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Trademark Appeal Case

著名商標と称呼類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2015−890025(T2015−890025/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5687688号商標(以下「本件商標」という。)は,「ベネハウス」の片仮名を標準文字で表してなり,平成25年11月27日に登録出願,第37類「建設工事」及び第43類「保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),児童養護施設の提供」を指定役務として,平成26年7月18日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は,以下のとおりである。

1 登録第3101674号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成4年9月28日に登録出願,第41類「技芸・スポ―ツ又は知識の教授,進学模擬試験の実施,入学情報・学力情報・その他の教育情報の提供,図書の貸与,植物の供覧,動物の供覧,美術品の展示,運動施設の提供,娯楽施設の提供」を指定役務として,平成7年11月30日に設定登録され,その後,平成17年11月8日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

2 登録第5064174号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,平成18年7月24日に登録出願,第1類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成19年7月20日に設定登録されたものである。

3 登録第5311498号商標(以下「引用商標3」という。)は,「ベネッセハウス」の片仮名を標準文字で表してなり,平成21年3月31日に登録出願,第9類,第16類,第18類,第21類,第24類,第25類,第29類,第30類,第32類,第35類,第41類,第43類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成22年3月26日に設定登録されたものである。

(引用商標1〜3をまとめていうときは,以下,単に「引用商標」という。)

第3 請求人の主張

請求人は,「本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第226号証(枝番を含む。なお,枝番を有する証拠において,枝番のすべてを引用する場合は,枝番の記載を省略する。)を提出した。

1 引用商標1及び2の著名性

(1)請求人の事業等について

ア 請求人の前身である株式会社福武書店(以下「福武書店」という。)は,昭和30年に創立され,昭和37年に高校生向けの「関西模試」(昭和48年に「進研模試」として全国展開)を開始し,その後,高校生向け,中学生向け,小学生向け,幼児向けの通信教育の講座をそれぞれ開講した。そして,福武書店は,創業35周年である平成2年に,企業理念「Benesse=よく生きる」を打ち出し,平成3年以降,CI(コーポレート・アイデンティティ)として「Benesse」の商標を採用した(甲2〜甲6,甲8,甲9)。ラテン語で「bene」は「良い」,「esse」は「生きる」を意味するものである。以来,福武書店は,商標「Benesse」をハウスマークとして継続的に使用し,幼児から高校生までの幅広い年齢層をカバーする教育事業を展開してきた(甲5,甲6,甲13〜甲17)。

さらに,福武書店は,創業40周年の平成7年に,株式会社ベネッセコーポレーション(以下「旧ベネッセ」という。)へ商号を変更し(甲7,甲10〜甲12),自他共に認める通信教育の最大手となり,これを基礎として,文化,生活,福祉,介護などの分野へと事業領域を拡大し,そのあらゆる事業活動において,「Benesse」を商標として継続的に使用してきた。

イ 旧ベネッセは,平成21年10月1日に設立した株式会社ベネッセコーポレーション(請求人の100%子会社,以下「ベネッセ」という。)にその事業を承継し,同日付けで商号を株式会社ベネッセホールディングスに変更し,持株会社としてグループ成長戦略の推進等を行う新体制に移行した。

ベネッセの平成25年4月における会員数は約385万人に達し,また,海外の会員数も82万人に達している(甲18の5頁)。そして,請求人の平成25年3月期の連結売上高は約4,501億8,200万円にのぼる(甲18)。

請求人及びベネッセ(これらをまとめていうときは,以下「請求人ら」という。)は,教育業界最大手の企業として,労働環境の整備に取り組んできた結果,「均等・両立推進企業表彰」において,平成11年度に「労働大臣優良賞」,平成20年度に「厚生労働大臣最優良賞」を受賞した(甲19〜甲21)。また,日本経済新聞社の総合企業ランキング「NICES」において2011年に第22位に格付けされ(甲22,甲23),さらに,世界の代表的なSRI評価会社であるSAM社のCRS格付けにおいても,5年連続で「SAM Sector Leader」(評価が最も高い企業)及び「SAM Sector Mover」(最も改善が著しい企業)に選定され,2012年版でゴールドクラスに認定された(甲24)。

(2)上記のとおり,「Benesse」の商標は,平成2年の採用以来,請求人及びそのグループ企業のハウスマークとして一貫して使用されてきた。その代表的な具体的業務及び実績等は,以下のとおりである。

ア 技芸又は知識の教授における具体的業務及び実績等

(ア)幼児向け「Benesseこどもちゃれんじ」

請求人は,昭和63年に開講し,毎月1回会員宅に教材を届けている(甲6,甲25〜甲31)。

(イ)小学生向け「Benesse進研ゼミ小学講座」

請求人は,昭和55年に開講し,現在は各学年に展開し,さらに小学6年生には1月から,「進研ゼミ中学準備講座」用の教材を毎月1回会員宅に届けている(甲6)。そして,平成24年4月時点で全国の小学生約184万人が受講するまでにシェアを伸ばしている(甲33)。

(ウ)中学生向け「Benesse進研ゼミ中学講座」

請求人は,昭和47年に開講した「通信教育セミナ・ジュニア」は,現在は各学年に展開し,毎月1回会員宅に教材を届けている(甲6)。平成23年4月時点で,全国の中学生の5人に1人が受講するまでにシェアを伸ばしている(甲35)。

(エ)高校生向け「Benesse進研ゼミ高校講座」

請求人は,昭和44年に開講した「通信教育セミナ」は,現在は各学年ごとに展開し,毎月1回会員宅に教材を届けている(甲6)。平成24年度の全国大学入試現役合格者の4.2人に1人が受講したという統計が出ている(甲37)。

また,ベネッセは,上記(ア)〜(エ)の講座に関し,会員数の拡大等のため,引用商標1ないし2が表示されたダイレクトメールを随時送付している(甲32,甲34,甲36,甲38)。

