Trademark Appeal Case
品質表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2014−6276(T2014−6276/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,別掲のとおり,「Antique」の欧文字を筆記体で横書きしてなり,第16類「文房具類」を指定商品として,平成25年3月4日に登録出願され,その後,指定商品については,原審における同年8月5日付け手続補正書により,第16類「ボールペン並びにその部品及び附属品,シャープペンシル,シャープペンシル用替え芯,サインペン,マーキングペン,鉛筆」(以下「第1次補正商品」という。)と補正され,さらに当審における同26年5月8日付けの手続補正書により,最終的に,第16類「本体価格500円以下の樹脂製のシャープペンシル・マーキングペン及びボールペン並びにそれらの部品及び附属品」(以下「第2次補正商品」という。)と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は,「時代物(の),骨董品,昔の」等を意味する「Antique」の文字を筆記体で普通に用いられる方法をもって書してなるものであるところ,インターネット情報によれば,近年,古い時代物の万年筆やシャープペン等の文房具を「アンティーク万年筆」,「アンティーク文房具」及び「アンティーク文具」のように称して,さかんに宣伝・販売している事実を認めることができる。
この点につき,出願人は,本願商標が実際に使用されている商品は,樹脂製の比較的廉価なボールペンであるから,当該商品の品質を直接的に表示すると考えることはできないと主張しているが,第1次補正商品にも時代物の商品が包含されているものと理解するのが相当である。
そうすると,本願商標は,第1次補正商品との関係でみても,時代物の商品については,商品の品質を表示するにすぎない商標といわざるを得ない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記商品以外の商品に使用するときは,商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので,同法第4条第1項第16号に該当する。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号の意義
商標法第3条第1項第3号所定の商標が登録要件を欠くとされているのは,商品の「産地,販売地,品質」等又は役務の「提供の場所,質,提供の用に供する物」等を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる」商標は,商品又は役務の特性を表示記述する標章であることから,取引者,需要者によって,専ら当該商品又は役務の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり,自他商品又は役務の識別標識として認識されるとは考え難いこと,そのような標章は,多くの場合,当該商品又は役務に係る取引一般において,取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから,誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり,特定人の独占的使用を認めると,円滑な取引を阻害するなど公益上の問題が生じるおそれがあることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・集民126号507頁,知財高裁平成26年(行ケ)第10193号同27年1月29日判決参照)。
上記の趣旨からすれば,商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号所定の「商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する内容を現実に品質としていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する内容を品質としているであろうと一般に認識され得ることをもって足りるというべきである(第3号所定の「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する商標」につき同旨,最高裁昭和61年1月23日第一小法廷判決・裁判集民事147号7頁〔ジョージア事件〕参照)。
2 本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性
(1)前提
本願商標は,別掲のとおり,「Antique」の欧文字を筆記体で横書きした構成からなり,その指定商品を第2次補正商品とするものである。第2次補正商品は,その指定商品の記載中に,「本体価格500円以下の樹脂製のシャープペンシル・マーキングペン及びボールペン(並びにそれらの部品及び附属品)」,すなわち,商品「シャープペンシル・マーキングペン及びボールペン」について,「本体価格500円以下」であるとか,「樹脂製」であるとかといったように,当該商品の価格や主たる材質に関する限定記載があることが認められるが,そのような限定記載があるとしても,第2次補正商品に係る取引者,需要者は,出願当初の指定商品である「文房具類」(特に,「シャープペンシル,マーキングペン及びボールペン」)に係る取引者,需要者とは,基本的には変わらないとみて差し支えないことから,本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性については,当該「文房具類」(特に,「シャープペンシル,マーキングペン及びボールペン」)に係る取引者,需要者の理解を前提として,第2次補正商品が本願商標の表示する内容を品質としているであろうと一般に認識され得るか否かにつき,以下検討する。
(2)「Antique」の語について
「Antique」は,原審も説示しているとおり,「時代物(の),骨董品,古美術品」等を意味する英語(請求書の甲1)である。また,広辞苑第6版には,「アンティーク【antique フランス】」との見出し語の下,「骨董品。古美術品。また,そのような趣のあること。」等の記載がある。
このように,「Antique」は,上記の意味を有する英語ないし仏語であり,我が国では「アンティーク」との外来語でも広く親しまれているところ,原審が以下のインターネット情報を引用して説示したように,「文房具類」を取り扱う業界では,古い時代物の万年筆やシャープペン等の文房具を「アンティーク万年筆」,「アンティーク文房具」及び「アンティーク文具」のように称して,宣伝・販売している事実を認めることができる。
そうであれば,「文房具類」を取り扱う業界では,「Antique」ないし「アンティーク」の語は,時代物の商品やそのような趣のある商品の特性を表示記述する標章であると認めるのが相当である。
<原審が拒絶理由で引用したインターネット情報>
ア Pen Boutique 書斎館 Aoyama<works>
(http://www.shosaikan.co.jp/works.html)
