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Trademark Appeal Case

商標と役務の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2015−900396(T2015−900396/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5793775号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5793775号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成27年3月30日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供」、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),展示施設の貸与」及び第44類「美容,理容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」を指定役務として、同年8月10日に登録査定され、同年9月18日に設定登録されたものである。

2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)であり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。

(1)登録第5192391号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成20年6月9日に登録出願、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,鉄道輸送・車両輸送・船舶輸送・航空機輸送に関する情報の提供,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,配達物の一時預かり」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧」及び第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供(冠婚葬祭のための仕出し料理の提供を含む。),動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,保育所における乳幼児の保育に関する情報の提供,会議室・多目的ホールの貸与,展示施設の貸与,通夜のための仮眠室・休憩施設の提供,冠婚葬祭のための仕出し料理の提供の取次ぎ」及び第44類「美容,理容,入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,動物の飼育,動物の治療,動物の美容,介護,老人の養護・介護,老人の養護・介護のための施設の提供,老人の養護・介護に関する情報の提供・相談,老人養護施設に関する情報の提供,老人養護施設の紹介又は取次ぎ」並びに第3類、第4類、第6類、第8類、第9類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類ないし第30類、第32類ないし第34類、第36類ないし第38類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同20年12月26日に設定登録されたものである。

(2)登録第5208279号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成20年6月9日に登録出願、第45類「ファッション情報の提供,新聞記事情報の提供,施設の警備,身辺の警備,個人の身元又は行動に関する調査,占い,身の上相談,愛玩動物の世話,乳幼児の保育(施設において提供されるものを除く。)」並びに第9類、第20類、第21類、第29類、第30類、第39類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同21年2月27日に設定登録されたものである。

(3)登録第5210647号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成20年4月25日に登録出願、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,鉄道輸送・車両輸送・船舶輸送・航空機輸送に関する情報の提供,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,配達物の一時預かり」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧」、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供(冠婚葬祭のための仕出し料理の提供を含む。),動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,保育所における乳幼児の保育に関する情報の提供,会議室・ホールの貸与,展示施設の貸与,通夜のための仮眠室・休憩施設の提供,冠婚葬祭のための仕出し料理の提供の取次ぎ」及び第44類「エステティック美容その他の美容,理容,入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,動物の飼育,動物の治療,動物の美容,介護,老人の養護・介護,老人の養護・介護のための施設の提供,老人の養護・介護に関する情報の提供・相談,老人養護施設に関する情報の提供,老人養護施設の紹介又は取次ぎ」並びに第36類ないし第38類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同21年3月6日に設定登録されたものである。

(4)登録第5225545号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成20年6月9日に登録出願、第41類「音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設(電波塔に設置してなる展望台を含む。)の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳」及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同21年4月24日に設定登録されたものである。

(5)登録第5252354号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成20年4月25日に登録出願された商願2008−32859に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同21年2月16日に登録出願、第45類「ファッション情報の提供,新聞記事情報の提供,施設の警備,身辺の警備,個人の身元又は行動に関する調査,占い,身の上相談,愛玩動物の世話,乳幼児の保育(施設において提供されるものを除く。)」並びに第39類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同年7月31日に設定登録されたものである。

(6)登録第5252355号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成20年4月25日に登録出願された商願2008−32859に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同21年2月16日に登録出願、第41類「音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設(電波塔に設置してなる展望台を含む。)の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳」を指定役務として、同年7月31日に設定登録されたものである。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)本件商標の構成

ア 本件商標は、中央に大きく2つの展望台を有する縦長の二等辺三角形状のシルエットの塔を配し、かつ、その塔の左右から広がるように描かれた左右対称の三日月形の図形が表されてなるものである。シルエット図形は二重円弧よりも黒塗りされており、二重円弧から明瞭に分離し得るものである。

イ 本件商標のタワーのシルエット図形は、「東京スカイツリー」の実際の外形形状やそのシルエット図形(甲4−1等)と完全同一のものではない。

しかしながら、第一展望台(天望デッキ)、第二展望台(天望回廊)という2つの展望台や上部の細いゲイン塔(アンテナ部分)、縦長の二等辺三角形状のシルエット(細身の塔体)は、「東京スカイツリー」の外形形状の大きな特徴であり、世界中を見ても他に類似するものはない(甲3)。なお、「東京スカイツリー」という名称、外形形状、その公益性や著名性は「広く知られている」と特許庁において認められている(甲6)。

