Trademark Appeal Case
ロキの称呼類似と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2014−900272(T2014−900272/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5680213号商標(以下「本件商標」という。)は、「ロキプロフェン」の片仮名を標準文字で表してなり、平成25年12月3日に登録出願、第5類に属する「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」を指定商品として、同26年5月9日に登録査定され、同年6月27日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、その指定商品中「薬剤」については商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第66号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 申立人が引用する商標
申立人が引用する商標(以下「引用商標」という。)は次のとおりであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
登録第5053267号商標
商標 「ロキソ\LOXO」
指定商品 第5類「薬剤」
登録出願日 平成18年11月14日
設定登録日 平成19年6月8日
イ 具体的な理由
(ア)本件商標と引用商標の類否
本件商標は、「ロキプロフェン」の片仮名よりなり、前半の「ロキ」の文字(語)は特定の意味合いを有さない造語であるのに対して、後半の「プロフェン」の文字(語)は医薬品についてのステムであるから(甲63、甲66)、識別力は低く、観念上「ロキ」と「プロフェン」の結合の程度は極めて弱く、両語は分離して観察されやすいものである。
してみれば、本件商標は、識別力の低い「プロフェン」の文字部分を除いた「ロキ」の文字部分より、「ロキ」の称呼をもって取引に資される場合も少なくないものというべきである。
一方、引用商標は、「ロキソ\LOXO」の文字よりなり、構成文字に相応して「口キソ」の称呼を生じる。
そうすると、本件商標は「ロキ」の称呼も生じるので、引用商標の称呼とは、語尾の一音相違にすぎない。
したがって、本件商標は、引用商標と称呼及び外観において混同を生じる類似商標である。
また、後述のとおり、「ロキ」は、申立人が使用する商標「ロキソニン(LOXONIN)」(異議決定注:「ロキソニン」の文字からなる商標及び「LOXONIN」の文字からなる商標の2商標をいうものと判断した。以下、両商標をあわせて「使用商標」という。)を想起させる文字として広く需要者及び取引者に定着している取引実情を勘案すれば、類似性の程度は極めて高いものといわざるを得ない。
(イ)両商標の指定商品の比較
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、いずれも「薬剤」で同一である。
(ウ)小括
以上より、本件商標は、その出願日前の商標登録出願に係る引用商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 使用商標「ロキソニン(LOXONIN)」の著名性
申立人親会社である第一三共株式会社の医療用医薬品「ロキソニン(LOXONIN)」は、昭和61年の発売以来、30年近くにわたり、鎮痛・炎症・解熱などの治療用の医療用医薬品として、我が国において絶大な定評を得てきたものであり、本件商標の商標権者においても十分承知のことと思われる。
当該「ロキソニン(LOXONIN)」は、医療機関、医師・薬剤師等の医療従事者向けに、自社の2,000名以上に及ぶ医療情報担当者あるいは取引先である医薬品卸(商社)を通じ医療用医薬品「ロキソニン」のプロモーション活動を盛大に行ってきた経緯もあり、平成23年度売上高は、約610億円にも達し、医療用医薬品国内売上高ランキングにおいて、トップ10に位置する(甲5)。
そして、「ロキソニン(LOXONIN)」は、現在、世界約30か国で販売されている。
さらに、医療用医薬品「ロキソニン(LOXONIN)」に加えて、平成23年1月には、申立人によって、OTC版「ロキソニン(LOXONIN)」の発売が、開始され、平成24年11月時点で、売上げは既に150億円(2,400万個)を突破し、「日経トレンディ」の「2011年ヒット商品ベスト30」において、第9位に選出された。「2011年ヒット商品ベスト30」は、テレビ、新聞、インターネットその他のメディアにおいて、広く記事として掲載され、「ロキソニン(LOXONIN)」の名を広く知らしめる契機となった。また、申立人も、ウェブ、テレビ、新聞などの広告を継続的かつ盛大に行っている。さらに、「ロキソニン」は、2万種類の薬剤の中の1位の検索結果を得た(甲6〜甲61)。
以上から明らかなように、少なくとも本件商標の出願時点において、使用商標は、取引者及び需要者間で著名となっていたことは明白である。
イ 使用商標の独創性の程度
使用商標は、格別の意味を有しない造語である。そして、薬剤の分野において「ロキソニン」の各文字を名称に含む薬剤は他に存在しないことからも、独創性の高い商標であることがわかる。
ウ 本件商標と使用商標との類似性の程度
本件商標は、使用商標を想起させる文字として広く需要者及び取引者に定着している「ロキ」の文字に加えて、語尾「ン」をも共通にするものであるから、著名性の高い使用商標とは、極めて類似性の程度が高い商標であるといわざるを得ない。
また、申立人親会社の件外製品「メバロチン」が、上記ヒット商品ベスト30のランキング第26位で、売上高は約331億円でありながら、過去の審決及び判決(平成16年(行ケ)第256号、平成16年(行ケ)第129号)において、語頭「メバ」の2音のみが共通する他社商標を排除していることを考慮すれば、本件商標は、語頭の2音に加えて「プロフェン」の文字部分がステムであって識別力が低いこと、使用商標は「メバロチン」よりも上位の売り上げにランクすることから、混同を生じないものとすることはできない。
