結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2014−890022(T2014−890022/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第5647548号商標(以下「本件商標」という。)は、「FANCY」の欧文字を標準文字により表してなり、平成25年6月20日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、同年12月27日に登録査定、同26年2月7日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第41号証を提出した。
本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同第6号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条の規定に基づき無効とされるべきである。
(1)商標法第3条第1項第3号又は同第6号該当性
ア 本件商標は、「FANCY」の欧文字よりなるところ、「FANCY」は、食品に関しては、元々、「極上の」、「高級な」、「一流の」等の意味を表す英単語であり、我が国では、「趣味的な意匠をこらしてあるさま」等の意味を表す外来語として広く知られている言葉である(甲3、4)。そして、「キャラクター商品などの趣味的な意匠をもつ雑貨・小物類・装身具」の意味を表す「ファンシーグッズ(fancy goods)」、「デコレーションケーキのような装飾性の高い食品」の意味を表す「ファンシーフーズ(Fancy foods)」といった派生語も一般的に用いられている状況にある(甲4、5)。
イ 本件商標の指定商品である「菓子,パン」の分野においては、「FANCY(ファンシー)」は、「高級な、極上の、意匠を凝らした」の意味を表す用語として普通に用いられている(甲6〜39)。
ウ 商標法第3条第1項第3号は、商品の産地、販売地、品質、効能等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は登録できない旨を規定しており、ここに規定された商標は記述的商標と称されるものである。
前記のとおり、「FANCY(ファンシー)」は、「菓子,パン」の商品分野においては、「高級な、極上の、意匠を凝らした」の意味を表す用語として一般的に用いられているものであって、その商品の品質を端的に表す用語であるか、あるいは、多数の業者が取引に際して用いているものであるから、「FANCY」といっても何人の業務に係る商品であるのかを認識できないものである。
なお、本件商標「FANCY」が商標法の上記規定に該当する点については、特許庁の審決例(甲40、41)からも明らかである。
エ したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同第6号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第16号該当性
ア 前記(1)のとおり、「FANCY」は、「菓子,パン」の商品分野においては、「高級な、極上の、意匠を凝らした」の意味を表す用語として一般的に使用されているものであって、その商品の品質表示である。そうすると、これに相応する商品以外の指定商品との関係においては、本件商標は、取引者、需要者をして、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
イ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
被請求人は、本件審判の請求に対し何ら答弁しなかった。
商標法第3条第1項第3号所定の商標が登録要件を欠くとされているのは、(1)商品の「産地、販売地、品質」等又は商品の「提供の場所、質、提供の用に供する物」等を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる」商標は、商品又は商品の特性を表示記述する標章であることから、取引者、需要者によって、専ら当該商品又は商品の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり、自他商品又は商品の識別標識として認識されるとは考え難いこと、(2)そのような標章は、多くの場合、当該商品又は商品に係る取引一般において、取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから、誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり、特定人の独占的使用を認めると、円滑な取引を阻害するなど公益上の問題が生じるおそれがあることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・集民126号507頁〔判例時報927号233頁〕参照)。
これを踏まえて、以下、本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性の有無について検討する。
(1)証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 書籍類
