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Trademark Appeal Case

語頭共通造語の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2014−685012(T2014−685012/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

国際登録第1140353号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件国際登録第1140353号商標(以下「本件商標」という。)は、「RESPIMER」の欧文字を横書きしてなり、2012年4月6日にFranceにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2012年(平成24年)10月3日に登録出願、第5類及び第10類に属する別掲1のとおりの商品を指定商品として、平成25年12月2日に登録査定され、同26年4月4日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証を提出した。

1 申立人が引用する商標は次の(1)及び(2)であり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、引用商標の商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。

(1)登録第2089400号商標(以下「引用商標1」という。)

商標 RESPIMAT

指定商品 第10類に属する商標登録原簿に記載の商品(別掲2)

出願日 昭和61年4月10日

設定登録日 昭和63年10月26日

(2)国際登録第697143号商標(以下「引用商標2」という。)

商標 RESPIMAT

指定商品 第5類及び第10類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品(別掲3)

国際商標登録出願日(事後指定日) 2009年(平成21年)2月18日

設定登録日 平成22年7月9日

2 具体的理由

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 商品の抵触について

本件商標の第5類の商品は引用商標2の指定商品と、第10類の商品は引用商標1及び2の指定商品とそれぞれ抵触する。

イ 商標の抵触について

(ア)称呼について

本件商標は、欧文字で横一連に「RESPIMER」と書してなる。

語頭の「RESPI」部分については、「呼吸」の意味を有する「respiration」や「呼吸の、呼吸用の、呼吸器官の」等の意味を有する「respiratory」といった単語が存在し、何れも「レスピ○○」と発音されること(甲4及び甲5)、また、語尾の「MER」については「dreamer(ドリーマー)」や「screamer(スクリーマー)」のように「○○マー」といった単語が存在することから、本件商標に接する取引者、需要者はこれをごく自然に「レスピマー」と称呼する。したがって、本件商標の自然的称呼は「レスピマー」である。

一方、引用商標は、欧文字で「RESPIMAT」と書してなる造語であるから、本件商標と同様に「レスピマット」と称呼される。

本件商標の称呼「レスピマー」と引用商標の称呼「レスピマット」を対比すると、語頭から第4音までが完全に一致し、その差異は、語尾周辺における「長音」と「促音+破裂音『ト』」という僅かなものにすぎない。加えて英単語の発音ルールに「語尾の破裂音は省略される」というルールがあることを考慮すれば(甲6)、取引の迅速を尊ぶ実際の商取引の現場では、引用商標はあたかも「レスピマッ」のように認識・記憶される場合が多くあることが容易に想像できる。

そうとすると、本件商標の称呼と引用商標の称呼は語尾の長音と促音という、ほとんど聴別し難い程度の差異しか有さないというのが実情である。

よって、本件商標と引用商標は取引の実情を踏まえて総合的に考察すればその称呼は相互に相紛らわしいものといえる。

(イ)外観について

本件商標は、特徴のない欧文字の大文字で「RESPIMER」と書してなる。

引用商標も略同様の書体で「RESPIMAT」と書してなる。

両商標のスペルは8文字中6文字までが完全に一致しており、しかも取引者、需要者が最も着目する語頭部分からの6文字が共通である。

したがって、本件商標と引用商標は外観的にも相紛らわしいものといえる。

(ウ)観念について

本件商標も引用商標も辞書等には記載のないいわゆる造語である。したがって、観念は生じない。

しかし、「respi」で始まる英単語であって、特に本件商標及び引用商標の指定商品との関係が深い単語に「呼吸器」に関するものが複数あることを考慮すると、本件商標からも引用商標からも「呼吸器に関するもの」といった共通の印象を生じ得るものである。

(エ)取引の実情について

引用商標は、商品「気管支拡張薬用の吸入器」について使用されており、慢性閉塞性肺疾患(以下「COPD」という。)治療用の気管支拡張薬市場において周知となっている。

申立人及びそのグループ会社は、COPDの治療薬を永年にわたり研究、開発している。このCOPD治療には基本的に吸入薬が用いられるが、吸入薬については薬自体の効果に加えて、確実に吸入できるかどうかが非常に重要である。しかし、確実に吸入できるかどうかには個人差があるので、COPD治療の分野では吸入器の開発もまた非常に重要となる。こうした問題を解消するために申立人は気管支拡張薬のみでなくそのための吸入器についても研究を行ない、2010年に「RESPIMAT(レスピマット)」の販売を開始した(甲9及び甲10)。商品「RESPIMAT(レスピマット)」は従来の粉末吸入剤の約4分の1の投与量で有効成分をより効率よく肺へ到達させることができるように設計されており、その利便性の高さ故、COPD患者に新たな選択肢を与える画期的な商品として紹介されている(甲11〜甲14)。その結果、「RESPIMAT(レスピマット)」は多数の医療機関において採用されるに至っている(甲15〜甲19)。2014年現在で申立人が製造、販売する気管支拡張薬はCOPD治療薬のマーケットで約50%近いシェアを占め、その約半分が「RESPIMAT(レスピマット)」により使用されていることを考えると、引用商標はCOPD治療用の気管支拡張薬市場において周知・著名な商標となっている。

