Trademark Appeal Case
流派名称の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900315(T2013−900315/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5589450号商標(以下「本件商標」という。)は、「心形刀流」の文字を標準文字で表してなり、平成24年7月3日に登録出願され、第41類「剣術の教授」を指定役務として、平成25年4月30日に登録査定、同年6月14日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は登録要件を具備しないものとして取り消されるべきものである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。
「心形刀流」とは、伊庭秀明が、本心刀流をもとに開いた江戸時代より続く剣術の著名な一流派の名称であり、江戸時代に全国的な知名度を獲得するに至ったものである。
本件商標は、「心形刀流」の漢字を標準文字により普通に用いられる方法で表示したに過ぎないから、上記の事情より、指定役務「剣術の教授」に使用しても、役務の質(内容)を表示するにすぎず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであり、「心形刀流」が、全国的な知名度を獲得するに至ったのは江戸時代であるから、「心形刀流」の全国的な知名度の獲得に何らの貢献もなかった特定の個人が、商標法第3条第2項の適用を受けることはできないというべきである。
加えて、上記の全国的な知名度を獲得した時期に、「心形刀流」の宗家(家元)であった伊庭家は、既に明治期に断絶し、現在、「心形刀流」の宗家(家元)は存在しないものであり、三重県亀山の伝承は、「心形刀流」の皆伝者を経由しておらず、江戸時代における「心形刀流」の一部を今に伝えるものでしかない。また、上記著名性を獲得し、宗家(家元)がまだ存在していた江戸時代における「心形刀流」の形等の多くを、三重県亀山の伝承は失伝しているところ、長崎県平戸の伝承は、「心形刀流」について膨大な資料類が保存されており、かつ、昭和や平成の時代において、一般の需要者等に認知されている「心形刀流」は、長崎県平戸藩に伝承した「心形刀流」であるといえるから、現在の需要者等が認識する「心形刀流」とは、全国的な知名度を獲得するに至った江戸時代の「心形刀流」であり、「心形刀流」の皆伝者を経由していない、江戸時代の「心形刀流」の形等の多くを失伝した三重県亀山の伝承を、江戸時代の「心形刀流」そのものであるとして、現在の需要者らが学び、接したりするとすれば、役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第2項の適用を受けることができない商標であって、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、商標法第4条第1項第16号にも該当し、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである。
3 当審の判断
(1)「心形刀流」の語について
本件商標は、前記1のとおり、「心形刀流」の文字を標準文字で表してなるところ、申立人の提出に係る甲各号証によれば、「心形刀流」について、以下のような事実が認められる。
「心形刀流」は、江戸時代に、伊庭秀明により創始された剣術とされるものであり、平戸藩、亀山藩に伝承したとされているものであり(甲7、15)、「心形刀流」は、「平戸藩の武芸教育」(昭和61年2月25日発行)に解説されていること(甲6)、「松浦史料博物館」(長崎県)には、多数の江戸時代の文献として残っていること(「近世武道文献目録」(1989年2月20日 第一書房発行))(甲12)、昭和48年頃以降、長崎県内において、市民体育大会等での演武の披露及び福井県の希望者への指導が行われたこと(甲5、8、10)、平戸伝心形刀流伝承合宿が平成17年から平成22年の間に12回開催されたことが認められる(甲9)。
また、雑誌「格闘技・超勝負列伝」(2000年7月25日発行)、「月刊秘伝」(2011年1月14日発行)等において(甲11)、「心形刀流」について亀山藩及び平戸藩への伝承がされたことに加え、申立人が「(「心形刀流」の)道場が、三重県亀山というところだったので、・・・三重まで行って習ってました。」(甲11 4葉目)と述べている記載が併せて紹介されている。
一方、平成7年7月2日に開催された「日本古武道大会」(「日本古武道振興会」発行)の記録において、亀山藩に伝わったとされる「心形刀流」が、昭和50年に三重県無形文化財として登録されたこと及び昭和60年に社団法人亀山古式道保存振興会が設立されたことが紹介されている(甲15)。
(2)以上の事実からすると、「心形刀流」の文字は、現在、江戸時代に伊庭秀明が創始した古武道の一つとする歴史的記録として残されているものであり、亀山藩及び平戸藩に伝承されたものとして「心形刀流」は、その愛好者等による稽古、鍛錬及び古武道大会等において披露されていることを認めることができるものの、日本各地の道場等において、「心形刀流」を学術・技芸として広く教えているというような実情はなく、剣術の教授について、その役務の質を表示するものとして一般に使用され、かつ、理解されている事実を発見することはできない。
そうとすれば、本件商標は、登録査定時において、その指定役務との関係において、直ちに特定の役務の質等を、具体的に表示するものであるということはできないから、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものもあり、また、役務の質について誤認混同を生じるおそれもないというのが相当である。
(3)してみると、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではない。
なお、本件商標は、その登録出願に係る手続の経緯を見ても、申立人が述べる商標法第3条2項に該当するものとして登録されたものではない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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