(オ)英語教育

請求人は,平成15年に未就学児向けの英語講座「おやこえいご」を開講し,また,平成13年より小学生向けに展開し,隔月に1回会員宅に教材を届けている(甲6)。これらの英語通信教育講座の会員数は,平成24年12月時点で,下記英語教室の生徒数と合わせて開講以来延べ約145万人以上となった(甲39)。

請求人は,平成11年より,3歳児〜中学2年生向けに,「Benesseこども英語教室」を全国で開校している(甲6)。当該英語教室の生徒数は約16,000人(延べ在籍数約188,000人),教室数は約1,200にのぼる。ベネッセは,これらの英語教育の会員・生徒数の拡大のために,新聞折り込み広告等により積極的な広告活動を展開している(甲40)。

(カ)国語教育「Benesseグリムスクール」

請求人は,平成15年より,小学年向けに,「Benesseグリムスクール」を全国で開校した。平成24年3月期時点の教室数は約1,200,生徒数は約2,500人(延べ在籍数約34,000人)に及ぶ。ベネッセは,生徒数の拡大のために,新聞折り込み広告等により積極的な広告活動を展開している(甲41)。

(キ)介護資格取得講座開設

請求人は,平成7年よりホームヘルパー2級養成講座を,平成10年より介護福祉士受験対策講座をそれぞれ開講している(甲42〜甲44の2)。これらの講座の延べ受講者数は,平成24年の実績で,ホームヘルパー2級養成講座が約39,000人,介護福祉士受験対策講座が約7,700人であった。

(ク)上記(ア)〜(キ)における講座等に使用される教材等には,いずれも引用商標1ないし2が表示されている(甲6,甲44)。

イ 進学模擬試験の実施における具体的業務及び実績等

ベネッセが実施する「進研模試」は,全国の高校で導入されている全国最大規模の進学模擬試験であり,その問題用紙の表紙等には,引用商標1ないし2が表示されている(甲45,甲46)。

また,ベネッセが実施する英語コミュニケーション能力測定のためのオンラインテスト「GTEC」は,800以上の企業・大学・団体に導入された実績を有し,中学生・高校生向けの「GTEC for STUDENTS」は多数の高校等で導入されている(甲47〜甲48)。

ウ 教育に関する情報提供における具体的業務及び実績等

請求人は,平成17年に,「Benesse」教育研究開発センターを発足し,ベネッセが運営するベネッセ教育総合研究所は,調査データ検索ウェブサイトを開設した。また,同センターは,幼稚園や保育園等の職員等向け教育情報誌「これからの幼児教育」を年3回発行し,さらに,小学校から高校までの学校種別ごとに,教師や大学の教職員等向け学校教育情報誌「VIEW21」を発行している。他にもベネッセ次世代育成研究所は,上記以外に,新聞社や出版社,放送局,教育関係者,行政機関等に研究報告書を配布している(甲50〜甲53)。

また,請求人は,平成17年に高校生に進路・進学情報を提供するウェブサイト「Benesseマナビジョン」を開設し,現在は,ベネッセが,当該ウェブサイトに加えて専門学校進学希望者向けウェブサイト「みんなの専門学校」を,大学院進学希望者向けウェブサイト「大学院へ行こう!」を開設している(甲54)。

さらに,請求人は,平成17年に小学校から高校までの教師等の教育関係者向けに,「Benesse教費情報サイト」を開設した(甲55)。当該ウェブサイトの平成24年9月末における登録会員数は約52万人であり,ウェブサイト開設以来のアクセス数は,約4億回に達している。

この他,請求人らは,高校の教師等向けに大学入試説明会を年2回開催し,さらに,全国各地で小中学生及びその保護者向けに進学フェア,高校生及びその保護者向けに国・公・私立大学進学フェア等のイベントを開催している(甲56,甲57)。

上記各ウェブサイトや説明会等において掲示される看板・パネル,配布される印刷物類には,引用商標1ないし2が表示されている。

エ アート作品の展示における具体的業務及び実績等

請求人は,瀬戸内海の直島,豊島,犬島を舞台にアート活動を展開している。請求人は,平成4年に現代アートの展示スペースとホテル客室を備えた「ベネッセハウス」を開館し,平成7年に宿泊専用棟「ベネッセハウスオーバル」を完成させ,平成16年に,現代アートに関する活動の総称として「ベネッセアートサイト直島」の名称を採用した(甲58の1及び2)。そして,島の施設には,引用商標1ないし2が表示されている。また,来島者(直島町観光来訪者)は,平成20年度は約34万人,平成21年度は約36万人,平成22年度は約64万人,平成23年度は約40万人であった(甲58の3)。

オ 広告活動及び実績等

請求人らは,その事業を行うにあたり,莫大な広告費用を投じて積極的な広告活動を展開しており,その広告媒体もテレビコマーシャルやイベント等多岐にわたる(甲59〜甲97,甲187)。

カ メディア・マスコミによる報道及び需要者の認識

「Benesse」に関連する教育関連事業は,各種新聞・雑誌等の多数のメディアで取り上げられ(甲98〜甲145),請求人らは,大学生(文系)の就職企業人気ランキングで常に上位を維持している(甲146)。さらに,請求人らが提供する商品及びサービスは,極めて多数の会員が利用している(甲39,甲153)。

上記一連の活動の結果,引用商標1は,日本有名商標集(第3版)に請求人の登録商標として掲載され(甲147),また,広い範囲で防護標章登録を認められた(甲194,甲195)。

キ 事業多角化における具体的業務及び実績等

(ア)学校用教材の提供

請求人らは,教育現場支援のために教科書補助教材として,引用商標1ないし2が表示されたドリルを全国各地の小学校に提供している(甲148,甲149)。

(イ)出版事業

請求人は,平成5年に,「たまごクラブ」及び「ひよこクラブ」の各誌を創刊した(甲150,甲151)。その後,平成8年に「サンキュ!」(甲152),「たまひよこっこクラブ」を,平成14年に「いぬのきもち」を創刊した。また,「妊娠・出産・子育ての日常にそれぞれの感動体験を」に関する情報を掲載したウェブサイト「ウィメンズパーク」を開設した(甲153)。

