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Trademark Appeal Case

周知商標と類似登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2015−890067(T2015−890067/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5682558号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成26年1月20日に登録出願,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,同年5月30日に登録査定され,同年7月4日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は,本件商標の登録は無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第88号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当するものであるから,商標法第46条の規定に基づき,その登録は無効とされるべきものである。

2 本審判を請求するに至った経緯

(1)請求人は,大阪市北区に所在し,ホストクラブ「Club ACQUA」を経営する法人であって,「Club ACQUA」を立ち上げた芳晶せいじ氏(本名:池田正流氏)(以下「芳晶氏」という。)が代表取締役である。

芳晶氏は,16歳でホストになり,20歳の時に大阪市都島区京橋にホストクラブ「Imitation Bar Pandemonium」をオープンした。1998年3月に店名を「ACQUA」に変更,2000年4月には店名を現在の「Club ACQUA」に変更した後,同年11月に現所在地に移転し,現在に至っている。2005年11月には東京都新宿区歌舞伎町に「Club ACQUA」東京店をオープンして東京に進出したが,東日本大震災の影響で2011年3月31日をもって東京店を閉店した(甲3〜甲12)。

(2)その後,「Club ACQUA」東京店でホストをしていた桐也けん氏(現在の渡辺けん氏)が,当時の従業員を集めて,請求人及び芳晶氏等には無断で,「Club ACQUA」という同じ名称のホストクラブを東京都新宿区歌舞伎町にオープンし,請求人が運営する「Club ACQUA」と非常に紛らわしいロゴマークを商標として使用しており,しかも,「かつてホスト業界を震撼させた『ACQUA』が歌舞伎町に再降臨!!」のキャッチコピーを用いて,恰も請求人が運営する「Club ACQUA」が歌舞伎町に復活したかのように欺いて営業していることが判明した(甲13,甲14)。

(3)また,渡辺けん(渡邊憲)氏(以下「渡辺氏」という。)が代表取締役社長を務める商標権者(甲15)が本件商標を登録していることも判明したことから,請求人は,渡辺氏に商標権の譲渡あるいは放棄について口頭で申入れを行い,話し合いを持った。渡辺氏からは,商標権を抹消登録すること,並びに使用している商標を変更する旨の回答を得たが,その後,渡辺氏はこれらを実行しなかった。

そこで,請求人は「Club ACQUA」に化体した業務上の信用を守るべく,やむを得ず本件商標に対して無効審判を請求することを決断し,同時に,先願主義下(商標法第8条),他人が同一・類似の商標について登録を得ることを防ぐべく商標登録出願(商願2015−11406)を行った(甲16)。

以上が,請求人が本審判を請求するに至った経緯である。

3 引用商標の周知性

(1)上記したように,請求人の代表者である芳晶氏は,「笑いで女をキレイにする」という独特のコンセプトの下,楽しいトークで女性客の心を掴み,「Club ACQUA」を関西No.1の規模と実力を誇るホストクラブにまで成長させ,2005年に東京に進出した。その後「Club ACQUA」は,東京・大阪合わせて約250人のホストが在籍する超人気店となった(甲7,甲8,甲17〜甲21)。

(2)「Club ACQUA」が成長していく過程で,年収1億円を稼ぐカリスマホストとなった芳晶氏は,テレビ番組,ラジオ番組にも頻繁に登場する有名人になる一方,ホストクラブの他に,大阪で炉端焼き屋を,東京でダイニングレストランを経営する青年実業家となった(甲7,甲8,甲17〜甲21)。

(3)「Club ACQUA」の特徴の一つとして,芳晶氏はもとより,在籍するホストヘのメディアからの取材を積極的に受け入れ,また,バラエティー,ドラマ,CM,雑誌モデル等,メディアへの出演・露出を積極的に行うことによって,テレビ,ラジオ,インターネット放送,YouTube,雑誌,新聞等のマスメディアを最大限に活用していることが挙げられる。さらに,ホストクラブブームとも相俟って,芳晶氏,「Club ACQUA」に在籍するホスト,「Club ACQUA」を題材とした出版物,写真集,DVD,あるいは芳晶氏が著作した書籍は多数に上る(甲7,甲8,甲22〜甲48。これらは一部である。)。

(4)また,2006年には,業界ナンバーワンのホストクラブの経営者として,マスコミにも引っ張りだこの芳晶氏は音楽グループ「ACQUA−E.P.」(正式名称:ACQUA Entertainment Project)を結成している。