エ 申立人等の業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、商品等の取引者並びに需要者の共通性及びフリーライド商標となる可能性
本件商標は、使用商標と指定商品が共通するため取引者、需要者の共通性が明白であるところ、取引者、需要者に広く親しまれた使用商標と類似する本件商標が第三者に使用されるとすれば、取引者、需要者は、あたかもそれが申立人等又は申立人等と何らかの関係を有する者の製造、販売に係る商品であるとの出所の混同を生ずるおそれは極めて高いものといわざるを得ない。
オ 小括
以上のアないしエの事情を総合勘案すると、本件商標に接する取引者、需要者は、普通に払われる注意力において、容易に申立人等の使用商標及びその商品を連想、想起するものといえる。
以上よりすれば、本件商標は、これが付された商品に接した需要者・取引者をして、申立人又は申立人と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と誤認混同を生ぜしめるおそれの高いものであるといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
商品「ロキソニン」が、医療用医薬品及びOTC医薬品の双方における解熱鎮痛薬の著名な商品であることは、医薬品の製造販売をする商標権者であれば、当然に承知しているものと考えられ、結果的に、その著名性に着目して、使用商標を想起させる文字として広く需要者及び取引者に定着している「ロキ」の文字を、特に需要者の注意を惹く語頭に配するとともに、あえて、ステムである「プロフェン」を結合してなる本件商標を解熱鎮痛薬の名称として採択し使用することは、長年の営業活動によって築き上げた商品「ロキソニン」に関する営業上の信用や名声にフリーライドすることとなり、「ロキソニン(LOXONIN)」の出所表示機能を希釈化せしめるものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第7号について
本件商標の登録及び使用は、申立人等の製品と、他社製品との区別を困難なものとして、市場における混乱を招くばかりか、症例や効能等に適した製品の選択の妨げとなり、ひいては医療過誤等の極めて深刻な事態を招くおそれがある。
この点に関して、薬剤名称の採択に関する「新規承認医薬品名称類似回避フローチャート」(甲62)では、類似の名称を厳格に排除しており、その趣旨は、薬剤の取り違え等による公衆の衛生を害するおそれを防止し、医療安全を厳格に確保するためにほかならない。
また、「医薬品製造販売指針」(甲65、甲66)によれば、医薬品国際一般名称(INN)が、各国の商標権に抵触しないように命名されるものであることから、販売名の語尾に国際一般名称(INN)のステムを付した名称を採用することは避けるべきであることが明示されている。そして、本件商標のような態様よりなる商標の登録及び使用は、世界保健機関(WHO)の設定するINNの趣旨に反するものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(5)むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するものである。
そして、著名商標と極めて近似した商標の登録は、国を挙げての日本ブランドを発信し並びに国内外の第三者による安易な模倣品を排除せんとする我が国の国際競争力を低下させるばかりか、商標に化体した業務上の信用を適切に保護し、健全な競業秩序の維持を図ることを目的とする商標法第1条の趣旨に反する事態を招くおそれがある。
申立人らは、本件商標の使用によって、事業活動において取り返しのつかない損害を被るおそれがある。
3 当審の判断
(1) 使用商標の周知性について
申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、次のとおり認めることができる。
ア 申立人の親会社「第一三共株式会社」が1986年(昭和61年)から医療用医薬品に「ロキソニン」及び「LOXONIN」の商標(いずれも使用商標)を使用し販売を開始したこと(甲10、甲11)、同医療用医薬品が平成23年には610億円を売上げ、医療用医薬品国内売上げランキングにおいて10位であったこと(甲5)、申立人が平成23年1月から同医療用医薬品のスイッチOTC薬に「ロキソニン S」「LOXONIN S」の商標を使用し販売を開始し、そのことが「ロキソニンS」などの記載とともに新聞や多くのウェブページに掲載されたこと(甲9〜甲38)、同スイッチOTC薬が月刊誌「日経トレンディ」が2011年11月に発表した「2011年ヒット商品ベスト30」において9位となり、そのことが「ロキソニンS」などの記載とともに多くのウェブページに掲載されたこと(甲39〜甲55)などの事実が認められる。
イ 上記アの認定事実に加え、上記スイッチOTC薬の商標「ロキソニン S」「LOXONIN S」及びウェブページに記載の「ロキソニンS」は、いずれもその構成文字中の「ロキソニン」「LOXONIN」が出所識別標識としての機能を果たすものと認められることを考慮すれば、「ロキソニン」及び「LOXONIN」(使用商標)は、本件商標の登録出願の日前から、申立人及び第一三共株式会社(以下、両者をあわせて「申立人ら」という。)の業務に係る商品(解熱鎮痛薬)を表示するものとして需要者の間に広く認識され、その状況は本件商標の登録査定の日はもとより、現在まで継続しているものと判断するのが相当である。
しかしながら、「ロキ」の文字が申立人らの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることを示す証左の提出はなく、かつ、それを認めるに足りる事情も発見できないから、「ロキ」の文字がそのように認識されているものと認めることはできない。