(ウ)商品化事業

ベネッセは,引用商標1ないし2を表示したインターネットショッピングサイトを開設し,ベビー用品から小学校高学年の児童向けの書籍・印刷物類,おもちゃ・人形,被服・履物類,布団・タオル類,飲食料品,食器類,学習机等の家具類,その他生活雑貨類などの商品を幅広く取り扱っている(甲154〜甲163,甲167〜甲170)。また,ベネッセは,上記「たまごクラブ」,「ひよこクラブ」等の内容に連動した商品カタログによる通信販売(甲164〜甲166,甲169,甲170)や,他社とのコラボレーション商品を多数販売している(甲171〜甲175)。

(エ)その他グループ会社の事業

請求人は,平成5年に,英会話学校の運営などを行う米国企業ベルリッツ・インターナショナル社をグループ会社化し,平成10年に,通訳・翻訳サービスなどを行う株式会社サイマル・インターナショナルの営業権を取得する等,事業の多角化を進めている。また,請求人は,平成7年に介護事業に参入し,平成12年に介護事業の運営会社として株式会社ベネッセケアを設立し,その後,平成15年に,介護事業を行うグループ会社を統合して,株式会社ベネッセスタイルケア(以下「ベネッセスタイルケア」という。)とした(甲176〜甲179)。さらに,請求人は,平成18年に株式会社お茶の水ゼミナールを(甲180〜甲182),平成19年に株式会社東京個別指導学院を子会社化した(甲183〜甲189)。

(3)「Benesse(ベネッセ)」が「ベネ」と略称されている事実

一般のブログサイトでは,「ベネ」を請求人の「Benesse」の意味に使用しているウェブサイトが確認される(甲190の1〜4)。この用例から,請求人及びベネッセの会員だけなく,「ベネ」は「Benesse」又は「ベネッセ」と同義のものとして広く一般の需要者に理解し使用されている事実が窺える。

また,日本最大級の女性コミュニティサイトである「ウィメンズパーク」(会員数370万人)では,「ベネ」が「Benesse」又は「ベネッセ」と同義のものとして用いられている(甲190の5〜7)。このサイトは,利用及び会員登録が女性に限定されているものの,例えば,総務省統計局が公表した平成24年(10月1日現在)の0歳から100歳以上の我が国女性総人口は約6,548万人であるから,我が国女性総人口に占める「ウィメンズパーク」の会員の比率は約5.6%(370万人/6,548万人)となり,全国の20人に1人以上の女性が会員登録し,同サイトを利用している計算となる(甲191)。また,15歳から64歳までの女性(いわゆる生産年齢にあたる女性)に限ってみると,その比率は約9.2%(370万人/3,979万人)となり,概ね10人に1人の女性が同サイトを利用している計算となる(甲191)。

上記事実から明らかなとおり,「ベネ」は,「ベネッセ」又は「Benesse」と同義のものとして広く一般の需要者に理解し使用されているものである。

エ 上記のとおり,請求人及びそのグループ会社は,創業以来,長年にわたり,教育関連事業等に引用商標1ないし2をハウスマークとして使用してきたことにより,引用商標1及び2は,請求人及びそのグループ会社の業務に係るものとして,取引者・需要者の間で著名性を獲得していることは明らかであり,その著名性は現在も継続している。

2 引用商標3の周知性

(1)上記(2)エのとおり,請求人は,瀬戸内海の直島等を舞台にアート活動を展開し,平成4年に「ベネッセハウス」を開館し,平成7年に宿泊専用棟「ベネッセハウス(オーバル)」を開業して以来,引用商標3は,ホテルの名称にとどまらず,現代アートを鑑賞できる場を提供するといった請求人の活動を象徴する商標として使用されている(甲58の1及び2,甲66,甲67,甲196〜甲199)。請求人の一連の活動は,コンデナスト社が発行する旅行誌「コンデナスト・トラベラー」の“seven places in the world you should see next”(次に見るべき世界の七か所)特集で取り上げられたことをきっかけに,海外での注目度も高くなり,その後も,数々の海外のメディアで取り上げられた(甲200)。また,「ベネッセハウス」を中核とする,請求人の活動は,新聞等でも大きく報じられている(甲210)。

(2)上記のとおり,引用商標1及び2は,請求人の企業理念を象徴する造語であり,引用商標3も,これを敷衍して採択され,その活動に使用され周知となっている。その結果,例えば,一般検索エンジンで検索すると,Googleでは578,000件ヒットし,Yohoo!では432,000件ヒットした。これらの最初の100件のデータは,全て請求人に関するものである(甲211,甲212)。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)引用商標1及び2の著名性

上記1のとおり,引用商標1及び2は,請求人及びそのグループ会社の業務に係るものとして,取引者・需要者の間で著名性を獲得している商標である。

(2)本件商標と引用商標1及び2の類似性の程度

本件商標中の「ハウス」は,「家,建物」等を指称する英語「HOUSE」の日本語表記であり,本件商標の指定役務の第37類「建設工事」においては,役務の提供に係る対象物にあたり,また,第43類の「保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),児童養護施設の提供」にあっては,「〜ハウス」といった施設名の一部を構成するものとして普通一般に使用されているものである。

他方,「ベネ」は,一般的には,日常的に用いられる外来語でないから,「ハウス」と比較すると,自他役務の識別機能は大きく,また,前記のとおり,引用商標1及び2が「ベネ」と略称されている実情があることから,本件商標にあっては,出所識別標識としての支配的な印象を与える部分といえる。

したがって,本件商標は,「ベネ」を要部とする商標として把握される。

そうすれば,本件商標は,引用商標1及び2とは,「ベネ」の称呼及び教育分野におけるリーディングカンパニーとしての請求人の観念を共通にするといえるから,引用商標1及び2との類似性の程度は高いといえる。

