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Trademark Appeal Case

著名商標と複合商標の類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2015−900230(T2015−900230/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5757027号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5757027号商標(以下「本件商標」という。)は,「APPLE SWIFT」の欧文字を標準文字により表してなり,2014年5月26日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成26年11月26日に登録出願,第9類「アプリケーション開発用ソフトウェア及び他のソフトウェアアプリケーションの開発に使用されるコンピュータソフトウェア」を指定商品として,同27年3月12日に登録査定,同年4月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。

1 国際登録第1043456号商標(以下「引用商標1」という。)は,「SWIFT」の欧文字を横書きしてなり,2010年(平成22年)5月11日に国際商標登録出願,第9類,第16類,第35類,第36類,第38類,第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成23年11月4日に設定登録されたものである。

2 国際登録第1048048号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲のとおり,図形と該図形の中央部に「SWIFT」の欧文字を横書きした構成からなり,2009年11月16日Beneluxにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2010年(平成22年)5月11日に国際商標登録出願,第9類,第16類,第35類,第36類,第38類,第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成23年7月1日に設定登録されたものである。

以下,上記登録商標をまとめて「引用各商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同第8号及び同第7号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の2第1号に該当し,同法第43条の3により取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。)を提出した。

1 商標法第4条第1項第15号違反について

(1)引用各商標の我が国における著名性

引用各商標を構成する「SWIFT」の語は,申立人「ソサエティー フォー ワールドワイド インターバンク フィナンシャル テレコミュニケーション エスシーアールエル」(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SCRL)の頭文字「S」,「W」,「I」,「F」及び「T」から構成され,申立人自身の略称として,また,申立人が提供する,金融機関同士の国際決済を処理するオンラインシステムを意味する語として日本をはじめ世界中で広く知られている(甲3)。

当該オンラインシステムは,200カ国以上,8,000以上の金融機関により利用されており,全世界のほぼ全ての金融機関を網羅している(甲4の2)。

我が国においても,1981年の導入以後ユーザーが増加し,日本銀行や証券保管振替機構などの公的機関も含み,2008年度末では,ユーザー数が259に達している(甲4の3及び甲5)。

申立人は,自身の日本語版ウェブサイトや顧客向けのリーフレットにおいて,引用各商標を継続的に使用し(甲6の1〜8及び甲7),申立人の略称「SWIFT」及びこれを日本語で表した「スイフト」の語は,専門紙から一般紙まで幅広く,頻繁にマスメディアに登場しており(甲8の1〜21),金融業界及び広く一般市民に認知されている。なお,申立人は,金融業界における世界最大級の国際会議「Sibos(サイボス)」を2012年に大阪で開催しており,それに関連する報道が集中的になされた(甲8の22〜48)。

申立人の我が国における2010年から2014年までの売上は,申立人によれば,それぞれ14,488,211ユーロ,15,046,929ユーロ,13,985,268ユーロ,13,071,991ユーロ,13,588,346ユーロである(甲9)。

これらの事実を総合的に判断すれば,引用各商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国において著名な商標であったということができる。

(2)本件商標と引用各商標との類似性

本件商標の構成中「APPLE」の文字は,本件商標権者「アップル インコーポレイテッド」の著名な略称である。また,本件商標権者は,自身のウェブサイトで「Swift」なるソフトウェアを紹介しており,そこでは常に「Swift」の語が単独で表記されている(甲11)。

さらに,インターネット検索エンジン「Google」において「APPLE SWIFT」の語を入力し検索したところ,約67,100,000件がヒットしたが,検索結果上位100件において,「APPLE SWIFT」という態様が確認されたのは2件のみであった(甲12)。

すなわち,本件商標は,「APPLE」と「SWIFT」の2語が結合した構成であるが,本件商標権者は,「Swift」単独で使用しており,市場においても同様に「Swift」単独で認知されているといえることから,本件商標に接する需要者・取引者は,本件商標を一つの語として把握するというより,むしろ「APPLE」をハウスマーク,「SWIFT」をペットネームとして把握する,と考えるのが自然である。

そうとすると,本件商標中,「APPLE」と「SWIFT」の文字部分とでハウスマークとペットネームという差異が存在するから,本件商標が常に不可分一体の商標として把握されるとはいえず,「SWIFT」部分のみが本件商標の要部として把握される場合もあり得る。

