Trademark Appeal Case
氏名ローマ字表記の該当性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2015−15350(T2015−15350/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,「yoshio kubo」の文字を横書きしてなり,第25類「レザーコート,レザーブルゾン,ファーコート,ファーブルゾン,被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,平成26年10月30日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『yoshio kubo』の文字を横書きしてなるところ,該文字は,氏名の一つを欧文字で表示したものとみるのが相当であり,かつ,その者の承諾を得ているものとは認められない。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は,上記1のとおり,「yoshio kubo」の文字を横書きしてなるものである。
ところで,欧文字表記の名刺の氏名の記載や,クレジットカードに表示されている氏名の欄には,日本人の氏名の読みが名及び氏の順にローマ字で表記(以下「ローマ字表記」という。)されているように,氏名をローマ字表記することが社会全般において広く行われている。
そうすると,「yoshio kubo」の文字からなる本願商標に接する取引者,需要者は,これを氏名のローマ字の小文字表記と容易に認識すると判断するのが相当である。
そして,別掲のとおり,「yoshio kubo」に相当する者が,現在において存在することが認められる。
してみれば,本願商標は,その構成中に他人の氏名を含む商標といわなければならず,かつ,その他人の承諾を得ているものとは認められない。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 請求人の主張について
(1)請求人は,商標法第4条第1項第8号に規定する「他人の氏名」とは,使用する者が恣意的に選択する余地がなく,特定人を指し示す法令上の正式な氏名というべきであって,日本人の氏名の場合,戸籍簿で確定される氏名が,同号所定の「(他人の)氏名」に当たるというべきであるとし,その上で,原審で引用された他人の氏名はいずれも漢字で表された「久保美雄」氏等であり,これが戸籍簿上の氏名でもあると推認されるところ,本願の構成は全て欧文字の小文字で表された「yoshio kubo」であって「久保美雄」等ではなく,また,ローマ字は戸籍の氏名に使用できないものであり,該文字は戸籍簿上の氏名にはあたらないといえるから,本願商標は,同号所定の「他人の氏名」を含む商標とはいえない旨主張する。
しかしながら,上記3のとおり,我が国において,氏名をローマ字表記することは,日常一般的に行われており,氏名のローマ字表記に対応する漢字等による表記が一通りでないとしても,呼び方を同じくする氏名は,これをローマ字表記する場合,同一のローマ字で表記せざるを得ないものであり,雅号,芸名若しくは筆名とは異なり,恣意的に選択し得るものではない。
また,氏名のローマ字表記は,特定の氏名と結び付かないものではなく,そのローマ字表記による氏名に接した者は,それと同じ呼び名の者を認識するのであり,それと同じ呼び名をする者は当該表記を自己の氏名と認識するのである。
そうすると,氏名のローマ字表記であっても,他人がそれを商標として採択使用することは,そのローマ字表記された氏名の者の人格的利益を害するものといわなければならず,人格的利益の保護という同号の趣旨からも,氏名のローマ字表記も同号に規定する「氏名」に該当するというべきである。
(2)請求人は,仮に氏名のローマ字表記が「他人の氏名」に該当するとしても,その表し方としては,我が国においては依然として氏から名の順(氏名)に表すことが一般的であるから,「kubo yoshio」という構成でなければならないはずであること,また,氏名を名から氏の順に記載する場合が社会全般において広く行われているとしても,名から氏の順に氏名をローマ字で表記する場合は,その表し方として,氏と名の第1文字目をそれぞれ大文字で表記し,それに続く文字を小文字で表記するか,氏を全て大文字にした表示が一般的といえること,さらには,本願商標の構成文字全体に共通するレタリングが施され,バランスよく組み合わされてなることによって,全体で特異に表現された外観上の特徴をもって見る者に強い印象を与えるとみるのが相当であることからすると,本願商標は「yoshio kubo」と,全て欧文字の小文字より構成されてなるものであり,独特なレタリングが施されていることも相まって,これに接する取引者,需要者をして,一義的に他人の氏名を表示したものを想起させるものとはいえないと判断するのが相当であるから,本願商標は,他人の氏名を表示したものとはいえない旨主張する。
しかしながら,我が国においては,氏名のローマ字表記の「氏」及び「名」の記載の順番については,上記3のとおり,名,氏(姓)の順番で表記されることが普通に行われているところであるし,表記の際に使用する文字も大文字・小文字について統一的な決まりはなく,自由に使用しているのが実情である(例えば,クレジットカードにおいては,名,氏(姓)の順番で全てが大文字で表記されるのが通常。)。
そして,本願商標を通常の注意力を備えた者が一見すれば,「ヨシオ クボ」と発音される氏名をローマ字で小文字表記したものと簡単に認識できるのであるから,本願商標は,氏名をローマ字表記したものといわざるを得ない。
また,請求人は,本願商標に独特のレタリングが施されているとも主張するが,本願商標の構成文字には,さほど独特なレタリングが施されているとは認められず,普通に用いられる態様の文字の範囲を脱しているとはいえない。
(3)請求人は,「yoshio kubo」は,「久保嘉男」氏がデザインする商品のブランド名として,需要者等の間において相当程度の周知性を有するから,本願商標に接する取引者・需要者をして,人格的利益の保護対象となる特定の者の氏名を認識させるものではなく,同氏がデザインする商品のブランド「yoshio kubo」を想起させるものであるというのが相当である旨主張する。
しかしながら,商標法第4条第1項第8号の趣旨は,他人の氏名等に対する人格的利益を保護することにあり(最高裁 平成15年(行ヒ)第265号判決,平成16年(行ヒ)第343号判決),「ある名称を有する他人にとって,その名称を同人の承諾なく商標登録されることは,同人の人格的利益を害されることになるものと考えられるのであり,この場合,出願人と他人との間で事業内容が競合するかとか,いずれが著名あるいは周知であるといったことは,考慮する必要がない」(知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10309号判決)と解されるから,別掲のとおり他人が存在することからすると,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当すると判断するのが相当である。
(4)さらに,請求人は,ローマ字により表された人名からなる商標についての登録例及び審決例を示し,審査の公平の観点から,本願商標についても同様の判断をすべき旨主張する。
しかしながら,請求人が挙げる例は,その構成及び態様等が異なり,事案を異にするものであり,かつ,具体的事案の判断においては,過去の登録例に拘束されることなく判断されるべきである。そして,本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当することは上記3のとおりであるから,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。
5 むすび
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当するものであるから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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