(3)本件商標と引用商標3の類似性の程度

本件商標と引用商標3は,いずれも片仮名で構成され,5文字と7文字の相違があるとはいえ,頭語の「べ」「ネ」と,「ハ」「ウ」「ス」の5文字を共通にし,中間にある「ッセ」の部分が異なるにすぎない。また,請求人の活動は,日本はもとより,世界的に注目されており,かつ,請求人がしばしば「ベネ」と略称される点に鑑みると,本件商標と引用商標3とは,外観・称呼・観念のいずれの点からしても紛らわしい。特に,引用商標3は周知商標であって,一般的にも,同様の用例がないことから,出所の混同を生じる可能性が高いことも明らかである。

(4)引用商標の独創性の程度

引用商標1及び2は,ラテン語で「良い」を意味する「bene」と,「生きる」を意味する「esse」を結合した造語である。ラテン語は,我が国ではほとんど一般に知られていない外来語であって,他に類例とみない独創的なものである。また,引用商標3もその構成が独創的であることに加えて,市場において請求人以外の用例は皆無である。

したがって,引用商標の独創性の程度は極めて高いというべきである。

(5)商品・役務間の関連性,取引者,需要者の共通性

上記のとおり,旧ベネッセは,教育事業を基礎として,文化,生活,福祉等の分野へと事業領域を拡大し,平成7年に介護事業に参入,平成12年に介護事業の運営会社として株式会社ベネッセケアを設立した後,介護事業を行うグループ会社を統合して,株式会社ベネッセスタイルケア(以下,「ベネッセスタイルケア」という。)とした(甲176)。こうした介護事業においても,請求人は,引用商標1及び2を使用してきたのであるから,第43類「保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),児童養護施設の提供」を指定役務とする本件商標は,引用商標1及び2とは,商品役務間の関連性を有し,その需要者・取引者の範囲は一致する。

さらに,第37類「建築工事」は,請求人の展開する「ベネッセハウス」が「自然・建築・アートの共生」をコンセプトとして設計されており,建築事業者・技術者といった需要者・取引者の共通性が認められる(甲196〜甲199)。

(6)本件商標の指定役務の需要者が普通に払う注意力その他取引の実情

上記のとおり,「ベネ」は「Benesse」又は「ベネッセ」と同義のものとして広く一般の需要者に理解し使用されている事実が窺える。

してみれば,「ベネ」といえば「Benesse(ベネッセ)」との認識は,請求人の企業イメージに直結するほど多数の人々の記憶に深く刷り込まれていると考えられるから,需要者が普通に払う注意力としては,本件商標に接した需要者は,極めて強い出所識別機能を果たし得る「ベネ」の部分に着目して,請求人及びそのグループ会社を想起し,当該商品又は役務が請求人及びそのグループ会社の業務に係るものと認識するであろうことは容易に想像される。

(7)特許庁における審査基準,判決・審決

商標法第4条第1項第15号に関する特許庁の商標審査基準上,「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め,原則として,商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする」とされている(商標審査基準〔改訂第10版〕十三の5)。

「ベネ」が,引用商標1及び2を容易に想起させるほどの認識が一般に定着している以上,「ベネ」を含む本件商標は,審査基準上にいう「他人の著名な商標と他の文字又は図形を結合した商標」にあたるといえるから,その外観構成がまとまりよく一体に表されていると否とにかかわらず,請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標として商標法第4条第1項第15号に該当するものとして拒絶されるべきである。加えて,引用商標3は,周知である上に,本件商標とは全体の音調が近似し,指定役務との関連性も高いことから,出所の混同を生じる可能性は極めて高い。この点,過去の判決・審決(甲213〜甲225)からみても,本件商標を使用した役務が,引用商標を使用している役務又は商品等と,出所の混同を生じる可能性は高いというべきである。

(8)まとめ

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。

4 答弁に対する弁駁

(1)本件商標について

被請求人は,商標法第4条第1項第15号の「周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライト)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)とは何等関連性のないものである。」と述べているが,請求人は、「レールデュタン」事件(平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決平成10年(行ヒ)第85号)を引用して、取引の実情について,本件商標がその指定役務に使用された場合に請求人又は請求人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品(役務)との間で出所の混同を生ずるおそれがあるかどうかが考慮されるべきであると解する(甲192)。しかしながら、被請求人の主張は、狭義の混同のみを前提とするものである。

(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について

被請求人は,本件商標と引用商標1及び2とは、外観において共通性はなく一見して区別し得ること,称呼において「ベネ」が共通するに過ぎず,全体の語調及び語感が相違し,明確に聴別可能であること,観念においては,いずれも特定の観念を生じないものであるとして,両商標は互いに非類似の商標であると述べている。また,引用商標3は,中間部の片仮名「ッセ」の有無とそれに伴う語数の相違により,本件商標とは,外観及び称呼において相違し,観念においても特定の観念を生じないものであるとして,両商標は互いに非類似の商標であると述べている。

しかしながら,被請求人の主張は,商標法第4条第1項第11号が定める一般的な商標類否判断に基づくものである。同第15号該当性に関して「混同を生ずるおそれ」の有無の判断基準を示した上掲平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決(甲192)は,「類似性の程度」を判示しており,これを同第11号にいう「類似」と同義に解釈しなければならないとする合理的な理由はない。

そして,引用商標1及び2は,「ベネッセ」だけでなく「ベネ」と略称され,同義のものとして多く用いられているという実情があることから,本件商標にあっては、「ベネ」が出所識別標識としての支配的な印象を与える部分であることは既述のとおりである。また,本件商標と引用商標3は,いずれも片仮名で構成され,頭語である「ベネ」と「ハウス」の5文字が全く同一であって,単に,中間にある「ッセ」の部分が異なるに過ぎない。

また,請求人が「ベネ」が「Benesse」又は「ベネッセ」と同義のものとして広く一般の需要者に理解し使用されていると主張した点に対し,被請求人は、請求人が提出した証拠は,4つのインターネットウェブサイトの打出しと「ウィメンズパーク」のコミュニティサイトの書込みだけであり,請求人が「ベネ」の語を宣伝・広告活動等において大々的に使用している事実は見出せないとして,これを否定している。

