結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2013−890082(T2013−890082/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5435202号商標(以下「本件商標」という。)は、「旅の酒」の文字を標準文字により表してなり、平成23年2月14日に登録出願、第33類「しょうちゅう」を指定商品として、同年7月4日に登録査定、同年9月2日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用する登録第1407434号商標(以下「引用商標」という。)は、「旅」の文字を書してなり、昭和51年11月16日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同55年2月29日に設定登録されたものであり、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、その指定商品については、平成23年4月6日に、それを第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第47号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標
ア 本件商標は、前記第1のとおり、「旅」、「の」及び「酒」の3文字からなる結合商標であって、既成語ではない。そして、その構成中、「旅」の文字が「住む土地を離れて、一時他の土地に行くこと。旅行。」(広辞苑第六版)の意の国語として強い識別力を有するのに対し、格助詞の「の」の文字は、独立して商品の識別力を有するものではなく、また、「酒」の文字も「(a)米と麹で醸造した、日本特有のアルコール含有飲料。日本酒。/(b)アルコール分を含み、飲むと酔う飲料の総称。」(広辞苑第六版)を指称する語であって、商品の普通名称又は品質表示として普通に用いられる文字であり、識別力を有しないものである。
イ 本件商標の指定商品「しょうちゅう」を含む「酒類」を取り扱う業界において、「の酒」の文字が日本酒又はアルコール飲料の総称を表す商品の普通名称又は品質表示として普通に用いられていることは、例えば、「伏見の酒」、「灘の酒」、「世界の酒」等の用例を始め、枚挙にいとまがないほど周知の事実である。
また、酒のブランド名に付して「○○の酒」又は同義の「○○のお酒」と呼び習わされている事実も、多数存する(甲第3号証ないし甲第15号証)。
ウ そうとすると、本件商標は、強い自他商品識別力を有する「旅」の文字に、普通名称又は品質表示語である「の酒」の文字を付加してなるにすぎず、かつ、「旅」の部分が、強く印象付けられ記憶に残りやすい語頭に位置することに鑑みれば、簡易迅速を尊ぶ商取引においては、「旅」の部分で略称し、取引に当たる場合も多いとみるのが妥当である。
したがって、本件商標は、その要部である「旅」の部分から、「タビ(旅)」の称呼及び観念を生ずる。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「旅」の文字よりなるから、「タビ(旅)」の称呼及び観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
上記(1)及び(2)によれば、本件商標は、引用商標と「タビ(旅)」の称呼及び観念を共通にする類似の商標であり、かつ、その指定商品も引用商標の指定商品と抵触する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。
(1)被請求人は、「旅」が固有名詞ではなく一般名詞であるから識別力が強固なものでないと主張するが、固有名詞かどうかは、商標の識別力の強弱には関係ない。「旅」の文字は、本件商標の指定商品との関係において、何ら普通名称や品質表示等ではなく、それ自体、強い自他商品の識別力を発揮し得る。
(2)被請求人は、「旅」について、「海の旅」、「山の旅」などという使われ方も多いとして、「の旅」と「の酒」とに差異はないから、「旅」と「酒」とでも識別力に差異はないと主張するが、識別力の有無の判断は、指定商品との関係においてなされるべきである。
「の酒」は、本件商標の指定商品との関係においては、商品の普通名称又は品質表示であって、識別力を有しないものであるのに対し、「旅」は、本件商標の指定商品との関係において強い識別力を有するものである。
(3)被請求人は、「旅」と「旅の酒」とを平仮名で書くと、視覚的に受けるイメージが異なる旨主張するが、商標の外観については、商標見本に示された標章をそのまま観察すべきであり、平仮名に置き換えて観察すべきではない。
(4)被請求人は、引用商標の指定商品はビール・日本酒等であるのに対し、本件商標の指定商品は焼酎であり、同一ではないと主張する。
しかしながら、商標法施行規則別表及び類似商品・役務審査基準に明示されるとおり、「焼酎」は、「日本酒」の下位概念に属し、「日本酒」に含まれる。
