Trademark Appeal Case
称呼類似と著名商標
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2015−900174(T2015−900174/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5744866号商標(以下「本件商標」という。)は,「PUFFWARM」の欧文字と「パフウォーム」の片仮名を上下二段に書してなり,平成26年10月22日に登録出願され,第22類「織物用化学繊維,織物用無機繊維,衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿,編みひも,真田ひも,のり付けひも,よりひも,綱類,網類(金属製のものを除く。),布製包装用容器,雨覆い,天幕,登山用又はキャンプ用のテント」,第23類「糸」,第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製椅子カバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳」及び第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同27年2月2日に登録査定,同年2月27日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第738415号商標(以下「引用商標」という。)は,「PUFFA」の欧文字を書してなり,2000(平成12)年7月6日に国際商標登録出願,第18類「Articles made of leather or imitation leather; articles of luggage; bags and holdalls; handbags; shoulder bags, wallets, purses, card cases, document cases, briefcases and belts; articles of saddlery and harness, umbrellas, parasols, walking sticks and shooting sticks (included in this class).」及び第25類「Boots, shoes, slippers and sandals; horse riding clothing.」を指定商品として,2002(平成14)年1月11日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第115号証(枝番号を含む。)を提出した。(以下「甲第○号証」の表示は,「甲○」と簡略する。)
1 申立人について
(1)申立人の企業概要
ア 申立人が使用する「PUFFA」(以下,引用商標のほか,英国等で登録を受けた「PUFFA」,「Puffa」又は「puffa」の文字からなる各商標及び図形と「Puffa Limited」の文字とを結合してなる商標(甲20〜甲33)をまとめて「申立人商標」という。)は,オックスフォード英英辞典(電子版)に掲載され,正に英国文化と一体化した商標と認識されている。
イ 申立人は,英国において40年以上にわたり,時代に左右されない商品スタイル(ジャケット)を提供し続け,これまでに世界的なスーパーモデル,スポーツ選手やミュージシャンなどに自社商品を提供してきた。申立人商標は,「ペニー・ロジャーズ」によって考案され,第1号の商品は,古いケワタガモのダウンのキルトから製作された(1973年)。
ウ 申立人商標を付した「ジャケット」(ダウンジャケット,ウール製ジャケット,キルトジャケット等)は,僅か数年で好評を博し英国において誰もが持つマストアイテムとなり,このころから英国王室,英国スポーツ選手等の有名人も身につけるようになった(1975年)。
エ 申立人は,F1グランプリチーム,オリンピックの英国アルペンスキーチーム,英国のスカイダイビングチームのスポンサーになり,競技者は申立人商標を付した「ジャケット」を身につけて活躍したことから,申立人商標は,世界的に広く知られるようになっていった(1980年)。
オ 英国王室の故ダイアナ妃やウィリアム王子,ヘンリー王子が,しばしば,「PUFFA」を付した「ジャケット」を着用されていた(1983年)。
カ 申立人は,2013年には創立40周年を祝って「ハリス・ツイード」とコラボレーションを行っている(甲3,甲3の2)。
(2)申立人商標は英国では著名商標
