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Trademark Appeal Case

商標の著名性と類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2014−900207(T2014−900207/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5664585号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5664585号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成25年10月4日に登録出願、第1類、第3類、第4類及び第5類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同26年3月3日に登録査定され、同年4月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。

(1)申立人が引用する商標は次のとおりである。

ア 登録第3106466号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の態様 別掲2のとおり

指定商品 第5類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 平成5年3月11日

設定登録日 平成7年12月26日

イ 登録第3173791号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の態様 別掲2のとおり

指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 平成5年3月11日

設定登録日 平成8年7月31日

ウ 登録第4570049号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の態様 別掲2のとおり

指定商品 第25類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 平成13年8月10日

設定登録日 平成14年5月24日

エ 登録第5009806号商標(以下「引用商標4」という。)

商標の態様 別掲3のとおり

指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品

出願日 平成17年3月31日

設定登録日 平成18年12月8日

オ 国際登録第734686A号商標(以下「引用商標5」という。)

商標の態様 別掲3のとおり

指定商品 第25類、第32及び第33類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品

国際商標登録出願日 2000年(平成12年)4月19日

優先権主張 Austria 2000年3月17日

設定登録日 平成13年8月31日

カ 申立人が使用する商標(以下「使用商標」という。)

商標の態様 別掲4のとおり

なお、引用商標1ないし5(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)の商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。

(2)具体的理由

ア 引用商標に係るブランド「レッド・ブル」の著名性について

(ア)申立人の商品の歴史と販売網

申立人の本拠地オーストリアにて、1987年に最初の「レッド・ブル・エナジー・ドリンク」が発売された。その後、1992年にハンガリー、1993年にスコットランドで販売が開始され、1994年にドイツとイギリス全土での販売が始まり、現在、同飲料は申立人の子会社及び販売代理店を通じて世界162か国で販売されている。

(イ)申立人の商品の売上と広告費用

2013年、世界162か国において販売されたレッド・ブル社のレッド・ブル・エナジー・ドリンク(以下「レッド・ブル飲料」という。)は、総計54億本であり、20年前の約5倍に伸びている。日本国内における販売数の伸びも順調で、2011年に約1億本、2012年に約1.3億本、2013年に約1.8億本(異議決定注:日本国内の販売数、金額は表の数値とした。以下、この項において同じ。)、に達している。

売上高は、2003年に全世界での年間13億ユーロ(約1,781億円)、2013年には50億ユーロ(約6,850億円)以上となっている。

また、申立人は、テレビ、映画、ラジオといったメディアを積極的に活用し、申立人とレッド・ブル飲料の宣伝広告を行い、浸透を図っている。2013年の宣伝広告への投下費用は、全世界で約5.4億ユーロ(約739億円)、我が国は約1,604万ユーロであった。

さらに、申立人が費やしたメディアを通じた宣伝広告費を含めたマーケティング費用(販売促進活動、市場調査・開拓などに係る費用)は、2013年、全世界で約17.7億ユーロ(約2,425億円)、我が国は約4,326万ユーロであった。

(ウ)申立人に係る商標

引用商標は、創造標章であり、指定商品役務について何ら直接的かつ記述的な要素はなく、強い識別力を有するものと思料する。

そして、レッド・ブル飲料は、「RED BULL」「BULL」の文字商標及び牛図形商標(引用商標)等の商標を使用して販売されている。引用商標1ないし3は日本を含む世界192か国・地域で、引用商標4及び5は日本を含む世界112か国・地域で登録されている。また、「RED BULL」「BULL」等の文字商標も世界200か国・地域で登録されている。

これらの「レッド・ブル」ブランド商標は、世界各国での審決や判決において周知であると認定されており、日本においても「RED BULL」商標について異議決定がなされている(甲6)。また、牛図形商標については、台湾の無効審判及び異議において周知性を認められ、さらに当該商標が自動車産業とも強い関連性を有するに至っていると認定されている。

