結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35527号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4004767号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表した構成よりなり、平成7年9月27日に登録出願、第25類「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽、エプロン、えり巻き、靴下、ゲートル、毛皮製ストール、ショール、スカーフ、足袋、足袋カバー、手袋、布製幼児用おしめ、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラー、耳覆い、ずきん、すげがさ、ナイトキャップ、ヘルメット、帽子」を指定商品として、平成9年5月30日に設定登録されたものである。
請求人の引用する登録第1438466号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に表した構成よりなり、昭和46年10月15日に登録出願、第17類「スポーツシャツ、その他本類に属する商品」を指定商品として同55年9月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として甲第1号証ないし第15号証を提出している。
本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当し、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効とされるべきである。
1.商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、全英オープン等で活躍した有名なフランスのテニスプレーヤーであるルネ・ラコステ氏が1993年(昭和8年)に設立した会社である。設立当初は、テニスシャツ専門に製造・販売していたが、第二次世界大戦後はポロシャツ、その他のシャツやファッション製品を手がけてきて今日に至っている。特に、ポロシャツは世界の約90ケ国で販売され、その商標(引用商標)であるワニの図形は日本を含む国際市場で著名性を確立し、日本のブランドスコアランキングでは常に上位を占めている。
(2)本件商標と引用商標は、頭部、口の開き具合等に差異があるものの、両者ともまさしく尾をはねあげたワニの図形であって、構成全体において酷似するものである。しかも、本件商標の指定商品と引用商標を付して使用しているポロシャツ、その他の被服類とは、同一又は類似する商品であること明らかである。したがって、本件商標は、請求人が商品「被服類」に使用して広く一般に知られている引用商標とその構成の軌を同じくし、かつ、表現態様も酷似するものであるから、これを指定商品に使用されるときは、取引者・需要者をして、その商品が請求人によって製造・販売されているものの一種であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとするのが相当である。
2.商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、上述したとおり、請求人の永年にわたる不断の努力により世界的に著名な商標となっており、日本国内においても、取引者・需用者間で広く認識され、強力な顧客吸引力を取得しているものである。この引用商標と酷似する本件商標をその指定商品に使用する行為は、請求人が多大の努力と費用を永年かけて築いた引用商標のグッドウイルを剽窃することであり、結果として引用商標に化体されたグッドウイルが希釈化され、その名声が棄損されることとなるばかりでなく、国際信義にも反するものである。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として乙第1号証及び第2号証を提出している。
本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当するものでなく、その登録は無効とされるべきではない。
1.商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標は、全体に尖った形の輪郭内に、図案化された「NYSC」の文字が表されており、右端の頭部らしき形及び左端に尾らしき形が認められるものの、特定の生物を描いたものとは認め難い本件商標権者の創作による図形商標である。
これに対し、引用商標は、右を向いて口を開けたワニの図形の中に「lacoste」の文字が書された世界的に著名な商標であり、本件商標の指定商品と同様の商品(ポロシャツ、その他のファッション製品)に使用されている。
(2)請求人は、本件商標を「ワニ」の図形であると断定した上で、本件商標と引用商標が酷似し、本件商標を指定商品に使用するときは、請求人の業務に係る商品と出所について混同を生ずる旨主張している。しかしながら、上述のとおり、本件商標は特定の生物を描いたものではなく、しかも、その内部(輪郭内)に「NYSC」の文字が書されてなるものであり、両商標は、口の具合、尾のあげ具合等の細部の差異を対比観察するまでもなく、看者に全く異なった印象を与える非類似の商標であり、たとえ、本件商標が引用商標と同じ商品、例えば、ポロシャツ等のワンポイントマークとして刺繍により表示された場合であっても、本件商標における全体的に尖った形であるという印象及び「NYSC」の表示は失われることがなく、取引者・需要者においても本件商標をラコステの標章と誤認することはない。
すなわち、「NYSC」の文字を含み、かつ、特定の観念を生じさせない本件商標の付された商品が、ワニマークで有名な「ラコステ」の称呼で取り引きされたり、「ラコステ」社の製造・販売又は取り扱いに係る商品と認識されたり、混同を生じさせるおそれは全くないといわざるを得ない。
2.商標法第4条第1項第19号について
請求人は、本件商標と引用商標が類似することを前提とした上で、本件商標が不正の目的をもって使用する商標(商標法第4条第1項第19号)である旨主張している。しかしながら、上述のとおり、本件商標と引用商標とは、類似する要素が全くない非類似の商標であり、かつ、被請求人は、本件商標を独自の商標として出願し、その登録を待って使用しようとしていることが明白であるから、この請求人の主張は理由がないものである。
(1)本件商標は、別掲(1)のとおり、特定の生物を描いたものと直ちに認識することが難しいものの、その構成の全体的特徴からして、爬虫類に属する生物(鰐、蜥蜴等)を描いたものと認識させ得る図形と、その図形内に特定の意味を有する語とは認め得ない「NySC」の文字を書してなるものである。
他方、引用商標は、別掲(2)のとおり、「鰐」の図形及びその図形内に「lacoste」の文字を書してなるものであるところ、これがポロシャツ等のファッション製品に使用して、少なくとも本件商標の登録出願時である平成7年9月27日までには広く知られ、「ワニのマーク」として著名といい得る状態に至って今日に及んでいることは、当庁において顕著な事実である。
(2)本件商標と引用商標を比較してみると、両者は、上述したとおりの差異を有するものであるが、その一方において、次のような共通点を有するものである。
ア)図形部分については、引用商標が「鰐」を描いてなるのに対し、本件商標からは、直ちに「鰐」を描いたものと認識させないとしても、他に「鰐」以外の特定の生物を直ちに認識させるともいえないから、その構成の特徴よりして、「鰐」と認識させる場合があることも決して少なくないといえること。
イ)図形部分の具体的構成については、本件商標も引用商標も、全体が右向きに描かれ、口を開けた頭部、胴体下部にみえる前後の足及び大きく跳ね上げた尾を有すること。
ウ)いずれも図形内に一定の欧文字を配してなること。
以上の点を総合してみると、本件商標と引用商標は、その着想及び全体的構成の軌を一にするといえるものであり、さらに、引用商標の周知度、本件商標の指定商品と引用商標の商品が共に服飾関係を主としたファッション製品であることをも勘案すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、引用商標を連想・想起し、その商品が請求人(引用商標の所有者)の製造・販売に係るものとして、あるいは同人と組織的又は経済的に何らかの関係を有する者の取り扱いに係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
(3)被請求人は、本件商標に対して、既に平成9年10月13日付で本件請求人から異議申立てされたが、同10年5月22日付で本件商標の登録を維持するとの異議決定がされている旨主張する。しかしながら、この異議決定が、本件登録無効審判における上記認定を左右するものでないことは明らかであるから、その主張を採用することができない。
(4)以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。