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Trademark Appeal Case

イオンチャネル開口薬の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2014−230(T2014−230/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「イオンチャネル開口薬」の文字を標準文字で表してなり、第5類「眼科用剤」を指定商品として、平成24年11月22日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同25年5月30日付け手続補正書により、第5類「緑内障・高眼圧症治療用薬剤」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、『イオンチャネル開口薬』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、『イオンチャネル』の文字が『興奮性、非興奮性細胞の生体膜を数回貫通する構造をもつタンパク質』を意味する語として用いられているものであり、『開口』の文字が『外に向かって穴が開くこと。』を意味する語であることから、その構成全体として『イオンチャネルを開口させる薬』の意味合いを容易に理解させるものである。そして、薬剤を取り扱う業界においては、近年、イオンチャネルに関する研究が進んでいるところ、血管拡張作用等の効果を有するものとして、イオンチャネルを開口させる薬物が開発されている実情があり、また、血管循環器系以外にも、例えば抗てんかん薬や泌尿器系の薬剤等の様々な医療分野においても、イオンチャネルを開口させる薬剤が研究、開発されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者、取引者は、上記意味合いの薬剤であることを認識するにすぎず、単に商品の品質、効能を普通に用いられる方法で表示するにとどまり、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は、前記1のとおり、「イオンチャネル開口薬」の文字よりなるところ、その構成は、その指定商品との関係及び文字種の相違から、「イオンチャネル」の片仮名、「開口」の漢字及び「薬」の漢字を結合してなるものであると、直ちに看取されるものである。

そして、本願商標の構成中、「イオンチャネル」の文字は、例えば、「生化学辞典第4版」(株式会社東京化学同人発行)の記載を始めとした、別掲1のとおりに記載されている内容からすれば、イオンチャネルとは、概ね「興奮性、非興奮性細胞の生体膜を数回貫通する構造をもつタンパク質で、生体膜内外に異なる濃度で存在するイオンを直接エネルギーを使わず通過させる機能をもち、情報伝達に重要な役割を担う分子である。」といえるものであり、本願の指定商品に係る取引者、需要者においては、一般に理解、認識される技術用語であるというのが相当である。

また、本願商標の構成中、「開口」の文字が「外に向かって穴が開くこと」(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)の意味を有するものであることから、「開口薬」の漢字部分は、「開口させる薬」程の意味合いを認識させるものであり、近年、イオンチャネルに関する研究が進んでいるところ、血液循環器系の分野において、血管拡張作用等の効果を有するものとして、イオンチャネルを用いて開口させる薬物が開発されている実情や泌尿器系等の分野においてもイオンチャネルを用いて開口させる薬の開発が行われ、血管拡張作用の効果を有することは、原審で説示した別掲2の情報からもうかがい知ることができる。

さらに、本願の指定商品である「緑内障・高眼圧症治療用薬剤」の分野においても、請求人の取扱に係るものも含め、例えば、別掲3のような記事情報を見いだすことができる。

その記事情報からすると、「緑内障」は網膜神経節細胞が死滅する進行性の病気であり、その治療の基本は眼圧を下げることで視野障害の進行を停めるという方法が行われている。そのために、目の中を循環する液体(眼球を満たしている液体)のことで、毛様体という組織で作られて、虹彩の裏を通過して前房に至り、線維柱帯を経てシュレム管から排出され、眼外の血管へ流れていくという定まった経路で循環している「房水」の産生を抑える効果や房水の流出を促す効果によって、眼圧を低下させ、一定の圧力(眼圧)が眼内に発生し眼球の形状が保たれ、病気の進行を抑えることをうかがい知ることができる。そして、「房水」の産生については、イオン濃度による浸透圧差が作用しており、イオンを発生させるイオンチャネルに作用することで眼圧の調整が図られることがうかがわれる。

そうとすれば、上記実情よりして、本願商標をその指定商品「緑内障・高眼圧症治療用薬剤」に使用するときには、これに接する取引者、需要者は、本願商標を構成する「イオンチャネル」及び「開口薬」の各文字をそれぞれ上記の意味合いで把握、理解し、構成文字全体として、当該商品が「イオンチャネルを用いて開口させる薬」であること、すなわち、「緑内障において房水の産生や流出を改善する薬」であることを表示する語として理解するにとどまり、自他商品の識別標識としては認識し得ないものというのが相当であるから、本願商標は、単に商品の品質、効能、用途を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものといわざるを得ない。

(2)請求人の主張について

ア 請求人(出願人)は、本願商標は、「イオンチャネル開口薬」の文字をまとまりよく一体的に構成してなるものであり、仮に「イオンチャネル」の語および「開口」の語がそれぞれ指摘の意味合いを有するとしても、まとまりよく構成された本願商標それ自体は、特定の意味合いを有するものとして一般的に通用している熟語ではないから、本願商標は、新しく生成された熟語、すなわち造語として認識するのが自然であり、一定の商品の内容を直ちに理解することはできない旨主張する。

しかしながら、「イオンチャネル開口薬」の語は、それを構成する各単語の語義から上記意味合いを有する複合語として認識されるものであって、本願商標を指定商品に用いた場合には、当該商品が「イオンチャネルを用いて開口させる薬」であることを表したにすぎず、かつ、商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきものであるから、本願商標が単に商品の品質等を認識させるものである以上、それを登録することはできない。

イ また、請求人は、「イオンチャネル開口薬」の文字は、「緑内障・高眼圧症治療用薬剤」の分野において、出願人の他に一切使用されておらず、出願人以外の同業者の商品を表示するものとして、不特定の取引者又は需要者により使用されていないものであり、数ある同分野の薬剤の中で、「イオンチャネル開口薬」の表示を使用しているものは、出願人の製造販売に係る「レスキュラ点眼液」のみである旨主張する。さらに、請求人は、出願人以外の同業者によって使用されていないことを考慮すると、仮に本願商標を登録させたとしても、特定の業者の営業活動を阻害するとか、市場流通の秩序に何ら混乱や悪影響を与えるおそれはない旨主張する。

しかしながら、上記(1)(別掲3も参照)のとおり、緑内障を取り扱う業界における取引の実状からすれば、本願商標は、全体として「イオンチャネルによって眼圧を下降させる商品(薬)」であることを表示する語として容易に理解されるものといわなければならない。現に、別掲4のとおり、薬効分類において「イオンチャネル開口薬,緑内障・高眼圧症治療薬」の表示が使用され、その分類中の製品として、出願人の薬品「レスキュラ点眼液」を始め、その他の製造会社数社の「イソプロピルウノプロストン点眼液」が存在することからすれば、特定の業者の営業活動を阻害するとか、市場流通の秩序に何ら混乱や悪影響を与えるおそれはないということはできない。

ウ したがって、上記ア及びイの点に関する請求人の主張は採用することができない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、これをその指定商品「緑内障・高眼圧症治療用薬剤」について使用しても、単にその商品の品質、効能、用途を表示するにすぎないものといわざるを得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、これを登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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