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Trademark Appeal Case

ヘラジカ図形商標の称呼・観念・外観の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2014−900269(T2014−900269/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5679730号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5679730号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成25年12月25日に登録出願され,第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,皮革」,第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「運動用具,スキーワックス,おもちゃ,人形,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として,同26年5月12日に登録査定,同年6月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する商標は,以下のとおりであり,いずれも,有効に存在しているものである。

(1)登録第4985203号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成17年11月15日に登録出願,第3類,第14類,第18類,第25類及び第35類に属する商標登録原簿のとおりの商品及び役務を指定商品又は指定役務として,同18年9月8日に設定登録されているものである。

(2)登録第5151012号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成19年4月2日に登録出願,第35類に属する商標登録原簿のとおりの役務を指定役務として,同20年7月11日に設定登録されているものである。

(3)登録第5467769号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,平成23年8月16日に登録出願,第35類に属する商標登録原簿のとおりの役務を指定役務として,同24年2月3日に設定登録されているものである。

(4)登録第4985204号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲4のとおりの構成からなり,平成17年11月15日に登録出願,第3類,第14類,第18類,第25類及び第35類に属する商標登録原簿のとおりの商品及び役務を指定商品又は指定役務として,同18年9月8日に設定登録されているものである。

(5)登録第5467768号商標(以下「引用商標5」という。)は,別掲5のとおりの構成からなり,平成23年8月16日に登録出願,第35類に属する商標登録原簿のとおりの役務を指定役務として,同24年2月3日に設定登録されているものである。

(6)登録第5151013号商標(以下「引用商標6」という。)は,別掲4のとおりの構成からなり,平成19年4月2日に登録出願,第35類に属する商標登録原簿のとおりの役務を指定役務として,同20年7月11日に設定登録されているものである。

以下,これらの商標をまとめていうときは,単に「引用商標」という。

3 登録異議の申立て理由要旨

申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は取り消されるべきであると申し立て,その理由を以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし第52号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について

ア 商品の抵触について

本件商標の第18類及び第25類の指定商品は,引用商標の指定商品・指定役務と抵触する。

イ 商標の抵触について

(ア)外観について

本件商標は,鹿と容易に認識できる図形で,胴体の大きさに比べて大きい,先端が枝分かれし,かつ平面的な部分を有する大きな角を備えている特徴から,ヘラジカであると認識できるものである。一方,引用商標は,角が大きいこと,ヘラのように平らな部分と先端が数多く枝分かれしている特徴を有するから,鹿の一種,ひいてはヘラジカであろうと認識するものである。したがって,本件商標と引用商標は,看者からみて左方向に顔を向け,上記のような特徴のある角と垂れた顎を有する同種目の鹿であって,動的な図柄にかかる点で共通しており,類似する図からなる,外形的に相紛らわしいものである。

(イ)称呼及び観念について

本件商標と引用商標とは,上記のような特徴のある角と垂れた顎を有する鹿の図から,いずれも「ヘラジカ」の称呼及び観念を生じるものであって,称呼上及び観念上,相紛らわしいものといえる。

(ウ)取引の実情 引用商標の周知著名性

後述する「(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について」における「ア 引用商標の周知・著名性」において述べるとおりである(甲2ないし甲48)。

(エ)類否判断

本件商標は,上記のとおり,類否判断の3つの要素である外観・称呼及び観念のいずれの観点からも引用商標と同一又は類似の相紛らわしい商標であって,類似する。

(オ)小括

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1号第11号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について

ア 引用商標の周知・著名性

(ア)使用開始の時期

申立人は,ヘラジカを象った商標を,「moose design(trademark)(ムースデザイン(商標))」として,1982年の申立人の前身から使用している(甲10,甲8の宣誓供述書の項目7及び8)。ヘラジカはオオジカとも呼ばれ,アメリカでは「moose(ムース)」といわれている。

