結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35350号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第2448792号商標(以下「本件商標」という。)は、「マリエフランセ」の片仮名文字と「MARIEFRANCE」の欧文字を上下2段に書してなり、第21類「フランス製の装身具、フランス製のボタン類、フランス製のカバン類、フランス製の袋物、フランス製の宝玉及びその模造品、フランス製の造花、フランス製の化粧用具」を指定商品として、昭和63年8月22日登録出願、平成4年8月31日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証(枝番を含む。)を提出した。
1.利害関係について
請求人は、マリー・クレール・アルバン・グループが発行する女性雑誌「marie france」(以下、雑誌としての「marie france」については、「請求人雑誌」という。)に関する著作権者であり、わが国において、甲第2号証に示す商標の登録権者であり、また、甲第3号証ないし甲第9号証に示す商標の出願人である。(なお、甲第5号証及び甲第8号証に示す商標は、本件商標が引用され、拒絶された。)
よって、請求人は、本件審判の請求につき、利害関係を有する。
2.無効原因
(1)請求人雑誌の著名性について
請求人雑誌は、1944年にEmilien Amaury氏により女性週刊誌として創刊された後、月刊誌となり、1988年から1993年には、旧西ドイツのBauerグループによって、そして、1994年以降は、マリー・クレール・アルバン・グループによって発行されている(甲第11号証)。同誌は、創刊以来、一貫して、フランス女性のアイデンティティと精神をテーマに、ファッションなど女性が関心を持つ情報を提供している。なお、フランス、パリ、ブルバール・マルゼルブ40に所在し、宣伝媒体を含む刊行物の印刷部数、発行・頒布部数のモニター・監査を業とするディフュージョン・コントロール(Diffusion Controle)が、そのホームページで公開しているデータによれば、請求人雑誌のフランスを中心とする世界における過去10数年の発行部数、販売部数は甲第12号証に示すとおりである。
上述のとおり、請求人雑誌は、50余年にわたり、フランスで発行されているが、同誌は、遅くとも1957年には、スイス、カナダ、イタリアで、また、1958年には、上記3国に加えて、トルコ、ベルギーでも発行されていたことが、1957年9月号、1958年6月号、1959年1月号、1959年8月号の各表紙にそれぞれの国の定価表示より明らかである(甲第13号証の1〜4)。
さらに、1997年9月号の表紙には、日本での定価が表示されており、これより、遅くとも1997年9月には、同誌は、わが国においても販売されていたことがわかる(甲第13号証その5)。
ところで、従前より、フランスは、ファッションの都であり、フランスでのファッション関連情報は世界に向けて発信されている。わが国においても、「被服、鞄、靴」などファッション関連商品の取引者、需要者はともに、フランスから発信されるファッション情報に敏感に反応する。特に、近年の通信手段の発達に伴い、フランスを含めた海外からの情報は容易に、しかも、リアルタイムで入手することが可能である。したがって、わが国の需要者等は、フランスで発行されるファッション雑誌についても容易に見聞することができ、請求人雑誌の存在は、遅くとも本件商標の登録査定時(平成4年4月17日)に、わが国においてもよく知られていたと推認される。
また、株式会社大修館書店発行「事典[増補版]現代のフランス」245 頁には、女性月刊誌として請求人雑誌が掲げられており、同246頁の「表−3 定期刊行物発行部数(1983.1)」には、請求人雑誌の1983年1月の発行部数は522,284部であると示されている(甲第14号証)。さらに、株式会社トラベルジャーナル発行「ヨーロッパ・カルチャーガイド フランスもうひとつのパリを愉しむ」164頁には、「女性誌の三羽ガラス『エル(Elle)』『マリー・フランス(Marie−France)』『マリー・クレール(Marie Claire)』」とあり(甲第15号証)、わが国においても、請求人雑誌がフランスで著名な三大雑誌の一つであることは需要者等に認識されている。
したがって、「marie france」なる商標は、遅くとも本件商標の登録査定時(平成4年4月17日)当時、フランスを始めとする諸外国においてすでに著名となっていた。
(2)雑誌とファッション関連商品の関連性