申立人商標は,英英辞典「Oxford Dictionaries」で「puffa」は,「英国の商標 ジャケットのひとつ。」(British trademark: A type of padded jacket)と,英英辞典「Collins」で「puffa Jacket」は,「暖かいキルトジャケット」(a warm quilted and padded jacket)と掲載(甲4,甲5)され,英国では商品「ジャケット」の普通名詞と思われるほどに広く知れ渡っている。
(3)申立人の販売形態
ア 申立人は,イギリスとアイルランドに60店舗以上を展開するイギリスの百貨店グループ,「HOUSE OF FRASER(ハウスオブフレーザー)」で自身の「ジャケット」等を対面による販売を行っている(甲6,「Puffa At Retail」の1頁)。
イ 申立人は,前記「HOUSE OF FRASER(ハウスオブフレーザー)」のオンラインショッピングや,「ASOS(エイソス)」,世界20力国以上で展開するイギリスのファッション小売店「TOPSHOP(トップショップ)」の公式ブログ「INSIDE−OUT(インサイドアウト)」,オンライン衣料品小売業者「NEXT(ネクスト)」及び「TK MAXX(ティーケーマックス)」のオンラインショッピングを利用して「ジャケット」等の販売を行っている(甲6)。
ウ イギリスとフランスの両国間における会員制ブランド品オンラインショッピングサイト「BrandAlley(ブランドアリー)」でオンラインショッピングを行っている(甲6)。
エ イタリア国の衣類・アクセサリーを販売しているイタリアのオンラインショッピングサイト「YOOX.COM(ユークスドットコム)」でも「ジャケット」等を販売している(甲6)。
オ ロシアのオンラインショッピングサイト「lamoda(ラモーダ)」でも商品の販売をしている(甲6)。
(4)申立人の主だったイベントと販促物
ア 申立人は,2014年1月にドイツのベルリンで開催された「Bread&Butter」なる商品見本市に商品の見本を展示し,また,2015年に「ベルリンファッションウィーク」の期間中に申立人商品の初の春夏コレクションを催している(甲6)。
イ 申立人は,「見本市ピッティ・ウォモ」にて2015年秋冬を出展し,「ブロガー写真」に商品を提供している(甲6)。
ウ 申立人は,2015年の「デイムケリーホルムズトラスト」なる慈善団体支援と協働して募金を集めている(甲6)。
エ 申立人は,商品の販売促進のためにツールとして商品カタログとデジタルブックの提供をしている(甲6)。
(5)申立人のライセンス商品の提供
申立人は,世界的なプロスポーツチームやメーカーに対して自身の「ジャケット」等を提供していることから,申立人商標は,国をまたいで相当数の人々の間で知られていることがうかがえる(甲7〜甲12)。
(6)申立人の広告活動
申立人は,英国を中心に新聞,雑誌,(印刷物,電子媒体)を利用して広告活動を行っている(甲13〜甲15)。
(7)「PUFFA」を愛用する世界の著名人
申立人商標を付した「ジャケット」は,米国及び英国,豪州,ドイツ,メキシコ,スペインもしくは日本国の著名人である俳優,歌手,モデル,プロスポーツ選手,王族,名士等によって愛用されている(甲16)。
(8)申立人商標が著名であることを示唆するその他の雑誌記事
申立人商標は,2009年11月13日発行「FINANCIAL TIMES」(甲17,甲17の2),2010年1月14日発行の「Mail online」(甲18,甲18の2),2011年1月3日発行の「Independent」(甲19,甲19の2)の著名な雑誌に掲載され,申立人商標を付した商品が人気であることを示している。
(9)申立人の各国での登録状況
申立人商標は,世界的に広く知れ渡っており,英国のみならず英国以外の国でも商標の登録を受けている(甲20〜甲33)。
(10)主要国の「YAHOO」による「PUFFA」の検索結果
申立人が登録を受けた国における当該「PUFFA」のみをキーワードとして入力して検索した結果,ヒットしたサイトの上位10件のうち過半数が,申立人のホームページであるか同人の関係するネットショッピングサイトであった(甲34〜甲42)。
(11)申立人の近年の売り上げ概要
申立人の小売販売高は,「2010年:1億7100万円」「2011年:9500万円」「2012年:17億6700万円」「2013年:2億2800万円」「2014年:2億4700万円」で,ここ5年間では年間平均5億円であり,申立人が取り扱う商品が,ほぼ「ジャケット」1種類に限定されていることからすれば,相当の売上高である。
