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Trademark Appeal Case

著名商標と付加文字の混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2015−14824(T2015−14824/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「花燃ゆ物語」の文字を標準文字で表してなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒,焼酎」を指定商品として、平成25年12月24日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨

原査定は、別掲1の新聞記事情報及びインターネット記事情報を示した上で、「本願商標の構成中の『花燃ゆ』の文字部分は、日本放送協会(NHK)が2015年に放映する予定のオリジナル脚本に基づく大河ドラマのタイトルとして、本願商標の登録出願前より取引者、需要者間に広く認識されているものである。そして、本願商標は、日本放送協会(NHK)の大河ドラマのタイトルを表示する著名な商標である『花燃ゆ』の文字に『物語』の文字を付け加えたにすぎないものであるから、これをその指定商品に使用するときは、その商品があたかも『日本放送協会(NHK)』又は同協会と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 商標法第4条第1項第15号における「混同のおそれがある商標」の解釈について

商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。

そして、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号)と解されている。

2 「花燃ゆ」の著名性について

「花燃ゆ」の文字は、日本放送協会(以下「NHK」という。)が2015年に放映する大河ドラマのタイトルとして使用されているものであり、該大河ドラマの制作発表を2013年12月3日に行ってから、別掲1のとおり、原審において提示した新聞記事情報及びインターネット情報以外にも、別掲2のとおり、各種メディアで取り上げられており、そのタイトルが急速に日本全国に広まったといえるものである。

そして、大河ドラマ「花燃ゆ」は、別掲3のとおり、2015年1月4日の放映開始以来、全50回の期間平均視聴率が関東地区で12.0%、関西地区で13.0%を記録し、該大河ドラマを収録したブルーレイディスク及びDVDが2015年8月19日に発売されることが報道されるなど、人気となっているドラマといえるものである。

そうすると、「花燃ゆ」の語は、NHKが放映する大河ドラマのタイトルとして、本願の登録出願前及び現在において、高い著名性を有するといえるものである。

また、別掲4のとおり、大河ドラマ「花燃ゆ」の関連グッズは、広範な分野における商品に及んでいる実情があり、さらには、別掲5のとおり、テレビ番組の関連グッズには、飲食料品関係の商品が取引されている実情もある。

してみると、「花燃ゆ」の文字は、大河ドラマのタイトルとしてのみならず、テレビ番組の関連グッズなど広範な商品及び役務の分野においても、著名性を有するといえるものである。

3 本願商標について

本願商標は、「花燃ゆ物語」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「花燃ゆ」の文字部分が、上記2のとおり、NHKの大河ドラマのタイトルとして著名なものであり、また、「物語」の文字部分が「作者の見聞または想像を基礎とし、人物・事件について叙述した散文の文学作品。」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)等を意味するものとして一般に慣れ親しまれた語であるといえることから、「花燃ゆ」と「物語」の文字が結合してなるものと直ちに把握、理解できるものである。

そして、「花燃ゆ」の文字部分についてみるに、「燃ゆ」の語が「燃える」の文語形であり、「燃える」の語が「炎のような光を放つ。」等の意味を有するもの(「大辞泉 増補・新装版」小学館発行)であり、俳句や短歌などで、例えば、「彼岸花燃ゆ」などのように「彼岸花が燃えるように赤く咲き誇っていること」ほどの意味合いを表す比喩表現で使用されていることは認められるものの、一般に上記ドラマのタイトル以外に「花燃ゆ」の語が多数使用されている事実を見いだすことはできない。

してみると、「花燃ゆ」の文字部分は、一般に慣れ親しまれた語ではないこと及びNHKの大河ドラマのタイトルとして著名な表示であることに鑑みると、「花が燃えるように咲くこと」の意味合いを有する比喩表現を認識するものというよりは、むしろ、NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」を容易に想起するものとみるのが相当である。

また、「物語」の文字部分についてみるに、その構成中の「花燃ゆ」の文字部分がNHKの大河ドラマのタイトルとして著名な表示であり、「物語」の語が上述の意味であることを考慮すると、物語である大河ドラマのタイトルの後に表されている「物語」の文字部分が強い識別力を発揮するものとはいい難いものである。

そうすると、本願商標は、「花燃ゆ」の文字部分が看者に強く支配的な印象を与えるといえるものであり、NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」を認識させるものというのが相当である。

4 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記1ないし3を踏まえ、本願商標の商標法第4条第1項第15号該当性について検討する。

