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Trademark Appeal Case

略称の類似性による混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2015−12313(T2015−12313/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,「企業法務知財協会」の文字を標準文字で表してなり,第41類及び第45類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務とし,平成25年12月26日に登録出願されたものである。

その後,指定役務については,原審における同26年11月10日付け及び当審における同27年8月28日付け手続補正書により,第41類「知的財産又は知的財産権に関するイベントの企画・運営又は開催,知的財産・知的財産権・法律に関するセミナーの企画・運営又は開催に関する情報の提供,法律・契約・知的財産に関する知識の教授,法律・契約・知的財産に関する教育研修,法律・契約・知的財産に関する人材育成及び能力開発のための教育,知的財産・知的財産権・法律に関する出版物の企画・編集・制作」及び第45類「法律に関する助言,法律に関する情報の提供,知的財産権に関する契約書の作成,工業所有権に関する契約の代理又は媒介,工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務,外国における工業所有権に関する手続の仲介又は事務,知的財産権に関する契約の代理又は媒介,知的財産権に関する調査・研究・情報の提供・相談又は指導,知的財産権の利用に関する契約の代理又は媒介,訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,著作権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務,特許図面・実用新案図面・意匠図面の作成,知的財産権の管理,知的財産権に関する助言及びコンサルティング」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「本願商標は,『企業法務知財協会』と標準文字で表示してなるところ,これよりは,『企業法務としての知的財産権に関する協会』ほどの意味合いを理解させ,知的財産に関する団体名を表示していると認識させる。そして,東京都千代田区大手町2−6−1所在の『日本知的財産協会』は,本願商標の登録出願前より,『知的財産に関する人材育成,研修会・フォーラムの企画・運営又は開催』等の役務を行っており,また,知財ユーザー団体として広く知られている『日本知的財産協会』が『知財協』又は『知財協会』と略称されていることを考慮すれば,同略称をその構成中に有する本願商標を,出願人がその指定役務について使用するときは,恰もその役務が上記者の取り扱いにかかるものであるかのごとく役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認められ,又は,上記者と組織的,経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかの如く役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における手続の経緯等

1 当審における手続の経緯

当合議体は,平成27年11月17日付けの証拠調べ通知書により,請求人に対し,本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当する点について,本願商標を構成する「知財協」及び「知財協会」の文字が日本知的財産協会の著名な略称としての表示(商標)である事実を挙げて,意見を求めたところ,請求人は,同年12月28日付けの意見書を提出した。

2 証拠調べ通知の内容

本願商標は,「企業法務知財協会」の文字よりなるところ,その構成中,「知財協」及び「知財協会」の文字に関して行った職権による証拠調べによれば,以下の事実が認められる。

そして,これらの事実によれば,「知財協」及び「知財協会」の文字は,「一般社団法人日本知的財産協会」の著名な略称を意味するものとして理解されるものであって,該文字部分が強く印象付けられることからすれば,本願商標をその指定役務に使用したときは,需要者は,あたかも一般社団法人日本知的財産協会と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。

(1)インターネット情報

「一般社団法人日本知的財産協会」のウェブサイトの「協会概要」において,「沿革」の項目に,「1994年(平成6年)『日本知的財産協会』に改称。/2014年(平成26年)法人化により,『一般社団法人日本知的財産協会』に改称。」の記載,また,「会員」(2015年11月6日現在)の項目に,「正会員計 939/賛助会員 335/合計 1274」の記載がある。

また,同ウェブサイトの「主な活動」において,「研修活動」があり,「2015年度研修コース編成」として多数の研修コースが編成されている。

さらに,同ウェブサイトの「会員一覧」において,上記会員の名簿が掲載されている。

(http://www.jipa.or.jp/)

(2)新聞記事情報(下線部については,合議体による。)

ア 「職務発明の帰属,議論難航,特許の権利,法人に変更へ,企業側,不公平感をなくす,従業員,現行法で対応可能。」の見出しのもと,「

日本知的財産協会

の久慈直登専務理事(ホンダ出身)は『企業は法律に従い毎年,退職者や従業員に対価を払っている。・・・05年に青色LED訴訟が和解して以降,1億円を超すような金額の和解はみられないし,『訴訟も増えてはいない』(