なお、「ロキ」の文字が使用商標(「ロキソニン」「LOXONIN」)を想起させるものとして取引者・需要者に定着している旨の申立人の主張については、それを認めるに足りる事情は発見できないから、かかる主張も採用できない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、上記1のとおり、「ロキプロフェン」の文字を標準文字で表してなり、その構成文字は、同書、同大、同間隔で、まとまりよく一体に表され、これから生じる「ロキプロフェン」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、その構成中の「プロフェン」の文字が医薬品のステムであるとしても、本件商標のかかる構成及び称呼においては、「ロキプロフェン」の構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが自然である。
さらに、本件商標は、その構成中「ロキ」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情は発見できない。
してみれば、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「ロキプロフェン」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものといわなければならない。
イ 他方、引用商標は、上記2(1)アのとおり「ロキソ」と「LOXO」の文字からなり、「ロキソ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、両者の外観、称呼及び観念はいずれの点からみても相紛れるおそれのないことが明らかであるから、両者は類似しない商標というべきものである。
また、その他、本件商標と引用商標とが類似するとすべき理由は見いだせない。
したがって、本件商標は、引用商標と類似しない商標であるから商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 使用商標の周知性・著名性について
使用商標は、上記(1)のとおり、「ロキソニン」「LOXONIN」の文字からなり、本件商標の登録出願の日前から現在まで、申立人らの業務に係る商品(解熱鎮痛薬)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものである。
なお、上記(1)のとおり「ロキ」の文字は、申立人らの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
イ 本件商標と使用商標の類似性について
(ア)本件商標は、上記(2)アのとおり、「ロキプロフェン」の文字からなり、その構成全体が一体不可分のものであって、「ロキプロフェン」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
使用商標は、上記(1)のとおり「ロキソニン」「LOXONIN」の文字からなり、いずれも「ロキソニン」の称呼、「(ブランドとしての)ロキソニン」の観念を生じるものである。
(イ)そこで、本件商標と使用商標とを比較すると、両者の外観、称呼及び観念はいずれの点からみても相紛れるおそれのないことが明らかであるから、両者は類似しない商標であって、別異の商標というべきものである。
なお、本件商標と申立人がスイッチOTC薬に使用する商標「ロキソニン S」「LOXONIN S」とが相紛れるおそれのないことは、より明らかである。
ウ 小活
上記ア及びイのとおり、使用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前から需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標は、使用商標と類似しない商標であって別異の商標というべきものである。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人ら、あるいは申立人らと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
なお、申立人は、過去の審判決で医療用医薬品国内売上高ランキング26位の「メバロチン」が他社商標を排除しているので、それより上位の引用商標との関係で本件商標が混同を生じないものとすることはできない旨主張しているが、同ランキングは2011年度のものであり、当該審判決とはその時期が異なり何ら関連のないものであるから、採用する限りでない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、上記(3)イのとおり使用商標と類似しないものであって、使用商標を連想又は想起させるものでなく、かつ、本件商標が不正の目的をもって使用するものと認め得る事情は発見できないから、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。
(5)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、上記(3)イのとおり、使用商標と類似しないものであって別異の商標というべきものであるから、市場における混乱を招くおそれのあるものとも、医療過誤等の深刻な事態を招くおそれがあるものとも認められない。
また、医薬品製造販売指針(甲65、甲66)には、販売名の語尾に医薬品国際一般名称のステムを付した名称を採用することは避けるべきである旨が明示されているとは認められないし、他に、本件商標が国際信義に反するもの、公序良俗を害するものというべき事情は発見できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。
(6)その他の申立人の主張について
申立人は、本件商標の登録は商標法第1条の趣旨に反する旨主張するところがあるが、本件商標と使用商標が類似しない別異の商標というべきものであることは上記(3)イのとおりであるし、他に本件商標が商標法第1条の趣旨に反するものと認め得る証左は見いだせない。
(7)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。