ウ 本件商標は、「東京スカイツリー」のオフィシャルショップで販売されているお土産品(Tシャツ。甲4−2)のデザインと酷似している。

上述したように、「東京スカイツリー」の外形形状における特徴は、「第一展望台、第二展望台、ゲイン塔を有する細身の塔体のタワー」であることである。

一方、「東京スカイツリー」内や、その足元に広がる商業施設「東京ソラマチ」内では、「東京スカイツリー」の事業主体(東武鉄道株式会社及び東武タワースカイツリー株式会社。以下「事業主体」という。)の許諾によるお土産品、すなわちオフィシャル商品、ライセンス商品が多数製造・販売されている。そして、お土産品のパッケージなどには、「東京スカイツリー」の実際の外形形状やそのシルエット図形と完全同一のもののみならず、東京スカイツリーの特徴的な外形形状やそのシルエットをデフォルメした図形(以下「デフォルメ図形」という。)が、事業主体の許諾を得て多数使用されている。

例えば、本件商標のように、中央にデフォルメ図形と、この図形を中心に左右対称に配された二重の円弧とから構成されたデザインによるオフィシャル商品が、「東京スカイツリー」の開業時から現在に至るまで実際に販売されている。すなわち、本件商標と類似とはいえないまでも、本件商標に酷似したデザインの「東京スカイツリー」のオフィシャル商品が、その事業主体の許諾を得て実際に販売されている。

したがって、本件商標は、東京スカイツリーの外形形状やシルエット図形(以下、まとめて「東京スカイツリーの形状等」という。)などの特徴をとらえたものであり、需要者が「東京スカイツリー」を容易に想起することができるものと思慮する。

(2)酷似するオフィシャル商品について

ア 上述の「東京スカイツリー」内や「東京ソラマチ」内のほか、事業主体によるオフィシャルショップでも、数多くのオフィシャル商品が販売されている(甲4−2)。

該オフィシャルショップの商品「Tシャツ」(「hane to tree」、「cookie tree」)のデザイン(甲4−2)は、詳細を見れば東京スカイツリーと差異点が多いが、タワーのデザインが「第一展望台(天望デッキ)、第二展望台(天望回廊)、ゲイン塔の存在を一見して視認できる細身の塔体」であれば、需要者は、「東京スカイツリー」と認識できるものとして、事業主体は商品化等の許諾を行っている。また、東京スカイツリーの形状等と異なるデザインのオフィシャル商品、ライセンス商品は他にも数多くある(甲4−3)。

イ 本件商標は、東京スカイツリーの形状等と類似しているとは言い切れない。しかし、事業主体が許諾したオフィシャル商品「hane to tree」(甲4−2)のデザインと酷似しているというべきである。そして、本件商標の中央のタワー形状は、「第一展望台、第二展望台、ゲイン塔の存在を一見して視認できる細身の塔体」を備えており、明らかに「東京スカイツリー」をモチーフとしたデザインである。本件商標は「東京スカイツリー」が存在しなければありえないものであり、明らかに「東京スカイツリー」にあやかったものである。

(3)本件商標の商標権者による出願・登録の詳細

本件商標の商標権者は、本件商標以外にも東京スカイツリーにあやかった商標登録を所有しており、また、過去に商標登録出願を行っていた(登録5481624、商願2011−017361(甲1・参考) ほか)。

拒絶の確定した商願2011−017361などの出願・査定時(2011年〜2012年)より、現在(2015年12月)は「東京スカイツリー」や「東京ソラマチ」を含めた「東京スカイツリータウン」の入場者数が伸び続けており、現在における「東京スカイツリー」の絶大な著名性を勘案すると、本件商標は、これらと同様に判断されてしかるべきである。なお、登録第5481624号に対しても、法的な対応を検討する予定である。

(4)「東京スカイツリー」の概略と外形形状

数多くのマスコミ報道などで紹介されているように、「東京スカイツリー」は東京都墨田区に建設された高さ634mの世界一の電波塔の名称であり、2012年5月22日に開業した。なお、「東京スカイツリータウン」は電波塔「東京スカイツリー」、商業施設「東京ソラマチ」、オフィス施設「東京スカイツリーイーストタワー」、教育関連施設などを含む一大複合施設の名称である(甲4−1)。