一般に、女性誌は、料理、美容、健康などの情報を提供する一方、それぞれのコンセプトにあった女性像にふさわしい「被服、鞄、靴、装身具」等を誌上で紹介している。また、雑誌のタイトルと同じ商標を使って「被服、鞄、靴、装身具、タオル、ハンカチ、財布、食器、台所用品」などの商品を製造、販売しているケースが多々ある。
例えば、日本語版が発行されているフランス女性誌「FIGARO」は、韓国で「化粧品」を「FIGARO」なる商標のもと販売している(甲第16号証)。また、フランス女性誌「ELLE」は、「ELLE」商標のもと「エプロン、食器、化粧用具、タオル」等を(甲第17号証)、請求人雑誌の姉妹誌「marie claire」も、「marie claire」なる商標のもと、「時計、眼鏡、サングラス、コスチュームジュエリー、香水、水着、タオル、かばん、被服、靴、帽子、傘、財布」等の女性向け商品を販売している(甲第18号証)。
さらに、最近では、男性誌のタイトルと同じ商標のもとに「被服、鞄」等が販売されている例もあり、例えば、男性誌「PLAYBOY」と同じ「PLAYBOY」なる商標のもと「ティーシャツ、パンツ、セーター、帽子、ベルト、ジャケット」等を販売している(甲第19号証)。
このように、女性誌のみならず、男性誌も関連商品として「被服、靴、鞄」等の商品、特に、ファッション関連商品を製造、販売しており、雑誌とファッション関連商品との関連性は深い。
(3)商標「marie france」の外国における出願、登録状況
上記のような雑誌に関する特殊事情において、請求人及び請求人雑誌の発行会社であるマリー・クレール・アルバンは、請求人雑誌が提唱するコンセプトにあった商品を需要者に提供すべく、「装身具、被服、靴、鞄」等の商品について「marie france」ブランドの展開を予定し、アルゼンチン、オーストラリア、ベネルクス、ボリビア、ブラジル、チリ、中国、韓国、北朝鮮、デンマーク、フランス、アメリカ、アイルランド、イスラエル、メキシコ、ペルー、イギリス、スイス、トルコ、カナダ等で、商品「雑誌」についてのみならず、「被服、履物、眼鏡、文房具、紙製品、時計、宝玉、タオル、織物、香水、台所用品」など種々の商品について商標登録出願をして、国際登録を含め、既に48件が登録されている(甲第20号証、甲第21号証)。
(4)著名商標「marie france」と本件商標の類似性
本件商標は、その構成中の片仮名部分は、欧文字部分の称呼を表したものにすぎず、欧文字部分は、著名商標「marie france」と実質同一である。
よって、両商標は、外観、観念上比較するまでもなく、称呼上彼此相紛れるおそれがある。
(5)本件商標の権利者の「不正の目的」について
上述したように、請求人雑誌は、遅くとも本件商標の登録査定当時、世界的に著名となっていたこと、海外での有名雑誌の情報は、わが国の取引者、需要者に容易に入手されること、雑誌のタイトルと同一商標のもと「被服、鞄、靴、装身具」などの商品が製造、販売されることが多いという特殊事情があること、請求人雑誌の姉妹誌「marie claire」に関連して既に種々のMARIE CLAIRE商品がわが国で販売されている事実があることに微すれば、「marie france」商標が、わが国で旧21類の商品について登録されていないことを奇貨として、被請求人により出願されたものであり、このような行為は、国際信義に反するものである。
よって、本件商標の登録は不正の目的でなされたものである。
なお、被請求人が出願した「マリエフランセ/MARIE FRANCE」(商願平5−76849号)に対する登録異議の申立ての決定は「理由あり」とされている(資料1)。また、登録第4001961号及び同第4003788号の各商標についても、登録異議の申立てにおいて、その登録がそれぞれ取消されている(資料2、3)。
3.むすび
叙上に徴し、本件商標は、商標法4条1項7号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
1.(1)請求人は、請求人雑誌が1998年現在で、フランスで20万部数発行されたと述べているが、その知名度につき、被請求人がイギリスで調査したところによれば、イギリス人は全くこの雑誌を知らず、イギリスの弁護士は発行部数を12,000部前後と報告しており(乙第1号証)、請求人雑誌は、外国では知られていないとの事である。
そもそも提出された書類に1988年、1993及び1994年の発行部数が「不明」となっているが、その時に同出版社は倒産し、解散しており、雑誌のタイトルの権利は消滅している。同雑誌社は、過去3回倒産しているが、乙第2号証として、2回目の倒産を示す弁護士の手紙を提出する。
(2)請求人である「エディ・シー(マリー・クレール社)」になるまで、「SOPEFF」、「Editions Bauer France」、「Groupe Marie France S.A.」が請求人雑誌の出版を行っていた。1987年以降出版社が次々と代わり、その所有者、権利者等権利継承関係が明確でない(乙第8、9号証)。そのような状態で請求人が自己の権利を主張することは不自然である。