しかしながら,前記第3の1(3)のとおり,多くの者が「ベネ」が「Benesse」又は「ベネッセ」と同義のものとして広く一般の需要者が理解していることを知ることができる。

したがって,本件商標と引用商標1ないし3は,互いに相紛れるおそれのある類似の商標である。

(3)出所混同のおそれについて

本件商標は,著名商標である「Benesse」を想起させることにより,「ベネ」の文字部分が,取引者・需要者に対して出所識別標識として強い印象を与えるものであり,被請求人が述べるように,構成上,一体不可分の商標であるとしても,「ベネ」と「ハウス」の2語を結合したものと自然に認識されるものであり,結合することによって一体のまとまった観念が生ずるものともいえない以上,何らの観念をも有しない一種の造語であるからといって,無意味のものと解釈しなければならない合理的な理由はない。「ベネ」と「ハウス」は,もともと緊密に結合すべき理由がなく,これに引用商標1ないし引用商標3の周知著名性を勘案すれば,本件商標は,「ベネ」と「ハウス」に別々に認識され,把握される可能性が高いといわざるを得ないものである。

したがって,本件商標と引用商標1ないし3は,役務の出所について混同を生ずるおそれのあるものである。

5 まとめ

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反する無効理由を有するから,商標法第46条第1項第1号の規定によってその登録を無効とされるべきである。

第4 被請求人の主張

被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

1 本件商標について

被請求人は,医薬部外品,化粧品,健康補助食品,清涼飲料水,食品及び日常生活品の企画,開発,製造及び販売を主な事業内容とする企業である(乙1)。そして,本件商標は,本件商標権者が,今後の事業展開を見据えて,自らの社名に基づき独自に創案・採択した商標であるから,「周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)」とは何ら関連性のないものである。

2 本件商標と引用商標との類似性の程度

(1)本件商標

本件商標は,「ベネハウス」の片仮名を,同書,同大,等間隔にて一体的に標準文字で表してなる商標である。また,「ベネハウス」は,5音という短い音数の下,よどみなく一連に称呼し得るものであり,本件商標から自然に生じる称呼は,「ベネハウス」のみである。そして,本件商標は,上記のとおり,本件商標権者が独自に創案・採択したものであり,特定の観念を生じない。よって,本件商標は,外観のまとまりよさと一連の称呼を有する一体不可分の造語商標である。

(2)引用商標

ア 引用商標1及び2は,いずれも欧文字で「Benesse」と書してなり,その文字に相応して「ベネッセ」の称呼を生じる。また,請求人によると,これらの商標は,ラテン語の「bene(良い)」と「esse(生きる)」とを結合したものであるところ,我が国の取引者,需要者が有するラテン語の知識水準に鑑みると,特定の観念を生じない造語であるといえる。

イ 引用商標3は,「ベネッセハウス」の片仮名を,同書,同大,等間隔にて一体的に標準文字で表してなる商標である。そして,「ベネッセハウス」は,7音という短い音数の下,よどみなく一連に称呼し得るものであり,引用商標3から自然に生じる称呼は,「ベネッセハウス」である。また,引用商標3は,上記造語の「Benesse」に相応する片仮名「ベネッセ」に「ハウス」を結合してなるものであり,全体として,特定の観念を生じない造語であるといえる。

(3)本件商標と引用商標との対比

ア 本件商標と引用商標1及び2とを比べると,外観において,共通性は皆無であり,一見して判然と区別し得る。

また,称呼において,「ベネハウス」と「ベネッセ」とは,「ベネ」が共通するにすぎず,全体の語調及び語感が相違し,明確に聴別可能である。

そして,観念において,いずれも特定の観念を生じない造語であるため,類似せず,相紛れるおそれはない。

よって,本件商標と引用商標1及び2とは,互いに非類似の商標である。

イ 本件商標と引用商標3とを比べると,外観において,中間部の片仮名「ッセ」の有無とそれに伴う語数の相違により,取引者・需要者に与える視覚的印象が異なり,明瞭に区別し得る。

また,称呼において,「ベネハウス」と「ベネッセハウス」とは,「ベネ」と「ハウス」が共通するものの,中間部に位置し,強く発音される「ッセ」の音の有無により,「ベネハウス」が平坦かつ滑らかに発音されるのに対し,「ベネッセ」は短く抑揚をもって発音されることから,取引者,需要者に与える聴覚的印象が異なり,十分に聴別可能である。

そして,観念において,いずれも特定の観念を生じない造語であるため,類似せず,相紛れるおそれはない。よって,本件商標と引用商標3とは,互いに非類似の商標である。

なお,請求人は,「ベネ」の語が「Benesse」又は「ベネッセ」と同義のものとして広く一般の需要者に理解し使用されている事実があるとし,引用商標1及び2から「ベネ」の称呼が生じる旨主張するが,理由を欠くものである。なぜならば,請求人が示す証拠は,結局のところ,4つのインターネットウェブサイトの打出しと「ウィメンズパーク」なるコミュニティサイトの書込みだけであり,請求人が「ベネ」の語を宣伝広告活動等において大々的に使用している事実は見いだせず,これらの証拠のみによっては,上記事実は立証されないからである。前者のインターネットウェブサイトの打出しについては,そもそも,ウェブサイトの数が4つにすぎない上,そのそれぞれにおいて,「ベネ」の語が記載されているのは1又は2ヵ所のみであり,それ以外は全て「ベネッセ」の語が記載されている。また,後者のコミュニティサイトについては,請求人が開設したとするサイトにおいて,一部のユーザーにより「ベネ」の語が用いられていることを示すにすぎない。この点に関し,被請求人が「ベネ」の語をキーワードとしてGoogle検索するも,最初の約100件において「ベネ」の語が「Benesse(ベネッセ)」の略称として用いられているものは,わずか1件のみであった(乙2)。