知財協会

の久慈氏)。・・・この案は企業側にも寝耳に水で,『企業の報奨システムに規制がかかるなんてとんでもない』(

知財協会

)と受け入れられる可能性は低い。小委での議論は9月に再開される見通しだが,先行きはまったく不透明だ。」の記載がある。(2014年8月18日 日本経済新聞 朝刊15頁)

イ 「環境技術,移転容易に,

知財協会

,途上国向けサイト,特許などの使用料開示。」の見出しのもと,「

日本知的財産協会

(東京・千代田)は日本の環境技術の発展途上国への移転を促すため,特許の使用料などを開示するサイトを2010年度にも開設する。・・・

知財協

は専用サイトを開設し,参加する企業の特許ライセンス料,ノウハウ提供料,生産設備の販売代金,技術指導料などを開示する。・・・

知財協

がサイト開設に動く背景には,新興国による強制実施権の発動を抑える狙いもある。」の記載がある。(2010年2月10日 日本経済新聞 夕刊3頁)

ウ 「特許審査:経産省「請求絞り込め」に民間側反発」の見出しのもと,「・・・知的財産制度について提言を行う民間団体『

日本知的財産協会

』が強く反発し,協議を求める意見書を同省に提出したことが10日,分かった。・・・これに対し,大手製造業など約900社が会員の

知財協会

は意見書で,『企業の関心は発明創造と権利活用であり,これにブレーキをかけるような目標設定は策定できない』と反発している。」の記載がある。(2006年2月11日 毎日新聞 朝刊11頁)

エ 「第4部成功する包括提携(3)利益配分,望まれるルール(富を生む大学)」の見出しのもと,「

知財協会

が/独自の提案/こうした状況に対し,企業側から解決の糸口を模索する動きも出始めた。・・・企業約八百五十社が加入する“知財版経団連”の

日本知的財産協会

も腰を上げた。」の記載がある。(2004年12月2日 日経産業新聞 1頁)

オ 「

知財協

,国際機関に協力−会員のDB登録加速」の見出しのもと,「国内最大の特許制度ユーザー団体である

日本知的財産協会(知財協)

は,国連・世界知的所有権機関(WIPO)が運営する新興国への環境技術移転データベース(DB)『WIPOグリーン』に,会員企業が保有する環境関連システム技術の登録を加速する。

知財協

は2013年前半にも同システムが本稼働することを見据え,当面約100社をめどに会員企業の参加を促す。WIPOは日本の環境技術を高く評価している。

知財協

はWIPOグリーンの運営協力を通じ,日本が推進するインフラ輸出など新たなビジネスの基盤にする。」の記載がある。(2013年2月1日 日刊工業新聞 1頁)

カ 「

知財協

,日米欧で審査改善−3極特許庁長官に要請」の見出しのもと,「

日本知的財産協会

は主要産業の上場企業など900社以上で構成する国内最大の知的財産制度のユーザー団体。14日の日米欧ユーザー会合は同協会がホストを務める。米国から知財の法務関連や産業団体,欧州から日本の経団連に相当する機関などが参加する予定。」の記載がある。(2012年11月14日 日刊工業新聞 2頁)

キ 「

知財協

,知財研修コース,技術者向け改変。」の見出しのもと,「

日本知的財産協会

(東京・千代田,吉野浩行会長)は技術者向け研修を改変する。これまでは知財部門の視点で研修を企画していたため,技術者にはやや高度な内容が多く,本当に学びたい知識と乖離(かいり)があった。技術成果を事業活動に生かすための基礎的知識を学ぶ場を増やす。・・・研修は会員向けで,一コースあたり三百人超―四百五十人を募集する。」の記載がある。(2006年9月4日 日本経済新聞 朝刊9頁)

ク 「

知財協

,特許法改正で,発明報奨規定,9割が見直し。」の見出しのもと,「今月の改正特許法施行にあわせ,製造業の多くの企業が発明報奨制度を見直したことが分かった。日立製作所など八百社が加盟する

