Trademark Appeal Case
品質・用途表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2013−21123(T2013−21123/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,「らくらく服薬」の文字を標準文字で表してなり,第5類及び第32類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成24年10月25日に登録出願され,その後,指定商品については,原審における同25年5月1日受付の手続補正書により補正された結果,第5類「オブラート,液体状オブラート,ゼリー状オブラート,嚥下困難者用内服薬飲み下し用飲料」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,ゼリー状の清涼飲料,ゼリー状の果実飲料」となったものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定は,「本願商標は,『らくらく服薬』の文字を標準文字で表してなるが,その構成中『らくらく』の文字は『ゆったりしていて安楽なこと。たやすいさま。』を意味する語であり,『服薬』の文字は『薬をのむこと。』を意味する語であるから,全体として『簡単に(らくらくと)薬をのむことができる』の意味合いを容易に認識させるものである。そして,本願商標のように『らくらく』の語と商品名や動作等を表す語を結合させて,当該商品の扱いやすさ又は動作,行為の容易性を端的に表す場合に『らくらく○○○』のように普通に使用されていることがウェブサイト情報からもうかがい知れる。そうすると,本願商標は,たやすく薬を飲むために用いられる商品であるということ,すなわち商品の品質・用途を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第3 当審における審尋
請求人に対し,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとして,平成27年2月3日付けで通知した審尋の要旨は,以下のとおりである。
1 本願商標
(1)本願商標は,「らくらく服薬」の文字を標準文字で表してなり,その指定商品を第5類「オブラート,液体状オブラート,ゼリー状オブラート,嚥下困難者用内服薬飲み下し用飲料」(以下,これら第5類の指定商品をまとめて「オブラート等商品」という場合がある。)及び第32類「清涼飲料,果実飲料,ゼリー状の清涼飲料,ゼリー状の果実飲料」とするものである。
(2)前記のとおり,本願商標は,「らくらく」の平仮名と「服薬」の漢字とを組み合わせた結合商標であるところ,「服薬」は,「薬をのむこと」を意味する親しまれた語である。
一方,「らくらく」は,広辞苑第六版によれば,これに相当する語(漢字)には,「落落」,「楽楽」及び「犖犖」があるところ,ア)「落落」には「まばらなさま。淋しいさま。」,「度量が大きくてこまかいことにこだわらないさま」及び「物が落ち,または倒れるさま」との意味が,イ)「楽楽」には「ゆったりしていて安楽なこと」及び「たやすいさま」との意味が,ウ)「犖犖」には「人にすぐれているさま」及び「事の分明なさま。」との意味があることがそれぞれ記載されている。このように,「らくらく」の文字のみでは,これらのうちのいずれの意味を表すものなのか特定し得ないものの,ア)の「落落」及びウ)の「犖犖」は,イ)の「楽楽」に比べると,さほど親しまれた語とはいえないことに加え,「らくらく」の後に「服薬」の語が続くことで,その意味合いが,自然で,かつ,一体的なものとして認識されるのは,通常,「たやすいさま」の意味を有する「楽楽」であるといえる。
したがって,本願商標は,その構成自体からしても,全体として「たやすく薬をのむこと」といった意味合いを容易に認識させるものということができる。
2 オブラート等商品について
(1)「オブラート,液体状オブラート,ゼリー状オブラート」について
広辞苑第六版によれば,「オブラート」について,「澱粉でんぷんなどで作った薄い膜状の物質。飲み下しにくい散薬などを包んで飲む。」との記載があるとおり,一般に,その用途は,飲み下しにくい散薬などを包んで飲むために使用される商品である。したがって,薄い膜状だけでなく,液体状やゼリー状のオブラートも,基本的な用途は同じものとみて差し支えないものである。
(2)「嚥下困難者用内服薬飲み下し用飲料」について
当該商品も,その記載から明らかなように,基本的な用途は,前記のオブラートと同じであって,嚥下困難者が内服薬を飲み下すために使用される飲料と認められるものである。
(3)オブラート等商品に係る取引の実情
ア 前記(1)及び(2)のとおり,オブラート等商品はいずれも基本的な用途は同じであると認められるものであるが,当審が職権をもって調査したところ,インターネットの検索結果(平成27年1月26日〜30日検索エンジン「Google」により検索)として,以下の(ア)ないし(キ)に記載の各事実が認められる。