仮に引用商標が「ベネ」の称呼をも生じるとしても,前記のとおり,一体不可分である本件商標から「ベネ」が抽出される合理的理由はなく,その称呼「ベネハウス」と「ベネ」とは,「ハウス」の音の有無により,音調及び音感が大きく異なるため,明確に聴別可能である。よって,上記の商標の非類似性に影響を与えるものではなく,依然として,本件商標と引用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標である。

3 出所混同のおそれ

以上により,本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれの点においても非類似の商標であって,十分に区別し得る別異の商標であるから,被請求人が本件商標をその指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者が,請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように連想し,想起することはなく,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないことは明らかである。

この点に関し,「商標の類似性の程度」は,レールデュタン事件において判示された出所混同のおそれの有無の判断基準の一つであるところ,商標が非類似であることを理由に,引用商標の周知著名性の有無にかかわらず,商標法第4条第1項第15号への該当性を否定した審決は数多ある(乙3,乙4)。

なお,請求人は,判決例を挙げながら,「ベネ」の語を含む本件商標は,商標法第4条第1項第15号に関する審査基準における「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め,原則として,商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする」にいう「他人の著名な商標と他の文字又は図形を結合した商標」に当たるから,商標法第4条第1項第15号に該当する旨主張する。

しかしながら,上記のとおり,「ベネ」の語が広く一般に定着している事実は見出せず,その状況下において,ましてや「著名な商標」ではあり得ず,請求人の上記主張は,そもそも前提を誤った妥当性を欠くものである。

4 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきではない。

第5 当審の判断

1 引用商標の周知・著名性について

(1)引用商標1及び2

請求人の提出に係る証拠(括弧内に掲記)によれば,請求人は,その前身であった福武書店,旧ベネッセを通して,主として通信教育,進学模擬試験の実施,入学情報・学力情報・その他の教育情報の提供等を行う企業グループの中核の会社であって,具体的には,0歳から6歳までの幼児,小学生,中学生,高校生を対象とした通信教育・教材の販売・進学模試試験の実施,幼稚園・小学校・中学校・高校・大学の教職員を対象とした教育情報誌の発行,英語・国語の教授等,教育に関する事業を中心として発展してきた。

そして,平成2年に,企業理念「Benesse=よく生きる」を打ち出し,平成3年以降,「Benesse」の文字よりなる商標をCI(コーポレート・アイデンティティ)として使用し始めた。該「Benesse」は,ラテン語の「bene」(良く・正しい)と「esse」(生きる)を組み合わせた造語である(甲2〜甲7,甲10〜甲17)。

その後,請求人の事業活動は,平成21年に設立した子会社であるベネッセに引き継がれ,ベネッセの平成25年4月における会員数は約385万人に達し,海外の会員数も82万人に達し,請求人の平成25年3月期の連結売上高は約4,501億8,200万円に達した(甲18)。請求人は,上記教育に関する事業を基盤として,文化,生活,福祉,介護などの分野へと事業を拡大し,平成5年頃から子育て等生活に関する「たまごクラブ」及び「ひよこクラブ」等の出版事業を開始し,また,「妊娠・出産・子育ての日常にそれぞれの感動体験を」をキーワードに,これらに関する情報を掲載したウェブサイト「ウィメンズパーク」を開設した(甲150〜甲153)。さらに,インターネットショッピングサイトを開設し,カタログによる通信販売等など,様々な商品の販売事業も手掛けている事実が認められる(甲154〜甲175)。

また,平成7年より介護事業に参入し,平成12年に介護事業の運営会社として株式会社ベネッセケアを設立し,平成15年には,介護事業を行うグループ会社を統合して,ベネッセスタイルケアとした。そして,このベネッセスタイルケアは,保育事業も手掛けている(保育施設は,2012年4月1日現在首都圏を中心に26拠点存在する:以上,甲176〜甲179)。

請求人が費やしたダイレクトメールの配布をはじめとする広告費は,本件商標の登録出願日前の平成23年で438億円,平成24年で439億円であり,平成25年は429億円であった(甲59)。

加えて,請求人らは,これらの事業活動において,引用商標1ないし2を継続的に使用してきた事実が認められる。

さらに,このような請求人らの事業活動は,大学生(文系)の就職企業人気ランキングで上位に入るという結果をもたらしている(甲146)。

なお,引用商標1は,その防護標章が多数の区分にわたり登録がされていることを認めることができる(甲194,甲195)。

そうすると,引用商標1及び2は,「ベネッセ」と称呼されて,請求人及びそのグループ会社の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,本件商標の登録出願日(平成25年11月27日)には既に,我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものということができる。そして,引用商標1及び2の著名性は,本件商標の登録査定日(平成26年6月6日)においても継続していたものといえる。

一方,一般のウェブサイトにおけるブログ(甲190の1〜4)及び請求人の開設しているウェブサイト「ウィメンズパーク」における会員のブログ(甲190の5〜7)によれば,「ベネッセ」を指称するものとして「ベネ」の語が使用されていることが認められる。

しかし,これらウェブサイトにおける使用のうち,前者は,その文頭部には「ベネッセに就職!!」,「ヨシケイとベネッセを取った事があります。・・・」,「ベネッセ届く」,「本日の簡単レシピはベネッセの食材宅配から、・・・(「ベネッセの食材宅配」の文字部分のみ赤色で表示)」の記載があるように(甲190の1〜4),「ベネ」が「ベネッセ」を略したものであることが分かるように,必ず「ベネッセ」の語が記載されていること及び「ベネ」の使用頻度は決して高いといえないことが認められ,また,後者については,請求人のグループ会社であるベネッセが開設したウェブサイトであり,その会員が,ベネッセが開設したウェブサイト内の記述であることを承知した上で,「ベネッセ」(少なくとも商標としての使用とは認め難い。)を「ベネ」と略して使用したものにすぎない。

してみれば,これらの証拠のみをもって,社会一般の需要者の間で,「ベネ」が「Benesse」又は「ベネッセ」と同義のものとして用いられていると直ちに断定することはできない。その他,引用商標1及び2が「ベネ」と略称されて,本件商標の登録出願日前より,我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる証拠の提出はない。