当該グループは,東京・大阪に店舗を構える日本No.1のホストクラブ「Club ACQUA」のトップホスト8名から構成されたもので,そのデビューシングルは3万枚を売り上げ,オリコンシングルチャートの3位に初登場している(甲49〜甲56)。

(5)その他,「Club ACQUA」は,「Yukai Life」「まんぞく関西」「シティヘブン関西版」その他の関西圏の求人雑誌,風俗雑誌に継続して広告を掲載している(甲57〜甲83)。

(6)上記したように,代表のカリスマホスト・芳晶氏を広告塔として,「Club ACQUA」は,関西のみならず東京においても有名となり,さらに,マスメディアを通じて,全国的に,ホストクラブの需要者のみならず一般大衆の間で広く知られるに至っているものである。

引用商標は,本件商標の出願日の時点では周知商標となっており,登録査定日の時点でもその状況は続いていたものである。

4 商標法第4条第1項第10号該当について

(1)引用商標が,本件商標の出願時及び登録査定時において周知性を獲得していたことについては上記3において述べたとおりである。また,「Club ACQUA」はホストクラブであって,顧客に対して飲食物を提供等しているものであるから,引用商標が使用されている役務と,本件商標の指定役務である「飲食物の提供」とが同一又は類似の関係にあることも明らかである。

さらに,本件商標が引用商標と同一又は類似の関係にあることについては,後述するように明白である。

(2)よって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に定められた要件を満たすものであって,同号に違反して登録されたものである。

5 商標法第4条第1項第19号該当について

(1)引用商標の周知性ついては既に述べたとおりであり,両商標が類似することについては後述するとおりである。

(2)「不正の目的をもって使用する商標」であるか否かについては,「商標審査基準の解説(発明推進協会発行)」において,「他人の周知・著名商標と同一又は類似であり,かつ,他人の周知・著名商標が造語であるとき又は構成上顕著な特徴を有するものであるときは不正の目的の存在を推認する。」と説明されている(甲84)。

この点,「ACQUA」は「水」の意味を表すイタリア語ではあるが,外国語に関しては英語教育が主流の我が国においては,それほど親しまれた言葉ではなく,また,当該役務分野において,この「ACQUA」を商標,店名として採択しなければならない必然性は全くない。しかも,引用商標は,「Club」と「ACQUA」を上下二段に併記し,その両端に,左右対称に同じ図柄からなる図形を配した構成からなるところ,「ACQUA」についてはその両端の「A」の文字のみを,他の文字の約2倍の高さに表記するという特徴を有しており,さらに,その図形部分は,植物のつるをモチーフにした,ゴージャスで優雅なイメージを醸し出す独特の図形からなるものである。

一方,本件商標は,同じ「Club ACQUA」の文字を用いており,しかも,「Club」と,両端の「A」の文字を他の文字の約2倍の高さで表記した「ACQUA」とを上下二段に併記したものを中央に配し,その両端に,植物のつるをモチーフにした同じ図柄からなる図形を左右対称に配した構成からなる点で,上記引用商標の特徴と共通するものである。したがって,両商標は,「クラブアクア」の称呼を共通にするものであって,称呼上類似するものであり,外観においても非常に紛らわしく,外観上も類似するものであるから,本件商標については,上記「不正の目的をもって使用する商標」に該当する要件を具備するものであることが明らかである。

なお,前記したように,本件商標を使用するホストクラブは,「かつてホスト業界を震撼させた『ACQUA』が歌舞伎町に再降臨!!」のキャッチコピーを用いて,恰も請求人が運営する「Club ACQUA」が歌舞伎町に復活したかのように欺いて営業しているものであるから,この点においても,本件商標は「不正の目的」を充足しているものである。

(3)よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号の要件を満たすものであって,同号に違反して登録されたものである。

6 答弁に対する弁駁

(1)不正の目的の有無について

ア 被請求人は,被請求人の「Club ACQUA」のホームページにおいて「かつてホスト業界を震憾させた『ACQUA』が歌舞伎町に再降臨!!」と表示したことについて,運営会社によるものであって,被請求人の意思によるものではない旨を主張する。

