Trademark Appeal Case
称呼の類似性と著名性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2015−900206(T2015−900206/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5750450号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおり,「ISLEY」の文字を横書きし,末尾の「Y」の文字の右肩に「*」(アスタリスク)を配した構成からなり,平成26年5月29日に登録出願,第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料」を指定商品として,同27年2月17日に登録査定,同年3月20日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第1873095号商標(以下「引用商標」という。)は,「シスレー」の文字及び「SISLEY」の文字を二段に横書きしてなり,昭和58年9月21日に登録出願,第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同61年6月27日に設定登録され,その後,平成18年11月1日に,指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」とする指定商品の書換登録がされたものであり,現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであると主張し,その理由を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の著名性
申立人であり,引用商標の商標権者であるセ− エフ ウ− ベ− シスレ−は,1976年にウベール・ドルナノが設立し,化粧品の製造販売を行っている,フランス国の法人である。そして,申立人は,引用商標と社会通念上同一である,「sisley」の文字及び「シスレー」の文字よりなる各商標を化粧品について使用している。
「sisley」は,わずか四半世紀の間に,美容とラグジュアリーブランドの業界で最もプレステージのあるブランドの一つに成長し,高級化粧品という分野でリーダー的役割を担っている。ハイグレードな化粧品であるsisley商品は,需要者が満足できるカウンセリングが行われる超高級販売店のみ,すなわち,大手百貨店,化粧品専門店等で販売されている。各国市場において,sisleyは,しばしば最もよく売れるブランドであり,常にトップブランドとして名乗りを上げている。現在世界80か国以上で,sisleyブランドの化粧品が販売されている(甲3)。我が国では,子会社のシスレージャパン有限会社が,sisleyブランドの化粧品の輸入・販売を事業内容として,平成5年に設立され,平成12年に株式会社に組織変更された。本件商標が登録出願された平成26年には,北海道から九州に至るまで約40の店舗を展開し,シャンプー,スキンケア用・ボディケア用・ヘアケア用化粧品,香水等,多種多様な商品を扱っている(甲4及び甲5)。そして,伊勢丹及び阪急百貨店のウェブサイトにおいても,オンラインで販売している(甲6及び甲7)。
また,化粧品で築いた信用を基盤に,sisleyブランドの被服も販売されている(甲8)。メンズとウィメンズのコレクションは,スポーティなウェアやエレガントなドレスまで幅広いアイテムで構成され,世界中のファッションマニアから注目を集めている(甲9)。
申立人は,sisleyブランドの商品の広告を多くの雑誌に掲載し(甲10の1ないし9),その商品は,品質の良さから,頻繁に雑誌に取り上げられている。例えば,「シスレー/スプレミヤ アイ」が「25ans 2014年2月号」でキラキラ眼ヂカラ部門1位,「美的 2014年1月号」でベストコスメ・アイクリーム部門1位を獲得した(甲10の9及び10)。
以上のとおり,sisleyブランドの商品について,申立人が大規模に広告宣伝を行い,雑誌において需要者から高い評価を得た商品として取り上げられた結果,引用商標には,高品質,高級感等の信用が形成されている。
したがって,引用商標は,本件商標の登録出願の時には既に,申立人の業務に係る商品である化粧品を表示するものとして,我が国においてはもちろんのこと,世界的に極めて高い信用が形成され著名に至っており,それは登録査定時においても継続していたということができる。
なお,引用商標が,スキンケア化粧品について使用する商標として,平成19年11月には既に,我が国における化粧品の取引者,需要者の間において広く知られており,その著名性が平成20年4月においても継続していたことは,特許庁において認められている(異議2008−900335・甲11)。申立人は,その後も引き続き引用商標を使用した商品を販売し,宣伝広告してきたのであるから,引用商標の著名性は,現在まで継続しているとみるのが自然である。
(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標は,「ISLEY」の文字を横書し,末尾の「Y」の文字の右肩に「*」(アスタリスク)を付したものであり,その構成文字に相応して,「イスレー」の称呼を生じるものである。
他方,引用商標は,「シスレー」の文字及び「SISLEY」の文字を二段に書してなるものであるから,その構成文字に相応して,「シスレー」の称呼を生じるものである。
そこで,本件商標から生じる「イスレー」の称呼と引用商標から生じる「シスレー」の称呼とを比較すると,両者はともに第2音以下の「スレー」の音を同じくし,異なるところは,第1音における「イ」と「シ」の音のみである。そして,「イ」の音は,有声の強母音であり,「シ」音は,その「イ」音に無声の摩擦子音「∫」の結合した音節であるところから,母音「イ」が強く聴取される音である。したがって,両音は,非常に近似した音であり,他の音を同じくする「イスレー」と「シスレー」は,全体として聴き誤るおそれのある類似性の高い称呼といい得るものである。
また,外観をみても,5ないし6文字中,語尾から4文字までの綴りを同じくし,語頭において「I」と「SY」の文字の差異を有するにすぎず,「SLEY」の文字部分に看者の注意が強く惹かれることから,両商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合には,彼此見誤るおそれがある。