(12)以上,申立人商標は,英国国内では同国内の権威ある辞典に掲載されるほどに著名であることが明らかとなり,また,英国以外の国においても相当に知れ渡っている。
2 申立人商標の日本における使用状況
(1)日本における正式な代理店
日本では,「株式会社グリニッジ」が,申立人の日本の正式な代理店として2015年1月に申立人の商品を取り扱い始めている(甲43,甲44及び甲46)。
(2)日本における本件商標の出願日前における申立人商標の状況
「WEBLIO」では,「PUFFA」の意味として「ジャケットの種類のひとつ。」との掲載(甲47),「英辞郎」では,「PUFFA」の意味として「1973年にイギリスのデザイナーPenny Rogersが作ったダウンのキルトジャケットを中心とするブランド。」の掲載が認められる(甲48)。この他に,「ボイス情報株式会社」が発行の「ライセンスブランド名鑑2015」には,申立人商標の掲載が確認できる(甲49)。
(3)本件商標の出願日前における申立人商標を付した商品の通信販売の事実
上記の辞典や名鑑に掲載されたほか,申立人商標を付した商品は,本件商標の出願日前から,複数の輸入販売によって数多くの日本で販売され,日本において申立人商標は,取引者及び需要者間において「ジャケット」を表す商標として広く知れ渡っていた。
「Google」でキーワードを「PUFFA」と「ダウン」とを入力して検索した結果の上位234件を見てみるに,そのほとんどのサイトが申立人商標を付した商品「ジャケット」に関するものであった(甲50)。
この上位234件のサイトのうち,本件商標の出願日(2014年10月22日)以前から,ネット上において複数の輸入販売業者によって申立人商標が付された商品「ジャケット」が頻繁に販売されていた(甲51〜甲69)。
(4)本件商標の出願日前における申立人商標を付した商品に関する情報についてのブログ掲載の事実
申立人商標が,本件商標の出願日前から多くの需要者間において知れわたっていた(甲70〜甲93)。
(5)以上,申立人商標は,本件商標の出願日前の10年程前から日本国の当該商品に係る需要者及び取引者間において商品「ジャケット」を称する著名な商標であると広く知れ渡っていた。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)商標類否の審査基準
「商標審査基準」(商標法第4条第1項第11号)には,「1.商標の類否の判断は,商標の有する外観,証拠及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない。」とあり,これに続けて具体的な判断の基準として,「4.結合商標の類否は,その結合の強弱の程度を考慮し,例えば,次ぎのように判断するものとする。(1)形容詞的文字(商品の品質,原材料等を表示する文字,又は役務の提供の場所,質等を表示する文字)を有する結合商標は,原則として,それが付加結合されていない商標と類似する(以下,「審査基準(1)」という)。(6)指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がもとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め,原則として他人の登録商標と類似するものとする(以下,「審査基準(6)」という)」と記載されている(甲94)。
(2)本件商標の要部
ア 「PUFF」と「WARM」との結合は強くない
本件商標を構成する文字は,「PUFFWARM」と「パフウォーム」からなるところ,前記欧文字は,比較的に冗長で,当該欧文字の前段を構成する「PUFF」について,英和辞典(甲95)によれば,「擬音語:ふっと吹くこと,ふくれること」等の意味が確認できる。一方,片仮名文字「パフ」の意味を「広辞苑」(甲96)で確認すると「おしろいたたき」の意味が確認できる。しかして,上記意味を有する当該「PUFF」「パフ」に続けて「WARM」「ウォーム」と連続して結合したところで,特定の意味を形成することはない。よって,本件商標を構成する「PUFF」「パフ」と,「WARM」「ウォーム」とは,意味のうえで強く結合しているとはいえない。
イ 「WARM」(ウォーム)の自他商品の識別力は弱い
本件商標の構成中「WARM」と「ウォーム」とは,平均的な日本人なら何人も知見しているありふれた語として認識されているにすぎない。
「Yahoo辞書」で「WARM」「ウォーム」を検索すれば,「適度な熱さの,暖かい,ぽかぽかする」,「暖めること,暖かなこと」の意味が掲載されている(甲97)。次いで,「外来語辞典」や「コンサイス外来語辞典」にて「ウォーム」を検索すれば,類語として「ウォームカラー」の掲載が確認され,「温色,暖色」の意味が確認できる(甲98,甲99)。