しかしながら,自身のホームページに掲載する宣伝広告で,しかも,オ−プン当初の重要なキャッチフレーズについて,被請求人の事前の了承もなく勝手に運営会社がこれを作成し,掲載するようなことは通常考えられない。被請求人からの情報の提供もなく,運営会社が,「Club ACQUA」がホスト業界を震憾させていた事実を知っていたとは到底考えられない。もし運営会社が勝手にキャッチコピーを作成したのであれば,それこそ請求人の経営する「Club ACQUA」がいかに歌舞伎町のホスト業界を席巻していたかの証拠といえるものである。

イ 被請求人の代表者である渡辺氏は,請求人が経営していた「Club ACQUA」東京店でホストをしていた人物であるから,請求人が経営するホストクラブが「Club ACQUA」という店名を使用していたこと,そのロゴマーク及びその周知性については熟知していたとみるのが自然である。したがって,被請求人は,「Club ACQUA」が商標登録されていないことを奇貨として,これを剽窃的に先取りし,引用商標に化体した顧客吸引力,信用,名声を不正に利用し,不正の利益を得る目的をもって本件商標を出願し,登録したものといわざるを得ない。

この点,被請求人は,オープン当初から「業界屈指の知名度」との宣伝文句を自身のウェブサイトで用いており(甲85),明らかに請求人の周知性に便乗しているものである。また,被請求人が経営する「Club ACQUA」の支配人である桐也かずや氏の2015年1月17日のブログにおいては,「ACQUA復活」のタイトルの下,「皆様 ACQUA 復活だぞー」の記載があり,同じく被請求人が経営する「Club ACQUA」のスタッフであるMAX氏の2015年1月25日のブログにおいては,「そうそうACQUA復活しまーす \(^O^)/え?ACQUA?そうです!あのホストClub ACQUAです」とコメントしている(甲86〜甲88)。このことからも,被請求人が経営する「Club ACQUA」が,あたかも請求人の経営するホストクラブ「Club ACQUA」が歌舞伎町に復活するかのように顧客を欺いて,引用商標に化体した顧客吸引力,信用を不正に利用しようとしていたことは明らかである。

また,被請求人は,「請求人の引用商標とは無関係に,被請求人の営業努力によって従業員が増え,2店舗目のオープンを予定している。本件商標には,保護に値する被請求人固有の信用が化体しているものである。」旨を主張しているが,上記した状況,及び自身が勤務していた請求人のホストクラブの名称と全く同じ名称のホストクラブを立ち上げていることからすれば,被請求人が経営するホストクラブ「Club ACQUA」が引用商標と無関係であるはずはなく,むしろ,引用商標に化体した信用,顧客吸引力を基礎にして,これを不正に利用し続けていることは明白である。

よって,本件商標は,周知な引用商標と同一又は類似であって,不正の目的をもって使用する商標というべきである。

(2)引用商標の周知性について

ア 被請求人は,「引用商標『Club ACQUA』が使用された対象はホストクラブであり,その需要者は,ほぼ全てが女性である。」と主張している。この点については,請求人も争うものではない。引用商標は,本件商標の出願時及び登録査定時においてその需要者の間で周知となっていたものであって,この点については既に提出した証拠からも明らかである。請求人の「Club ACQUA」程に各種メディアで取り上げられたホストクラブは過去にはなく,引用商標は,その需要者間で周知性を得ていたことは当然として,それ以外の一般大衆の間にも浸透していたものである。従来,男性向けファッション誌でホストが取り上げられること自体少なかったのであるが,請求人の「Club ACQUA」に所属するホストが,甲第32号証ないし甲第40号証として提出した「Men’s SPIDER」の誌上において取り上げられた事実はその表れの1つである。

イ 同様に,請求人が経営する「Club ACQUA」は,自身の企画により,その代表である芳晶せいじ氏を中心とした,「Club ACQUA」に所属するホストのみから構成された音楽グループ「ACQUA−E.P.」を結成したところ,そのデビューシングルは3万枚の売り上げを記録し,オリコンシングルチャートに3位で初登場している。この「ACQUA−E.P.」の活躍が,請求人が経営する「Club ACQUA」の人気と無関係なはずはなく,その人気がホストクラブの需要者以外の層にも広まっていたことがうかがえるものである。

(3)総括

以上述べたことから明らかなように,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第19号の規定に違反して登録されたものであるから,商標法第46条の規定に基づき,その登録は無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

1 引用商標の周知性について

引用商標は,周知性を獲得しておらず,仮に,過去に周知性を獲得していたとしても,その周知性は,本件商標の出願時,又は,遅くともその登録査定時には喪失していたことが明らかである。

