Trademark Appeal Case
エイジング保湿の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2015−14043(T2015−14043/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「エイジング保湿」の文字を標準文字で表してなり、第3類「口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,つけづめ,つけまつ毛,化粧用コットン,化粧用綿棒」を指定商品として、平成26年6月5日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『加齢(エイジング)に対応した保湿』の意味合いを理解・認識させる『エイジング保湿』の文字を標準文字で表してなるところ、本願の指定商品中の『化粧品』との関係において、該意味合いを表示するものとして使用されている事実が認められるから、これを本願の指定商品中の『加齢に対応した保湿をする化粧品』に使用するときは、商品の品質・用途を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の『化粧品』に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における手続の経緯
当審において、請求人に対し、平成27年11月30日付けで、別掲1ないし3のとおりの事実を示した上で、要旨次の内容のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるとして、期間を指定して、これに対する回答を求める審尋を行った。
本願商標は、「エイジング保湿」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「エイジング」の文字部分は、「加齢、老化」(「コンサイスカタカナ語辞典 第4版」三省堂発行)等を、また、「保湿」の文字部分は、「角層保湿機能を補い,角層水分量の低下を防ぐこと.保水ともいう.肌にうるおいを与えることであり,スキンケア化粧品の主要な効果の一つである.」(「化粧品事典 初版」丸善発行)等を意味するものである。
そして、本願商標は、その指定商品である「化粧品」の分野においては、別掲1のとおり、「エイジング保湿」の語が、「老化を防止するための保湿」や「加齢に合わせた保湿」ほどの意味合いで使用されている。
また、本願商標の構成中の「エイジング」の文字は、別掲2のとおり、「エイジング化粧品」及び「エイジングコスメ」の語の使用において、「加齢(老化)に伴う肌の悩みを解決すること」や「加齢(老化)による衰えに対し肌を整えること」といった、いわゆる「エイジングケア」に関すること等が商品の紹介や効果の説明で使用されており、これらの商品の説明には、保湿により肌の状態を良くすることが記載されている実情がある。
そうすると、本願商標は、その構成中の「エイジジング」の文字のみでは「加齢(老化)に対応すること」ほどの意味合いを、そして、「エイジグ保湿」の文字全体では「加齢(老化)に対応した保湿」ほどの意味合いを容易に認識させるといえるものである。
さらに、本願の指定商品「せっけん類」の分野においても、別記3のとおり、「エイジングケア」と「保湿」の語が、商品「洗顔用のせっけん」に使用されており、該商品は「化粧品」と生産者、需要者等を同じくすることが多いといえることから、本願商標は、「せっけん類」との関係においても、「加齢(老化)に対応した保湿」ほどの意味合いを容易に認識させるといえるものである。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品中の「加齢(老化)に対応した保湿をする化粧品」及び「加齢(老化)に対応した保湿をするせっけん類」に使用しても、これに接する取引者、需要者に、「加齢(老化)に対応した保湿」であることを把握、理解されるにとどまるものといえることから、商品の用途、品質を認識させるにすぎないものといわなければならない。
そして、本願商標は、標準文字により表されてなるから、その書体に特徴があるわけではない。
したがって、本願商標は、その指定商品中の「加齢(老化)に対応した保湿をする化粧品」及び「加齢(老化)に対応した保湿をするせっけん類」に使用するときは、商品の用途、品質を普通に用いてなる方法で表示する標章のみからなる商標といえるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標は、これを「加齢(老化)に対応した保湿をする化粧品」及び「加齢(老化)に対応した保湿をするせっけん類」以外の「化粧品」及び「せっけん類」に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあることから、商標法第4条第1号第16号に該当する。
4 審尋に対する請求人の回答の要点
請求人は、前記3の審尋(以下「審尋」という。)に対し、要旨以下のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではない旨の意見を述べている。
(1)「エイジング保湿」の文字は、一般的に使用されている事実はない。審尋で示された事実についても、その事実のうち「エイジング保湿クリーム」、「エイジング保湿ケア」、「エイジング保湿パック」及び「エイジング保湿液」の使用例については、「保湿クリーム」、「保湿ケア」、「保湿パック」及び「保湿液」が化粧品分野で一般的に使用されている名詞であることからすると、「エイジング保湿」といった語の使用事実を示すものとはいえない。それ以外の事実については、化粧品のランキングを紹介するといったウェブサイトにおける「エイジング保湿シリーズ」の使用例僅か一箇所と、「薬用・エイジング保湿ハリ艶専用リフトケアゲル」といった、もはや日本語としてどこで区切れるのかが不明であり、「エイジング保湿」の使用例と認定すべきか怪しいものである。