日本知的財産協会

が三月末に実施した調査によると,調査対象の九割以上の企業が見直しを実施。」の記載がある。(2005年4月13日 日本経済新聞 朝刊11頁)

ケ 「

知財協

,知財分かる経営者育成――会員企業から15人募る。」の見出しのもと,「日立製作所など八百四十社が加入する

日本知的財産協会(知財協)

は知的財産を駆使できる経営トップの育成に乗り出す。会員企業から知財業務経験が十年以上ある将来のトップ候補者を十五人募り,十一月から七カ月におよぶ研修を実施する。『十年後に世界に通用する知財経営者を十人作りたい』としている。」の記載がある。(2004年8月5 日本経済新聞 朝刊15頁)

コ 「

知財協

提言,特許報酬に契約制を――企業・従業員間の係争回避。」の見出しのもと,「有力企業約九百社が集まって特許制度などを研究する

日本知的財産協会

(

知財協

,会長・前田勝之助東レ会長)は,従業員の発明報酬について定めた特許法の規定を見直す独自案をまとめ,特許庁など関係機関に提言し始めた。企業があらかじめ従業員と特許権の帰属や報酬の決め方などを契約できるようにし,係争を未然に防ぐのが狙い。」の記載がある。(2001年12月18日 日本経済新聞 朝刊13頁)

サ 「

日本知的財産協会

,アジアの模倣品対策強化――関係機関に直接要望,産官学連携模索。」の見出しのもと,「日本の特許制度を利用する有力企業約九百社が集まる

日本知的財産協会

(

知財協

,会長・前田勝之助東レ会長)はアジアでの模倣品対策を本格化する。アジアの関係機関・団体への直接訪問による要望,国内での産官学フォーラム開催などに取り組む。模倣品の拡大が日本企業のアジアでの収益悪化やブランドイメージ低下を招きかねないとみて対策を強化する。」の記載がある。(2001年8月5日 日本経済新聞 朝刊7頁)

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第15号の該当性について

(1)本号の判断基準について

最高裁判決は,本号における「混同を生ずるおそれ」の有無は,ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度,イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度,エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきであるとしている(最高裁判決 平成10年(行ヒ)第85号)。

以下,これに沿って判断する。

(2)本願商標と他人の表示

ア 本願商標は,前記第1のとおり,「企業法務知財協会」の文字からなるものである。

そして,本願商標の構成文字は,「生産・営利の目的で,生産要素を総合し,継続的に事業を経営すること。また,その経営の主体。」を意味する「企業」の文字,「司法または広く法律関係の事務。」を意味する「法務」の文字,「知的財産権の略。」を意味する「知財」の文字,及び「ある目的のため会員が協力して設立・維持する会。」を意味する「協会」の文字(いずれも,「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店)から引用。)を結合してなるものである。

そうすると,前部の2語の「企業法務」の文字からは,「企業における法律関係の事務」程の意味合いが理解されるものであり,また,後部の2語の「知財協会」の文字からは,「知的財産権に係る協会」程の意味合いが理解されるものであるとしても,その構成文字の全体からは,直ちに特定の意味合いが看取されるものともいい難いところである。

してみれば,本願商標は,特定の観念を生じないものというのが相当である。

イ 他人の表示

「知財協」及び「知財協会」の文字は,前記第3の証拠調べ通知書により通知したとおりの事実によれば,日本の特許制度等を利用する有力企業約1,200社以上の会員が集まる「一般社団法人日本知的財産協会」の著名な略称としての表示(商標)であると認められるものである。

(3)本願商標と他人の表示との類似性の程度

本願商標は,上記(2)アのとおり,「企業法務知財協会」の文字からなるものであるところ,前部の「企業法務」の文字からは,「企業における法律関係の事務」程の意味合いが理解されるものであるとしても,該「企業法務」の文字自体は,その指定役務との関係からすれば,識別力が無いか極めて弱いものといえるものであって,逆に,後部の「知財協会」の文字は,一般社団法人日本知的財産協会の著名な略称として理解される「知財協」及び「知財協会」の文字が,一部含まれ又は同一であるから,該文字部分が印象付けられ,看者の注意を引くものであるから,当該日本知的財産協会の表示との類似の程度は高いものというべきである。

