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Trademark Appeal Case

標語の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2015−4454(T2015−4454/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおり,「省エネから、」の文字及び「ゼロエネへ。」の文字を二段に書してなり,第37類及び第42類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成26年7月30日に登録出願され,その後,指定役務については,原審における同26年11月12日付けの手続補正書により補正された結果,第37類「建築工事(戸建住宅の建築工事を除く。),建築設備の運転・点検・整備(戸建住宅設備の運転・点検・整備を除く。)」及び第42類「建築物の設計(戸建住宅の設計を除く。),機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計(戸建住宅の機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計を除く。)」とされたものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定は,「本願商標は,『省エネから、ゼロエネへ。』の文字を普通に用いられる方法で二段に併記してなるところ,昨今の地球環境問題への関心が高まるにつれ,我が国においても政府をあげての『省エネルギー』に対する取組や『建築物における一次エネルギー消費量を,建築物・設備の省エネ性能の向上,再生可能エネルギーの活用等により削減し,年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又は概ねゼロとなる建築物』を意味する『ゼロエネ住宅』の推進などが行われており,補正後の指定役務を取扱う業界を含め建築関係の業者において,広く『これまでの,省エネルギーの取組から,さらにゼロエネルギーを目指す』ことを端的に表したキャッチフレーズ(企業のスローガン)として使用されている実情がある。以上を踏まえると,本願商標は,『これまでの,省エネルギーの取組から,さらにゼロエネルギーを目指す』ことを端的に表したキャッチフレーズ(企業のスローガン)と認識されると判断するのが相当である。そうすると,本願商標は,これをその指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者は,企業におけるキャッチフレーズの一類型であると理解するに止まり,自他役務識別標識としての機能を果たし得ないことから,何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定,判断し,証左を挙げて本願を拒絶したものである。

なお,原審で挙げた証左については別掲2を参照。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第6号について

本願商標は,別掲1のとおり「省エネから、」の文字及び「ゼロエネへ。」の文字を二段に表してなるものであるところ,上段の文字の最後に「、」(読点),下段の文字の最後に「。」(句点)が配されていることから,その構成全体をつながりのある文として一体のものと認識されるというのが相当である。

ところで,我が国においては,昨今の地球環境問題等に鑑み,エネルギー政策の大きな方向性を示すことを目的として,平成14年6月にエネルギー政策基本法が制定され,同法に基づき,エネルギー基本計画が政府によって策定されているところである。そして,このエネルギー基本計画の下では,請求人提出の平成27年3月6日付け手続補足書における第4号証の1にもあるとおり,関係省庁において,「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業」や,「ネット・ゼロ・エネルギーハウス支援事業」,「住宅のネット・ゼロ・エネルギー化推進事業」が行われ,住宅や建築物のゼロエネルギー化を推進しているところである。

このような取組の下,別掲2のとおりの原審で挙げた例に加え,請求人提出の平成27年3月6日付け手続補足書における第18号証においても以下の記載が認められる(なお,下線は合議体による)。

ア 「株式会社 テラジマアーキテクツ」のウェブサイトにおいて,「

省エネからゼロエネへ

」の見出しの下,「まずは『省エネルギー』な構造を備えた住宅があり,そこにプラスして太陽光発電システムなどの設備を賢く導入することで,理想の『ゼロエネ』住宅に近づくのではないでしょうか。」の記載がある(第18号証の1)。

イ 「株式会社新留木材」のスタッフブログにおいて,「次世代

省エネから,ゼロエネへ

・・・!!」の見出しの下,いままでの,「省エネレベル(バージョンアップ版)へ,例えば,『太陽光発電システム』を採用する住まい,と言えばわかり易いですね。・・・新しい住まいづくりは,消費するエネルギーが限りなくゼロに向かい,逆にエネルギーを創り出す・・・という方向へ向かっていくと思われます。」との記載がある(第18号証の2)。

ウ 「株式会社セイダイ」の社長のブログにおいて,「ゼロ・エネルギー・ハウス」元年の見出しの下,「

『省エネ』から『ゼロエネ』へ

・・・2015年ぐらいにはある程度普及しているかもしれない。『ゼロ・エネ』と言っても,根本は『省エネ』だ。『省エネ』+『創エネ』+『蓄エネ』+『高効率器具』=『ゼロエネ』となる。日本のエネルギー事情の大変換期を迎えての国の政策だ。」との記載がある(第18号証の3)。