(2)商標法第3条第1項第3号の適用に関し、同号が記述的商標の登録を拒絶するのは、「そのような商標が商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから」(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決)であるが、直接的にではなく、間接的に過ぎないものであれば、たとえ品質等を表示するとしても「取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するもの」とはいえないことから、そのような商標であれば、事業者間で一般的に使用されることは想定できないし、また、それが故に独占適応性に欠けるものではない。
そこで、本願商標は、「加齢(老化)に対応した保湿」といった意味合いと同時に「老化によって機能が損なわれた肌の保湿」といった意味合いをも併せて生じるものであり、多義的で漠然とした内容の表示で特定の意味合いを需要者に明確に伝達することができないことから、商品の品質等を直接的に表示する商標ではなく、間接的に暗示させるに過ぎない。これは「取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するもの」には当たらない。
したがって、本願商標はその意味合いの定まらない漠然とした内容のものであって、それが故に事業者等が自らの商品の品質等を需要者に伝える目的の表示としては不適切と考えているためそのような目的での使用を欲しないからと考えるのが自然である。
(3)平成19年12月26日の知財高裁の判決において、審判の審理構造及び審理対象について、「審判体において、拒絶査定不服審判の請求が成り立たないとの結論を導くためには、意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項、2項など)のいずれかに該当する理由(該当するとの判断に至った論理の過程)を明示することを要する。そして、同条項に該当すると判断するに至った論理の過程を明示するということは、審判体において、(1)前提となる法律の解釈に疑義がある場合には、当該法条の解釈を示すこと、(2)法条の要件に該当する事実が存在することを明らかにすること、(3)事実を法条に適用した結果として、意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項、2項など)に該当するとの論理の過程が成り立つ点を明示することを含む。審判体は、この論理過程を説明する責任を負担し、文書をもって明示することを要する(意匠法52条、特許法157条)」と判示されていることから、商標登録出願に係る拒絶査定不服審判事件においても同様に当てはまることは論を俟たない。今回の審尋の内容は、(1)と(3)の要件を充足しておらず、本願商標から「加齢(老化)に対応した保湿」との意味合いが生じる事実があるとしても、それが唯一、あるいは、少なくとも需要者が認識する最も自然な意味合いであるといった認定ではない。また、当該「(3)事実を法条に適用した結果として、商標法15条所定の条項(例えば同法3条1項3号など)に該当するとの論理の過程が成り立つ点を明示すること」が行われていない。つまり、確かに本願商標から他の意味合いが生じ多義的で漠然としている場合にも、なお同号の適用が可能かの点ついて明快な論理付けを欠いていて、「(1)前提となる法律の解釈に疑義がある場合には、当該法条の解釈を示すこと」が行われていない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「エイジング保湿」の文字を標準文字で表してなり、その書体に特徴があるものではなく、普通に用いられる方法で表示するものであると認められる。
そして、本願商標は、前記3のとおり、別掲1ないし3に示した事実のとおり、「化粧品,せっけん類」の取引の実情を踏まえれば、本願の指定商品中の「化粧品,せっけん類」との関係では、これに接する取引者、需要者が「加齢(老化)に対応した保湿」であることを容易に認識するものとみるのが相当である。
そうすると、本願商標は、その指定商品のうち「加齢(老化)に対応した保湿をする化粧品」及び「加齢(老化)に対応した保湿をするせっけん類」に使用しても、「加齢(老化)に対応した保湿」という商品の用途、品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであって、取引に際し必要適切な表示であるものと認められるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品識別力を欠くものというべきである。
したがって、本願商標は、その指定商品中の「加齢(老化)に対応した保湿をする化粧品」及び「加齢(老化)に対応した保湿をするせっけん類」に使用するときは、商品の用途、品質を普通に用いてなる方法で表示する標章のみからなる商標といえるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標は、これを「加齢(老化)に対応した保湿をする化粧品」及び「加齢(老化)に対応した保湿をするせっけん類」以外の「化粧品」及び「せっけん類」に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあることから、商標法第4条第1号第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「エイジング保湿」の文字が、一般的に使用されている事実はないし、審尋において示された事実についても、「エイジング保湿シリーズ」の例以外は、「エイジング保湿」の使用とはいえないものである旨主張する。