(3)被請求人が本件商標を出願したのは、請求人の権利確定以前であり、前述したように、同雑誌社は、次々に「倒産」「解散」「廃業」を繰り返しており、本件商標を出願した昭和63年(1988年)は、最初の出版社が倒産した時であったため、本件商標と請求人雑誌とは無関係である。
2.請求人は、フランスの雑誌が日本国内で良く知られていると主張するが、日本の1冊、2冊の雑誌で紹介されたとしても、日本人の大部分がそれを知っているとは言えない。また、国内の特定の服飾学院の教材に等しい出版物での紹介は国内で広く知られているとは言えない。
前記イギリスの弁護士も「世界的に全く知られていない」と証言している。
3.請求人は、雑誌とファッション商品は関連があると述べているが、そもそもそのような雑誌のタイトルを、日本で初めてファッション・ブランドとして商品化を行ったのは被請求人である。
昭和53年頃、被請求人が請求人雑誌の現在の出版社である「マリー・クレール」社を訪問した時、「marie claire」の商品化を申し出たところ、その当時の同社社長(現在の社長と同一)は、「自分達は雑誌の権利しかなく、ファッション商品の権利は無い」と公言していた(乙第4号証)。
また「ELLE」等もその当時、被請求人が日本の商品化事業を開始したもので、現在の「marie claire」や「ELLE」の隆盛を作り出したのも被請求人である。
4.「marie france」の商標出願については、そもそも同社の最初の出版社「ソシエテ、エル、クーベル、エ、コンパニー、“マリエ、ド、フランス”」社は昭和54から56年頃、出願を試みたが、その当時全てを特許庁より拒絶されている。
その理由は「MARIE」は日本人の登録が多数認められており、また、「FRANCE」は国名を表すものとの理由であった(乙第5号証)。
また、一部登録になった商標も、請求人(以前の出版社)が自ら権利抹消としている(乙第6号証)。
5.請求人は、本件商標と請求人雑誌との関連を指摘しているが、本件商標は「MARIEFRANCE」とアルファベットを一連につなげ、その上にカタカナの「マリエフランセ」を合成させたものであり、これより請求人雑誌を連想させるものは何もない。
ましてや請求人が引用している雑誌のロゴは、乙第3号証に添付したものであり、本件商標とは外観上も全く違ったものである。
6.「不正目的」について
以上の説明から、本件商標はフランスの雑誌名とは全く無関係であり、特許庁が正当な理由をもって登録を認めたものである。
被請求人は、請求人雑誌の会社が倒産する都度、フランス人弁護士より、会社は倒産し、雑誌の権利は消滅したとの報告を受けたものであり、また日本人に最も馴染みがある外国女性名である「マリー」と「フランス」の文字に引かれて、商標出願したまでであり、その過程に一切「不正な目的」はない。
そもそも雑誌のタイトルを「ファッション商品」のブランドとすることは20年前に被請求人が考案したものであり、ブランド好きの日本人のためのものである(乙第7号証)。
なお、被請求人が本件商標を出願した時、当時の出版社より日本での出願の同意を得ていた。
1.請求人雑誌について
本件審判の請求の理由及び甲第11号証ないし甲第15号証によれば、請求人雑誌は、1944年にEmilien Amaury氏により女性週刊誌として創刊されたフランスの雑誌で、その後月刊誌となったこと、1984年請求人雑誌が所属するSopeffグループは、les Editioins mondiales社及びles Editioins du Henin社と提携したこと、1988年西ドイツのBauerグループが請求人雑誌の権利を買い取ったが、請求人雑誌をフランスの伝統に則ったものとして維持していく方針を採用したこと、1994年Bauer社は、請求人雑誌の権利をMarie Claireに売却したこと、1980年代にはその発行部数が50万部を越えたこと、わが国においても、三代女性誌の一つとして紹介され、1997年9月には販売されていたことなどが認められる。
2.ファッション関連商品の取引の実情について
ところで、かばん類、被服、靴、宝玉等のファッション関連の商品は、イタリア、フランス等のヨーロッパやアメリカが流行の発祥地といわれて久しく、わが国のデザイナー、ファッション関連商品の取引者が、ヨーロッパやアメリカのファッションの動きに敏感に反応し、これをわが国へいち早く取り入れ、消費者へ紹介し、販売をすることは、この種商品の分野では普通に行われているところである。
3.被請求人の業務等について
(1)本件商標は、前記したとおり、昭和63年(1988年)8月22日の出願に係るものであるところ、本件商標の願書によれば、被請求人(本件商標の出願人)は、その業務を「かばん卸売業」とするものであることが認められる。