(イ)日本での商標登録と世界での商標登録

申立人は,ムースデザインを,日本を含む300以上の世界各国で登録している(甲11ないし甲13)。

(ウ)活動実績

申立人は,20世紀初めに設立され,高品質でカジュアルなアパレルやアクセサリーであって,男性,女性,子供向きのものを製造,販売し,米国において100年以上の間その活動をしてきた。引用商標にあたるムースデザインは,申立人が販売する被服の約65%の商品に表示されており,広く需要者に知られている。

(エ)店舗やインターネットによる商品の販売

2014年12月現在,申立人はアバクロンビー アンド フィッチとアバクロンビーキッズブランドの小売店435を世界各国に運営している。小売店全てが,被服,鞄であってムースデザインを伴った商品を販売している。日本では東京,静岡,福岡に,実店舗を運営している(甲8の宣誓供述書の項目12,甲14)。また,申立人は,ウェブサイトを1999年7月8日に開設し,キッズのウェブサイトを2000年7月13日に開設した(甲15)。

(オ)販売実績

申立人は2000年から2014年2月までの間にムースデザイン商標を伴った商品を含め240億米ドル超の商品を世界で販売した(甲8の宣誓供述書の項目15及び16)。

(カ)ウェブサイトへのアクセス数

2013年は世界全体で1億7200万,日本からのアクセス数は380万,2014年(12月3日まで)は世界全体で1億4300万,日本からのアクセス数は350万のアクセスが記録されている(甲8の宣誓供述書の項目17)。日本からのアクセスは,2007年から2014年の期間中の平均で350万である。

(キ)日本から申立人ウェブサイトでされた購入の履歴

日本からのオンライン店舗への注文に基づいて発送された履歴の一部によれば,上記のウェブサイトアクセス数のうち一部は,申立人の商品を購入し,日本で受領していることがわかる(甲17)。

(ク)宣伝広告実績

2001年からの宣伝広告費総計(世界)は,4億3千万米ドルを超える(甲8の宣誓供述書の項目19)。

宣伝広告は,カタログ(甲18,甲19),電子メール(甲20)で行われているほか,ソーシャルネットワーク(甲8の宣誓供述書の項目23,甲21),セレブリティの起用(甲22),雑誌(甲23ないし甲33)などで行われている。

イ 引用商標の造語性,独創性

引用商標は,被服とは何ら関係性の無い図柄であること,鹿の図柄を使用する者は申立人のみであると考えられることなどに鑑みれば,独創性のある図柄である。

ウ 本件商標と引用商標の類似性

本件商標と引用商標とは,上記(1)のとおり,類似の商標である。

エ 商品の関連性

本件商標の指定商品と,引用商標が周知・著名となっている商品(被服やかばん)とは,一部において完全に一致するものであり,一致しない商品についても深い関連性を有することに疑いはない。

オ 混同のおそれ

被服やかばんなどのアパレルの分野における引用商標の著名性,独創性,また,引用商標を使用し周知・著名となっている商品と本件商標の指定商品がかなりの範囲において重複すること,そして,その取引者・需要者も一致すること等,その商品の提供者や取引者・需要者層の個別・具体的な関連性や共通性の実情等を総合的に考察すれば,本件商標がその指定商品に使用された場合には,それがあたかも申立人の商品,そうでなくとも,申立人のグループ会社か,あるいは許諾を受けた者に係る商品であるかの如く誤認させ,商品又は営業上の出所混同を生じるおそれが極めて高い。

カ 小括

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1号第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

(3)むすび

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号または同項第15号の規定に反して商標登録されたものであるから,その登録は取り消されるべきである。

4 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について

本件商標と引用商標とは,いずれもシカ科に属する獣類を想起させるような図形からなるものである。しかしながら,両者には次のような差異が認められる。

ア 外観について

(ア)本件商標は,別掲1のとおりシルエット図形であるのに対し,引用商標1ないし引用商標3は,別掲2及び3のとおりシルエット図形という点では共通するが,引用商標4ないし引用商標6は,別掲4及び5のとおり線画であることにおいて相違している。