そして、世界の有名ブランドのランキングでは、例えば、ヨーロッパブランド協会の「世界ブランド」ランキングによると、「レッド・ブル」ブランドは、2011年に63位、2013年には49位に入っており、2013年には「最も価値あるオーストリアブランド」に選ばれ、約152億ユーロ(約2兆円)の価値があると算定されている。また、ミルワードブラウン社の「BrandZ トップ100ランキング」によると、2014年、「レッド・ブル」ブランドは世界92位、ソフトドリンク分野では世界で3番目に価値のあるブランドと評価されている。さらに、経済誌フォーブスの「世界で最も価値のあるブランドトップ100」によると、「レッド・ブル」ブランドは2013年には69位との評価がなされている(日本企業では、トヨタ14位、ホンダ20位、日産78位、ソニー80位)。

これより、商標「RED BULL」をはじめとする申立人の商標が既に世界各国において相当の知名度を有していることが伺える。申立人は、引用商標を「RED BULL」「BULL」等の文字商標と同様の頻度と範囲で使用しているため、これら商標も世界各国の需要者に広く認識され、「レッド・ブル飲料」に係る文字商標・図形商標が一体となって「レッド・ブル」ブランドを作り出しているものと思料する。

(エ)申立人の事業

申立人は、栄養ドリンクをはじめとした飲料事業のみならず、テレビ、ウェブ等を通じたコンテンツ提供、テレビ放送、電気通信サービス、雑誌の発行(紙媒体と電子媒体での提供)など様々な分野に事業領域を広げている。

(オ)申立人の活動

申立人は、様々なスポーツイベントや文化イベントを主催・共催し、また後援を行っている。申立人が深く関わっているスポーツイベントとしては、2004年から参戦したF1グランプリ及びダカールラリーをはじめ、MotoGPレース、モトクロス競技会、航空レース、ヨットレース、クリフダイビング競技会、手作り飛行機競技会などが挙げられる。また、サッカー、アイスホッケー等のチームも所有している。

これらのイベントや競技において、引用商標、使用商標及び「RED BULL」商標は、参加者のユニフォームやマシン等に常に目立つようにプリントされており、そして、これらのイベントや競技は、多くの観衆を集め世界各国でテレビ放送等されている(甲7〜甲12)。

また、文化イベントの代表的なものとしては、「レッド・ブル・アート・オブ・カン」「レッド・ブル・ミュージック・アカデミー」があり、後者は2014年10月12日から約1か月間東京で開催された(甲14、甲15)。

(カ)小括

申立人の「レッド・ブル」ブランドは、日本を含む世界各国・地域において、本件商標の出願日前にすでに著名なブランドとなっていた。そして、当該「レッド・ブル」ブランドを支える重要な商標のうちの1つである引用商標は、飲料商品をはじめとして、申立人の様々な活動に際して幅広く大々的に用いられている。

まさに、引用商標及び使用商標は、申立人のハウスマークであり、象徴となっている。したがって、オーストリア本国のみならず、日本をはじめ世界各国・地域において、申立人による同ブランドが需要者に広く知られると共に、引用商標及び使用商標も広く認識されているものと思料する。

イ 商標の類似について

(ア)本件商標と引用商標1ないし3について

本件商標は、突進する牛の図形とその背景からなる商標である。牛は左向きに描かれており、頭を下げ、角を前方へと突き出し、前脚を曲げ、地面を蹴って勢いよく飛び出す姿勢をとっている。また、丸みを帯びた太ももから続く後ろ脚は揃えられて伸びた形になっており、尻尾はきれいにS字形を描き、筆のような形の尻尾の先端は後方へと戻るようにはねている。牛の上半身は突進するエネルギーを示すかのように肩の部分が盛り上がり、背中全体が山のようなラインを描いている。そして、この牛の背景に、盾状の図形が加えられている。

一方、引用商標1ないし3は、2頭の牛の図形とその背景の円からなる商標である。ここでは特に、向かって右側の牛に注目されたい。この牛は左を向いており、頭を下げ、角を前方へと突き出し、前脚を曲げ、地面を蹴って勢いよく飛び出す姿勢をとっている。また本件商標と同様に、肩の部分が盛り上がった山のような背中のラインを有し、後ろ脚を揃えて伸ばし、尻尾がS字形を描いている。そして、この牛の背景に円図形が加えられている。