(5)被請求人は、引用商標について知らず、その周知性は極めて乏しいと主張するが、引用商標を被請求人が知っているかどうかは、本件商標の登録要件には何ら関係するところではない。また、引用商標は、請求人の子会社である宝酒造株式会社により、その業務に係る商品「清酒」について、1982年8月の商品発売以来、継続して使用されており、同商品は、30年余りにわたって販売されるロングセラー商品となっている。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであって、商標登録を受けることができないにもかかわらず誤って登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べた。
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであると主張しているので、以下、本件商標と引用商標との類否について検討する。
本件商標は、前記第1のとおり、「旅の酒」の文字を標準文字により表してなるところ、その構成文字は、同じ書体及び大きさをもって等間隔に、視覚上、まとまりよく一体的に表されているものであり、その構成文字全体から生じる「タビノサケ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成中の「旅」の文字は、「住む土地を離れて、一時他の土地に行くこと。旅行。」(広辞苑第6版)の意味を有し、「酒」の文字は、「(a)米と麹で醸造した、日本特有のアルコール含有飲料。日本酒。(b)アルコール分を含み、飲むと酔う飲料の総称。」(広辞苑第6版)の意味を有するものと認められ、また、その構成中の「の」の文字については、格助詞、並立助詞、終助詞、間投助詞の各用例があるとされるところ(広辞苑第6版)、本件商標においては、その前後の「旅」と「酒」の語との関係からすれば、この両語の関係を示す格助詞として用いられているとみるのが相当である。
また、日本酒等は、全国各地において、その土地に根ざしたものが造られており、旅行先で飲んだり、旅行の土産物として用いられることも多く見受けられるものであることからすれば、「旅」と「酒」の両文字は、相互に関連のあるものとして観念され得るものといえるから、本件商標を構成する「旅の酒」の文字は、その構成全体をもって、「旅の酒」程の意味合いを認識させるとみるのが自然であり、殊更、「の酒」の文字部分を捨象し、「旅」の文字部分をもって取引に資されるとみるべき特段の事情も見いだせない。
してみれば、本件商標のかかる構成においては、その全体が一連一体のものとして把握され、「タビノサケ」の一連の称呼及び「旅の酒」の観念が生じるというべきである。
引用商標は、「旅」の文字からなるものであるから、これより、「タビ」の称呼及び「旅」の観念を生ずるものである。
本件商標と引用商標とは、上記のとおり、「の酒」の文字の有無という差異があるから、外観上、明確に区別し得るものであり、本件商標から生じる「タビノサケ」の称呼と引用商標から生じる「タビ」の称呼とは、その音数及び音構成において顕著な差異を有するものであるから、称呼上、明確に聴別し得るものである。
また、本件商標からは「旅の酒」の観念を生じるのに対し、引用商標からは「旅」の観念を生じることから、観念上、両商標が相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
請求人は、「本件商標の構成中、格助詞の『の』の文字は、独立して商品の識別力を有するものではなく、また、『の酒』の文字は、『酒類』を取り扱う業界においては、日本酒又はアルコール飲料の総称を表す商品の普通名称又は品質表示として、『伏見の酒』、『灘の酒』、『世界の酒』等として用いられていることや酒のブランド名に付して『○○の酒』又は同義の『○○のお酒』と呼び習わされている事実も多数存するから、本件商標は、強い自他商品の識別力を有する『旅』の文字に、普通名称又は品質表示語である『の酒』の文字を付加してなるにすぎず、簡易迅速を尊ぶ商取引においては、『旅』の部分で略称し、取引に当たる場合も多いとみられる。」旨主張している。
確かに、格助詞の「の」が、請求人の主張するような意味合いで使用され、理解されることがあることを否定しないが、本件商標の場合は、請求人が主張するような、「伏見」、「灘」、「世界」といった場所や対象を示すものとして使用されているものではなく、また、酒のブランド名に付して「旅印の酒」などといった所有や所属の関係を示すものとして使用されているものともいい難く、むしろ、本件商標のかかる構成においては、上記1のとおり、その全体をもって、「旅の酒」程の意味合いを認識させる一種の造語を表したものというのが相当である。
なお、請求人は、被請求人による引用商標の周知性を否定する旨の主張に対する反論として、甲第16号証ないし甲第47号証を提出し、1982年8月の商品発売以来、子会社である宝酒造株式会社の業務に係る商品「清酒」について、引用商標の「旅」商標が継続して使用されている旨主張するが、上記甲各号証からは、同社が、1982年8月から2014年5月までの間、容器に「松竹梅」の表示とともに「旅」の表示のある商品「清酒」を製造、販売していたことがうかがえるにすぎず、その商品の製造及び販売の数量や宣伝広告の回数等については何ら立証されていないことからすれば、これをもって、引用商標が需要者の間において周知であると認めることはできない。
よって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。