Trademark Appeal Case
周知商標の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2015−900205(T2015−900205/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5751970号商標(以下「本件商標」という。)は、「ミヨビ(実容美)ゴールド」の文字を横書きしてなり、平成26年11月4日に登録出願、第1類「植物育成剤,植物活力剤,その他の植物成長調整剤類,肥料」を指定商品として、同27年2月10日に登録査定、同年3月20日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由
本件商標は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)及び有限会社バル企画(以下「バル企画」といい、申立人と併せていうときは、以下「申立人ら」という。)の業務に係る商品「肥料、植物成長調整剤類」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている「ミヨビ」(以下「引用商標1」という場合がある。)、「ミヨビゴールド」(以下「引用商標2」という場合がある。)又は「ミヨビ(実容美)ゴールド」(以下「引用商標3」という場合があり、引用商標1ないし3を併せていうときは、以下、単に「引用商標」という場合がある。)と同一又は類似する商標であり、本件商標に係る指定商品は、引用商標が使用される上記商品と同一又は類似する商品である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。
3 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の提出した証拠(各項の括弧内に掲記)及び申立ての理由によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)バル企画は、「農業用機械器具、肥料の輸出入および斡旋業務」等を目的として、平成1年7月11日に設立された企業であり、その代表取締役をAとする(甲4)。
(イ)申立人は、バル企画が、2003年(平成15年)に、肥料取締法に基づき、肥料(家庭園芸用複合肥料)の名称「ミヨビ(実容美)」について、農林水産大臣の登録(第84582号)(甲6の96頁)を受けたと述べており、さらに、バル企画は、平成23年7月25日に、肥料(家庭園芸用複合肥料)の名称「ミヨビ(実容美)ゴールド」についても農林水産大臣の登録(第92011号)を受けた(甲5)。
(ウ)バル企画の代表取締役であるAは、月刊誌「現代農業」(2008年(平成20年)、社団法人 農山漁村文化協会発行)の「新連載/植物ホルモン新時代」において、「従来のアブシジン酸の説明に疑問を持っていた私は、栽培作物を使って、合成アブシジン酸と天然アブシジン酸とで生長の違いを比べてみました。すると、天然アブシジン酸は従来の固定観念を覆す作用があることがわかったのです。すなわち、天然アブシジン酸は合成アブシジン酸と違い、太陽光の下で作物に与えても安定した効果を示しました。また、合成アブシジン酸は生長を抑える作用が強いのに対し、天然アブシジン酸は各種の生長促進作用を示したのです。さらに天然アブシジン酸は従来の説明とは逆に、他のいずれの植物ホルモンとも相乗効果を示すこともわかりました。」、「さらに興味深いことに、天然アブシジン酸を与えた作物は、カリやミネラルの吸収量が向上し、とくにカリの生理作用が総合的に表われることがわかりました。アブシジン酸とカリの相乗効果といえます。」、「四年前、世界で初めて天然アブシジン酸を配合した肥料(商品名ミヨビ)として、実用化されました。」(2008年(平成20年)4月号、6頁〜8頁)などと記載した(甲8)。
また、Aは、2009年(平成21年)5月発行の「IPPS−J ニュースレター」に、「植物ホルモン『アブシジン酸』の従来常識と異なる新機能の発見=天然アブシジン酸含有の登録肥料『ミヨビ』の実用効果=」と題する記事を寄稿し、肥料「ミヨビ」の効果を紹介した(甲9)。
さらに、Aは、「ミヨビ農法」なる題名の本を著作し(2011年(平成23年)3月20日、社団法人 農山漁村文化協会発行:甲6、甲7)、その中で、「『ミヨビ』が肥料として登録された理由は、カリやミネラル類の吸収と効果発現を向上させることが検証されたためである。」(甲6の23頁)、「天然型アブシジン酸の効果をもって『肥料の効果発現促進材』に該当することが認められたわけである。」(甲6の97頁)と記載した。
(エ)バル企画のホームページ(2014年12月頃から現在まで掲載中)には、肥料「ミヨビゴールド」が紹介されている(甲10)。
(オ)インターネット上で、「稲作技術の向上について」の見出しで、ミヨビ農法による「ミヨビゴールド」が紹介されている(甲14)が、請求人らの商品であるとの記載はなく、また、本件商標の登録出願日(平成26年11月4日)前より掲載されたものであるかについても、これを裏付ける証拠の提出はない。
(カ)バル企画は、肥料「ミヨビゴールド」に関し、「ミヨビゴールドのカキでの効果」(甲15)、「ミヨビゴールドの凍霜害軽減効果」(甲16)、「ミヨビ農法でカリウム:ミネラル類の吸収:高品質生産:収益の向上を計る」(甲17)、「ミヨビゴールドで、果樹類の開花:結実:肥大:着色成熟と収益向上を計る」(甲18)などと記載したチラシを2011年(平成23年)8月頃から2013年(平成25年)5月頃にかけて作成した。