(1)事実と証拠の整理

ア まず,事実(時期不明のものも含む。)と引用商標が周知であることの根拠として挙げられている証拠との関係について整理したものが,年表(被請求人作成)である。なお,当該年表に,発行日又は公開日が明らかとされていないもの(甲20,甲23)は含まれていない。

年表から明らかなように,2000年の始めに,「アクア」はナイスポ大阪(甲9)に取上げられ,同年後半には,「クラブアクア」に所属するホストが掲載された写真集(甲47)が発売されている。

2001年ないし2002年始めには,風俗店の求人情報誌「ゆかいライフ」の合計11冊(甲57〜甲67)に「クラブアクア」に所属するホストが取上げられている。

2002年に発行された書籍(甲45)には,「アクア」が取上げられている。

2003年に発行された書籍等は,皆無である。

2004年には,雑誌「Scawaii」「SAVVY」等(甲19,甲18,甲70)に「アクア」所属のホストが取上げられているが,2005年中に発行された書籍等は,皆無である。

2005年末に,「Club ACQUA TOKYO」が開店し,2006年中には,その所属ホスト又は芳晶氏が複数の雑誌(甲30,甲24,甲25,甲21等)に取上げられるとともに,「Club ACQUA」と表記されたDVD(甲41)1本が発売された。この年に,芳晶氏は3冊の書籍(甲8,甲7,甲46)を発売している。

2006年の後半に差し掛かるにつれ,「Club ACQUA」の所属ホストが雑誌に取上げられることが少なくなる一方で,音楽バンド「AcQuA−E.P.」が取上げられた雑誌(甲51〜甲53,甲28)が増えていった。

2007年に入ると,雑誌「nadesico」(甲31)に芳晶氏が取上げられているが,2006年のように複数の雑誌に取上げられることはなく,その他は,「関西マンゾクパラダイス」10冊(甲72〜甲81)に「Club ACQUA」の広告が掲載され,雑誌「アリーナ サーティセブン スペシャル」(甲54〜甲56)に「AcQuA−E.P.」が取上げられているだけであった。

2008年1月には,雑誌「シティヘブン関西版」に「Club ACQUA」(大阪)の所属ホストが取上げられたが,その後は,「関西マンゾクパラダイス」1冊(甲83)に「Club ACQUA」の広告が掲載されただけである。なお,同年,所属ホストを特集したDVD(甲43)と写真集(甲48)が発売された。

2009年以降は,雑誌「Men’s SPIDER」(甲32〜甲40)に「Club ACQUA」の求人広告が掲載されただけであり,2011年7月の「Men’s SPIDER」(甲40)以降の証拠はない。なお,2011年3月末には,「Club ACQUA TOKYO」が閉店している。

イ 以上のことから,引用商標「Club ACQUA」の知名度は,それが周知に至ったかどうかは別として,2006年がピークであり,それを維持した期間は極めて短かったということである。このことは,ホストの所属人数からも明らかである。ホストクラブの規模は,ホストの所属人数が指標の1つになり得るところ,請求人の「Club ACQUA」の所属ホスト人数は,2006年後半の約250名(甲18)がピークで,2007年始めに約180名(甲73),2008年中頃に約150名(甲83),2009年始めに約60名(甲32)というように減少の一途を辿っている。「Club ACQUA TOKYO」の閉店後,所属ホスト人数はさらに減少して35名になり(乙1),現在では,22名までに減っている(乙2)。

(2)「AcQuA−E.P.」の記事について

「AcQuA−E.P.」の記事(甲28,甲51〜甲56)は,引用商標「Club ACQUA」の周知性獲得に寄与しない。

これらの記事には,「Club ACQUA」についての記載は見当たらず,「Club ACQUA」と「AcQuA−E.P.」の関連性を見出すことは不可能である。「Club ACQUA」と「AcQuA−E.P.」の関連性が示唆されているものは,ORICON STYLEのWEB上の記事(甲50)のみである。しかし,この記事のみをもって,両者の関連性が周知されたということはできるはずがない。