したがって,「ベネ」が「Benesse」又は「ベネッセ」の略称を表示するものとして,本件商標の登録出願前より我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

(2)引用商標3

請求人の提出に係る証拠(括弧内に掲記。なお,商標法施行規則第22条第7項で準用する特許法施行規則第61条で規定する訳文の添付がない証拠については除く。)によれば,請求人は,平成4年に,瀬戸内海の直島に,「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに美術館とホテルの機能が融合した「ベネッセハウス」を開設し,平成7年には,宿泊専用棟「ベネッセハウス(オーバル)」を開設した。直島への来島者は,平成20年度は約34万人,平成21年度は約36万人,平成22年度は約64万人,平成23年度は約40万人であった(甲58,甲198)。

また,「ベネッセハウス」に関して,平成23年2月頃から平成25年11月頃にかけて,四国新聞,山陽新聞などの地方紙や毎日新聞,朝日新聞といった全国紙に掲載された事実がある(甲201〜甲210)。

さらに,「ベネッセハウス」の語のインターネット検索において,Googleでは578,000件ヒットし,Yohoo!では432,000件ヒットした(甲211,甲212)などを認めることができる。

しかしながら,請求人が平成4年に開設した「ベネッセハウス」は,美術館とホテルの機能が融合したユニークな施設であって,主として瀬戸内海周辺で発行される地方紙等で取り上げられた事実があり,また,「ベネッセハウス」の語は,インターネット検索において,相当な件数が検索されたことが認められるが,地方紙等の記事は,他の主たる記事に関連して「ベネッセハウス」の語が記載され,必ずしも「ベネッセハウス」を主題とした記事とはいえないものも含まれており,請求人が,「ベネッセハウス」に関し,上記地方紙等に積極的に宣伝広告をしたというわけではない。

また,インターネットによる検索結果は,意図的に「ベネッセハウス」の語を検索する目的でされたものであり,該語をキーワードとして,請求人の施設にアクセスしたというわけではないから,その検索結果をもって,引用商標3が我が国の需要者の間に広く認識されていたと直ちに認めることはできない。

その他,「ベネッセハウス」に関し,本件商標の登録出願日前までに我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたという事実を明らかにする証拠の提出は見いだせない。

してみれば,引用商標3は,請求人の業務に係る役務「宿泊施設の提供」等を表示するものとして,本件商標の登録出願日前には,ホテル業界及び芸術に関心を持つ需要者等の間には,一定の周知性を有していたと認め得るとしても,本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において,我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたとまで認めることはできない。

2 本件商標と引用商標との類似性

(1)本件商標

本件商標は,前記第1のとおり,「ベネハウス」の片仮名を標準文字で表してなるものであるところ,該文字は,同一の書体をもって,同一の大きさ,同一の間隔で,外観上まとまりよく一体的に表されているばかりでなく,これより生ずると認められる「ベネハウス」の称呼も無理なく一気に称呼し得るものである。

そうすれば,本件商標は,その外観及び称呼上,一体的な商標として把握されるものといえる。

また,本件商標を構成する「ベネハウス」の語は,一般的な国語辞書には掲載されていないものであり,特定の意味合いは生じないものといえる。

してみると,本件商標は,構成全体をもって一体不可分の造語を表したと認識されるものとみるのが相当である。

したがって,本件商標は,その構成文字に相応して,「ベネハウス」の一連の称呼のみを生ずるものであって,特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められる。

(2)引用商標1及び2

引用商標1及び2は,別掲1及び2のとおり,「Benesse」の欧文字を横書きしてなるところ,該文字は,語頭の「B」の文字を大文字で表し,これに続く「enesse」の文字を小文字で表してなるものであって,外観上まとまりよく一体的に表されているばかりでなく,上記1(1)のとおり,「ベネッセ」と称呼されて,我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていた商標と認めることができる。また,「Benesse」の語は,「よく生きる」を意味するラテン語に由来するものであるとしても,我が国においては,ラテン語は一般に親しまれて使用されているものではないから,特定の意味合いを有しない造語を表したと理解されるものといえる。

したがって,引用商標1及び2は,その構成文字に相応して,「ベネッセ」の称呼を生ずるものであって,造語よりなるものと認められる。

(3)引用商標3

引用商標3は,前記第2の3のとおり,「ベネッセハウス」の片仮名を標準文字で表してなるところ,該文字は,同一の書体をもって,同一の大きさ,同一の間隔で,外観上まとまりよく一体的に表されているばかりでなく,これより生ずると認められる「ベネッセハウス」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。

そうすると,引用商標3は,外観及び称呼上,一体のものとして把握されるものであって,「ベネッセハウス」の語は,特定の意味合いを有しない造語を表したと認識されるものであるから,構成全体をもって,一体不可分の造語を表したと認識されるとみるのが相当である。

したがって,引用商標3は,その構成文字に相応して,「ベネッセハウス」の一連の称呼のみを生ずるものであって,特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められる。

(4)本件商標と引用商標との対比

ア 本件商標と引用商標1及び2

本件商標と引用商標1及び2は,それぞれ上記認定のとおりの構成よりなるものであるから,これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても,外観上,互いに紛れるおそれはないものである。

また,本件商標より生ずる「ベネハウス」の称呼と引用商標1及び2より生ずる「ベネッセ」の称呼は,前半部の「ベネ」の音を同じくするものであるとしても,後半部において,「ハウス」の音と「ッセ」の音の差異を有するものであるから,これらの差異音が,短い音構成よりなる両称呼全体に及ぼす影響は大きいものといえる。

してみれば,本件商標と引用商標1及び2は,これらより生ずる称呼をそれぞれ一連に称呼した場合においても,その語調,語感が著しく相違したものとなり,称呼上,互いに紛れるおそれはない。