エ 「e−Macherie」のウェブサイトにおいて,「マ・シェリ935号(2014−06−06)の見出しの下,「猫と暮らす工夫も色々 目指す家は

『省エネ』から『ゼロエネ』へ

タックホーム・・・優れた断熱構造に加え,トリプルガラスなどの省エネ部材,ヒートポンプ式温水パネルヒーターを採用し,建物によるCO2の無駄使いを極力カット。再生可能エネルギーを積極的に活用する手法として,屋根一体型ソーラー(6.2kWh)を搭載し,『住宅のゼロ・エネルギー化推進事業』の採択を受けています。」との記載がある(第18号証の4)。

オ 「壺谷建設株式会社」のウェブサイトにおいて,「癒やしの家 エコ+」の見出しの下,「2020年までに,新築住宅の省エネ義務化を視野に改正基準が公布され,日本の住宅においても大きな変化が予想されます。・・・これにより,断熱材などの性能だけでなく家ごとに合った省エネ方法が導入されることになります。

省エネからゼロエネへ

そしてこの省エネは将来,ゼロエネルギーになることを目標としています。・・・ゼロエネ住宅の基本的な考え方は,『省エネによって消費するエネルギー量を減らすこと』『消費したエネルギーと同等のエネルギーを作り出すこと』この二本柱によって成り立っています。これは国策として,推奨されているもので,現在,省エネがゼロエネへと進化し続けている最中です。」との記載がある(第18号証の5)。

カ 「株式会社定井建設」のウェブサイトにおいて,「

省エネからゼロエネへ

」の見出しの下,「5年後の2020年、建築基準法改正を見据えたワンランク上の住宅を標準とします。」との記載があり,さらに,その下段の「Read More」をクリックして見られるページには,「あなたの夢をオーダーメイド 省エネ住宅からゼロエネ住宅へ これからの住宅を目指して」の見出しの下,「ゼロエネ住宅 消費エネルギーと創出エネルギーとが相殺でゼロとなる住宅」との記載がある(第18号証の6)。

以上によれば,「省エネからゼロエネへ」等の文字が,建築業界において,高い断熱性性能等の省エネルギー性を持つとともに,自らエネルギーを作り出す建築物を目指していることを示す宣伝文句又はキャッチフレーズとして使用されていることが確認できる。

そうすると,本願商標をその指定役務について使用しても,これに接する需要者は,全体として,上記意味合いを有するキャッチフレーズを表すものと認識するにとどまるとみるのが相当であり,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものというのが相当である。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は,「拒絶査定では,本願商標は『補正後の指定役務を含め』建築関係業者において広くキャッチフレーズとして使用されていると認定しているが,本願商標は,ゼロエネルギービル(以下「ZEB」という。)について使用するものであり,ゼロエネルギー住宅(以下「ZEH」という。)に使用するものではない。そして,本願の指定役務を取り扱う業界(すなわち,ZEBの業界)において,請求人以外の者による『省エネからゼロエネへ』の文字の使用例は存在しない」旨,ZEBとZEHが相違することについて,「ZEHは既に市場に流通しているが,ZEBは未だ検証段階で,市場に流通していない。」旨,「ZEHは住宅であるから,需要者は主に個人であるのに対し,ZEBはオフィスビル,店舗,病院,学校等の業務用の建築物であるから,需要者は主に国・地方公共団体・企業と考えられ,両者は需要者層が異なる。」旨,及び「ZEH,ZEBとも経済産業省及び国土交通省の補助金制度があるが,ZEHは『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業』及び『住宅のゼロ・エネルギー化推進事業』によるものであり,ZEBは『ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業』によるものであるから,両者の補助金制度が異なる。」旨主張している。

しかしながら,たとえZEB及びZEHに関する役務が,その需要者層や補助金制度,ゼロエネルギー化の実現の度合い等において相違するとしても,上記(1)のとおり,政府を挙げた計画の下,建築業界において,企業が,ゼロエネルギー化の実現を目指して実際に「省エネからゼロエネへ」等の文字が使用していることからすれば,本願商標に接する取引者,需要者は,単にキャッチフレーズを表したものと認識するものといわざるを得ない。

したがって,請求人の上記主張は採用することができない。

イ 請求人は,以下の(ア)ないし(エ)のとおり,本願商標をその指定役務に使用した結果,請求人の商標として一定の周知性を有している旨主張し,平成27年3月6日付け手続補足書において証拠(第5号証ないし第15号証)を提出している。