加えて,「WARM」もしくは「ウォーム」と,当該商品の普通名詞とが結合した商標について出願されたものの審査の結果,商標法第3条第1項第3号に該当することから拒絶されている(甲100〜甲107)。
以上のことから,「WARM」(ウォーム)は,本件指定商品との関係において品質,用途,機能,形式等を表すにすぎない語であると考えられる。
ウ 本件商標の要部は「PUFF」
以上のことから,当該「WARM」「ウォーム」は,自他商品の識別機能を発揮できないと考えられ捨象され,本件商標の要部は「PUFF」「パフ」に存するものと考えられる。
(3)本件商標の指定商品と抵触する引用商標の指定商品
本件商標の指定商品中の第22類「編みひも,真田ひも,のり付きひも,よりひも,綱類」及び第25類「履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」と,引用商標の指定商品中の第18類「Articles made of leather or imitation leather」(革又は擬革製品)及び第25類「Boots, shoes, slippers and sandals; horse riding clothing.」(ブーツ,靴及び運動用特殊靴,スリッパ並びにサンダル靴及びサンダルげた,乗馬用特殊衣服)とは互いに類似する。
(4)本件商標と引用商標との比照
ア 審査基準(1)の観点から
本件商標は,前述のとおり「WARM」が捨象され,「PUFF」の外観と,「パフ」の称呼が看取される。これに対して,引用商標からは,「PUFFA」の外観と,「パッファ」もしくは「パファ」の称呼が看取される。
本件商標と引用商標とは,外観の点においては,末尾語「A」の有無の差異にすぎず,当該末尾語は見落とされるおそれがある。よって,本件商標と引用商標とは,外観の点において相紛らわしい。
また,称呼の点において両者を比照するに,引用商標からは「パファ」又は「パッファ」の称呼が生じる可能性がある。引用商標から「パファ」と称呼されたときには,本件商標から生じる「パフ」とは,促音「ア」の有無の差異にすぎず,両音は,称呼の点において聴取区別がつけがたく相紛れるおそれがある。本件商品と引用商品とは,前記の商品について類似する。よって,本件商標と引用商標とは互いに類似する。
イ 審査基準(6)の観点から
本件商標は,申立人商標と1文字違いの「PUFF」と,「WARM」とが結合した商標で外観上一体に表されている。
当該「PUFF」と,引用商標を含む申立人商標から看取される「PUFFA」とは,看者の注意が最も行き届かない末尾の「A」の有無の差異にすぎない。そして,引用商標を含む申立人商標は,商品「ジャケット」を表示するものとして英国のみならず世界的に広く知られている。そうすると,需要者及び取引者が本件商標から「PUFF」を看取したならば,たちどころに申立人商標を直感・想起すると考えられ,そうであれば末尾音「A」の有無の差異などは,取るに足らないささいな相違にすぎず,需要者及び取引者の注意から欠落してしまう可能性は極めて高いと考えられる。
審査基準(6)の観点からみても,本願商標と引用商標とは類似する。
ウ 以上から,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号について
本件商標権者は,世界的なアクリル繊維・アセテート繊維のメーカーである。一方,申立人商品は「ジャケット」であり,これらの商品は互いに密接に関係する商品であって,需要者側から見れば,原料メーカーとしての本件商標権者と,最終商品の販売者としての申立人との区別は,ほとんどつけがたいと考えられる。
申立人と関連する商品を取り扱う本件商標権者は,申立人商標に酷似した「PUFF」の文字の末尾に自他商品の識別力を発揮しえない「WARM」の文字を結合して本件商標としている。
このような本件商標は,申立人商標と極めて相紛らわしく,申立人商標の顧客吸引力にフリーライドを意図されているとしか考えられない。
しかるに,本件商標を申立人と何ら関係を有しない本件商標権者が,指定商品に独占排他的に使用された場合,当該商品市場において多大な混乱を招くことが想定される。
これは,申立人商標を付した商品は,本件商標の出願の何年も前から,特にネットショッピングによって日本国内に相当に流通していることからも明らかで(甲51〜甲93),本件商標の登録を維持される場合,公正な取引秩序に著しい混乱をもたらすことになる蓋然性が高く,また,申立人の日本における正式な商取引を阻害し,国際信義に反し公の秩序を害する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