さらに,本件商標と引用商標1及び2は,いずれも造語よりなるものであるから,観念においては比較することができない。

したがって,本件商標と引用商標1及び2は,観念において比較することができないとしても,その外観及び称呼について明らかに相違するものであるから,これらのことを総合的に考慮すれば、両者は互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

イ 本件商標と引用商標3

本件商標と引用商標3は,いずれも簡潔な片仮名よりなるものであるから,中間部における「ッセ」の文字の有無の差異は,これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても,通常の注意力をもってすれば,判然と区別し得るものといえる。

また,本件商標より生ずる「ベネハウス」の称呼と引用商標3より生ずる「ベネッセハウス」の称呼は,中間部において,「ッセ」の音の差異を有するものであるから,該差異音が,短い音構成よりなる両称呼全体に及ぼす影響は大きいものといえる。

してみれば,本件商標と引用商標3は,これらより生ずる称呼をそれぞれ一連に称呼した場合においても,その語調,語感が著しく相違したものとなり,称呼上,互いに紛れるおそれはない。

さらに,本件商標と引用商標3は,いずれも造語よりなるものであるから,観念においては比較することができない。

したがって,本件商標と引用商標3は,観念において比較することができないとしても,その外観及び称呼について明らかに相違するものであるから,これらのことを総合的に考慮すれば、両商標は互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

3 出所の混同

(1)引用商標1及び2との関係

上記1(1)のとおり,引用商標1及び2は,請求人及びそのグループ会社の業務に係る商品ないし役務を表示するものとして,本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において,我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていた商標であり,かつ,独創性を有するものであること,また,請求人は,教育事業を中心に,多角経営を展開するグループ企業であり,本件商標の指定役務中の第43類「保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),児童養護施設の提供」と関連性の高い介護事業,保育事業をも手掛けており,したがって,本件商標が使用される上記役務と引用商標1及び2が使用される介護事業,保育事業とは,その需要者も一部共通する場合があることは認め得るところである。

しかしながら,これらの事情を考慮したとしても,上記2(4)アのとおり,本件商標と引用商標1及び2とは,互いに紛れるおそれのない非類似の商標であること,本件商標の指定役務中の第43類に属する役務の取引者・需要者は,これらの役務についての専門業者に限らず,広く一般の消費者が含まれるところ,役務の質(内容)からすると,一般の消費者の役務に対する注意力は必ずしも低いものとはいい難いものであることを併せると,本件商標に接する取引者,需要者が,引用商標1及び2を直ちに想起し又は連想するものとは考えられない。

(2)引用商標3との関係

上記1(2)のとおり,引用商標3は,請求人の業務に係る役務を表示するものとして,本件商標の登録出願前には,ホテル業界及び芸術に関心を持つ需要者等の間には,一定の周知性を有していたと認め得るとしても,我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたとまで認めることはできないものである。

また,本件商標と引用商標3は,上記2(4)イのとおり,両商標は,互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。

さらに,本件商標の指定役務と引用商標3が使用される役務「宿泊施設の提供」等とは,役務提供の目的・手段・場所等が全く異なるばかりか,一般的には同一の事業により提供される役務とはいえないし,一般の消費者の間においてもそのような認識が浸透しているものといえる。

してみると,本件商標に接する取引者・需要者が,引用商標3を想起し、又は連想するものとみることはできない。

(3)以上のことから,本件商標は,引用商標とは,いずれも類似しない商標であり,これら商標が使用される役務等の取引の実情を併せ考慮すれば,本件商標をその指定役務について使用しても,その取引者,需要者をして,該役務が請求人又は請求人と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤認し,混同を生じさせるおそれがある商標であると認めることはできない。その他,引用商標と類似しない本件商標との間で混同のおそれがあると認められる特段の事情をうかがわせる証拠の提出はない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には該当しないというべきである。

4 請求人のその他の主な主張

(1)請求人は,本件商標を「ベネ」の文字部分と「ハウス」の文字部分とに分離し,その上で,「ベネ」の文字部分は,引用商標1及び2の略称として需要者に広く認識されている実情を考慮すると,「ハウス」の文字部分に比べ出所識別標識としての支配的な印象を与える部分であり要部であるから,本件商標は,「ベネ」の文字部分より「ベネ」の称呼を生ずる旨主張する。

しかしながら,本件商標は,上記2(1)のとおり,構成全体をもって一体不可分の造語を表したと把握し,認識されるものであり,かつ,上記1(1)のとおり,引用商標1及び2が「ベネ」の略称をもって,取引者・需要者の間に広く認識されているものとはいえないから,請求人の上記主張は,前提において誤りがあるというべきである。その他,本件商標を「ベネ」の文字部分と「ハウス」の文字部分とに分離し,「ベネ」の文字部分のみを抽出して,称呼,観念しなければならない特段の事情は見いだせない。

したがって,請求人の上記主張は理由がない。

(2)請求人は,過去の判決・審決例を提出し,これら判決・審決例の認定に照らし,「ベネ」が,引用商標1及び2を容易に想起させるほどの認識が一般に定着している以上,「ベネ」を含む本件商標は,審査基準上にいう「他人の著名な商標と他の文字又は図形を結合した商標」にあたるといえるから,その外観構成がまとまりよく一体に表されていると否とにかかわらず,請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標であり,また,引用商標3は,周知である上に,本件商標とは全体の音調が近似し,指定役務との関連性も高いことから,出所の混同を生ずる可能性が高い旨主張する。

しかしながら,上記のとおり,本件商標は,引用商標とは,いずれも商標自体非類似の商標である。加えて,引用商標1及び2が,「ベネ」と略称されて,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

また,引用商標3は,請求人の業務に係る役務「宿泊施設の提供」等を表示するものとして著名性を有していたとはいえないし,それ以外の指定役務について著名性を獲得したという事実を明らかにする証拠の提出はない。

したがって,請求人の上記主張は,いずれも前提を欠くものであり,理由がない。よって,本件における上記認定が請求人の提出に係る過去の判決・審決例に左右されるものではない。

5 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきものでない。

よって,結論のとおり審決する。

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