「Antique Pen<アンティークペンについて> 書斎館ではアンティークの万年筆・シャープペンシルを豊富に揃えています。
Antique Stationery<アンティーク・文房具について> 書斎館、店頭・在庫も合わせて3万点ほどのアンティーク文房具をヨーロッパ各国やアメリカを中心に直輸入し販売しています。」等の記載。
イ パーカー PARKER等アンティーク万年筆 アンティーク文具・・・
(http://calamel.jp/go/shop/PA01016706)
「パーカー PARKER等アンティーク万年筆 アンティーク文具 販売 商芸文具
廃盤品万年筆、アンティーク万年筆、レトロな文房具、廃盤品文房具、アンティーク文房具・・・ 貴重なパイロット1970年代のアンティーク万年筆!」等の記載。
(3)本願商標「Antique」の文字態様について
本願商標「Antique」は,別掲のとおりの文字態様からなる。
請求人は,本願商標は,語頭の「A」がくるっと丸まった曲線により優美に表現され,また,全体としてもクラシックかつエレガントな雰囲気を有する特徴的な筆記体で描かれており,これは普通に用いられる方法をはるかに超えた極めて特徴的な筆記体の欧文字により構成されている旨主張する。
しかし,本願商標の文字態様は,「Shelly Allegro Script」(シェリー・アレグロ・スクリプト)と呼ばれているフォント(2009年2月5日ワークスコーポレーション別冊・書籍編集部発行「Font Style Book 2009」)からなるものと認められるから,筆記体による欧文字として普通に用いられる方法をはるかに超えた極めて特徴的な態様からなるものと認めるのは困難であって,むしろ普通に用いられる方法の域を脱したとはいえない態様からなるものと認めるのが相当である。したがって,請求人の上記主張は,採用できない。
(4)判断
以上によれば,「文房具類」を取り扱う業界では,「Antique」ないし「アンティーク」の語は,時代物の商品やそのような趣のある商品の特性を表示記述する標章であると認められるところ,本願商標の第2次補正商品に係る取引者,需要者は,出願当初の指定商品である「文房具類」(特に,「シャープペンシル,マーキングペン及びボールペン」)に係る取引者,需要者とは,基本的には変わらないとみて差し支えないことから,そのような取引者,需要者の理解を前提とするならば,本願商標「Antique」は,第2次補正商品との関係においても,例えば,昭和時代をほうふつさせる商品であるとか,デザインが西欧のアンティーク風(調)であるとかといったように,専ら当該商品の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり,自他商品の識別標識として認識されるとは考え難いこと,そして,現に,第2次補正商品と類似する「文房具類」に係る取引一般において,取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能しているものであることからすれば,当然,誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり,特定人の独占的使用を認めると,円滑な取引を阻害するなど公益上の問題が生じるおそれがあるというべきである。
そうすると,「Antique」の欧文字を筆記体で普通に用いられる方法の域を脱したとはいえない態様で横書きしてなる本願商標は,第2次補正商品との関係でみても,時代物の商品やそのような趣のある商品について使用するときは,商品の品質を表示するにすぎない商標といわざるを得ない。また,本願商標を前記商品以外の商品に使用するときは,商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
3 請求人の主張に対し
(1)請求人は,本願商標が実際に使用されている商品は,後に骨董的価値の出る万年筆のような高価なものではなく,女子学生をターゲットとした樹脂製の比較的廉価な「STYLE−FIT(スタイルフィット)」ブランドのボールペンであるから,当該女子学生が,本願商標が実際に使用される商品に接する場合に,当該商品が古い年代物の骨董的価値を有するものであると把握・認識するということは到底考えられないと主張する。
しかし,第2次補正商品に係る需要者は,当該女子学生に限られるものではないし,また,当該女子学生であっても,例えば,昭和時代をほうふつさせる商品であるとか,デザインが西欧のアンティーク風(調)であるとかといったように,本願商標を専ら当該商品の性質を説明するものとして認識することは一切ないとまではいえないし,それを認めるに足りる証拠もない。
したがって,請求人の上記主張は,採用できない。
(2)請求人は,第2次補正商品中に時代物の商品が含まれると考えるのは相当でないと主張する。
しかし,当該主張を認めるに足りる証拠は何ら提出がないところ,前記2のとおり,「文房具類」を取り扱う業界では,「Antique」ないし「アンティーク」の語は,時代物の商品やそのような趣のある商品の特性を表示記述する標章であると認められるのであるから,第2次補正商品との関係においても,例えば,昭和時代をほうふつさせる商品であるとか,デザインが西欧のアンティーク風(調)であるとかといったように,専ら当該商品の性質を説明するものとして認識されるおそれは十分にあるといえる。そして,前記1のとおり,商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号所定の「商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する内容を現実に品質としていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する内容を品質としているであろうと一般に認識され得ることをもって足りるというべきであるから,請求人の上記主張も採用できない。
(3)請求人は,本願商標は,第2次補正商品との関連において「上品でクラシックなデザインが施された」程度の意味合いを漠然と連想させるにすぎず,十分に自他商品識別力を発揮する旨主張する。
しかし,本願商標から「上品でクラシックなデザインが施された」程度の意味合いを想起させるとしたら,それは,「Antique」の意味する「時代物(の),骨董品,古美術品。また,そのような趣のあること。」等が基礎になっていると理解されるから,結局,商品の品質を表したものと認識されるにすぎないというべきである。
したがって,請求人の上記主張は,採用できない。
(4)請求人は,過去の登録例を挙げて,本願商標の自他商品識別力を判断するに当たっても,それらの登録例を参考にすべきであると主張する。
しかし,原審も説示しているとおり,商標の識別力の有無は,当該商標と当該指定商品との関係において,取引の実情を踏まえて,個別具体的に判断されるべきものであるから,その判断時期や指定商品等を異にする過去の登録例に拘束されるものではない。
したがって,請求人の上記主張は,採用できない。
4 結び
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
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