(ア)「小学館ランダムハウス英和大辞典」(株式会社小学館、2010年7月7日第2版第10刷発行、p.953-954)には、「fancy」の項に、「装飾の(多い)、派手な、手の込んだ」、「極上の、上等な、特選の;高級な、一流の〈食品など〉」及び「=fancy cake」との各記載がある。また、「fancy cake」の項には、「デコレーションケーキ」との記載がある(甲3)。
(イ)「大辞林」(株式会社三省堂、2006年10月27日第3版発行、p.2182)には、「ファンシー〔fancy〕」の項に、「趣味的な意匠をこらしてあるさま。」との記載がある(甲4)。
(ウ)「現代用語の基礎知識」(自由国民社、2013年1月1日発行、p.1339)には、「ファンシー・フーズ〔fancy foods〕」の項に、「デコレーションケーキのような装飾性の高い食品。」との記載がある(甲5)。
(エ)「パン・洋菓子事典」(パン・洋菓子事典編纂会、昭和55年9月発行、p.609)には、「ファンシー(Fancy)」の項に、「形の変わったパンやケーキのことをいう。ファンシー・ブレッド、ファンシー・サンドイッチ、ファンシー・ブリック、ファンシー・ケーキなどにわけることができる。〔ファンシー・ブレッド〕豊かな材料を使った形の変わった小型パンのことである。〔ファンシー・サンドイッチ〕形や飾りに趣向をこらしたもののことで、渦巻形のものや、白パンと黒パンを格子模様に組み合わせたものなどがこれに属する。〔ファンシー・ブリック〕楕円形の上部に刻み目がついたパンのことで、昔イギリス南部で流行した。〔ファンシー・ケーキ〕あらゆる種類の装飾的ケーキの総称である。〔ファンシー・クッキー〕いろいろな形に絞り、表面を飾った高級ケーキをいう。〔ファンシー・ビスケット〕意匠をこらし、表面を飾った高級ビスケットをいう。」との記載がある(甲7)。
(オ)「百菓辞典」(東京堂出版、平成9年9月発行、p.215)には、
「ファンシー ケーキ(英 fancy cake)」の項に、「デコレーションケーキ(和製語)のこと。ファンシーには、空想、幻想といった意味と別に、『装飾的な』『意匠をこらした』という意味がある。」との記載がある(甲8)。
(カ)「仏英独=和 [新]洋菓子辞典」(白水社、平成24年3月発行、p.143)には、「fancy」の項に、「高級な、極上の、装飾の多い、(意匠を)凝らした」及び「材料、デザイン、形など普通以上に手をかけた菓子」との記載がある(甲9)。
(キ)「特選 贈答菓子」(モーリスカンパニー、平成17年3月発行)には、その表紙に「ファンシーなケーキ類と現代風フルーツケーキへの試み。」との記載がある(甲17)。
イ インターネット記事
(ア)「コトバンク」のウェブサイトには、「ファンシービスケット」の見出しの下、「ソフトビスケットよりもさらに砂糖や卵の量を多くし、形状その他に趣向をこらしたものを呼ぶことが多い。」(1998年10月編集製作)との記載がある(甲11)。
(イ)「食ベログ」のウェブサイトには、2010年8月3日付けの@さくらさんの口コミとして、「カラフルでファンシーなお菓子。chocoholic東武池袋店」の見出しの下、「購入したのはマカロン8個セット\1260(税込) ただのマカロンではありません。クマちゃんとイチゴの形をしています。」との記載がある(甲16)。
(ウ)「DeNA BtoB market」のウェブサイトには、「ファンシーチョコケーキ」の見出しの下、個包装袋に、「Fancy」と「Choco Cake」とを二段に表示し、更にその下に「ファンシーチョコケーキ」と表示された当該商品の写真掲載があり、商品詳細欄には「登録/更新 2010/02/10」との記載がある(甲20)。
(エ)「楽天市場」のウェブサイトには、商品「ファンシースターキャンディー1kg(約210個)入【駄菓子】」について、「この商品を購入された方のレビュー」欄に、「キャンディレイを作るのに購入。星型がすごく可愛いです。」(投稿日:2013年03月07日)との記載がある(甲39)。
(オ)記事掲載日が特定できないため、本件商標の登録査定日(平成25年12月27日)時点において存在していたかどうかは必ずしも定かではないが、登録査定日からわずか3か月以内のものとして、以下の記事がある。
a 「お菓子の王国」のウェブサイトには、「カラフルな昔菓子を容器に入れ仕上げたファンシー菓子」の見出しの下、「さくら草やあじさいの花を彩った金平糖、スターやハート、てまり形のかわいい飴、フルーツスター、ボールミンツやラムネ等」との記載がある(記事印刷日:平成26年3月20日、甲13)。
b 「京王プラザホテル」のウェブサイトには、「ファンシーケーキ各種」、「ファンシーケーキカット詰め合わせ」、「ファンシーケーキ(オリジナル)」及び「Original Fancy Cake」等の記載がある(記事印刷日:平成26年2月8日及び同年3月20日、甲18、19)。
c 「原宿パンケーキ速報」のウェブサイトには、「Q−pot CAFE.からファンシーな期間限定パンケーキが登場」との記載がある(記事印刷日:平成26年3月20日、甲21)。
d 「横浜の一軒家カフェ rokucafe」のウェブサイトには、「横浜一軒家カフェ ロクカフェ ファンシーケーキPARTY」との見出しの下、「こちら貸切のご予約で、『かわいいファンシーなケーキを出して欲しい』との依頼が。。」との記載がある(記事印刷日:平成26年3月20日、甲22)。
e 「ゴンチャロフ製菓」のウェブサイトには、「当社が大正時代に日本で初めて手作りの“ファンシーチョコレート”、“ウイスキーボンボン"を創りだしたことから、『チョコレートのゴンチャロフ』、『高級チョコレートの老舗』として広く認識されるようになってまいりました。」との記載がある(記事印刷日:平成26年2月8日、甲23)。
