Trademark Appeal Case
著名商標と結合商標の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2015−900159(T2015−900159/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5741305号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成26年9月18日に登録出願、第9類「CDプレーヤー,オーディオ用スピーカー,ヘッドフォン,イヤフォン,その他の電気通信機械器具」を指定商品として、同27年1月8日に登録査定、同年2月13日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する登録商標は、以下のとおりである。
(1)国際登録第657259号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、2008年(平成20年)3月7日に国際商標登録出願(事後指定)、第9類及び第12類に属する別掲(3)のとおりの商品並びに第2類、第7類、第14類、第16類、第18類、第25類、第27類、第28類及び第37類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成22年2月12日に設定登録されたものである。
(2)登録第4104015号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、1995年9月2日にドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成8年2月20日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として、同10年1月16日に設定登録され、その後、同20年1月8日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(3)登録第5050152号商標(以下「引用商標3」という。)は、「Audi」の欧文字を標準文字で表してなり、平成18年8月22日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として、同19年5月25日に設定登録されたものである。
(引用商標1〜3をまとめていうときは、以下、単に「引用商標」という。)
3 登録異議申立ての理由
(1)申立人及び引用商標の著名性について
申立人は、1909年に設立された自動車の製造販売を業とするドイツの法人である。申立人の2011年の売上高は441億ユーロ、純利益が53億ユーロであった(甲5)。
申立人の我が国における販売活動は、1967年にヤナセが「Audi L」を輸入したことに始まる。その後、我が国において、アウディ車の輸入、販売元は変遷したが、アウディ車の新規登録台数は、2008年において16,040台であり、2014年には、31,413台となり、「2014年度輸入車新規登録台数(速報)」によると、我が国における輸入乗用車中、第4位の実績を誇っている。また、現時点における我が国のアウディ車販売店舗数は23店舗であるが、正規ディーラーが全国に100店舗以上存在しており、かつ、広告活動も盛んに行っている(以上、甲5〜甲9)。
申立人は、引用商標1と同一の構成よりなるロゴを1915年に創作、その後1994年に修正されたものを継続して使用している(甲10)。当該ロゴは、申立人の業務に係る自動車を表示するものとして著名であり、その構成中の「Audi」の文字部分(以下「Audi商標」という。)も独立して著名性を獲得している。
(2)本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)について
本件商標権者は、平成9年4月に設立された日本法人であり、その主要な取扱い商品は、車載用各種モニター機器、車載用地上デジタルTVチューナー機器、車載用DVD機器、パーソナルDVD機器、液晶デジタルTV機器、地上デジタルチューナー内蔵モニター機器、電動アシスト自転車、コンパクトナビゲーション機器である(甲11)。そして、本件商標は、乗用車を含む車載用の電気通信機械器具に使用され得るものであることが客観的に認識できる。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、冒頭から4文字の「AUDi」の文字部分が、引用商標及びAudi商標と共通しており、第4字「i」の色彩は、Audi商標の色彩とほぼ同一である。しかも、当該「i」は、これだけ小文字で書されていることから、本件商標は、「AUDi」と「M」に分断され、かつ、「M」は、商品の品番等として類型的に使用されている欧文字1字であるから識別標識としての称呼、観念を生じない。
そうすると、本件商標は、著名なAudi商標と欧文字1字「M」とを結合した商標であり、仮にその外観がまとまりよく一体に表されているとしても、その全体構成が既成語ではないから、引用商標1に類似すると判断されるべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、大文字、小文字の差こそあれ、著名なAudi商標を含んでおり、かつ、第4字「i」のみ小文字で、Audi商標とほぼ同一の色彩を施しているから、「AUDi」と「M」に分断され、「AUDi」が独立して認識される。また、本件商標は、冒頭の「A」がAudi商標の「A」と同じような印象を与えるから、本件商標に接する取引者、需要者をして、引用商標又はAudi商標を想起させることは明らかである。
また、引用商標が使用される自動車と本件商標の指定商品中、車載用商品とは需要者を共通にする。
してみると、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標を付した商品が、申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中の「i」の文字部分が、他の文字と異なり、小文字で、かつ、赤色が施されているものであるとしても、構成する文字は、同一の書体もって、同一の間隔で書され、外観上構成全体が極めてまとまりよく一体的に表されているものである。また、本件商標は、構成全体をもって、特定の意味合いを生じないものであるとしても、その指定商品「CDプレーヤー,オーディオ用スピーカー,ヘッドフォン,イヤフォン,その他の電気通信機械器具」との関係から、「音の録音・再生・受信。また、そのための音響装置。」を意味する「audio(オーディオ)」に関連する語であるとの印象を与えるばかりか、これより生ずると認められる「オーディム」の称呼も無理なく一気に称呼し得るものといえる。