5 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は,「WARM」が捨象され「PUFF」の外観と「パフ」の称呼が看取される。本件商標の「PUFF」は,外観の点において申立人商標の「PUFFA」と極めて相紛らわしい。また,申立人商標は,商品「ジャケット」を表示するものとして英国のみならず世界的に広く知れ渡っている。そして,申立人商標は,日本国内においても商品「ジャケット」を表すものとして本件商標の出願日前から相当に商取引がなされている。この商品「ジャケット」の原料は,本件商品のうち原料繊維を利用して製造され,商品間において密接な関係を有している。
そうすると,本件商標権者が本件商標を自己の業務に係る商品に使用されたときに,その商品の接する需要者及び取引者は,その商品が申立人もしくは申立人と関連のある事業者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所について誤認することとなる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
6 商標法第4条第1項第19号について
申立人商標は,商品「ジャケット」を表示するものとして英国のみならず世界的に広く知れ渡っている。そして,本件商標構成中の「PUFF」は,外観の点において申立人商標と極めて相紛らわしい。
よって,本件商標は,審査基準の「一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること。」に該当する。
申立人商標は,申立人の会社商号に由来しているとはいえ,これは造語である。このことは,「PUFFA」の意味について複数の英英辞典や,英和辞典に,申立人の商品を表示する商標である旨の記載の他に何の掲載が認められないことから明らかである(甲4,甲5,甲47及び甲48)。
よって,本件商標は,他人の周知な商標(申立人商標)を不正の目的をももって使用するものと推認される。
本件商品と申立人商品とは,互いに密接に関係する。また,本件商標者は,申立人商標の存在について知ることが十分に可能であったと考えられる。このような状況の中,本件商標権者は,申立人商標が発揮する顧客吸引力にフリーライドするとともに,申立人の出所表示機能を希釈化し名声を毀損する目的で先取り的に本件商標登録出願を行ったものであると考えられる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
7 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当し商標登録を受けることができないものであるから,商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
第3 当審の判断
1 申立人商標の周知・著名性について
(1)証拠及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。
ア 申立人商標「Puffa」は,英英辞典である「Oxford Dictionaries」に,「British trademark: A type of padded jacket」(英国の商標:パッド入りのジャケットのひとつ。)と掲載されている(甲4)。
イ 申立人は,英国において40年以上にわたり,申立人商標を付した「ジャケット」を提供し続けており,1975年頃から英国王室,英国スポーツ選手等の有名人も同ジャケットを身につけるようになり,また,1980年には,F1グランプリチーム,アルペンスキーチーム,スカイダイビングチームの各スポンサーになり,競技者が同ジャケットを身につけて活躍した(甲3)。
ウ 申立人の販売形態は,イギリスとアイルランドに60店舗以上を展開するイギリスの百貨店グループ,「HOUSE OF FRASER(ハウスオブフレーザー)」で自身の「ジャケット」等を対面による販売のほか,前記「HOUSE OF FRASER(ハウスオブフレーザー)」,「ASOS(エイソス)」,世界20力国以上で展開するイギリスのファッション小売店「TOPSHOP(トップショップ)」の公式ブログ「INSIDE−OUT(インサイドアウト)」,オンライン衣料品小売業者「NEXT(ネクスト)」及び「TK MAXX(ティーケーマックス)」,イギリスとフランスの両国間における会員制ブランド品オンラインショッピングサイト「BrandAlley(ブランドアリー)」,イタリアのオンラインショッピングサイト「YOOX.COM(ユークスドットコム)」及びロシアのオンラインショッピングサイト「lamoda(ラモーダ)」のオンラインショッピングを利用して「ジャケット」等の販売を行っている(甲6)。なお,甲6には,申立人商標と共に,中にポリエステル,羽毛等などを挟んだ生地を装飾を兼ねて,四角く刺し子に縫ったキルト状のジャケット,ベスト等(以下,「申立人商品」という。)の写真が多数掲載されている。