(4)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度

前記した証拠調べ通知書の記載事実によれば,1994年(平成6年)に「日本知的財産協会」に改称,2014年(平成26年)法人化により,「一般社団法人日本知的財産協会」に改称されており,その略称としての「知財協」及び「知財協会」の文字は,本願商標の登録出願の日前から現在も継続して,当該日本知的財産協会の業務に係る役務を表示するものとして,我が国の知的財産の分野の需要者の間に広く認識されているものというべきである。

そして,該文字は,既成語ではなく,また,一般に親しまれた語でもなく,当該日本知的財産協会を認識させるものであるから,独創性が低いものとはいえない。

(5)本願商標の指定役務と他人の業務に係る役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度,並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情

本願商標の指定役務は,上記第1のとおり,第41類及び第45類に属する「知的財産に関するセミナーやイベントの企画・運営又は開催,法律・契約・知的財産に関する知識の教授・教育研修・人材育成及び能力開発のための教育」等の役務を指定役務とするものであり,他方,当該日本知的財産協会の業務に係る役務は,そのウェブサイトによれば,「主な活動」において,「研修活動」があり,「2015年度研修コース編成」として多数の研修コースが編成されていることから,両者の役務の関連性の程度は強く,また取引者及び需要者を共通にする場合が少なくないものといえる。

(6)上記の事情を考慮し,本願商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本願商標は,請求人がこれをその指定役務について使用した場合,これに接する需要者をして,その構成中の「知財協会」の文字部分が着目され,当該日本知的財産協会の著名な略称を,すなわち,「知財協」及び「知財協会」を連想・想起させ,その役務が当該日本知的財産協会あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。

したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

(7)請求人の主張について

請求人は,「日本知的財産協会は,本願商標である『企業法務知財協会』とは,両者の外観,称呼が全く異なり,本願の指定役務に使用しても,役務の出所について混同を生じることはない。『一般社団法人 日本知的財産協会』の略称である『知財協』についても,両者の外観,称呼が全く異なり,本願の指定役務に使用しても,役務の出所について混同を生じることはない。なお,『知的財産』及び『知財』の用語は,指定役務との関係で識別力がない一般名称であり,知的財産に係る業務を行う企業の社員や弁理士等の専門家が集うグループ等において名称の一部として普通に使用されるものである。また,本願商標は,知的財産に係る業務を行う企業の社員や弁理士等の専門家が集うグループ等において名称の一部としては使用されることがない『企業法務』という文字をその前半に有している。この点においても,知財のみを示す『日本知的財産協会』とは異なる組織であることは明白であり,本願の指定役務に使用しても,役務の出所について『一般社団法人 日本知的財産協会』と混同を生じることはない。」旨を主張している。

しかしながら,両者の外観,称呼が異なるとしても,本願商標の構成中の「企業法務」の文字部分は,その指定役務との関係からすれば,識別力が無いか極めて弱いものといえるものであって,逆に,後部の「知財協会」の文字は,一般社団法人日本知的財産協会の著名な略称として理解される「知財協」及び「知財協会」の文字が,一部含まれ又は同一であるから,該文字部分が着目され,看者の注意を引くものであって,その類似性が低いということにはならない。

また,本願商標は,前部の「企業法務」と後部の「知財協会」の文字につながりのある意味合いが理解されないものであり,その構成文字の全体から,直ちに特定の意味合いが看取されるものとはいい難いことから,特定の組織として理解されるものではなく,必ずしも,「一般社団法人日本知的財産協会」と異なる組織として理解されるとは限らないものというべきである。

そして,「知的財産」及び「知財」の用語が指定役務との関係で識別力がないとしても,「知財協」及び「知財協会」の文字は,一般社団法人日本知的財産協会の著名な略称として理解されるものであることは,前記したとおりである。

したがって,請求人の主張は,妥当でなく採用することができない。

2 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当し,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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