2012年5月22日の開業後、連日多くの人々が「東京スカイツリー(東京スカイツリータウン)」を訪れ、2015年3月31日までに、1,703万人が「東京スカイツリー」の展望台を訪れ、「東京スカイツリータウン」全体の来場者数は約1億1,855万人にも上っている。さらに、開業3周年を経過した2015年11月9日には、「東京スカイツリー」の来場者数は2,000万人を達成した。

そして、「東京スカイツリー」の特徴的な外形形状及び名称は2008年6月から現在まで日本全国で報道され続け、また、「東京スカイツリー」の名称決定時には、併せてそのシルエットデザインを中心に円形の装飾を施したロゴマークが公開された(甲5)。

このように、「東京スカイツリータウン」の核となる「東京スカイツリー」は一大名所の地位を確保しつつあるとともに、「東京スカイツリー」の名称や公益性、特徴的な外形形状がマスコミによって全国的に連日報道されており、著名の域に達している。

(5)「東京スカイツリー」の商品化事業及び知的財産の使用について

事業主体は、「東京スカイツリーライセンス事務局」を設けて「東京スカイツリー」の開業前から知的財産の使用に関する問い合わせを受け付けており、事業主体やその許諾を受けた者による商品化事業が幅広く展開されている。「東京スカイツリー」に関する名称、ロゴマーク、シルエットデザイン(図形)、CG画像などは、そのイメージ維持のため、事業主体等の許諾なしに使用する事はできない(甲4−6)。

なお、申立人は引用商標をはじめ「東京スカイツリー」関連の商標登録を42件保有している。

(6)商標法第4条第1項第7号違反について

本件商標は、中央のタワーのシルエット図形と、シルエット図形を中心に左右対称に配された三日月形の二重円弧とから構成され、シルエット図形は二重円弧よりも黒塗りされており、二重円弧から明瞭に分離し得るものである。

そして、中央のシルエット図形は、著名な「東京スカイツリー」の外形形状をシルエット化した図形そのものであり、「東京スカイツリー」の絶大な著名性を勘案すると、本件商標の要部の一つと考えられる。

そして、前述のとおり、東京スカイツリーの形状等は、事業主体の許諾を受けたライセンシーにより、様々なアレンジがなされて商品自体や商品パッケージ等に描かれている(甲4−2、3)。また、「東京スカイツリー」のオフィシャルサイトでは、東京スカイツリーの形状等が記載されている(甲4)。特に、「東京スカイツリー」の特徴的な外形形状や、外形形状をシルエット化したシルエット図形は、非常に特徴的なものであり、当然のことながら日本及び世界各国を見ても類似するものはない(甲3)。

本件商標の中央部は、「第一展望台、第二展望台、ゲイン塔の存在を一見して視認できる細身の塔体」が表され、明らかに「東京スカイツリー」をモチーフとしたデザインであり、言い換えるならば、本件商標は、著名な東京スカイツリーの形状等がなければ採択されなかったというべきである。もちろん、事業主体は、東京スカイツリーの形状等についての使用許諾の問い合わせ等を商標権者から受けたことはない。

してみれば、本件商標は、「東京スカイツリー」が持つ著名性及び顧客吸引力に便乗する意図のもとで出願されたものと推認され、公益性の高い「東京スカイツリー」の事業主体と何ら関係のない一私人に指定役務について独占使用を認めることは、一般的道徳観念に照らして穏当ではなく、公の秩序又は善良の風俗を害するものであるため、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。

過去の審査例(甲6ほか)とは事案を異にするので、本件商標にそのまま採用することができないのは当然であるが、過去の審査例に係る商標も本件商標と同様に、要部は「第一展望台、第二展望台、ゲイン塔を有する細身の塔体のタワー」である。よって、本件商標も本号が適用されるべきと思慮する。

(7)商標法第4条第1項第15号違反について

ア 「東京スカイツリータウン」内におけるライセンシーの使用について

事業主体によるオフィシャルショップ「THE SKYTREE SHOP」が「東京スカイツリー」の内部やオンラインショップとして設けられて、オフィシャル商品が販売されている(甲4−2、3)。