(キ)申立人は、静岡県三島市に本店を置き、各種食料品を初め、多種多様な商品を取り扱う総合小売業を目的として、平成5年10月4日に設立された企業である(甲3)。そして、申立人は、肥料「ミヨビ」を、平成22年11月9日以降日本全国に販売した(異議2015−90204の甲15。なお、甲15は、申立人と顧客との間で取り交わした平成22年11月から平成26年11月にかけての取引書類36件であるところ、これらの取引書類には、商品名として、「ミヨビ」、「miyobi」、「ミヨビ肥料」、「天然アブシジン酸配合肥料ミヨビ」等と記載されており、これらの商品の販売数量は、単価6,500円のもの(50g入り)が合計78個であり、単価1,000円のもの(0.5g入りスティック袋5本セット(審決注:前出「ミヨビ農法」(甲6)の150頁参照))が8個であった。)。
また、申立人が、静岡県三島市に所在の三島函南農業協同組合に対し、平成21年9月から平成23年4月までに販売した肥料「ミヨビ」は105個(その内訳は、単価5,572円のものが95個で、単価857円のものが10個である。いずれも内容量は不明である。)、平成23年9月から平成26年8月までに販売した肥料「ミヨビゴールド」の数量は83個(いずれも単価が5,572円のものであり、内容量は不明である。)であり、売上総額は1,000,386円であった(甲19)。
イ 前記アで認定した事実によれば、バル企画の代表取締役であるAは、植物ホルモン中のアブシジン酸が植物の成長に有用なカリやミネラル類の吸収を助ける働きがあることに着目し、バル企画は、天然アブシジン酸(S−ABA)を含有する肥料を、2003年(平成15年)に、肥料取締法4条に基づき、「肥料の種類:家庭園芸用複合肥料」、「肥料の名称:ミヨビ(実容美)」として、農林水産大臣の登録(第84582号)を受けたと推認され、さらに、平成23年7月25日に、「ミヨビ(実容美)ゴールド」についても農林水産大臣の登録(第92011号)を受けたこと、Aは、「ミヨビ農法」と題する本を著作するとともに、農業関連の専門雑誌等に、植物ホルモン中のアブシジン酸が植物の成長に有用なカリやミネラル類の吸収を助ける働きがあることや天然アブシジン酸(S−ABA)を含有する肥料「ミヨビ」の実用化についての紹介をしたこと、申立人は、肥料「ミヨビ」を平成22年11月9日以降日本全国の需要者に販売をしていたこと、などを認めることができる。
しかしながら、Aが、天然アブシジン酸(S−ABA)含有の肥料を用いた、いわゆる「ミヨビ農法」を研究開発した者であることは、農業関連の研究者や需要者等の間である程度知名度を得ていたと推認することができるとしても、以下の理由により、「ミヨビ」、「ミヨビゴールド」又は「ミヨビ(実容美)ゴールド」(引用商標)が、申立人らの業務に係る商品「天然アブシジン酸(S−ABA)含有の肥料」(以下「本件商品」という。)を表示するものとして、本件商標の登録出願日(平成26年11月4日)前より、少なくとも農業に従事する者や家庭菜園に親しんでいる一般の消費者等の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(ア)本件商品について、実際に「ミヨビ」、「ミヨビゴールド」又は「ミヨビ(実容美)ゴールド」(引用商標)を付していたかを明確に確認することができる証拠の提出がないこと(なお、前出「ミヨビ農法」(甲6)における「ミヨビ製品と使用の基本」の項目(104頁)には、「『ミヨビ』製品の仕様」として、商品の写真が掲載されているが、当該写真からは、商品に引用商標が付されているかは明らかではない。)。
(イ)申立人が、本件商品について、本件商標の登録出願日前に宣伝広告をしたと認めるに足りる証拠はなく、また、バル企画が平成23年8月頃から平成25年5月頃にかけて作成した本件商品に関するチラシも、その作成部数、頒布地域等は明らかではないから、当該チラシを作成した事実のみをもって、引用商標の周知性を基礎づけることは困難であるといわざるを得ない。その他、申立人らが、引用商標の周知性を基礎づけるに足りる宣伝広告をしたと認められる証拠の提出はない。
(ウ)申立人による本件商品の販売数量は、全国販売をした平成22年11月から平成26年11月までの約4年間で、単価6,500円のもの(50g入り)が78個であり、単価1,000円のもの(0.5g入りスティック袋5本セット)が8個、また、三島函南農業協同組合に販売した平成21年9月から平成23年4月までの約1年半の間に、肥料「ミヨビ」が105個(その内訳は、単価5,572円のものが95個、単価857円のものが10個)、平成23年9月から平成26年8月までの約3年の間に、肥料「ミヨビゴールド」が83個(いずれも単価が5,572円のもの)であったにすぎず、商品の性質上、日常的に使用するものとはいえないとしても、引用商標の周知性を基礎づけるほどの販売数量があったと認めるには足りない。
(2)前記(1)によれば、引用商標は、申立人らの業務に係る商品「天然アブシジン酸(S−ABA)含有の肥料」(本件商品)を表示するものとして、本件商標の登録出願日前より、その需要者の間に広く認識されていた商標と認めることはできないから、たとえ本件商標が引用商標と商標において類似し、かつ、本件商標の指定商品が引用商標の使用に係る商品と同一又は類似の商品であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号でいう「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標」には該当しないというべきであって、同号の要件を充足しない商標である。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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