してみると、ファッション関連商品の一つである「かばん類」を取扱う被請求人にあっては、前記2.で認定したファッション関連業界の実情からして、本件商標の出願当時、ヨーロッパなどのファッション事情に精通していたと容易に推認できるところである。
(2)また、一般的に、女性向けの雑誌がファッション関連の情報を扱い、それらの商品を紹介することは極めて普通に行われているところである。
そして、前記1.で認定したとおり、請求人雑誌は、女性向けの雑誌であり、1980年代にはその発行部数が50万部を越えていたことからすると、同誌は、ファッション関連の情報の提供及びその関連商品の紹介をも行っていたと認められ、かつ、1980年代には、少なくともフランスにおいては周知、著名であったと認められる。
してみると、本件商標の出願当時、請求人雑誌がわが国において、一般世人に広く認識されていたと認めるに足りる証拠は見当たらないものであるが、前記のとおり、被請求人がファッション関連商品の一つである「かばん類」を取扱う業者であり、フランス等ヨーロッパのファッション事情に精通していたと認められること、請求人雑誌がファッション関連の情報の提供等を行っていたと認められることなどを合わせ考えると、被請求人は、業務上、本件商標の出願当時すでに請求人雑誌の存在について知り得た立場にあったと容易に窺い知れるところである。
このことは、被請求人が答弁中で、「被請求人が本件商標を出願した時、当時の出版社より日本での出願の同意を得ていた。」(平成11年11月12日付けの答弁書)と主張していることからしても、首肯し得るところである。(ただし、この主張を裏付ける証拠の提出はない。)
4.不正の目的について
(1)本件商標は、前記構成よりなるものであるところ、その構成中の欧文字部分が請求人雑誌と同一の綴り文字よりなるばかりでなく、これより生ずる「マリエフランセ」の称呼も請求人雑誌と同一の称呼を生ずるものである。
してみると、被請求人は、本件商標の登録出願当時、少なくともフランスにおいて周知、著名であった請求人雑誌の存在を知り得ていたにもかかわらず、これを模倣、剽窃し、請求人雑誌と極めて類似する本件商標を、登録出願したものであると推認し得るといわざるを得ない。
(2)また、甲第13号証の5、甲第14号証及び甲第15号証によれば、請求人雑誌は、1997年9月には、わが国においても販売され、かつ、有名なフランスの雑誌として紹介されていることが認められるところから、今日においては、わが国においても、若い女性を中心に知られているものといえること、甲第16号証ないし甲第19号証によれば、ファッションを主として扱う周知、著名な雑誌の題号が、被服、バッグ等のファッション関連商品の商標として採択、使用されていること等を考慮すると、前記経緯により登録された本件商標の登録を有効なものとして維持し、その指定商品に使用することは、取引者、需要者をして、請求人の承諾を得た者、もしくは請求人と何らかの関連を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、その出所について誤認、混同を生じさせるものであり、のみならず請求人らの永年の努力により獲得した商標(請求人雑誌の題号)に化体された信用、及びこれに基づく顧客吸引力等を損なう結果をも招来することになり、公正な取引の秩序を乱し、ひいては、国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。
5.被請求人の主張について
(1)被請求人は、請求人雑誌は、その出版社が次々と代わり、その所有者、権利者等が明確でなく、請求人が自己の権利を主張するのは不自然であり、請求人に不正の目的はない旨主張する。
しかしながら、請求人雑誌の出版社が次々と代わることと、請求人雑誌が本件商標の登録出願前より、少なくともフランスにおいて周知著名性を獲得していたこととは何らの関係も有しないものであるし、本件商標の登録出願が不正の目的でなされたものと推認されること前記のとおりであるから、この点に関する被請求人の主張は理由がない。
(2)被請求人は、本件商標は、その構成文字等より請求人雑誌を連想させるものではない旨主張するが、本件商標は、請求人雑誌とその称呼及び欧文字の綴りにおいて同一であり、極めて類似するものであること前記したとおりであるから、外観が相違することをもって、本件商標は請求人雑誌を連想させないとする被請求人の主張は採用できない。その他の被請求人の主張についても、前記認定を左右するものとは認められない。
6.むすび
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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