エ 申立人は,「Bread&Butter」(2014年1月にドイツのベルリンで開催),「ベルリンファッションウィーク」(2015年),「見本市ピッティ・ウォモ」(2015)なる商品見本市に商品の見本を展示した(甲6)。また,英国を中心に新聞,雑誌,(印刷物,電子媒体)を利用して広告活動を行っている(甲13,甲14,甲15)。なお,甲13,甲14及び甲15には,申立人商品の写真が多数掲載されている。
オ 申立人は,世界的なプロスポーツチームやメーカーに対して,申立人商品を提供し(甲7〜甲12),申立人商品は,米国及び英国,豪州,ドイツ,メキシコ,スペインないし日本国の著名人である俳優,歌手,モデル,プロスポーツ選手,王族,名士等によって愛用されている(甲16)。
カ 申立人商標は,「FINANCIAL TIMES」(2009年11月13日発行),「Mail online」(2010年1月14日発行),「Independent」(2011年1月3日発行)で紹介され(甲17〜甲19),英国のみならず英国以外の国でも商標の登録を受けている(甲20〜甲33)。また,申立人が登録を受けた国における「YAHOO」の検索エンジンによって,「PUFFA」をキーワードとして入力して検索した結果,上位10件のうち過半数が,申立人のホームページであるか,同人の関係するネットショッピングサイトであった(甲34〜甲42)。
キ 申立人の近年における売上高(小売販売高)は,「2010年:1億7100万円,2011年:9500万円,2012年:17億6700万円,2013年:2億2800万円,2014年:2億4700万円」とのことである。
ク 日本においては,「株式会社グリニッジ」が,正式な代理店として2015年(平成27年)1月に申立人の商品を取り扱い始めた(甲43,甲44,甲46)。
ケ 2006年(平成18年)から2014年(平成26年)にかけて,申立人商標及び「パッファ」の片仮名は,申立人商品について,インターネットのショッピングサイト等に申立人商品の写真とともに掲載されている(甲50〜甲56,甲58〜甲63及び甲66〜69)。また,2006年(平成18年)から2013年(平成25年)にかけて,インターネット上のブログにおいても申立人商標及び「パッファ」の片仮名とともに申立人商品が紹介されている(甲57,甲64,甲66,甲70〜甲91)。しかしながら,申立人商品の我が国における市場比率(シェア)及び売上高等についての証拠はない。
(2)前記(1)で認定した事実によれば,
ア 引用商標は,英国の英英辞典(Oxford Dictionaries等)にパッド入りのジャケットの商標として掲載され,申立人は,40年以上にわたり,申立人商品を提供し,英国王室,英国スポーツ選手等もそれを使用している。そして,英国及びアイルランドで60店舗以上を有する百貨店での対面販売やオンラインショッピングによる販売及び英国を中心とする新聞・雑誌への広告宣伝(甲13〜甲15)を行っていることが認められ,引用商標は,申立人商品を表示する商標として本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に,英国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと推認できる。
イ また,英国以外の外国において,世界的なプロスポーツチームやメーカーへ申立人商品を提供していること(甲7〜甲12),米国等の著名人によって使用されていること(甲16)が推認できる。
しかし,これらは,引用商標が本件商標の登録出願前に外国において使用されていた事実を間接的に示すものにすぎず,上記著名人の間における引用商標の普及度について一定の推定をすることができても,一般的な需要者層における引用商標の普及度は,推し量ることができないものである。