本件商標と引用商標1ないし3において、その商標全体の外観より、牛図形が要部であると思料する。そして両商標の牛図形は、牛の向きと全体の姿勢とを共通にしており、構成の軌を一にする。そこで、両商標は外観上類似するものと考える。

なお、本件商標には色彩が施されている一方で、引用商標1ないし3は黒一色のシルエット図形である点が異なっている。しかしながら、引用商標1ないし3は、通常、使用商標のように色彩を施された状態で使用されており、該商標の要部である牛には赤色が採用されている。さらに、本件商標の盾状図形が黄土色である一方、引用商標に係る使用商標の円図形は黄色である。そのため、引用商標が着色された状態において、本件商標と引用商標とは需要者に相当似かよった印象、記憶、連想を与えるものと考えられる。

また、観念について検討すると、本件商標からは牛図形より「突進する牛」、さらに色彩も含めれば「赤い突進する牛」の観念が生じる。一方、引用商標1ないし3からも牛図形から「突進する牛」の観念が生じるといえる。加えて、両牛図形の外観上の特徴より、力強さ(パワー)やほとばしるエネルギーといったイメージも生まれると考えられる。そのため、観念上も両商標は類似するものと思料する。

これらの商標の称呼については、両商標とも図形のみからなる商標であり、何ら称呼が発生しないため、比較し得ない。

そこで、本件商標と引用商標1ないし3を比較すると、これらは称呼において比較し得ないものの、外観及び観念において類似している。したがって、本件商標は、引用商標1ないし3に全体として類似する商標であると考える。

さらに、引用商標1ないし3は周知であり、本件商標は引用商標1ないし3の牛図形と類似する牛図形からなるため、本件商標に接した需要者が「レッド・ブル」の関連ブランドであるとか、申立人と何らかの関連を有する企業であると誤認するおそれがある。これより、本件商標は、引用商標1ないし3との関係で他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのある商標であると思料する。

(イ)本件商標と引用商標4及び5について

上記(ア)と同様の理由により、本件商標は、引用商標4及び5と全体として類似する商標であり、引用商標4及び5との関係で他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのある商標であると思料する。

ウ 商品・役務の類似について

本件商標の指定商品中、第5類「防臭剤(人用及び動物用のものを除く),防虫剤,虫除け用線香,空気浄化剤,スプレー式空気用芳香消臭剤,殺虫剤,衛生用殺菌消毒剤,くん蒸消毒剤(棒状のものに限る),くん蒸消毒剤(錠剤に限る),中身の入っている救急箱」は、引用商標1の指定商品中「薬剤」と類似である。

また、本件商標の指定商品中、第1類「ラジエーターのスラッジ除去用化学剤,タイヤのパンク防止剤」、第3類「自動車用消臭芳香剤,風防ガラス洗浄液,自動車用洗浄剤,自動車用つや出し剤」、第4類「自動車燃料用添加剤(化学品を除く),動力車のエンジン用の潤滑油」等の自動車(四輪車及び二輪車)関連の商品は、引用商標の指定商品と審査基準上類似しないものの、申立人が活発に参加しているF1レース等のスポーツイベントで使用される各種マシンに密接に結びつく商品であることに注目されたい。

さらに、申立人は、引用商標について第三者に幅広く使用許諾を行っており、該商標は様々な製品と関連性を有するようになっている。例えば、フランスのメーカーから牛図形商標や「RED BULL」商標を使用した自動二輪車用の潤滑油やフォークオイル等が販売されており(甲16)、主な販売地域である欧州、南米、カナダ、オセアニアでは申立人と自動車用オイル製品の関連性が認識されているものと思料する。

以上のとおり、類似商標が使用された自動車等関連商品について、申立人との関係で出所の混同が生ずるおそれがあるものと考える。

エ 不正の目的について

上述したように、引用商標は、創作標章であり、申立人に係るレッド・ブル飲料やスポーツイベントに関する活動などを通じて、本件商標の出願日前に国内外の需要者の間で広く認識されていた。