よって,「AcQuA−E.P.」の記事は,引用商標「Club ACQUA」とは無関係であり,その周知性獲得に寄与しないとされるべきものである。

(3)雑誌「Men’s SPIDER」の求人広告について

商標法第4条第1項第10号及び同第19号では,「『需要者』の間に広く認識されている」ことを要し,需要者には取引者も含むとされている。

ここで,引用商標「Club ACQUA」が使用された対象は,ホストクラブであり,その需要者は,ほぼ全てが女性である。

しかし,雑誌「Men’s SPIDER」(甲32〜甲40)は,20代前後の男性向けファッション誌であり,需要者である女性が主たる購読者層に含まれていないことは明らかで,当該雑誌に掲載された求人広告は,「Club ACQUA」の需要者に対する周知性獲得に何ら寄与していない。

仮に,当該雑誌を読む女性がいたとしても,当該求人広告には,「関西マンゾクパラダイス」等(甲68等)に記載されているような利用料金の記載もなく,従業員募集の意図しか読み取れないから,需要者に対する広告として機能し得ない。

一方で,購読者層である20代前後の男性に対し広告がなされたという主張も可能であろうが,以下の理由より,当該事実は,引用商標「Club ACQUA」の周知性獲得に何ら寄与するものではない。何故ならば,まず,男性はホストクラブの主な顧客ではなく,また,引用商標が対象とするものは「飲食物の提供」という役務であり,所属ホストである従業員は,その役務を提供する者であるから,従業員候補として捉えられる購読者層の男性は「需要者」に該当しないからである。

よって,雑誌「Men’s SPIDER」に掲載された求人広告は,引用商標「Club ACQUA」の需要者に対する周知性獲得に何ら寄与するものではない。

(4)小括

上記のとおり,引用商標「Club ACQUA」の知名度は,2006年がピークであり,その2006年においても,その所属ホスト又は芳晶氏が取上げられた雑誌が9冊,芳晶氏が著者の書籍が3冊,DVDが1本発売されただけである。これを以て,引用商標「Club ACQUA」が周知になったとはいえるはずがないし,まして,全国的にホストクラブの需要者のみならず一般大衆の間で広く知られるに至ったはずがない。仮に,周知になったものであったとしても,それは極めて短い期間の一過性のものに過ぎない。

また,2006年のピークを過ぎ,請求人の「Club ACQUA」の規模が縮小していくにつれ,メディア掲載回数も減り,2008年の後半以降は,求人広告(甲32〜甲40)しかなされていない。なお,当該求人広告が引用商標「Club ACQUA」の周知性獲得に寄与し得ないことは上述のとおりである。

そうすると,2008年後半から本件商標の出願時である2014年1月までの約5年,遅くとも,登録査定時である2014年5月までの約5年半もの間,引用商標「Club ACQUA」は,大規模な広告等が何らなされなかったことになる。そして,現に,請求人の「Club ACQUA」の規模は,所属ホスト人数が22人になるまでに縮小している(乙2)。よって,引用商標「Club ACQUA」における請求人の役務の出所を示すものとしての周知性は,元より発生していなかったか,あるいは既に消滅しており,少なくとも,全国的に効力の及ぶ商標権を無効にせしめる程の高い周知性は,断じて有するものではない。

2 不正の目的の有無について

「不正の目的をもって使用する商標」であるか否かは,「他人の周知・著名商標と同一又は類似であり,かつ,他人の周知・著名商標が造語であるとき又は構成上顕著な特徴を有するものであるときは不正の目的の存在を推認する。」とされている。

しかし,上述のとおり,引用商標「Club ACQUA」が,遅くとも本件商標の登録査定時に周知性を有していなかったことは明らかである。

また,引用商標は,「Club ACQUA」の文字の両端に,左右対称の,植物のつるをモチーフにした図形を配した構成を有するものであるが,「水」を意味する「ACQUA」の文字部分が造語でないことは明らかであり,つるの部分がそれ自体で出所表示機能を有する程の「顕著な特徴」を有するものでもない。

また,請求人は,不正の目的の存在の証拠として,ホストクラブ紹介・ホスト求人サイト「ほすほす」(甲14)の被請求人の「Club ACQUA」のページに「かつてホスト業界を震撼させた『ACQUA』が歌舞伎町に再降臨!!」と表示されていたことを主張する。

しかし,当該部分の記載は,「ほすほす」を運営する株式会社K.E.Gによるものであり,被請求人が指示を行ったものではなく,被請求人の意思によるものではない。「ほすほす」のサービスは,固定の月額料金を支払うのみで,掲載内容を含め,運営会社が全て請け負うものだからである(乙3)。なお,現在,そのような表示はなされていない(乙4)。