(ア)請求人は,平成26年3月に請求人の技術センター敷地内に建設中のZEB実証棟において実証実験を開始,同年5月にZEB実証棟を完成し,ZEBの検証を進めており(第5号証),ZEB実証棟が完成した際に広告会社にアピールプランを依頼し(第6号証),当該アピールプランにおいて決定されたZEB実証棟の広告面(第7号証)を採用したZEB実証棟のパンフレット(第8号証)を約7000部作成し(第9号証),平成26年6月末から7月にかけてのZEB実証棟の集中公開期間に,官公庁,企業,報道,学校,病院等の関係者計667人に配布し(第9号証の2),また,現在も見学者に継続して配布している。

(イ)請求人は平成26年6月30日付け,同年12月10日付け,同27年2月25日付けの日本経済新聞に,一面広告あるいは1/2面広告を掲載し,また,同26年12月12日付け大阪建設工業新聞には,「省エネから,ゼロエネへ。」を見出しとする請求人の記事が掲載されている(第11号証及び第12号証)。

(ウ)請求人ウェブサイトにおいては,本願商標が現在まで継続して掲載されている(第13号証)。

(エ)請求人は「平成26年度 地球温暖化防止活動環境大臣表彰」において,「大成建設ZEB実証棟『省エネから、ゼロエネへ。』」の活動名称で受賞している(第15号証)。

(オ)上記(ア)ないし(エ)の証拠のうち,第8号証の「大成建設技術センターZEB実施棟」と題するパンフレット,第11号証の日本経済新聞の記事下広告3部(平成26年6月30日付け,同年12月10日付け及び同27年2月25日付け)及び第13号証の請求人ホームページ中の記載においては,請求人が本願商標をその指定役務に使用していることが認められる。

しかしながら,上記パンフレットの配布部数は約7,000部(甲第9号証の1の1ないし同号証の1の5)であり,多いものとはいえず,その配布対象も,請求人のZEB実証棟を実際に訪れた者に限定されているとの主張のみで証拠の提出はない。

また,上記の新聞広告面(第11号証)において,本願商標が掲載された広告は,計3回にとどまるものである。

さらに,上記の証拠(第11号証)によれば,請求人が本願商標の使用を開始したのは,平成26年6月頃とみられるが,現在までの使用期間は1年余りであり,決して長いものとはいえない。

これらのことからすれば,請求人から提出された証拠のみをもってしては,本願商標が,その指定役務に使用された結果,請求人の商標として一定の周知性を有するに至っているものと認めることはできない。

ウ 請求人は,「本願商標は,これを本願の指定役務について使用しても,直ちに,原審説示の如き『これまでの,省エネルギーの取組から,さらにゼロエネルギーを目指す』の意味合いを想起させるものではなく,その構成文字に相応した『省エネルギーからゼロエネルギーへ』という抽象的な観念を理解させるに止まる」旨主張し,また,「本願の指定役務を取扱う業界において,請求人以外の者による『省エネからゼロエネへ』の文字の使用例は存在しないものであり,『省エネからゼロエネへ』の文字が,当該業界において,キャッチフレーズとして普通に使用されている事実はない」旨主張している。

しかしながら,上記(1)で述べたとおり,建築業界において,ゼロエネルギー化への取り組みが広く行われており,「省エネからゼロエネへ」等の文字が,使用されていることからすれば,本願商標をその指定役務に使用した場合には,キャッチフレーズを表したものと認識させるにすぎないといわざるを得ない。

エ 請求人は,商標法第3条第1項第5項及び同法同項第6号の商標審査基準(第20号証),過去の審決例や異議決定例(第21号証),工業所有権法逐条解説中の記載(第22号証)を挙げ,商標の識別力の有無の判断に当たっては,その商標を使用する商品,役務の取引の実情が考慮されるべきであり,本願商標も登録されるべき旨主張する。

しかしながら,登録出願に係る商標が商標登録の要件を具備しているか否かは,当該商標の構成態様と,指定商品あるいは指定役務の取引の実情等に基づいて,個別具体的に判断されるものであるところ,本願商標の構成態様及び取引の実情については,上記(1)のとおり判断すべきであるから,請求人の主張は,採用することができない。

(3)まとめ

以上のとおり,本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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