(オ)類否判断

本件商標と引用商標は外観、称呼において相紛らわしく、観念において比較することができないとしても相当程度関連した印象を想起させるものであり、加えて、引用商標が「気管支拡張薬」市場において周知・著名な商標であるという取引の実情や、本件商標の指定商品が「呼吸器の粘膜」に作用する薬剤、医療機器を含むものであるということを総合的に考慮すれば、本件商標は引用商標と出所の混同を生じるおそれがある類似の商標であるとするのが相当である。

(2).第4条第1項第15号について

ア 引用商標の周知・著名性

上記(1)イ(エ)のとおり、申立人は引用商標と実質的に同一の商標を商品「気管支拡張薬用の吸入器」について2010年より使用している。そして、該商品が従来の同種商品に比べて利便性が飛躍的に向上していることに加え、申立人及びそのグループ会社が積極的に営業活動を行なった結果、短期間で市場に浸透したものである。たとえば申立人は通常のMR(医薬情報担当者)を通じた宣伝広告活動に加えて各地で「RESPIMAT(レスピマット)」の効果や使用方法についての勉強会や講演会を行なっている(甲25〜甲34)。

また、20万人以上の医師が登録する日本最大の医療従事者向けサイト「m3.com」において「RESPIMAT(レスピマット)」に関する「COPD MEGA conference」を実施し、15,165名の医療従事者を動員した実績もある(甲20及び甲21)。医療業界におけるこうした勉強会・講習会としては1万5千人を超える参加者というのは他には類を見ない数字であり、こうした参加者数の多さからも「RESPIMAT(レスピマット)」の注目の高さが分かる。

こうした製品の効能及び宣伝活動の結果、2014年現在で申立人が製造、販売する気管支拡張薬は、COPD治療薬マーケットの約50%近いシェアを占めるに至っており、その約半分が「RESPIMAT(レスピマット)」により使用されている。

さらに売り上げに関する具体的な数字を示せば、「RESPIMAT(レスピマット)」は2013年には納品先医療機関数29,460件、納品数1,615,000本、販売額にして10,828百万円、2014年も7月までで既に30,971の医療機関に、980,000本、販売額6,675百万円という大変な数字となる。

こうした点を踏まえて検討すれば、引用商標は、COPD治療のための気管支拡張薬用の吸入器にかかる一大ブランドとして取引者・需要者に認識されており、少なくとも本件商標の出願時点においては、「RESPIMAT(レスピマット)」は、取引者及び需要者間で周知・著名となっていたことに疑いはない。

現に、申立人が調査機関アンテリオを通じて行った日本全国の内科医計400人を対象に実施した認知度調査において、「RESPIMAT(レスピマット)」は、病院勤務医100人を対象としたもので92%、開業医100人を対象としたもので認知率95%、呼吸器専門医200人を対象にした場合は実に99%の認知率という圧倒的な数字が確認されている。

このように引用商標は高い周知・著名性を有している。

イ 「RESPIMAT」の造語性、独創性

引用商標は、英単語「respiration」等に由来する「RESPI」に「MAT」を加えた申立人の創作した造語であって、辞書に記載があるものではない。そして、「RESPIOO」なる登録商標は、第5類「薬剤」及び第10類「医療用機械機器具」を合わせても申立人のものを除くと33件しか存在しない(甲22)こと、さらに冒頭から6文字「RESPIM」まで共通する商標にあっては僅かに2件しか存在しないこと(甲23)を踏まえて判断すれば、本件商標の独創性が十分高いことが分かる。

ウ 本件商標と引用商標の類似性

上記(1)イのとおり、本件商標の称呼「レスピマー」と引用商標の称呼「レスピマット」は、語頭の「レスピマ」部分が完全に一致し、称呼上聞き取りがたい語尾において僅かに長音と促音+破裂音の差異を有するに過ぎない。加えて、実際の取引に際しては、引用商標は「レスピマッ」の如く認識・記憶されることからすると、本件商標と引用商標は称呼において紛らわしいといえる。さらに外観においても8文字中6文字までが完全に一致しており外観的にも紛らわしい。観念においては対比することができないが、いずれも「呼吸器系」に関する印象を想起させるものであるから相当程度の関連性が認められる。