したがって、本件商標の権利者が、引用商標とは全く関係なく偶然に、引用商標と類似する「突進する赤い牛」図形を配した本件商標を採用し出願したとは考えがたい。

これより、本件商標の出願人が、引用商標の著名性にフリーライドするという不正の目的をもって本件商標の出願をしたことが自然に推認できる。

(3)むすび

ア 商標法第4条第1項第10号について

上記(2)イ、ウで述べたとおり、本件商標は、引用商標及び使用商標と同一又は類似する商標であり、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品「薬剤」と類似し、また、異議申立人の活動と密接な関連性を有する。さらに、上記(2)アで述べたとおり、引用商標及び使用商標は、日本国内及び外国の需要者の間に広く認識された商標である。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。

イ 商標法第4条第1項第11号について

上記(2)イで述べたとおり、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標であり、上記(2)ウで述べたとおり、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と同一又は類似する。そして、引用商標1は、申立人所有の先願先登録商標である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

ウ 商標法第4条第1項第15号について

仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号又は同項第11号に該当しない場合においても、上記(2)アで述べたとおり、引用商標及び使用商標は、日本国内及び外国の需要者の間に広く認識された商標であり、本件商標に接する需要者は、申立人の業務と何らかの関係があるとの誤認を生じるおそれがある。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

エ 商標法第4条第1項第19号について

仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同項第11号、又は同項第15号に該当しない場合においても、上記(2)イ、アで述べたとおり、本件商標は、引用商標及び使用商標と同一又は類似する商標であり、引用商標及び使用商標は、日本国内又は外国の需要者の間に広く認識された商標である。さらに、上記(2)エで述べたとおり、本件商標は、不正の目的をもって出願されたことが容易に推認できる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

オ 結論

以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当し、登録を受けることができないものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきである。

3 当審の判断

(1)引用商標の周知性について

ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、次の事実を認めることができる。

(ア)申立人は、いわゆる「エナジードリンク」の製造・販売を行う、オーストリアに本拠地を置く法人である。1987年にオーストリアで最初に販売された申立人の「エナジードリンク」(以下「申立人商品」という場合がある。)は、その後、世界各国で販売され、現在では、160か国以上の国で販売され、2013年(平成25年)の全世界の販売状況は,2012年に比べ3.1%増の53.9億缶であった。また、申立人の2012年及び2013年の売上高は、49.3億ユーロ及び50.4億ユーロであった。(職権調査 http://energydrink-jp.redbull.com/company ほか)。

(イ)我が国のエナジードリンク市場は、2013年で約950万ケース(1ケース30本換算)であり、そのうち申立人商品は約550万ケースで約60%のシェアを占めている(職権調査 http://www.jmrlsi.co.jp/scto/case/2014/energydrink.html ほか)。

(ウ)申立人は、2004年から参戦したF1グランプリで、2010年ないし2013年に4連覇するほか、世界ラリー選手権、MotoGPレース、ダカールラリー、モトクロス、航空レース等の競技会に参戦、又はそれらの競技会の主催・後援等をしている(甲7〜甲13、職権調査)。

(エ)本件商標の登録出願の日前から、申立人商品の容器には、「Red Bull」の文字とともに使用商標が表示され、また、上記競技会においても、使用商標及び「Red Bull」の文字が、参加者のユニフォームやマシンなどに表示されている(甲7〜甲10、甲12、職権調査)。

(オ)しかしながら、引用商標1ないし3並びに引用商標4及び5(使用商標の一部分(半分)として表示されていることは確認できる。)は、それらが本件商標の登録出願の日前に使用されている事実は見いだせない。

イ 上記アの事実からすれば、使用商標は、本件商標の登録出願の日前から、申立人の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は本件商標の登録査定日においても継続していたものと判断するのが相当である。

しかしながら、引用商標は、本件商標の登録出願の日前に使用されている事実は見いだせないから、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と認めることはできない。

(2)商標法第4条第1項第11号について

ア 本件商標は、別掲1のとおり、左方向に跳躍する赤い牛とオレンジ色の盾状の図形からなるものであり、特定の称呼及び観念を生じないものとみるのが自然である。

イ 引用商標1は、別掲2のとおり頭を低く下げ向かい合って争っている2頭の牛の黒色のシルエットと背景の円からなり、その構成はまとまりよく一体に表されており、全体が一体不可分のものとみるのが自然である。そして、引用商標1は、かかる構成から、特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。