また,被請求人の「Club ACQUA」は,2015年2月時点で,従業員は代表取締役の渡辺氏のみであったが(甲14),同年9月末時点では,合計30名の従業員が所属しており,さらに,2店舗目のオープンも予定されている(乙4)。これは,請求人の引用商標とは無関係に,被請求人の営業努力によって実現されたものである。本件商標には,既に,保護されるに値する被請求人固有の信用が化体しているものである。

以上より,本件商標が,「不正の目的をもって使用する商標」に当たらないことは明らかである。

3 総括

上記のとおり,引用商標は,遅くとも本件商標の登録査定時には周知ではなく,また,被請求人に不正の目的はないから,本件商標には,商標法第4条第1項第10号及び同第19号の無効理由が存在しない。

第4 当審の判断

1 引用商標について

請求人は,引用する商標の態様を具体的に特定していないが,甲第6号証によれば「Club ACQUA」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。),及び別掲2のとおりの商標(以下「引用商標2」といい,両者をあわせて引用商標という。)を引用したものと判断し,以下検討することとする。

2 引用商標の周知性について

(1)請求人及び被請求人提出の証拠及び両人の主張によれば,次の事実を認めることができる。(当事者間に争いのない事実を含む。)

ア 請求人は,遅くとも2000年(平成12年)10月頃には,大阪市都島区東野田町でホストクラブ「クラブアクア」(ただし,「Club ACQUA」の欧文字は確認できない。)を営み,その後,大阪市北区曽根崎に移転し,遅くとも2001年(平成13年)2月には店名を「Club ACQUA」とした(甲47,甲57)。

イ 請求人は,2005年(平成17年)11月に東京都新宿区歌舞伎町に「Club ACQUA」東京店をオープンし,2011年(平成23年)3月に同店を閉店した(甲8,甲10,甲12)。

そして,請求人は,現在,大阪において1店舗を営業している(甲4)。

ウ 2006年(平成18年)には,多くの雑誌などで請求人の店「Club ACQUA」自体,あるいは同店のホスト及び芳晶氏に係る記事等で同店名が多数紹介された(甲25,甲29,甲31ほか)ものの,2009年(平成21年)以降に同店に係る情報が新聞,雑誌等に掲載されたのは,2011年(平成23年)までの3年間で従業員等の求人に係る広告9件が確認できる(甲32〜甲40)のみである。

エ 請求人の代表者である芳晶氏は,「夜王塾」(甲7),「一億欲しいか!」(甲8)及び「オレに聞け!」(甲44)の書籍を著作している。

オ 甲第50号証によれば,「現役ホストグループ、AcQuA−E.P.がデビュー作で快挙!」の見出しの上に「2006−10−03」と日付とおぼしき記載があり,さらに「東京・大阪に店舗を構える日本No.1のホストクラブ『club AcquA』のトップホスト8名から構成されるバンド,AcQuA−E.P.のデビューシングル『禊−MISOGI−』が3.0万枚を売上げ、3位に初登場。」と記載されており,これに関連する証拠は「WHATs‘IN」(甲52,甲53)や「ARENA37°C SPECIAL」(甲54〜甲56)等の雑誌に掲載されており,最も新しいもので2007年9月の発行(甲56)である。

カ その時期は明らかではないが東京店が営業している頃,大阪及び東京の両店を併せたホストの数は約250名(甲17)であり,その後,2007年(平成19年)6月頃は両店の従業員数200名以上(甲77),2008年(平成20年)7月頃は同じく従業員数150名以上(甲83),2009年(平成21年)4月頃は同じくスタッフ60名(甲32),東京店閉店後の2011年(平成23年)8月は大阪店のホスト数35名(乙1)であった。

なお,2015年(平成27年)10月の(大阪店の)ホスト数は22名であった(乙2)。

キ 引用商標1は,平成2001年以降,店名として,またその広告などに継続して使用されていると推認でき(甲57ほか),引用商標2は,2010年3月以降申立人等の店舗の広告に継続して使用していることが窺える(甲34,乙2)。

ク しかしながら,請求人の店舗の売上額及び来店者数など具体的な営業実績を示す証左の提出はなく,その主張もなされていない。

(2)上記(1)の事実からすれば,引用商標1及び2は,平成19年(2007年)頃にはホストクラブの店名として一定程度知られていたことが認められる。

しかしながら,平成21年(2009年)以降の申立人等のホストクラブ「Club ACQUA」に係る情報の新聞,雑誌等への掲載状況は,上記(1)ウのとおりであり,2012年(平成24年)以降は見いだせない。