そして、本件商標に酷似したデザインのTシャツが、「東京スカイツリー」のオフィシャルショップで実際に販売されている(甲4−2)。このTシャツのデザインの他にも、東京スカイツリーの形状等をデフォルメしたデザインを用いた商品が多く販売されている(甲4−3)。

すなわち、事業主体は、「東京ソラマチ」の出店者に対しても、一定の基準のもとで、自社が有する「東京スカイツリー」の図形商標やこれらをデフォルメした図形(甲4−2、3)の使用を許諾している。

そして、「東京スカイツリー」に関するロゴマーク、シルエットデザインなどは、事業主体等の許諾なしに使用する事ができないことは、オフィシャルサイトでも告知されているとおりである(甲4−6)。

また、特許庁の審査・審判において、「出願に係る商標は著名な『東京スカイツリー』にあやかったものであるとともに、『東京スカイツリー』内部や近隣のショップでオフィシャル商品及びライセンス商品がお土産物として販売されているため、何ら関係のない第三者が指定商品・役務に商標を使用した場合、取引者・需要者が、その商品等の出所につき誤認混同を生じるおそれがある」として本号違反と判断されたものは多数ある(商願2010−011258ほか)。

イ まとめ

上述のとおり、本件商標の要部の一つは、「東京スカイツリー」のシルエットデザインそのものであるから、当然ながら著名な「東京スカイツリー」の外形形状やシルエットデザインがなければ、本件商標は採択されなかったというべきである。

また、Tシャツ、文房具類、菓子などは「東京スカイツリー」のオフィシャル商品として販売されており、これらの商品には「東京スカイツリー」のシルエット図形やそれをデフォルメしたデザインが使用されている(甲4−2、3)。さらに、「東京スカイツリー」のオフィシャルサイトには、ロゴマークやシルエット図形が付されており、「東京スカイツリー」の展望台や飲食店などに関する情報が記載されている(甲4−4)。

よって、事業主体と何ら関係のない第三者によって、本件商標が「東京スカイツリー」で実際に販売等されている商品・役務に使用されれば、その商品・役務が当該商標権者に対して他人である「東京スカイツリー」の事業主体、又は、その事業主体と組織的又は経済的に何らかの関連のある者の事業に係る商品・役務であるかの如く一般需要者に認識されて出所の混同を生じるおそれがある。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(8)商標法第4条第1項第11号違反について

ア 指定商品・役務の類否について

本件商標の指定役務中、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供」、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,展示施設の貸与」、第44類「美容,理容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり」は、引用商標の指定役務と同一又類似するものである。

イ 商標の類否について

(ア)観念及び称呼について

本件商標の要部である図形からは、我が国において著名な「東京スカイツリー」の観念が生じるとともに、「トウキョウスカイツリー」、「スカイツリー」の称呼が生じ、三日月形の二重円弧からは特段の観念、称呼を生じない。

引用商標からは、我が国において著名な「東京スカイツリー」の観念が生じるとともに、「トウキョウスカイツリー」、「スカイツリー」の称呼が生じる。

よって、本件商標の要部と引用商標は、観念及び称呼が同一である。

(イ)外観について

本件商標は、第一展望台、第二展望台、ゲイン塔という「東京スカイツリー」の構成要素が明瞭に表されており、「東京スカイツリー」を容易に認識することができる。なお、本件商標と類似する商標(商願2011−017361)は、引用商標と同じ「東京スカイツリー」のシルエット図形等の商標と類似すると判断されている(甲1)。

具体的に、本件商標と引用商標3を比較すると、a)全体的に細身で末広がりのタワー形状であり、黒塗りのシルエット図形となっている(根元の広がり方の差異は、全体的に細身で末広がりのタワー形状である「東京スカイツリー」の外形形状をデフォルメしたものにすぎない。)、b)中央上部に第一展望台、さらに上部に第二展望台を設置している(「東京スカイツリー」の天望デッキ、天望回廊に該当)、c)第二展望台が塔体から逆三角形状に突出し、展望台全体として台形形状となっており、その位置、形状が「東京スカイツリー」の実際の外形形状やシルエット図形と一致している、及びd)第二展望台よりも上部は、細長く上方向に延びている(「東京スカイツリー」のゲイン塔に該当)といった特徴が一致している。