ウ そこで、本件商標と引用商標1とを比較すると、両者は、牛の頭数、体勢、色彩の差異によりその印象が明らかに異なるから、外観においては容易に区別し得るものである。また、称呼及び観念において両者は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、相紛れるおそれのないものである。

してみると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。

なお、申立人は、引用商標1の構成中右側の牛部分を抽出し、その上で本件商標と引用商標1が類似する旨主張しているが、引用商標1の該部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足る事情は見いだせないから、かかる主張はその前提において採用することができない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。

(3)商標法第4条第1項第10号について

ア 本件商標と引用商標1ないし3との関係において

本件商標と引用商標1が非類似の商標であることは、上記(2)のとおりであり、また、本件商標と引用商標2及び3が非類似の商標であることも上記(2)と同様であり、かつ、引用商標1ないし3が申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と認められないことは、上記(1)のとおりであるから、本件商標は、引用商標1ないし3との関係において、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。

イ 本件商標と引用商標4及び5との関係において

(ア)本件商標の構成(外観)、称呼及び観念は上記(2)アのとおりである。

(イ)引用商標4及び5は、別掲3のとおり、頭を低く下げ左向きに突進する牛の黒色のシルエットからなるものであり、特定の称呼及び観念を生じないものとみるのが自然である。

(ウ)そこで、本件商標と引用商標4及び5とを比較すると、両者は、牛の体勢、色彩の差異(盾状の図形の有無も異なる)によりその印象が明らかに異なるから、外観においては容易に区別し得るものである。また、称呼及び観念において両者は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、相紛れるおそれのないものである。

してみると、本件商標と引用商標4及び5とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。

(エ)以上のとおり、本件商標と引用商標4及び5は非類似の商標であり、かつ、後者が申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と認められないこと上記(1)のとおりであるから、本件商標は、引用商標4及び5との関係において、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。

ウ 本件商標と使用商標との関係において

(ア)本件商標の構成(外観)、称呼及び観念は上記(2)アのとおりである。

(イ)使用商標は、別掲4のとおり、頭を低く下げ向かい合って争っている赤色の2頭の牛と背景の円からなり、その構成はまとまりよく一体に表されており全体が一体不可分のものとみるのが自然である。そして、使用商標は、かかる構成から特定の称呼を生じないが、需要者の間に広く認識されているものであるから「(ブランドとしての)レッドブルのマーク」との観念を生じると判断するのが相当である。

(ウ)そこで、本件商標と使用商標とを比較すると、両者は、牛の頭数、体勢の差異により印象が明らかに異なるから、外観においては容易に区別し得るものである。また、称呼において両者は、いずれも特定の称呼を生じないものであるから相紛れるおそれはなく、さらに、観念においても、両者は、前者が特定の観念を生じず、後者は「(ブランドとしての)レッドブルのマーク」との観念が生じるから、相紛れるおそれのないこと明らかである。

してみると、本件商標と使用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。

(エ)以上のとおり、使用商標が上記(1)のとおり申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標と使用商標が非類似の商標であるから、本件商標は、使用商標との関係において商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。

エ 小括

以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。

(4)商標法第4条第1項第15号について

上記(1)のとおり、使用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と認められ、引用商標はそのようには認められないものである。

また、上記(3)ア、イ及びウのとおり、本件商標と引用商標及び使用商標は、非類似の商標であって別異の商標というべきものである。

そうすると、使用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標と引用商標及び使用商標は、非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標及び使用商標を想起又は連想させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。

(5)商標法第4条第1項第19号について

本件商標は、上記(3)ア、イ、ウ及び(4)のとおり、引用商標及び使用商標と非類似の商標であって別異の商標というべきものであり、引用商標及び使用商標を想起又は連想させるものでないから、不正の目的をもって使用するものと認めることはできないし、他にこれを認め得る事情も見いだすことはできない。

してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。

(6)まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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