そして,英国以外のショッピングサイトでの販売は認められるとしても,商品「ジャケット」の市場比率(シェア)なども明らかではないし,外国の雑誌・ネット記事に引用商標とともに申立人商品が掲載(甲17〜甲19)されているとしても,2009年(平成21年)11月から2011年(平成23年)1月にかけてのわずか3件の紹介記事のみであるから,これらの証拠のみをもって引用商標が申立人商品について,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,英国以外の外国の需要者の間に広く認識されているということはできない。
ウ 申立人商品は,本件商標の出願日(平成26年10月22日)前の平成18年から同26年9月にかけて,我が国において,申立人商標及び「パッファ」の片仮名とともに,インターネットのショッピングサイト等(甲50〜甲56,甲58〜甲63)及びブログにおいて紹介されていることからすると(甲57,甲64,甲66,甲70〜甲91),平成18年から我が国国内において申立人商品が販売されていたことは推認できる。
しかしながら,申立人の提出に係る前記証拠は,インターネットのショッピングサイト等及びブログへの申立人商標及び「パッファ」の片仮名とともに申立人商品の掲載が認められるのみで,我が国における申立人商品の我が国における市場比率(シェア),売上高や売上数などは明らかではないから,申立人商標及び「パッファ」の片仮名が,我が国において需要者に広く認識されているものとはいうことができない。
エ さらに,申立人は,近年における売上高(小売販売高)が,2010年が1億7100万円,2011年が9500万円,2012年が17億6700万円,2013年が2億2800万円,2014年が2億4700万円と主張しているところ,これが我が国及び外国において如何なる規模に当たるのかも定かでなく,申立人のこの販売実績をもって市場比率(シェア)等の把握は容易でない。
オ そうすると,引用商標の周知・著名性は,甲各号証をもってしては,英国におけるジャケットの取引者,需要者など,限られた範囲にとどまるものといわなければならず,申立人商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国又は英国以外の外国において,申立人商品を表すものとして,取引者,需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,上記第1のとおり,「PUFFWARM」及び「パフウォーム」の文字からなるところ,下段の「パフウォーム」が上段の「PUFFWARM」の読みを特定したものと無理なく認識できるものであり,それぞれの構成各文字も,同じ書体,同じ大きさ,等間隔をもって表され,全体としてまとまりよく表されているものであり,外観上,「PUFF」及び「パフ」の文字部分又は「WARM」及び「ウォーム」の文字部分が,他の部分から独立して強調されているものとはいえない。
また,本件商標全体から生ずる「パフウォーム」の称呼も,長音を含め5音で構成され,格別冗長というべきものではなく,無理なく一連に称呼し得るものである。
そして,本件商標の構成中の「PUFF(パフ)」の文字が,「おしろいたたき」の意味を有し,「WARM(ウォーム)」の文字が,「暖かい,ぽかぽかする」の意味を有する語として,いずれも我が国において親しまれたものといえるものの,これらを組み合わせてなる本件商標は,直ちに特定の観念を生じない一種の造語として看取されるものであって,いずれかの文字部分のみが着目され記憶されることはなく,全体が不可分一体のものとして,取引者,需要者に記憶されるというのが相当である。
してみれば,本件商標は,「PUFFWARM」ないし「パフウォーム」の文字全体で取引に資されるとみるべきであって,「PUFF」ないし「パフ」の文字部分をのみもって取引に資されるというべき特段の事情は見いだせないから,該文字部分のみを捉えた称呼及び観念は生じないというのが相当である。
この点に関し,申立人は,「PUFF(パフ)」と「WARM(ウォーム)」とは,意味上で強く結合しているとはいえないし,「WARM(ウォーム)」が商品の品質,用途,機能,形式等を表すにすぎない語であるから自他商品の識別機能を有しない旨主張している。
しかしながら,本件商標は,特定の観念を有しない不可分一体のものとして認識されるものであり,また,「WARM(ウォーム)」の文字部分が,「温色,暖色」の意味を有するとしても,本件商標のかかる構成態様にあっては,商品の品質,用途等を具体的に表したものと直ちに認識されるものとはいい難い。
そうすると,本件商標は,その構成中の 「PUFF」及び「パフ」の文字部分のみが分離,抽出されるということはできないものであり,他に構成中の「PUFF」及び「パフ」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情を見いだすこともできない。