してみれば、本件商標は、その構成中の「AUDi」の文字部分と「M」の文字部分とに分離して、「AUDi」の文字部分のみを抽出して観察すべきものではなく、構成全体をもって一体不可分の造語を表したと理解・認識されるとみるのが相当である。
上記に関し、申立人は、本件商標は、その構成中の「i」の文字部分が小文字で、かつ、赤色が施されているから、「AUDi」の文字部分と「M」の文字部分とに分離され、よって、本件商標は、著名なAudi商標と欧文字1字「M」とを結合した商標である旨主張する。
そして、後記(2)認定のとおり、引用商標1及び引用商標2並びにこれらの商標中の「Audi」の文字部分(Audi商標)が、申立人の業務に係る自動車を表示するものとして、本件商標の登録出願日(平成26年9月18日)及び登録査定日(平成27年1月8日)の時点において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたことは認め得るところである。しかし、そもそも本件商標に関し、その構成中の「i」の文字部分が小文字で、かつ、赤色が施されていることをもって、何故に本件商標を「AUDi」の文字部分と「M」の文字部分とに分離すべきとする根拠となり得るのか判然としないばかりか、本件商標における「AUDi」の文字部分が、綴りだけをみればAudi商標と同一であるとしても、本件商標は、前記認定のとおり、構成全体をもって一体不可分の商標と把握・認識されるものであり、かつ、その指定商品との関係から「audio(オーディオ)」に関連する語であるとの印象を与えるものである。これに対し、Audi商標は、語頭の「A」のみを大文字で表し、その他の文字を小文字で表した上に、文字全体に赤色を施し、かつ、「d」及び「i」の文字部分を特徴のある書体で表したものであって、自動車を取り扱う分野の取引者、需要者は、これらの特徴を記憶して、「アウディ」との称呼をもって、申立人の業務に係る自動車の商標として把握・認識するといえる。してみると、本件商標は、その構成中に「AUDi」の文字部分が含まれているとしても、Audi商標と外観、称呼及び需要者に与える印象において全く異なるものであるから、その構成中の「AUDi」の文字部分のみが商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることはできない。したがって、上記に関する申立人の主張は、前提において誤りがあり理由がない。
以上のとおりであり、その他、上記構成よりなる本件商標において、「AUDi」の文字部分のみを抽出すべき理由は存在しない。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「オーディム」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生じない造語よりなるものと認めることができる。
イ 引用商標1
引用商標1は、別掲(2)のとおり、金属様の4つ輪を、それぞれの一部を他の輪に重ねるように横に連結した図形と「Audi」の文字とを組み合わせた構成よりなるものであるところ、その構成中の図形部分は、特定の称呼、観念が生ずるものではないから、引用商標1に接する取引者、需要者は、称呼しやすい「Audi」の文字部分を捉えて、これより生ずる「アウディ」の称呼をもって商品の取引にあたる場合が多いといえる。
してみると、引用商標1は、その構成中の「Audi」の文字部分より「アウディ」の称呼を生ずるものであって、該文字は、特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認める。
ウ 本件商標と引用商標1との対比
(ア)外観
本件商標と引用商標1は、それぞれ別掲(1)、別掲(2)のとおりの構成よりなるものであり、その外観は明らかに相違するものであるから、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上互いに紛れるおそれはない。
(イ)称呼
本件商標より生ずる「オーディム」の称呼と引用商標1より生ずる「アウディ」の称呼は、構成する音の数・音質・音感等の差異により、それぞれを全体として称呼した場合においても、その語調、語感が著しく相違したものとなり、称呼上互いに紛れるおそれはない。
(ウ)観念
本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生ずるものではないから、観念上比較することはできない。
(エ)したがって、本件商標と引用商標1は、その外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性ついて
申立人の提出した証拠によれば、申立人は、1909年に設立された自動車の製造販売を業とするドイツの法人であって、その製造販売に係る自動車(以下「申立人商品」という。)には、主として引用商標1及び引用商標2が表示されていること、申立人商品の我が国における販売活動は、1967年(昭和42年)より始まり、その新規登録台数は、2008年(平成20年)に16,040台であり、2014年(平成26年)には31,413台となり、我が国における輸入乗用車中、第4位の実績があったこと(以上、甲5〜甲10)、などを認めることができ、引用商標1及び引用商標2並びにこれらの商標中の「Audi」の文字部分(Audi商標)は、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたことを認めることができる。
しかしながら、前記(1)認定のとおり、本件商標は、構成全体をもって一体不可分の造語商標を表したと把握・認識されるものであって、その構成中の「AUDi」の文字部分のみが独立して認識されるものではなく、引用商標1及び引用商標2並びにAudi商標とは非類似の商標である。また、引用商標3は、「Audi」の文字からなるものであり、前記引用の各商標と同様にして、本件商標と引用商標3とは、非類似の商標である。
そして、本件商標の指定商品は、前記のとおり、オーディオ関連の商品を主とする電気通信機械器具であり、自動車とは、商品の用途、品質、構造等において大きく異なるばかりか、生産者、流通系統、販売場所等も明らかに異なる商品である。仮に本件商標が、申立人主張のとおり、電気通信機械器具中の車載用の商品に使用されるものであるとしても、上記のとおり、電気通信機械器具と自動車とは、商品そのもの、あるいは、製造部門、流通系統等を明確に異にするものであるから、需要者層が一致するとしても、当該需要者においても、同一の生産者により流出した商品であるとの認識はないものといえる。
してみると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品について、申立人又は申立人と業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する商標と認めることはできない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。