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Trademark Appeal Case

郷土料理名の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2013−5085(T2013−5085/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「甲府鳥もつ煮」の文字を標準文字で表してなり、第29類「山梨県甲府市において調理された鳥のもつの照り煮」を指定商品として、平成23年5月27日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、『甲府鳥もつ煮』の文字を標準文字により表してなるところ、『甲府鳥もつ煮』は、昭和25年ころ、甲府のそば屋で考案された料理であり、以来、鶏の砂肝、ハツ、レバー、きんかんを甘く濃厚な醤油ダレで照り煮した郷土料理として、多数の取扱店において提供され、山梨県内で広く食されているものであって、当該料理の名称を意味するものであるから、その指定商品との関係でみた場合、『山梨県甲府市において調理された鳥のもつを煮た商品』といった、商品の品質を記述的に表した語と理解されるに止まると判断するのが相当であり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人の提出に係る証拠をみても、本願商標が出願人により使用された結果、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものであると認めることもできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号について

本願商標は、「甲府鳥もつ煮」の文字を標準文字で表してなるものであるから、普通に用いられる方法で表示してなるものといえる。

そして、本願商標は、「山梨県中部、甲府盆地北部の市」の意味を有する「甲府」の文字、「鳥の総称」の意味を有する「鳥」の文字及び「鳥獣の内臓を煮込んだ料理」の意味を有する「もつ煮」の文字(広辞苑 第六版)を結合してなるものであるから、その構成全体としては、「山梨県甲府市の鳥の内臓を煮込んだ料理」であることを容易に認識させるものである。

ところで、山梨県内においては、鶏の砂肝、ハツ、レバー、キンカン(産まれる前の卵)などを甘辛いしょうゆだれで照り煮した料理(以下「当該料理」という。)が郷土料理とされている(甲第3号証の4並びに甲第4号証の7及び8など)。当該料理は、1950年(昭和25年)ごろ甲府市のそば屋で考案されたものといわれ、その後、甲府市内各地の店舗に広まり、甲府市内のそば屋の定番メニュー(料理)として提供され、現在においては、「甲府鳥もつ煮」の名称が当該料理を表すものとして使用され、そば店をはじめ、甲府市内各地の飲食店で広く提供されている実情が別掲1の記載から認められる。

さらに、「甲府鳥もつ煮」の名称で呼ばれている商品は、本願商標の指定商品でもある鳥のもつを煮た料理(鳥もつ煮)であることが、別掲2の記載から認められる。

以上の事情からすると、「甲府鳥もつ煮」の文字からなる本願商標は、その指定商品「山梨県甲府市において調理された鳥のもつの照り煮」について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、該商品が「山梨県甲府市において調理された鳥の内臓を煮込んだ料理」であることを理解、認識するにとどまるというのが相当であるから、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわなければならない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 商標法第3条第2項について

請求人は、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であっても、出願人による使用の結果、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証(枝番を含む。)並びに平成23年12月14日付け手続補足書による「証明書(社団法人やまなし観光推進機構)」、「証明書(甲府商工会議所)」及び「履歴事項全部証明書(特定営利活動法人こうふ元気エージェンシー)」を提出しているので、本願商標が商標法第3条第2項に該当するに至ったものであるかについて、以下判断する。

(1)商標法第3条第2項の趣旨について

登録出願に係る商標が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、実際に使用している商標及び商品若しくは役務、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品又は役務の供給量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である査定時又は審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきものであると解される。そして、同項は、本来的に自他商品又は自他役務の識別力がなく、特定人の独占にも馴染まない商標について、特定の商品又は役務に使用された結果として自他商品又は自他役務の識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外規定であり、実際に商品又は役務に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないとされ、登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることを考慮すると、厳格に解釈し、適用されなければならないとされている(知財高裁平成18年(行ケ)第10054号 平成18年6月12日)。同項を適用するには出願商標と使用商標とは同一でなければならず、また、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できない地域や地方がある場合も同項に該当するということはできないとされている(東京高裁平成10年(行ケ)第74号 平成10年11月26日、東京高裁平成11年(行ケ)第101号 平成12年4月13日)。