したがって,申立人の上記主張は,採用することができない。
(2)引用商標
引用商標は,上記第2のとおり,「PUFFA」の文字からなるところ,我が国で親しまれている英語の発音に倣って,「パッファ」の称呼を生じるものというのが相当であり,また,英英辞典には当該語の記載が認められるとしても,我が国において親しまれたものということはできないから,特定の観念を生じさせない造語として認識し把握されるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは,それぞれ,上記第1及び第2のとおりの構成からなるところ,外観においては,判然と区別し得る差異を有するものである。
また,本件商標から生じる「パフウォーム」の称呼と引用商標から生じる「パッファ」の称呼とは,構成音数の明らかな相違に加え,相違する構成音に顕著な差異を有するから,両称呼は,明確に聴別し得るものである。
さらに,観念においては,本件商標及び引用商標は,親しまれた既成の観念を有しないものであるから,本件商標と引用商標とを比較することはできない。
してみれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(4)小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であるから,その指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当するということはできない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は,「PUFFA」の著名性を考慮すれば,「PUFF」は外観上極めて紛らわしいから,商品の出所について誤認する旨主張する。
しかしながら,引用商標は,上記1(2)のとおり,我が国において周知,著名となっているとはいえないものであり,しかも,本件商標と引用商標とは,上記3(3)のとおり,相紛れるおそれない別異の商標というべきものである。
そうすると,本件商標に接する取引者,需要者が,その構成中の「PUFF」の部分を捉え,これを「PUFFA」と誤認,混同するということはできない。
そして,本件商標は,一連の造語として看取されるものである上,その構成中に「PUFFA」を含むものでもないから,これを引用商標「PUFFA」と関連付けてみられるとすべき理由は見当たらず,引用商標「PUFFA」とは別異の出所を表示する商標として看取されるものとみるのが相当である。
してみれば,本件商標をその指定商品について使用しても,これに接する取引者,需要者が引用商標ないしは申立人を連想,想起するようなことはないというべきであり,当該商品が申立人又は同人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく,その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そうすると,引用商標が申立人商品を表示する商標として英国において認識されているとしても,本件商標と引用商標とは,上記3(3)のとおり,類似するところのない別異のものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は,本件商標は,引用商標「PUFFA」に酷似した「PUFF」の文字の末尾に自他商品の識別力を発揮しえない「WARM」の文字を結合したものであり,引用商標の顧客吸引力へのただ乗り(フリーライド)するものであるから,公正な取引秩序に著しい混乱をもたらすことになる蓋然性が高く,申立人の日本における商取引を阻害し,国際信義に反し公の秩序を害する旨主張する。
しかしながら,本件商標は,前記1(2)のとおり,我が国において,取引者,需要者に広く認識されていたものとはいうことができず,また,本件商標を商標権者が使用することが引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)しようとするものであるとする証左はない。
そうとすれば,本件商標について商標権者がその使用をしても,商品の国際的取引秩序を乱すものとはいえず,国際信義に反するものではなく,その構成が,きょう激,卑わい,差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字よりなるということもできないから,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。