また,上記(1)オのとおり,音楽グループの「AcQuA−E.P.」の情報についても,2007年9月の発行(甲56)が最後でこれ以降の掲載は見いだせない。

さらに,請求人の従業員等の推移状況は,上記(1)カのとおりであり,年々減少しており、平成25年10月には22名のホスト数になっている。

加えて,請求人の営業実績等を示す証左が確認できないことからすれば,引用商標1及び2は,いずれも,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,他人(請求人)の業務に係る役務であることを表示するものとして,我が国はもとより外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

3 商標法第4条第1項第10号について

(1)本件商標と引用商標の類似性

ア 本件商標

本件商標は,前記1のとおり,左右対称になるように植物のつるをモチーフにした図形の間に,「Club」及び「AcquA」の欧文字を上下二段に書してなるところ,該文字部分は,「AcquA」の文字の両端の「A」の文字を他の文字の約2倍の高さに表し,その高さに合わせて「Club」の文字を中央に配した構成態様であるから,該「Club AcquA」の文字部分より「クラブアクア」の称呼が生じるものである。

そして,「Club」の文字は,「クラブ,同好会,会員制組織」等を意味する語であり,「ACQUA」の文字は,「水,液,溶液」等を意味する語(共に,小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 株式会社小学館)であるが,これらの文字を結合した該「Club AcquA」の文字は,特定の意味を有さない造語とみるのが相当であるから,これよりは,特定の観念が生じないものである。

イ 引用商標1

引用商標1は,上記1のとおり,「Club ACQUA」の欧文字からなるところ,該「Club ACQUA」の文字より「クラブアクア」の称呼が生じるものである。

そして,「Club」の文字及び「ACQUA」の文字は,上記アのとおりの意味を有する語であるが,これらの文字を結合した該「Club ACQUA」の文字は,特定の意味を有さない造語とみるのが相当であるから,これよりは,特定の観念が生じないものである。

ウ 引用商標2

引用商標2は,上記1のとおり,左右対称になるように植物のつるをモチーフにした図形の間に,「Club」及び「AcquA」の欧文字を上下二段に書してなるところ,該文字部分は,「AcquA」の文字の両端の「A」の文字を他の文字の約2倍の高さに表し,その高さに合わせて「Club」の文字を中央に配した構成態様であるから,該「Club AcquA」の文字部分より「クラブアクア」の称呼が生じるものである。

そして,「Club」の文字及び「ACQUA」の文字は,上記アのとおりの意味を有する語であるが,これらの文字を結合した該「Club AcquA」の文字は,特定の意味を有さない造語とみるのが相当であるから,これよりは,特定の観念が生じないものである。

エ 本件商標と引用商標について

本件商標と引用商標1は,植物のつるをモチーフにした図形の有無の差異はあるとしても,「Club」及び「AcquA」の文字を共通にするものであって,当該文字部分においては,大文字と小文字の違いはあるものの,同じつづりからなる欧文字で構成されるものであるから,外観上,近似した印象をあたえるものである。

また,称呼においては,本件商標より「クラブアクア」の称呼が生じ,引用商標1からも,「クラブアクア」の称呼が生じるものであるから,共に,「クラブアクア」の称呼を共通にするものである。

そして,観念においては,両商標とも,特定の観念を生じないものであるから,比較することはできない。

本件商標と引用商標2は,「Club」及び「AcquA」の文字を共通にするもので,かつ,両商標の構成態様も一番外側に,植物のつるをモチーフにした図形を左右に配し,その内側に他の文字より約2倍程度大きな「A」の文字の内側に「Club」の文字を挟んでなる構成態様であるから,外観上,極めて類似するものである。

また,称呼においては,本件商標より「クラブアクア」の称呼が生じ,引用商標2からも,「クラブアクア」の称呼が生ずるものであるから,共に,「クラブアクア」の称呼を共通にするものである。

そして,観念においては,両商標とも,特定の観念を生じないものであるから,比較することはできない。

してみると,本件商標と引用商標1とは,観念においては比較できないが,外観が近似しており,称呼は同一であるから,相紛らわしい類似の商標といわざるを得ないものであり,また,本件商標と引用商標2とは,観念においては比較できないが,外観が極めて類似し,称呼は同一であるから,極めて相紛らわしい類似の商標といわざるを得ないものである。