(ア)「WAKODO」のウェブサイトにおいて,「服薬補助ゼリー ●お薬じょうず服用ゼリー/にがい粉薬を包み込んで,飲みやすくするいちご風味の服用ゼリーです。」の記載とともに,該商品の写真が掲載されている。
(http://www.wakodo.co.jp/product/medicines/jelly/jouzujelly/)。
(イ)「楽天ICHIBA」の運営する「医療食・介護食のまごころ情報館」のウェブサイトにおいて,「嚥下補助食品/ペースト状のオブラート/特徴 にがい粉末のお薬,飲み込みにくい錠剤,カプセル等がツルンと飲み込みやすくなります。」の記載とともに,該商品の写真が掲載されている(http://item.rakuten.co.jp/iryosyoku/c/0000000187/)。
(ウ)「ビーンスターク・スノー」のウェブサイトにおいて,「飲み込みづらいおくすりもゼリーで包んでムリなく飲み込めます。・・・/●服薬ゼリー すりおろしりんご風味」の記載とともに,該商品の写真が掲載されている。
(http://www.beanstalksnow.co.jp/product/nometane/)。
(エ)「モリモト医薬」のウェブサイトにおいて,「おくすり ラク〜に のめるもん」,「お薬はゼリーで飲む時代!『のめるもん』があれば,水もコップも要りません。『のめるもん』は,今までにない全く新しい形状の服薬補助ゼリーキットで『スマートオブラート』をめざしています。」,「誰でも!薬やサプリメントがラクに飲める!」の記載とともに,該商品の写真が掲載されている(http://nomerumon.com/)。
(オ)「小太郎漢方製薬株式会社」のウェブサイトにおいて,「チョコゼリー」の見出しのもと「飲みにくいお薬が,ラク〜にノドを通ります。/小太郎のチョコゼリーは『嚥下(えんげ)補助食品』。口当たりの良いゼリーでお薬の苦味やにおい,ざらつきを包み,飲みやすくします。」の記載とともに,該商品の写真が掲載されている(http://www.kotaro.co.jp/product/detail/kh24.html)。
(カ)「瀧川オブラート株式会社」のウェブサイトにおいて,「フクロオブラート/薬を飲みやすいフクロオブラートは,瀧川オブラートのオリジナル開発。」,「丸型オブラート/汎用性の高い丸型オブラート。・・・薬を包んでから水を含ませると,より飲みやすくなります。」の記載とともに,該商品の写真が掲載されている
(http://www.boc-ob.co.jp/lineup/index.html)。
(キ)「国光オブラート株式会社」のウェブサイトにおいて,「薬用オブラート」の見出しのもと「錠剤やカプセルを飲もうとして,口の中に残ってしまい,困った事はありませんか?●オブラートを使うと薬がなめらかに包まれて,のどごしが良くなります。・・・●お薬の飲みにくさをやわらげます。」の記載とともに,該商品の写真が掲載されている(http://www.kokkooblate.co.jp/oblate/medical/index.html)。
イ 前記によれば,オブラート等商品を取り扱う業界では,当該商品によって,薬の苦みを抑え,飲み込みにくい薬でも楽に飲むことができる旨の宣伝広告が普通になされていることが認められる。
3 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
(1)前記1のとおり,本願商標は,その構成自体からしても,全体として「たやすく薬をのむこと」といった意味合いを容易に認識させるものである。
(2)また,前記2のとおり,オブラート等商品を取り扱う業界では,当該商品よって,薬の苦みを抑え,飲み込みにくい薬でも楽に飲むことができる旨の宣伝広告が普通になされていることが認められる。
(3)以上によれば,「らくらく服薬」からなる本願商標を,その指定商品中のオブラート等商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,前記の実情から,「たやすく薬をのむことができる商品」であるということ,すなわち,単に商品の品質,用途を表示する語として理解するにとどまり,自他商品の識別標識とは認識し得ないというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
第4 審尋に対する回答
前記第3の審尋に対し,請求人は,平成27年3月23日付け回答書を提出した。
回答書においては,以下のとおり,本願商標が,請求人のゼリー状オブラートを示すものとして広く知られており,自他商品識別標識として機能している旨主張している。
(1)嚥下補助用のゼリー状オブラートの歴史と請求人について