(2)本願商標の商標法第3条第2項該当性について

上記(1)の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて、請求人の提出した証拠及び主張を検討すると、以下の事実が認められる。

ア 請求人について

請求人は、平成23年4月1日に設立された特定非営利活動法人であるところ、任意団体「みなさまの縁をとりもつ隊」(以下「とりもつ隊」という。)により、甲府市を人の集まる元気な街としていくため、まちおこしに関する事業を行い、まち全体の活性化及びコンセンサス形成に寄与することを目的として設立されたことが認められる(甲第1号証、甲第4号証の15並びに平成23年12月14日付け手続補足書による「証明書(社団法人やまなし観光推進機構)」、「証明書(甲府商工会議所)」及び「履歴事項全部証明書(特定営利活動法人こうふ元気エージェンシー)」など)。

ところで、とりもつ隊は、平成20年6月に、食を活かした活動により郷土の活性化を図ることを目的として、甲府市職員有志によるボランティア団体として設立されたことが認められ、甲府市で生まれ、長い間市民に食されてきた「鳥もつ煮」を観光資源として地域のブランド「甲府鳥もつ煮」を確立し、市民をはじめ多くの観光客が「鳥もつ煮」を食べに甲府に来るよう取り組んでいる団体であることが認められる(甲第1号証の1及び4、甲第3号証の1並びに甲第11号証など)。

イ 商標の使用状況について

(ア)とりもつ隊は、平成20年11月に甲府市中心街で鳥もつ煮を提供する店舗の宣伝広告活動として、店舗の地図などを掲載した、「甲府鳥もつ煮」の文字を付したパンフレットを作成し、甲府市内の施設等で配布していることが認められる(甲第2号証、甲第3号証の2、甲第7号証の1及び甲第11号証など)。

(イ)とりもつ隊は、平成21年6月に甲府市の「鳥のもつ煮」の宣伝広告活動として、「甲府鳥もつ煮」の文字を付したポスターを作成し、甲府市内の飲食店及びJR東日本八王子支社管内の駅及び施設等に掲出していることが認められ(甲第3号証の2、甲第7号証の1、甲第8号証の1ないし4及び甲第11号証1ないし3など)、また、「甲府鳥もつ煮」を宣伝広告するラッピングバスが、平成22年11月10日から新宿、羽田空港、名古屋などと甲府を結ぶ8路線で順に運行されたことが認められる(甲第4号証の15)。しかし、ラッピングバスの運行に関する期間、回数等に関する証拠は提出されていない(なお、JR東日本各駅におけるポスターの掲出期間は「2月1日〜4月12日」と記載されている(甲第8号証の3)。)。

(ウ)とりもつ隊は、名物料理や郷土料理で町おこしをすることを目的としたイベントである、平成22年9月に行われた「第5回B級ご当地グルメの祭典!B−1グランプリin厚木」(以下「第5回B−1グランプリ」という。)において、当該料理を提供し、料理名「甲府鳥もつ煮」の名称にてゴールドグランプリ(最高賞)を受賞したことが認められ(甲第1号証の5及び6)、また、該イベントにおいて、やや図案化された「甲府鳥もつ煮」の文字が記載された横断幕及びのぼり旗を使用していることが認められる(甲第3号証の1)。

その他、とりもつ隊は、平成21年10月から県内外の観光キャンペーンイベント等に参加していることが認められるものの(甲第3号証の2、甲第7号証の1及び2、甲第9号証並びに甲第11号証)、該イベント等における商標の使用態様及び使用に係る商品等については、提出された証拠からは明かでない。

(エ)ウェブサイト、新聞、雑誌及びテレビなどの各種メディア等において、請求人の前身であるとりもつ隊の使用に係る「甲府鳥もつ煮」が多数取り上げられているとして証拠が提出されている(甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第9号証、甲第12号証、甲第13号証、甲第14号証及び甲第15号証など)が、これらは、とりもつ隊が市内の各そば店で提供される郷土料理等として「甲府鳥もつ煮」の広告宣伝活動を行っていることを内容とする記事がほとんどであって、これらメディア等を通じて、請求人自らの製造、販売に係る商品の宣伝広告が行われているものではなく、また、提出された証拠において「甲府鳥もつ煮」の文字を本願商標の指定商品に使用していると認められる記事については、請求人以外の者による使用であると認められる(甲第4号証の3及び6など)。