しかしながら、請求人が理由として挙げている「エイジング保湿クリーム」、「エイジング保湿ケア」、「エイジング保湿パック」及び「エイジング保湿液」の例についても、「クリーム」、「ケア」、「パック」及び「液」のみでも化粧品の分野では一般的に使用された名詞であり、それぞれが「エイジング保湿」(「加齢(老化)に対応した保湿」)のためのものであることを表しているものと理解されるといえる。すなわち、審尋において示した事実は、「エイジング保湿」の語に他の語を伴うものであるが、他の語を伴ったからといって、そこに表された文字から、それに接する看者は何らかの意味を認識するものであって、「化粧品,せっけん類」の取引の実情を踏まえれば、「エイジング保湿」の文字が「加齢(老化)に対応した保湿」であることを認識させるにとどまることは、前記3のとおりである。
イ 請求人は、商標法第3条第1項第3号の適用に関し、同号が記述的商標の登録を拒絶するのは、「そのような商標が商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから」(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決)であるが、たとえ商標が品質等を表示するとしても、直接的にではなく、間接的に過ぎないものであれば、「取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するもの」とはいえないことから、そのような商標であれば、事業者間で一般的に使用されることは想定できないし、また、それが故に独占適応性に欠けるものではない。そして、本願商標は、「加齢(老化)に対応した保湿」といった意味合いと同時に「老化によって機能が損なわれた肌の保湿」といった意味合いをも併せて生じるものであるから、意味合いの定まらない漠然としたものであって、事業者等が自らの商品の品質等を需要者に伝える目的の表示としては不適切と考えているためそのような目的での使用を欲しないからと考えるのが自然である旨主張する。
しかしながら、本願商標は、「化粧品,せっけん類」の取引の実情を踏まえれば、「エイジング保湿」の文字が「加齢(老化)に対応した保湿」という商品の用途、品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであって、取引に際し必要適切な表示であるものと認められるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品識別力を欠くものというべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当すること、上記(1)のとおりである。また、請求人の本願商標から「老化によって機能が損なわれた肌の保湿」との意味合いも生じるのであるから、意味合いの定まらない漠然としたものである旨の主張は、審尋においては、本願商標は、「老化を防止するための保湿」や「加齢(老化)による衰えに対し肌を整えるための保湿」の機能を有する商品に「エイジング」の語が使用されている実情に照らせば、全体として「加齢(老化)に対応した保湿」の意味合いを容易に認識させるものであると認定したものである。そうすると、請求人の主張する「老化によって機能が損なわれた肌の保湿」であることを含めて、本願商標は、「加齢(老化)に対応した保湿」であることを認識させるものと認定、判断したものである。
ウ 請求人は、意匠権にかかる査定不服審判事件の審決取消訴訟の判決を引用して、審判の審理構造及び審理対象について、該判決で説示されている審判体において、「前提となる法律の解釈に疑義がある場合には、当該法条の解釈を示すこと」及び「事実を法条に適用した結果として、所定の条項に該当するとの論理の過程が成り立つ点を明示すること」が審尋では行われていない。特に「事実を法条に適用した結果として、所定の条項に該当するとの論理の過程が成り立つ点を明示すること」については、本願商標から他の意味合いが生じ多義的で漠然としている場合にも、なお同号の適用が可能かの点ついて明快な論理付けを欠いている旨主張する。
しかしながら、本願商標は、「化粧品,せっけん類」の取引の実情を踏まえれば、「エイジング保湿」の文字が「加齢(老化)に対応した保湿」という商品の用途、品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、何ら同号の法律の解釈に反する認定、判断をしたものではない。また、本願商標から他の意味合いが生じ多義的で漠然としていることについては、上記イのとおり「老化によって機能が損なわれた肌の保湿」であることを含めて、「加齢(老化)に対応した保湿」であると認定、判断したものである。なお、たとえ本願商標より複数の意味合いが生じる可能性があるとしても、本願商標は、「加齢(老化)に対応した保湿」という商品の用途、品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであることから、商標法第3条第1項第3号に該当することが否定されるものではない。
エ したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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