ド・フランス 2008』メンズウォッチ予約中」のタイトルの下、世界最大級の自転車ロードレース『ツール・ド・フランス』。今年も7月5日より始まって、今レース真っ最中なんですよね。」「本館B1F『フェスティナ』で『ツール・ド・フランス 2008』モデルのメンズウォッチの予約を受け付けているんです。」などの書き込みがあり、腕時計の写真2枚が掲載されている。

(イ)甲第43号証は、「Cyclowired.jp」と称するウェブページであり、2009年(平成21年)2月19日付けで、「フェスティナ新規取扱店のご案内 ツールでお馴染みのフェスティナが東京と大阪に新規取扱店」のタイトルの下、「ツール・ド・フランスをはじめ多くのスポーツイベントをサポートし、日本国内では・・・等エリートアスリートもサポートしているフェスティナが、東京と大阪の新規取扱店を発表した。」「東京 モノ・ショップ銀座店 松坂屋銀座店 別館地下1階」「大阪 自転車ショップ『バイシクルワールド』 阪急百貨店イングス館2階」などの記載があり、引用商標と同一と思われる商標の写真及び腕時計の写真が掲載されている。

ウ 記載内容の日付から本件商標の登録査定日後のものと認め得るもの及び掲載日が確認できないもの

それらには、フェスティナが1902年にスイスで創業したこと、ヨーロッパでは、スウォッチグループ、ロレックスに次ぐブランドであると認知されていること、年間400万本の時計を世界60か国以上で販売していること、及びツール・ド・フランスのオフィシャルタイムキーパーであることなどが記載され、引用商標と同一といえる商標、腕時計の写真や「フェスティナ」「FESTINA」の文字が表示等されている。

(2)上記(1)からすれば、次の事実を認めることができる。

ア 請求人(フェスティナ社)は、1902年にスイスにおいて設立され、年間約400万本の時計を販売しており、ヨーロッパやアメリカ等世界で60以上の国で販売している。

また、請求人は「ツール・ド・フランス」のオフィシャルタイムキーパーである。

イ 我が国においては、請求人の時計は遅くとも2007年(平成19年)には、販売が開始され、現在も販売されている。当該時計、及びその包装、広告並びに売り場には、引用商標と同一と認められる商標、「フェスティナ」及び「FESTINA」の文字が表示されている。

ウ しかしながら、請求人の時計の我が国における販売個数、売上額などは確認できない。

(3)上記(2)の事実からすれば、引用商標は、我が国において遅くとも2007年頃から商品「時計」について使用されていたことは認められるものの、本件商標の登録出願日ないし登録査定日において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されているものと認めることはできない。

なお、引用商標の構成中、上段の図形部分及び下段の文字部分はそれぞれ独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得ると認められるが、いずれの部分も請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されているものと認めることはできない。

2 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標について

ア 本件商標は、上記第1のとおり「J.ESTINA」の文字を標準文字で表してなり、その構成文字は、同書、同大、同間隔で、まとまりよく一体に表され、これから生じる「ジェイエスティナ」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、無理なく一連に称呼し得るものである。

そうとすれば、本件商標は、「ジェイエスティナ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない、全体が一体不可分の造語を表示したものとして認識・把握されるものと判断するのが相当である。

イ なお、請求人は、本件商標は外観上「J」と「ESTINA」に分離して把握され、欧文字一字は商品の形式等を表示する一般的な類型であるから、「ESTINA」の部分が独立して自他商品識別機能を果たす旨主張している。

しかしながら、欧文字一字が商品の種別、形式を表示するための符号等として一般的に使用されるとしても、本件商標は、語頭の「J」のあとに「.」を有するものであり、かつ、外観上一体に表されているとみるのが自然な構成、態様であることから、看者をして、その構成中「J.」の部分を商品の符号等として認識させるというよりも、むしろ、全体が一体不可分の一種の造語を表したものとして認識、把握させるものとみるのが相当である。

また、請求人は、本件商標の構成中「ESTINA」がファミリーネームとして認識される場合であっても、本件商標は「ESTINA」の文字部分をもって略称され、「エスティナ」の称呼を生じる旨主張し、デザイナーの名称とファミリーネームの両方がブランド名として使用され認識されているとする事例を挙げているが、「ESTINA」は我が国で知られた外国人のファミリーネームとはいえないし、該文字がファミリーネームとして認識されるというべき事情も見いだせない。

なお、被請求人提出の乙第1号証ないし乙第13号証によれば、少なくとも現在においては、本件商標「J.ESTINA」は「ジェイエスティナ」とのみ称呼されている実情にあることを窺い知ることができる。

したがって、請求人の上記主張はいずれも採用できない。

さらに、請求人は欧文字1字、2字と他の文字の間に「.」を配した構成からなる商標について、他の文字部分が自他商品識別機能を果たす旨判断した審決例を挙げているが、商標の類否の判断は、査定時又は審決時における取引の実情を勘案し、その指定商品の取引者・需要者の認識を基準に対比される商標について個別具体的に判断されるべきものであるから、過去の審判決例をもって本件の判断が左右されるものではない。

ウ したがって、本件商標は、「ジェイエスティナ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない、全体が一体不可分のものというべきである。

(2)引用商標について

引用商標は、別掲のとおり、欧紋章のような図形と「FESTINA」の文字からなり、その構成中「FESTINA」の文字に相応し、「フェスティナ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

また、引用商標は、その構成から図形部分及び文字部分がいずれも独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものといえ、図形部分はその構成中の「FESTINA」の文字に相応し、また、文字部分はその構成文字に相応し、いずれも「フェスティナ」の称呼を生じ、両部分とも特定の観念を生じないものである。

(3)本件商標と引用商標の類否について

本件商標と引用商標とは、本件商標「J.ESTINA」と引用商標の構成全体、図形部分及び文字部分との比較において、外観においては、本件商標と引用商標の構成全体及び図形部分とは、その構成、態様から相紛れるおそれのないこと明らかである。また、本件商標と引用商標の文字部分「FESTINA」とは、語頭における「J.」と「F」との差異により容易に区別でき、相紛れるおそれがないものと判断するのが相当である。

次に称呼においては、本件商標の「ジェイエスティナ」と引用商標の「フェスティナ」とは、後半の「スティナ」の音を共通にするとしても、語頭音を含む前半の「ジェイエ」と「フェ」との明らかな差異により、両者は相紛れるおそれがないものと判断するのが相当である。

さらに、観念においては、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、相紛れるおそれはない。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点から見ても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

(4)小括

上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、両商標の指定商品中に「時計」が共通するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。

3 商標法第4条第1項第10号について

上記1(3)のとおり、引用商標は請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されているものと認めることはできないものであり、さらに、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点から見ても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。

4 むすび

以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきでない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。