請求人は,1997年に世界で初めて嚥下補助用ゼリー状オブラートの商品化に成功し,商品安全や薬事法の下での安全を司る国や行政に対して承認を得るために,官庁等と交渉を重ねた末,1998年に医療機関向けの「嚥下補助ゼリー」を発売した。そして,2000年に小児用嚥下補助剤(服薬補助ゼリー)「おくすり飲めたね」を発売,翌2001年に一般向けの嚥下補助ゼリー「ラクラク服薬ゼリー」を発売開始した。すなわち,食品名や広告に「服薬」や「薬」のような記載ができるようになったのは,請求人による努力の賜物であり,請求人は,嚥下補助用ゼリー状オブラート(嚥下補助ゼリー)を市場に初めて導入したパイオニアである(第1号証ないし第5号証)。
(2)審尋に記載されていたウェブサイトや販売会社との関係について
請求人が嚥下補助用ゼリー状オブラートを発売して以来,関連会社を含め数社がこれに類似した商品の製造販売を開始した。
審尋において挙げられているインターネット情報のうち,(ア)〜(オ)に記載の会社やウェブサイトがゼリー状やペースト状の嚥下補助食品のような商品やその機能を宣伝し始めたのは,請求人が「ラクラク服薬ゼリー」を販売開始してから数年以上経過した後であり,いずれも請求人の商品やその宣伝に使用した用語やキャッチコピーに由来またはそれを流用していると考えられる(第6号証ないし第8号証)。
(3)本願商標の著名性について
本願商標は,2013年5月23日に,従来の「ラクラク服薬ゼリー」の名称及びパッケージデザインを一新し,「らくらく服薬ゼリー」として発売した。発売直後の同月27日には,主要全国紙の全面を使って広告を掲載し(第9号証),その後も全国紙を始めとする新聞に50回程度,雑誌にも50回程度,本願商標の広告を継続して掲載している(第10号証)。
また,テレビでの広告も2013年6月より2015年2月までの間に,民放放送局である日本テレビ,東京放送,フジテレビ,テレビ朝日,テレビ東京を始めとする全国地上波114局,BS・CS8局において,総計16,300回放映しており,テレビ番組の提供(スポンサー)も同時期に600回以上行っている(第11号証)。2013年には8000万個以上の売上げがある。それゆえ,本願商標は,請求人の商品(ゼリー状オブラート)の略称として全国的に知られている著名な商標であり,自他商品識別性を有している。
(4)請求人の嚥下補助剤の業界におけるシェアについて
請求人が販売する嚥下補助剤としては,「らくらく服薬ゼリー」及び「らくらく服薬ゼリー漢方薬用」以外に,小児用嚥下補助剤「おくすり飲めたね」があるが,嚥下補助剤の業界におけるこれらの商品の販売シェアは,2014年には94.77%に達している(第12号証)。これは「らくらく服薬ゼリー」の販売開始と広告による販売戦略によるものである。
第5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
前記第3の審尋に記載したとおり,本願商標は,その指定商品中のオブラート等商品との関係においては,商品の品質,用途を表示するにすぎず,自他商品の識別標識として機能し得ないものであるから,商標法第3条第1項第3号に該当するものと判断する。
すなわち,本願商標は,「らくらく服薬」の文字を標準文字で表してなるものであり,「らくらく」の平仮名と「服薬」の漢字とを組み合わせた結合商標であるところ,その構成中の「服薬」は,「薬をのむこと」を意味する親しまれた語である。
一方,「らくらく」は,広辞苑第六版によれば,これに相当する語(漢字)には,「落落」,「楽楽」及び「犖犖」があるところ,ア)「落落」には「まばらなさま。淋しいさま。」,「度量が大きくてこまかいことにこだわらないさま」及び「物が落ち,または倒れるさま」との意味が,イ)「楽楽」には「ゆったりしていて安楽なこと」及び「たやすいさま」との意味が,ウ)「犖犖」には「人にすぐれているさま」及び「事の分明なさま。」との意味があることがそれぞれ記載されている。このように,「らくらく」の文字のみでは,これらのうちのいずれの意味を表すものなのか特定し得ないものの,ア)の「落落」及びウ)の「犖犖」は,イ)の「楽楽」に比べると,さほど親しまれた語とはいえないことに加え,「らくらく」の後に「服薬」の語が続くことで,その意味合いが,自然で,かつ,一体的なものとして認識されるのは,通常,「たやすいさま」の意味を有する「楽楽」であるといえる。
したがって,本願商標は,その構成自体からしても,全体として「たやすく薬をのむこと」といった意味合いを容易に認識させるものということができる。
また,本願商標の指定商品中,オブラート等商品を取り扱う業界においては,当該商品によって,薬の苦みを抑え,飲み込みにくい薬でも楽に飲むことができる旨の宣伝広告が普通になされていることが,前記第3の審尋で示したインターネット情報によって認めることができる。