したがって,本件商標の「SWIFT」の文字部分は,引用各商標の文字部分「SWIFT」と同一の文字から構成されるから,本件商標と引用各商標とは,称呼及び観念が共通する類似の商標といわざるを得ない。

(3)本件商標の指定商品と申立人の役務との関連性

本件商標の指定商品は,前記第1のとおりであり,他方,申立人が提供するオンラインシステムの利用に当たっては,様々なソフトウェアが用いられる(甲4の4)ことから,本件商標の指定商品と申立人の役務との間には技術的な関連性が認められる。

また,申立人は,ネットワーク運営や,ユーザーへのオンラインシステムの導入のアシストのために,多くの企業とパートナーシップを築いており,それらの企業は「パートナー」と呼ばれ,申立人の認定を受けたうえで活動を行っているが,世界の名だたる企業が申立人のパートナーとして名前を連ねている(甲4の4)。

これらの「パートナー」と呼ばれる企業の存在や,申立人の著名性・グローバル性を考慮すれば,本件商標がその指定商品に使用された場合,上述のパートナーとして誤認される可能性は十分にあるといえ,特に近年では大企業同士のコラボレーション製品・役務が次々と誕生している実情があり,「APPLE」と「SWIFT」の各語が結合してなる本件商標が使用された場合,本件商標権者と申立人とのコラボレーションにより生まれた商品なのではないか,といった誤解を取引者・需要者に与えかねない。

(4)小括

このように,引用各商標の著名性,両商標間の類似性及び両者の商品・役務の関連性を総合的に考慮すると,本件商標がその指定商品に使用された場合,これに接する取引者及び需要者は,申立人と何らかの関係のある営業主の業務に係る商品であるかのごとく,出所について誤認・混同を生じるおそれがあるといえる。

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

2 商標法第4条第1項第8号違反について

本件商標の構成文字中の「SWIFT」の語は,申立人の著名な略称「SWIFT」と同一であって,申立人の許諾を得たものではない。

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。

3 商標法第4条第1項第7号違反について

上述のとおり,申立人は世界中の金融機関を結ぶ重要な役割を担っており,極めて公益性の高い組織・システムである。このような組織或いはシステムを意味する著名な商標を構成する「SWIFT」の語を,本件商標権者の著名な略称「APPLE」と結合させた本件商標の登録を認めることは,市場に混乱を生じさせるものであり,許されるべきではない。

よって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害する商標として,商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 結び

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同第8号及び同第7号に違反して登録されたものである。

したがって,本件商標は,商標法第43条の2第1号に該当するものであり,同法第43条の3により,その登録を取り消されるべきである。

第4 当審の判断

1 引用各商標の周知著名性について

申立人の主張及び提出された証拠によれば,以下の事実が認められる。

「SWIFT」及び「スイフト」の文字は,「国際銀行間通信協会」(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)の略称又は申立人が提供する,金融機関同士の国際決済を処理するオンラインシステムを意味するものであり,各種新聞記事等において,該意味合いで使用されている(甲3,甲8の1ないし48)。

上記国際銀行間通信協会のユーザーの構成(我が国におけるユーザー数は,2008年末で259,中央銀行(1),都市銀行(6),信託銀行(9),地方銀行(55),第二地方銀行(24),信用金庫(14)等,2008年12月現在,甲4の3)を踏まえると,「スイフト」及び「SWIFT」の語は,国際銀行間通信協会の略称又は申立人が提供する,金融機関同士の国際決済を処理するオンラインシステムを意味するものとして,金融取引を行う分野においては,ある程度知られているともいえる。

しかしながら,当該団体が提供するサービスの対象は,「金融機関向け」の限られた範囲にとどまるものであり(甲4の2),新聞記事等(甲8の1ないし48)も,その多くは,2012年10月29日から同年11月1日に大阪(大阪市)で開催された,金融業界の国際金融会議「Sibos」に関する一時的な記事であって,それ以外の掲載回数はそれほど多いものともいえないこと,また,本件商標の具体的な広告・宣伝の回数及び宣伝費等が不明であり,加えて,「SWIFT」の文字が,「速い,迅速な」の意味を有する英語の成語であることをも併せ考慮すれば,申立人提出の甲各号証をもって,引用各商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国において,申立人の業務に係る商品・役務の商標として取引者,需要者間に広く認識されていたとは言い難いものである。