本願商標は、その構成中の強く支配的な印象を与える「花燃ゆ」の文字部分が、NHKの大河ドラマのタイトルとして、本願の登録出願前及び現在においても著名な表示といえる「花燃ゆ」の語と同一であることから、本願商標と該著名な表示との類似性は高いものといえるものであり、そして、該語は一般的に使用されているものではないことから独創性が高いものともいえる。

そして、本願の指定商品は、上記2における大河ドラマ「花燃ゆ」及びテレビ番組の関連グッズにおける取引の実情を考慮するならば、本願の指定商品とNHKの大河ドラマの放送とは、少なからず関連性があるといえる。

そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者が、その構成中の「花燃ゆ」の文字より、大河ドラマのタイトルとして著名な表示「花燃ゆ」を容易に想起し、NHKの取り扱いに係る商品であると誤信するか又はNHK関連グッズの商品化を行っているグループ会社、あるいは、NHKとの契約の下、「花燃ゆ」の商品化の事業を行っている業者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるといえることから、商品の出所の混同を生ずるおそれがある商標といわなければならない。

したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

5 請求人の主張について

(1)請求人は、本願商標について、赤色の「花」が咲き誇っている状態を「燃える(文語では「燃ゆ」)」で表すことは、日本語の比喩表現としてごく一般的であるから、「花燃ゆ」の語は、NHK独自のこれまでにない造語というわけではなく、日本語の比喩表現のうちの一つであるから、独創的なものではない。また、本願商標は、「物語」の文字と組み合わされた本願商標全体からは「花が燃えるように咲き誇っていることについて話し語ること(物語)」程度の一体とした観念が生ずるものであり、単なる「花燃ゆ」の文字とは、外観はもとより,称呼及び観念のいずれの点においても明らかに区別することができる別異のものであるから、類似性の程度は低いものであり、かつ、本願の指定商品は、「酒類」であるから、テレビの放映とは関連性の程度は低い旨主張する。

しかしながら、本願商標は、上述のとおり、その構成中の「花燃ゆ」の文字部分が一般的に使用されているような語ではないことから、創造性は高いものといえるものであり、さらには、NHKの大河ドラマのタイトルとして著名な表示と同一であることから、類似性は高いといえるものである。

そして、本願の指定商品は、テレビ関連グッズの取引の実情からすると、少なからず関連性があるといえるものである。

(2)請求人は、大河ドラマは、その題材となった歴史上の人物等の出身地や関連地域において、放映に合わせて町おこしや特産品のアピールがなされており、NHKと関係のない一般の事業者により商品が開発されている。本願商標のように「花燃ゆ」の語に自他商品識別力を有する別の語を組み合わせた商標は、一般の事業者によってあらゆる商品又は役務に使用されているのが取引の実情である。請求人も毎年大河ドラマにちなんだ商品を開発し、本願商標を使用した商品は「第13弾」(甲9)であるところ、NHK又はNHKと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく出所の混同を生じたことはない旨主張する。

しかしながら、上記1のとおり、商標法第4条第1項第15号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、NHKと何ら関係を有しない者に対して、NHKの著名な表示「花燃ゆ」と混同を生ずるおそれがある商標について登録を許すことは、その目的に反するものであるといわなければならない。

加えて、請求人は、毎年NHKの大河ドラマにちなんだ商品を開発しており、本願商標を使用した商品は「大河ドラマシリーズ第13弾」と記載されている(甲9)ことから、請求人は、本願商標の構成中の「花燃ゆ」の文字部分については、明らかにNHKの大河ドラマのタイトルから採択したものと認められる。そして、請求人には、大河ドラマ「花燃ゆ」との関連性を見いだし得ない実情をも考慮すると、本願商標は、大河ドラマの放映に合わせて地域活性化や町おこしなどを意図して採択されたものというよりも、該著名な表示の持つ顧客吸引力にただ乗りする意図があったものと推認せざるを得ないものである。

(3)請求人は、株式会社キューピーが使用して著名な表示「キューピー」をその構成中に含む商標「キューピー物語」について商標法第4条第1項第15号該当性が争われた拒絶査定不服審判事件において、商品の出所の混同を生じるおそれはないと判断された審決(甲3)に照らせば、本願商標も同様に登録されるべきものである旨主張する。

しかしながら、上記審決とは、商標の構成中に「物語」を含むということでは共通するものの、本願商標は、「花燃ゆ」の文字部分がNHKの著名な表示と出所の混同を生ずるおそれがあるか否かについて判断したものであり、その事案を異にするものであるから、該審決の判断を踏まえて本願商標を登録しなければならない理由はない。

(4)以上のとおり、請求人の主張は、いずれも採用することができない。

6 まとめ

以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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