(2)商標法第4条第1項第10号該当性

上記エのとおり,本件商標と引用商標1とは,相紛らわしい類似の商標といわざるを得ないものであり,また,本件商標と引用商標2とは,極めて相紛らわしい類似の商標であると認められるものであるが,上記2のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,他人(請求人)の業務に係る役務であることを表示するものとして,需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当するものということはできない。

4 商標法第4条第1項第第19号について

(1)不正の目的

ア 請求人の主張及び提出された甲第14号証によれば,商標権者(被請求人)の求人説明会(甲14)において,「ACQUA(アクア)のナンバー&スタッフ紹介,歌舞伎町ホストクラブ,かつてホスト業界を震撼させた『ACQUA』が歌舞伎町に再降臨!!」の記載があり,被請求人は,このようなキャッチコピーを用いて,あたかも請求人が運営する「Club ACQUA」が歌舞伎町に復活したかのように,取引者,需要者に認識されるような求人説明会の広告を行っていた旨,主張している。

イ また,請求人は,「被請求人の代表者である桐也けん氏は,請求人が経営していた「Club ACQUA」東京店でホストをしていた人物であるから,請求人が経営するホストクラブが「Club ACQUA」という店名を使用していたこと,そのロゴマークについては熟知していたとみるのが自然である。」旨,主張している。

ウ さらに,請求人は,「被請求人が経営する『Club ACQUA』の支配人である桐也かずや氏の2015年1月17日のブログにおいては,『ACQUA復活』のタイトルの下,『皆様 ACQUA 復活だぞー』の記載があり,同じく被請求人が経営する『Club ACQUA』のスタッフであるMAX氏の2015年1月25日のブログにおいては,『そうそうACQUA復活しまーす \(^O^)/え?ACQUA?そうです!あのホストClub ACQUAです』とコメントしている(甲86〜甲88)。」旨,主張している。

しかしながら,請求人は上記のとおり,インターネット情報やブログの情報を根拠に不正の目的があったと主張をしているが,他に不正の目的をもって使用していたことを証明する具体的な証拠の提出はない。

(2)商標法第4条第1項第第19号該当性

上記「3(1)エ」によれば,本件商標と引用商標1とは,相紛らわしい類似のものであり,また,本件商標と引用商標2とは極めて類似していることが認められるが,引用商標は,上記2のとおり,引用商標が過去において,需要者の間において一定程度知られていたことは推認できるものの,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,他人(請求人)の業務に係る役務であることを表示するものとして,我が国はもとより外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであるから,引用商標に化体された業務上の信用及び顧客吸引力は認められないものである。

そうすれば,被請求人が,引用商標が未だ我が国において商標登録されていないことを奇貨として,それに化体された業務上の信用と顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し,不正の利益を得る目的など,不正の目的のために,引用商標と類似する本件商標を先に登録出願し,設定登録を受けたものとは認めることができないものである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものということはできない。

5 なお,請求人は,審理終結通知後に平成28年1月29日付け弁駁書を提出し,請求人が経営するホストクラブ「Club ACQUA」自体,あるいは所属する人気ホストが種々メディアで取り上げられ,出演していたものであるから,これらも引用商標の周知性を裏付けるものである(甲89〜甲103)旨,主張している。

そこで,これを検討するに,請求人が提出した甲第90号証ないし甲第103号証は,請求人の代表者及び当時のホストらが,日本テレビの番組及びTBSテレビの番組等のメディアに取り上げられ,出演していたものであるが,その出演した日付は,2005年から2007年までのもので,2006年が最も多く,最新のものでも2007年7月28日と思われる日付が最後である(甲91)。

そうすると,上記期間(2005年ないし2007年)において,請求人の代表者及び当時のホストらが,種々のメディアに取り上げられていることはうかがい知ることができても,引用商標の周知性を裏付ける直接の証拠とはならないし,仮に,上記期間内に引用商標がホストクラブの店名として一定程度知られていたとしても,上記期間以降について,請求人は,何ら引用商標が周知であることを立証する証拠の提出がない。

したがって,上記弁駁書の内容によって前記判断に影響を与えるものとみることはできないから,審理再開の必要は認めないものである。

6 むすび

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえないから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすることはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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