Trademark Appeal Case
プッチ商標の著名性と類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2014−900333(T2014−900333/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5700701号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲(A)のとおりの構成からなり,平成26年4月25日に登録出願され,第25類「被服」を指定商品として,同年8月22日に登録査定,同年9月5日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は,次に掲げるとおりである。
1 登録第1455621号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:EMILIO PUCCI
登録出願日:昭和43年4月18日
設定登録日:昭和56年2月27日
書換登録日:平成14年7月24日
指定商品 :第25類「被服」
2 登録第4830346号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲(B)のとおり
登録出願日:平成16年6月30日
設定登録日:平成17年1月7日
指定商品 :第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
3 国際登録第326229号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲(C)のとおり
国際登録日:1966年11月14日
事後指定日:2007年8月20日
設定登録日:平成21年9月18日
指定商品 :第25類「Clothing, including footwear for women and for men. All the above goods are of Italian origin.」
4 登録第4820211号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:PUCCI(標準文字)
登録出願日:平成16年3月24日
設定登録日:平成16年11月26日
指定商品 :第18類「かばん類,袋物,傘,かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,携帯用化粧道具入れ,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
上記引用商標1ないし4は,いずれも現に有効に存続しているものであり,以下,これらを一括して単に「引用商標」ということがある。
第3 登録異議申立ての理由の要点
1 本件商標はその構成中の「PuCCi」の文字部分が,また,引用商標はその構成中「PUCCI」又は「Pucci」の文字部分が,それぞれ,それ自体で識別力を有する要部であることから,これらを比較した場合には,本件商標と引用商標とは称呼,外観及び観念のいずれにおいても同一又は類似の商標であり,両者の指定商品も同一又は類似のものであるから,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
2 申立人が使用する「EMILIO PUCCI」,「Emilio Pucci」又は「PUCCI」の標章(以下,これらを一括して単に「申立人標章」という。)は,申立人の業務に係る被服その他のファッション製品を始めとする幅広いジャンルの商品を表示する商標として日本国内のみならず世界的に周知著名である。本件商標は,申立人標章と称呼,外観及び観念のいずれにおいても同一又は類似であり,その指定商品に使用すると,申立人の業務に係る商品であると誤認され,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
第4 当審の判断
1「EMILIO PUCCI」(エミリオ・プッチ)の著名性について
(1)申立人の提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 「EMILIO PUCCI」(エミリオ・プッチ)は,イタリア貴族出身のデザイナーであり,1950年代に当時のファッション界に前例のない過激で大胆な柄を発表し,話題の的となり,世界中のファッション関係者に「プリントの王子」と呼ばれるまでになった。そのデザインに係る被服は鮮明なプリント柄と大胆な図柄,色を使った通称「プッチ柄」が特徴的で,マリリン・モンロー,エリザベス・テーラー,ジャクリーヌ・ケネディ等アメリカのセレブを中心に人気を博した。エミリオ・プッチが1992年に死去した後は,そのブランドのデザインは娘の「ラウドミア・プッチ」(Laudomia Pucci)に受け継がれたほか,現在でも「EMILIO PUCCI」(エミリオ・プッチ)ブランドとして継続されている(甲6及び7)。
イ 「EMILIO PUCCI」(エミリオ・プッチ)ブランドを運営する申立人は,アメリカ,ヨーロッパ,中東,アジアにおいて合計約50店舗の直営店を有しており,我が国では,本件商標の登録出願時には既に,中央区銀座に所在する路面店「エミリオ・プッチ銀座店」をはじめ10店舗の直営店を展開し,上記路面店の店頭ガラスや壁面には「PUCCI」又は「EMILIO PUCCI」の標章が表示されている(甲8ないし11)。
ウ 遅くとも平成22年5月頃以降,本件商標の登録出願時までに,「EMILIO PUCCI」又は「Emilio Pucci」の標章を使用した商品が「Grazia」,「家庭画報」,「25ans/ヴァンサンカン」,「ELLE」及び「Vogue」等のファッション雑誌において紹介されているほか,携帯電話の分野でもNTTドコモ及びSHARPとコラボレーションした携帯電話が発売され,その販売広告や関連イベントにおいて「EMILIO PUCCI」の標章が使用,紹介されている(甲12の1ないし14及び甲13ないし15)。
(2)上記(1)の事実によれば,「EMILIO PUCCI」(エミリオ・プッチ)は,イタリア出身のデザイナーとして知られており,「EMILIO PUCCI」,「Emilio Pucci」又は「エミリオ・プッチ」の文字からなる標章(以下「申立人使用標章」という。)は,申立人の業務に係る商品を表示する商標として,本件商標の登録出願時には取引者,需要者の間に相当程度広く認識されていたものというべきである。