(オ)とりもつ隊の活動報告書が提出されており、この活動報告書によれば、主に県内業者と連携して各種商品の開発等(商品「鳥のもつ煮」に関するものは1件)を行っていることが認められるものの(甲第11号証など)、当該商品の製造、販売は請求人以外の者によるものであって、とりもつ隊による「甲府鳥もつ煮」の使用は、町おこしを目的とした「甲府鳥もつ煮」の普及のための広告宣伝を図っているものにとどまり、その他に提出された証拠によっても、請求人が、本願商標をその指定商品に使用しているという具体的な事実は確認できない。

ウ 小活

上記ア及びイの事実によれば、請求人は、とりもつ隊により設立された法人であり、とりもつ隊が町おこしを目的とした「甲府鳥もつ煮」の普及のための取組として「甲府鳥もつ煮」の文字を用いて、山梨県内外において、その宣伝広告活動を積極的に行っていることは認められるものの、その使用は、請求人自らの製造、販売に係る商品の宣伝広告のために行われているものではなく、その他、提出された証拠からは、請求人が、本願商標をその指定商品に使用し、需要者に広く認識されているとする具体的な事実は認められない。

また、上記1のとおり、山梨県内の飲食店等において、「甲府鳥もつ煮」の文字が当該料理を表すものとして広く使用されている実情があることからみても、「甲府鳥もつ煮」の文字は、料理名として認識されているというべきであって、本願商標が、請求人の商品に係る出所表示を表すものとして使用されていると需要者の間に広く認識されているとはいえない。

さらに、とりもつ隊は、上記イ(ウ)のとおり、県内外の観光キャンペーンイベント等に参加しており、該イベント会場において、「甲府鳥もつ煮」の文字を使用して当該料理を内容とする「鳥のもつ煮」の提供を行っているとしても、甲第7号証の2によれば、その会場の開催地は、山梨県内を中心とした関東甲信越におけるイベントへの参加が大半であり、かつ、その活動を取り上げる新聞等のメディアの記事も、「第5回B−1グランプリ」に関連して取り上げられたものが多く、継続的に長期間にわたって、請求人の活動が報道又は広告されてきたとまでいうことができない。しかも、それら記事等をみても、料理等の出所は、むしろ「みなさまの縁をとりもつ隊」の文字が表しており、「甲府鳥もつ煮」の文字は、提供される料理の内容を表すものとして使用されているといえる。そうとすると、とりもつ隊がイベント等における料理の提供を行っていることをもって、本願商標が、請求人の業務に係る商品を表すものとして需要者の間に広く認識されているものともいえない。

してみれば、請求人に係る「甲府鳥もつ煮」の文字の使用状況を総合的に判断しても、本願商標は、使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものであるとはいうことができない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものとはいえない。

なお、請求人は、「甲府鳥もつ煮」の名称は、とりもつ隊が2008年(平成20年)より行ってきた宣伝広告活動の結果、知名度を獲得したものであって、それ以前から甲府市内のそば屋で提供されてきた「鳥もつ煮」と「甲府鳥もつ煮」が同一であるとの認識が生じるものではなく、「甲府鳥もつ煮」の名称自体が「鳥もつ煮」の名称として以前から使用されてきたかのような誤解から、「甲府鳥もつ煮」が一般に販売されている実情が存在するという認識は誤りである旨主張する。

しかしながら、料理名である「鳥もつ煮」の文字に地名「甲府」の文字を冠した本願商標は、上記1のとおり、「山梨県甲府市の鳥の内臓を煮込んだ料理」であることを容易に理解させるものであり、当該料理の名称として一般に使用されており、また、請求人以外の者においても、「甲府鳥もつ煮」の文字を使用して、当該料理を内容とする商品「鳥のもつ煮」の製造及び販売あるいは飲食料店等における当該料理の提供が行われている実情があることから、請求人の上記の主張を採用することはできない。

3 むすび

以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、また、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものでもないことから、これを登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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