(イ)全体の構成について,本件商標は頭部を斜め上方に向け,斜め前方から描いた図形のため,縦長の印象を与える図であるのに対し,引用商標は頭部を左側に向け,ほぼ真横から描いた図形のため,横長の印象を与える図であるから,それぞれの印象において明らかに相違している。

(ウ)角について,本件商標は左右の角の一部が重なっていること,1本の角は先端の極一部のみが表され,それが鼻先の角のようにも見え,一見しただけでは角全体がどのような形状なのか明確でないのに対し,引用商標は2本角のほぼ全体が表されていることにおいて相違している。

(エ)口について,本件商標は,やや口を開けているのに対し,引用商標は,口を閉じていることにおいて相違している。

(オ)脚について,本件商標は前脚が大きく,一方の脚は地につけ他方の脚は軽く上げており,後脚は短く小さく両脚の幅が狭く描かれているのに対し,引用商標は4脚がほぼ同じ大きさ同じ長さで地についており,後脚は大きく開かれて描かれていることにおいて相違している。

(カ)以上のとおり,本件商標の外観と引用商標との外観とは,多数の相違点を有し十分区別することができるから,両者は,外観上において互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。

イ 称呼及び観念について

申立人は,本件商標及び引用商標は,その構成において,胴体の大きさに比べて大きく,先端が枝分かれし,かつ平面的な部分を有する,大きな角を備えた鹿の図形との共通する特徴を有することから,本件商標及び引用商標からは,「ヘラジカ」の称呼及び観念を生じる旨主張する。

しかしながら,ヘラジカは,「シカ科の哺乳類。・・(中略)・・ヨーロッパ,シベリア,アラスカからカナダに分布し,水辺の草原に小群で生活。ヨーロッパではエルク,アメリカではムースと呼ぶ。オオジカともいうが,オオジカはアカシカやワビチの称呼にも用いる。駝鹿。ラクダジカ。」(広辞苑 第六版)のように,我が国において,自然に生息している動物ではなく,ライオン,象,キリンのように,多くの動物園に展示され,一般に親しまれているような事情も確認できず,さらには,ヘラ状の角を有するシカにはトナカイ,ファロージカ(ダマジカ),アカシカやワビチ等も存在することから,我が国においては,ヘラジカが,その特徴と共に,他のヘラ状の角を有するシカと区別できるほどに,一般に広く知られているとはいえない。

そうすると,本件商標及び引用商標に接した需要者が,その構成より,一義的に「ヘラジカ」を想起し,称呼・観念するとまでは認めることができない。

したがって,本件商標及び引用商標からは,特定の称呼及び観念は生じないというのが相当である。

ウ 小括

以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても類似するものでないから,これらを総合的に判断すると,両者は,非類似の商標というべきものである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について

本件商標が本号の規定に該当するといえるためには,本件商標の登録録出願時及び登録査定時において,我が国において指定商品「被服,かばん類,運動用具」などを取り扱う取引者,需要者の相当数に知られている必要があると解される。しかしながら,引用商標が我が国において周知性を有することを立証するものとして提出された甲各号証のみによっては,引用商標が使用されている商品の範囲,使用態様,使用時期,使用数量,市場占有率,広告状況などについて,例えば,日本語によるカタログがないことや,雑誌掲載についても我が国の取引者,需要者が一般に購読しているものがなく,また,日本語で掲載されていないなど,未だ,我が国において周知性を獲得するに至ったと認定することはできない。

そして,本件商標と引用商標とは,上記(1)ウのとおり,非類似の商標というべきものであるから,本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても,取引者・需要者において,その商品が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品務の出所について,混同を生じさせるおそれがあるとはいえないものである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(3)結論

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものでないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録は維持すべきものである。

よって,結論のとおり決定する。

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