なお,申立人は「PUCCI」の文字からなる標章についても,申立人の業務に係る商品を表示する商標として周知著名であると主張するが,提出された証拠によれば,「エミリオ・プッチ銀座店」等の店頭ガラスや壁面に「PUCCI」の標章が確認できるものの(甲10,11),他には「EMILIO PUCCI」について,デザイナー又はブランドの説明文中に「プッチ」の文字が使用されている場合があるのみであって,これをもって,直ちに「PUCCI」の標章が,デザイナー「EMILIO PUCCI」の略称として,又は,申立人の業務に係る商品を表示する商標として,本件商標の登録出願時には取引者,需要者の間に相当程度広く認識されていたとまでは認めることはできないから,申立人の主張は採用できない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標は,別掲(A)のとおりの構成からなるところ,その構成中の文字部分と蝶を表したものと認識される図形部分とは,常に不可分一体のものとしてのみ認識し把握されるべき格別の理由は見出し難く,それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえるから,読み易い文字部分を捉え,これより生ずる称呼をもって取引に資される場合が決して少なくないというべきである。
そして,本件商標の文字部分は,「VANNATTi PuCCi」の欧文字を大きく書し,その下段に「バンナッティープーチ」の片仮名が小さく振り仮名風に併記された構成からなるものであり,上記片仮名部分がその上段の欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識できるものであるから,上記片仮名部分より生ずる称呼が,本件商標の文字部分より生ずる自然な称呼とみるのが相当である。また,上記構成からなる文字部分において,「VANNATTi」の部分と「PuCCi」の部分とに分離し,又は「バンナッティー」の部分と「プーチ」の部分とに分離して観察すべき格別の理由は見出し難く,上記各部分に外観上及び観念上の軽重の差はないというべきであり,「PuCCi」又は「プーチ」の文字部分が自他商品の識別標識として強く支配的な印象を有する部分とみることはできない。そうすると,本件商標は,その構成の文字部分に相応して「バンナッティープーチ」の一連の称呼を生ずるものというべきである。
そして,本件商標は,全体として親しまれた特定の観念を生ずるものとは認められない。
(2)他方,引用商標1は,「EMILIO PUCCI」の文字を表してなり,「EMILIO」と「PUCCI」の各文字の間に1文字程度の空白があるものの同じ書体,同じ大きさをもって外観上まとまりよく一体的に表されているものであるから,その構成文字に相応し,「エミリオプッチ」の称呼を生ずるものといえる。
引用商標2は,別掲(B)のとおり,「EmilioPucci」の文字を筆記体の署名風に一体的に表したものとして認識し把握されるものであって,その構成文字に相応し,「エミリオプッチ」の称呼を生ずるものといえる。
引用商標3は,別掲(C)のとおりの構成からなるところ,外周の図形は装飾として認識されるものであり,また,「FIRENZE」の文字はイタリア,トスカーナ州の州都である「フィレンツェ」をイタリア語で表記したものであって,商品の産地,販売地表示として認識され,自他商品の識別力が無いか極めて弱いものであるから,中央部に顕著に表された「EMILIO PUCCI」の文字部分が自他商品の識別標識としての要部というべきであるから,当該「EMILIO PUCCI」の文字部分より,「エミリオプッチ」の称呼をも生ずるものといえる。
引用商標4は,「PUCCI」の文字を表してなり,その構成文字に相応し,「プッチ」の称呼を生ずるものといえる。
次に,観念についてみるに,引用商標1ないし3の構成又は構成中の「EMILIO PUCCI」及び「EmilioPucci」の文字は,申立人使用標章と実質的に同一といい得るものであるから,上記1(2)のとおり,申立人使用標章と同様に,引用商標1ないし3は,イタリア出身のデザイナー又は申立人の著名なブランドの観念が生じるものといえる。
そして,引用商標4は,親しまれた特定の観念を生ずるものとは認められない。
(3)そこで,本件商標と引用商標とを対比するに,それぞれの構成に照らし,両者は外観上判然と区別し得る差異を有するものである。
また,本件商標から生ずる「バンナッティープーチ」の称呼と引用商標1ないし3から生ずる「エミリオプッチ」又は引用商標4から生じる「プッチ」の称呼とは,構成音数が相違するのみならず,「プ」及び「チ」の音を共通にするのみで,他の音をことごとく異にするものであるから,それぞれを一連に称呼するときは全体の音感,音調が著しく相違し,明瞭に区別することができるものである。
さらに,本件商標は,親しまれた特定の観念を有するものでないことから,観念上,引用商標1ないし3とは類似せず,引用商標4とは比較することはできない。
してみれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(4)したがって,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似のものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)上記1(2)のとおり申立人使用標章は,申立人の業務に係る商品を表示する商標として,本件商標の登録出願時には取引者,需要者の間に相当程度広く認識されていたものというべきである。
しかしながら,申立人使用標章と引用商標とは実質的に同一といい得るものであり,本件商標と引用商標とは上記2(3)のとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標であることから,これと同様に本件商標は,申立人使用標章とも相紛れるおそれのない非類似のものであって,申立人使用標章とは別異のものとして認識し把握されるというべきである。
(2)そうすると,本件商標の指定商品と申立人使用標章の使用に係る商品とが同一又は類似のものであるとしても,また,申立人使用標章の周知性を考慮したとしても,本件商標をその指定商品について使用した場合,これに接する取引者,需要者が申立人使用標章ないしは申立人を連想,想起するようなことはないというべきであり,該商品が申立人又は申立人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く,その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。