このように両商標の類似性は極めて高い。

エ 商品の関連性

申立人が引用商標を使用する商品は、「気管支拡張薬用の吸入器」である。一方、本件商標の指定商品は、別掲1のとおりであるが、要約すると第5類が「Pharmaceutical products;medicines(薬剤)」で特に「namely for respiratory mucosa(呼吸器の粘膜用)」の薬剤を含むものであり、第10類も「Medical instruments,apparatus for the respiratory mucosa(呼吸器の粘膜用の医療用機械器具)」及び「medical devices for the respiratory mucosa(呼吸器の粘膜用の医療用装置)」を含むものである。

いうまでもなく気管支拡張薬は呼吸器の粘膜に作用するものであり、その吸入器は呼吸器の粘膜用の医療用機械器具に他ならない。

そうとすれば、本件商標の指定商品と引用商標が周知・著名となっている商品は、一部において完全に一致するものであり、一致しない商品についても深い関連性を有することに疑いはない。

オ 混同のおそれ

気管支拡張薬用の吸入器における引用商標「RESPIMAT(レスピマット)」の著名性、独創性、申立人が引用商標を使用し周知・著名となっている商品と本件商標の指定商品がかなりの範囲において重複すること、そしてその取引者、需要者も一致すること等、その商品の提供者や取引者・需要者層の個別・具体的な関連性や共通性の実情等を総合的に考察すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも申立人の著名ブランドである「RESPIMAT(レスピマット)」に係る申立人の提供する商品であるかの如く誤認され、そうでなくとも、何らかの密接な営業上の関連性を想起させ、あたかも申立人のグループ会社か、あるいは許諾を受けた者に係る商品であるかの如く誤認させ、商品又は営業上の出所混同を生じるおそれが極めて高いといわねばならない。

カ 小括

以上のとおり、本件商標がその指定商品について使用された場合は、申立人の著名商標に係る商品と出所の混同を生ずるおそれが高いものであり、本件商標は法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

(3)むすび

以上から明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当するにもかかわらず商標登録されたものであるから、その登録は、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきである。

第3 当審の判断

1 引用商標の周知性について

申立人は、引用商標は、商品「気管支拡張薬用の吸入器」について使用されており、COPD治療用の気管支拡張薬市場において周知となっている旨主張し、甲第9号証ないし甲第21号証及び甲第25号証ないし甲第34号証を提出している。

しかしながら、これらの証拠中、申立人の商品のパンフレット(甲9、甲28、甲29、甲31及び甲32)並びに申立人の商品を紹介する記事(甲11)において、申立人の商品「気管支拡張薬用の吸入器」について使用されている表示は、ほとんどが「レスピマット」の文字からなるものであって、「RESPIMAT」の欧文字からなる引用商標と同じ綴りからなる「Respimat」の文字が、それぞれの証拠において1カ所小さく表示されているにすぎない。また、申立人の商品を紹介する記事及びウェブサイトの記事並びに研究会・講習会等のパンフレット及び告知記事(甲10、甲12〜20、甲25〜甲27、甲30及び甲34)において使用されている表示は、「レスピマット」の文字のみである。

そうすると、申立人提出の証拠によっては、「RESPIMAT」の文字からなる引用商標が、申立人又は申立人に関連する者の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く知られているものと認めることができない。

また、他に引用商標が我が国において周知であるとしなければならない証拠も見いだすことができない。

したがって、引用商標が、我が国において周知であるということはできない。

2 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、「RESPIMER」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字は、特定の意味を有さないものであり、構成文字に相応して「レスピマー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

他方、引用商標は、「RESPIMAT」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字は、特定の意味を有さないものであり、構成文字に相応して「レスピマット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

そこで、本件商標と引用商標の類否について検討すると、外観においては、両者は、「RESPIM」の文字を同じくするものの、末尾において、全8文字中2文字の「ER」と「AT」の文字に差異を有し、この差異は決して小さいものとはいえないから、近似した印象を与えることはなく、相紛れるおそれはないものである。

次に、称呼においては、本件商標から生じる「レスピマー」の称呼と引用商標から生じる「レスピマット」の称呼とは、4音目及び5音目において「マー」の音と「マット」の音の差異を有するものであり、両称呼が5音という比較的短い音で構成されていることをも勘案するならば、該差異が称呼全体に与える影響は小さくないといえるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼したときは、全体の音調、音感が相違し、明瞭に聴別し得るものである。

そして、観念においては、本件商標と引用商標は、ともに特定の観念を生じないものであるから、相紛れるおそれはないものである。

以上からすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号について

上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標とは認められないものである。

また、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であって別異の商標というべきものである。

そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではない。

したがって、本件商標については、商標法第43条の3第4項により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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