まして,引用各商標が,申立人の著名な略称として一般に受け入れられていると認めるに足りる証拠もない。

2 本件商標と引用各商標との類似性について

(1)本件商標

本件商標は,前記第1のとおり,「APPLE SWIFT」の欧文字を標準文字により表してなるところ,「APPLE」と「SWIFT」の各文字を結合してなるものであると看取されるものである。

そして,本件商標の構成中の「APPLE」の文字部分は,「林檎」の意味を有するよく知られた英単語であるとともに,本件商標の指定商品の分野においては,本件商標権者の業務に係る商品を表すものとして,相当程度知られていることからすれば,「APPLE」の文字部分が看者の注意を強く惹き支配的な印象を与えるということができる。

他方,本件商標の構成中の「SWIFT」の文字は,「速い,迅速な」の意味を有する英語の成語であり,「スイフト」と発音されるものであるところ,その指定商品との関係においては,自他商品識別機能があまり強いとは言い難いものである。

以上よりすれば,本件商標は,その構成中の「APPLE」の文字部分と「SWIFT」の文字部分との軽重の差は明らかであり,本件商標の構成中,前半部の「APPLE」の文字部分に相応した「アップル」の称呼を生じ,本件商標権者の使用するブランドとしての「APPLE商標」の観念も生じるものといえるが,後半部の「SWIFT」の文字部分のみを抽出し,該文字部分から生じる称呼をもって取引に当たるとはいえないものである。

してみれば,本件商標は,その構成全体から「アップルスイフト」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものであり,また,その構成中の「APPLE」の文字部分から,「アップル」の称呼を生じ,かつ,商標権者のブランドとしての「APPLE商標」の観念をも生じるものである。

(2)引用各商標

引用各商標は,「SWIFT」の欧文字を横書きしてなるもの,又はその構成中に「SWIFT」の文字を顕著に有するものであり,該文字は,「速い,迅速な」の意味を有する語であるから,これよりは,「スイフト」の称呼及び「速い,迅速な」の観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用各商標との類否

本件商標と引用各商標とは,その構成に照らし,外観において明らかに相違するものであり,また,本件商標から生じる「アップルスイフト」の称呼と引用各商標から生じる「スイフト」の称呼とは,「アップル」の音の有無という明確な差異を有し,その音構成及び構成音数において明らかに異なるものであるから,それぞれを一連に称呼するときは,互いに聴き誤るおそれはない。さらに,本件商標の構成全体は,特定の観念を生じないものであるのに対し,引用各商標は,「速い,迅速な」の観念を生じるものであるから,観念においても相紛れるおそれはない。

また,本件商標の構成中「APPLE」の文字部分と引用各商標とを比較すると,両者は,外観において明らかに相違し,それぞれから生じる称呼及び観念も明確に相違するものである。

したがって,本件商標と引用各商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記1及び2によれば,本件商標と引用各商標とは,類似しない別異の商標であり,かつ,引用各商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されていたということができないものである。

してみれば,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,これに接する取引者,需要者が,引用各商標を想起又は連想するものとはいえないから,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれのある商標ということはできない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第8号該当性について

申立人は,本件商標の構成文字中の「SWIFT」の文字は,申立人の著名な略称「SWIFT」と同一であって,申立人の許諾を得たものではないから,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する旨主張しているが,申立人の提出に係る証拠によれば,上記1のとおり,引用商標が,本件商標の登録出願時に我が国において,申立人の著名な略称を指し示すものとして一般に受け入れられていたとの事実は,これを認めるに足りる証拠はない。

してみれば,本件商標が申立人の著名な略称を含むものであるとする申立人の主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。

5 商標法第4条第1項第7号該当性について

本件商標は,その構成自体が,きょう激,卑わい,差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合に該当しないことは明らかである。

そして,上記1のとおり,引用各商標は,我が国において広く知られていたということはできないから,本件商標は,引用各商標の信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受けたものということはできないものである。

ほかに,本件商標が,国際信義に反し,あるいは,本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合などに該当するということも見いだせない。

したがって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできないものであり,商標法第4条第1項第7号に該当しない。

6 まとめ

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号,同第8号及び同第7号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項に基づき,その登録を維持すべきものである。

よって,結論のとおり決定する。

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