さらに,両商標は,いずれも特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められるから,観念上の明瞭な差異により区別されるとはいえない。
したがって,本件商標と引用商標は,看者に近似した印象を与えるものである。
(3)本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品の関連性の程度
引用商標は,せっけん類,スキンケア用・ボディケア用・ヘアケア用化粧品,香水等について使用されている。他方,本件商標の指定商品には,引用商標に係る商品が含まれているほか,これら以外の指定商品も,当該使用に係る商品とは目的,用途,需要者等を共通にする場合が少なくないものといえる。したがって,本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品とは,同一又は類似のものを含め,関連性が高いというのが相当である。
特許庁においても,著名商標がせっけん類,浴用化粧品,スキンケア用・ボディケア用・ヘアケア用・消臭用化粧品,香水等について使用されているものであるところ,これらの商品は,指定商品のすべてである「かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つけまつ毛用接着剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」と関連性の高いものと判断されている(異議2013−900321・甲12)。
(4)混同を生ずるおそれ
以上を総合勘案すると,本件商標を指定商品に使用した場合,これに接する取引者,需要者は,引用商標及びその商標権者であるセ− エフ ウ− ベ− シスレ−を連想,想起し,該商品がセ− エフ ウ− ベ− シスレ−又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く,その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべきである。
4 当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は,別掲のとおり,「ISLEY」の文字とその末尾の「Y」の文字の右肩に「*」(アスタリスク)を配置してなるところ,「ISLEY」の文字部分は独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり,該文字部分より,「イスレー」又は「アイスレー」の称呼を生じるものである。また、「ISLEY」の文字は,一般の辞書等に掲載されておらず,特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められるから,本件商標は、特定の観念を生じないものである。
一方,引用商標は,「シスレー」の文字及び「SISLEY」の文字を二段に横書きしてなり,その構成文字に相応して「シスレー」の称呼を生じるものである。また,「シスレー」の文字及び「SISLEY」の文字は,一般の辞書等に掲載されておらず,いずれも特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められるから,引用商標は,特定の観念を生じないものである。
そこで,本件商標と引用商標の類否についてみると,本件商標と引用商標は,それぞれの構成態様に照らし,明らかな差異を有するものであるから,両商標は,外観上相紛れるおそれはない。
次に,本件商標から生じる「イスレー」の称呼と引用商標から生じる「シスレー」の称呼を比較すると,両称呼は,その第1音目において「イ」の音と「シ」の音の差異を有するものであるところ,該差異音が母音を共通にする音であるとしても,語頭音は,はっきりと発音されるものであって,長音を含め4音という短い音構成においてはこの差異音が称呼全体に与える影響は決して小さいとはいえないから,両者をそれぞれ一連に称呼するときは,その語調,語感が相違し,称呼上相紛れるおそれはないとみるのが相当である。
また,本件商標から生じる「アイスレー」の称呼と引用商標から生じる「シスレー」の称呼を比較すると,両者は,その構成音及び構成音数に明らかな差異を有するものであるから,両者をそれぞれ一連に称呼するときは,語調,語感が相違し,称呼上相紛れるおそれはない。
さらに,観念においては,両商標からは,特定の観念が生じないものであるから,比較することができず,両商標は,観念上相紛れるおそれはない。
してみれば,本件商標と引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標といわなければならない。
(2)混同を生ずるおそれについて
申立人の提出に係る甲第11号証によれば,申立人が「スキンケア化粧品」について使用する,「sisley」の文字よりなる商標は,別件,登録第5139346号商標の登録出願時(平成19年11月13日)には既に,我が国における化粧品の取引者,需要者の間において広く知られていたものであり,その周知性はその登録査定時(平成20年4月10日)においても継続していたことをうかがい知ることができる。
しかし,上記別件商標の周知性がその登録出願時及び登録査定時において継続していたとしても,本件登録異議の申立てにおいて提出された甲各号証によっては,引用商標の周知性の度合いを客観的に判断するための引用商標を付した商品の売上高,広告・宣伝の回数,期間等が明らかでないことから,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標が,申立人の業務に係る「化粧品」を表示するものとして,その取引者,需要者の間に広く認識されるに至っていた商標であると認めることができない。
そして,本件商標と引用商標とは,上記(1)のとおり,非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれを本件商標の指定商品について使用しても,取引者,需要者が引用商標を連想又は想起することはなく,その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生じるおそれはないものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものでないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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