以上によれば,「らくらく服薬」からなる本願商標を,その指定商品中のオブラート等商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,前記の実情から,「たやすく薬をのむことができる商品」であるということ,すなわち,単に商品の品質,用途を表示する語として理解するにとどまり,自他商品の識別標識とは認識し得ないというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は,前記第4のとおり,本願商標は,請求人の商品(ゼリー状オブラート)の略称として全国的に知られている著名な商標であり,自他商品識別性を有している旨主張するとともに,証拠方法として第1号証ないし第12号証を提出した。
これは,本願商標は,仮に商標法第3条第1項第3号に該当するものであったとしても,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているから,商標法第3条第2項に基づき,商標登録を受けることができるものと判断すべきであるとの主張をしているものと解される。
そこで,この点について検討するに,商標登録出願された商標が,商標法第3条第2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,使用に係る商標及び商品,使用開始時期及び使用期間,使用地域,当該商品の販売・取引数量並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して判断すべきものである。そして,その場合に,使用に係る商標及び商品は,基本的には,出願に係る商標及び指定商品と同一のものに限られる。
この点につき,請求人は,広告における本願商標の使用の証拠として,第5号証及び第9号証,並びに請求人ウェブサイトにおけるテレビCM映像を挙げている。
しかしながら,これらの証拠における請求人の商品(ゼリー状オブラート)パッケージには,「らくらく(R)服薬ゼリー」(審決注:(R)は,登録商標であることを表示したものと認められる,○に「R」文字が小さく付されていることを表す。以下同じ。)との態様や「らくらく(R)」と「服薬ゼリー」とを二段書きした態様で表された標章のみが顕著に付されていること,また,第5号証の雑誌「発明」10月号の目次の次頁全面にわたる請求人の商品広告には,「同じに見える服薬ゼリーでも,命に関わる差があります。」や「服薬ゼリーを選ぶ時はくれぐれもその安全性をお確かめください。」の記載があるところ,かかる使用態様や説明文に照らせば,これに接する取引者,需要者が,「らくらく」,「服薬」及び「ゼリー」の各文字部分から,「ゼリー」だけを排除し,「らくらく」と「服薬」のみを結び付けて「らくらく服薬」とした上で,この部分を自他商品識別商標として認識するというのは不自然であって,むしろ,「(R)」が付されている前にある「らくらく」部分を自他商品識別標識として認識し,「服薬ゼリー」部分は当該商品を簡略表示した部分であると理解するのが自然である。
また,第10号証においては,本願商標の広告が掲載された新聞及び雑誌記事の一覧表が,第11号証においては,請求人がスポンサーとなったテレビ局及び番組名の一覧表が記載されているが,これらは,各紙面(誌面)やテレビ放送における商標の具体的な掲載方法(態様)が明らかでない。仮に,第5号証及び第9号証と同様の使用態様であるとすれば,取引者,需要者は,やはり「らくらく」部分を自他商品識別標識として認識し,「服薬ゼリー」部分は当該商品を簡略表示した部分であると理解するといわざるを得ない。
さらに,請求人は,第12号証において,請求人が販売する嚥下補助剤商品の販売個数及びシェアを示したグラフ(2002年〜2014年)を提出しているが,これは,請求人に係る嚥下補助剤3商品を合計した数字(販売シェア94.77%)を表しているものであり,本願商標を付した商品のみに係る販売個数やシェアを確認することができない。
以上のことからすれば,請求人の商品(ゼリー状オブラート)については,相当程度の広告宣伝や販売実績があることがうかがえるものの,その使用に係る商標は,本願商標を積極的に認識させる使用態様であるとは認めることができず,また,そうである以上,「ゼリー状オブラート」以外の第5類「オブラート,液体状オブラート,嚥下困難者用内服薬飲み下し用飲料」についても,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認めることができない。
そうすると,本願商標は,その指定商品について使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとはいえないから,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。
(3)まとめ
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項の要件を具備するものでもないから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
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