f 「モロゾフのオンラインショップ」のウェブサイトには、「Golden Fancy Chocolate ゴールデンファンシーチョコレート」及び「販売期間:2014/02/17(月)21:00〜2014/03/31(月)10:00」との記載がある(記事印刷日:平成26年3月20日、甲27)。
g 「ショップgnavi」のウェブサイトには、「【306】【ビアンクール】ファンシーアソートショコラ22個入」の見出しの下、「小粒なファンシーチョコレート、プチトリュフとプレーンチョコレートを詰め合わせました。」との記載がある(記事印刷日:平成26年2月7日、甲30)。
h 「ライオン菓子株式会社」のウェブサイトには、「商品情報」の見出しの下、「ファンシーキャンディー」との記載がある(記事印刷日:平成26年3月20日、甲32)。
i 「スイーツ大好き!」のウェブサイトには、「モロゾフ ファンシーキャンディー 115g[8288]」の見出しの下、「美味しいファンシーキャンディー。色々な種類が楽しめます。」との記載がある(記事印刷日:平成26年3月20日、甲33)。
j 「STORE MIX」のウェブサイトには、「熱帯魚 ファンシーキャンディー 80本」の見出しの下、「魚の形をした棒付きキャンディーです。」との記載がある(記事印刷日:平成26年3月20日、甲35)。
k 「ブルボンオンラインショップ」のウェブサイトには、「キャンディーよりどりセット【2ケース=20袋】」の見出しの下、「ブルボンのファンシーなキャンディーを2種類セットにしてお届けします。」との記載がある(記事印刷日:平成26年3月20日、甲37)。
l 「大丸本舗の通信販売」のウェブサイトには、「ファンシーキャンディー(60本セット)」の見出しの下、「動物の仕込飴を60本セットにしました。動物の絵柄5種類が各6本ずつアソートになっています。」との記載がある(記事印刷日:平成26年2月8日、甲38)。
(2)前記(1)の認定事実によれば、本件商標の登録査定時において、「FANCY」の語は、「装飾の多い」、「意匠を凝らした」、「高級な」及び「極上の」等の意味を有する英単語(甲3、9)であって、本件商標の指定商品である「菓子,パン」の分野においては、同語を原語とする「ファンシー」の外来語についても、各種辞典類に「装飾的な、意匠を凝らした」程度の意味を有する語(甲5、7,8)として記載されていることからすると、「FANCY」ないし「ファンシー」の語は、同分野では「装飾の多い、意匠を凝らした、高級な、極上の」程度の意味を有する語として使用されるものと認められるところ、実際にも、形状など趣向を凝らした商品について、「ファンシービスケット」、「ファンシーなお菓子」、「Fancy Choco Cake(ファンシーチョコケーキ)」、「ファンシースターキャンディ(星型のキャンディ)」と称して、当該商品を販売、紹介していることが認められる(甲11、16、20、39)。
なお、本件商標の登録査定日(平成25年12月27日)時点において存在していたかどうかは必ずしも定かではないが、登録査定日からわずか3か月以内のものであるから、その間に特段事情が変わったとも考え難いところ、多数の事業者において、「ファンシー菓子」、「ファンシーケーキ」、「ファンシーチョコレート(Fancy Chocolate)」、「ファンシーアソートショコラ」、「ファンシーキャンディー」等と称して、当該商品を販売、紹介していることが認められる(甲13、18、19、21〜23、27、30、32、33、35、37)。
(1)本件商標は、「FANCY」の欧文字を標準文字で表してなり、その指定商品を第30類「菓子,パン」とするものである。
(2)前記2(2)によれば、本件商標の登録査定時には、既に、本件商標の指定商品の分野においては、「FANCY」ないし「ファンシー」の語は、「装飾の多い、意匠を凝らした、高級な、極上の」程度の意味を有する語として、取引者、需要者に認識されていたと認めるのが相当である。
そうすると、「FANCY」との標準文字からなる本件商標を、その指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、「装飾の多い、意匠を凝らした、高級な、極上の」程度の意味合いを認識するにとどまるというべきである。このように、本件商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものとして認識されるにとどまるから、自他商品の識別標識としては認識されない。
また、前記2(1)のとおり、「FANCY」(ファンシー)の語は、「菓子,パン」に係る取引一般において、取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから、誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり、特定人の独占的使用を認めると、円滑な取引を阻害するなど公益上の問題が生じるおそれがあるというべきである。
(3)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
以上によれば、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、請求人の主張するその余の無効理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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