以上は、引用商標3との比較であるが、引用商標5、6は、引用商標3と同一であり、引用商標1、2、4は、引用商標3の「東京スカイツリー」のシルエットデザインの周囲に円形の装飾を付したものであり、その要部は、引用商標3、5、6と同じである。そして、本件商標の要部は、引用商標(特に引用商標3、5、6)をそのまま含んでおり、商標全体として外観が酷似する。

ウ 判断

本件商標のタワーのシルエットのみの図形部分(シルエットデザイン)は、「東京スカイツリー」の展望台(第一展望台、第二展望台)、ゲイン塔や末広がりの裾部分などの外観形状が酷似する。

よって、本件商標及び引用商標に接する取引者、需要者は、「東京スカイツリー」に酷似した該タワー図形部分に着目し、これより生じる称呼・観念をもって取引に資する場合も少なくないものと判断するのが相当である。

本件商標と引用商標は、タワーのシルエットのみの図形部分に相応して「トウキョウスカイツリー」の称呼及び「東京スカイツリー」の観念をも生じるものであり、両商標は、これらの称呼及び観念を共通にする類似の商標であって、両商標の指定役務も類似するものである。

また、上述のとおりの「東京スカイツリー」及び「東京ソラマチ」への来場者数のみを勘案しても、年代、国籍等を越えて幅広い需要者層がおり、こうした需要者が商標から生じる称呼・観念を頼りに商品の購入や役務にあたる場合などの取引の実情をも考慮すれば、本件商標は、役務の出所において誤認混同を生じさせるおそれがあるものといえる。

したがって、本件商標の構成中のタワーのシルエットの図形部分が新聞や雑誌等で話題の「東京スカイツリー」に酷似していることから、該タワーのシルエットの図形部分に注目し、これより生じる称呼・観念をもって取引に資する場合も少なくない。

そのため、本件商標の要部と引用商標は、外観、称呼及び観念が同一又は類似であり、商標全体として本件商標は、引用商標と類似すると判断できる。

また、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似である。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(9)むすび

上記のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断

(1)引用商標の周知性について

ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、次の事実を認めることができる。

(ア)申立人は、東京墨田区の電波塔「東京スカイツリー」を中心とする東京スカイツリータウンの事業主体である(甲5−1、職権調査)。

(イ)「東京スカイツリー」の名称は、平成20年6月10日に決定・発表され、翌11日にはその事実を同ツリーの外形形状や引用商標1、2及び4と同一の構成と認められる標章と共に多くの新聞が報道した(甲5−2)。

(ウ)「東京スカイツリー」のオフィシャルサイトには、引用商標1、2及び4と同一の構成と認められる標章(色彩の異なるものを含む。)や東京スカイツリーの外形形状が表示され、多種の商品等が紹介されている。

また、それらの商品の中には、東京スカイツリーの外形形状のシルエット(引用商標3、5及び6と同一の構成と認められる標章)が表示された商品がある。(甲4)

(エ)東京スカイツリーに関する知的財産(名称・ロゴマーク・シルエットデザインなど)は、事業主体の東京スカイツリーライセンス事務局で管理し、同事務局の許諾なしに使用することはできないとしている(甲4)。

(オ)東京スカイツリーへの来場者数は平成27年11月で延べ2,000万人を超え、東京スカイツリータウンの来場者数は平成27年3月末で延べ1.2億人であった(職権調査)。

(カ)なお、東京スカイツリーのオフィシャルショップで販売されているTシャツ(「hane to tree」、「cookie tree」)が、本件商標の登録査定の日前から販売等されていたことを示す証左は見いだせない。

イ 上記アの事実によれば、東京スカイツリーの外形形状及び引用商標は、いずれも、本件商標の登録出願の日前から、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は本件商標の登録査定の日においても継続していたものと判断するのが相当である。

(2)本件商標と引用商標の類否について

ア 本件商標

本件商標は、別掲1のとおり、中央に長方形状の、上部に逆台形状の凸部を有する細長い三角形の左右に、三日月形を左右対称に配した構成からなるものである。

そして、本件商標は、その構成全体が黒色で表され、看者をして全体が一体不可分のものと認識させるものであって、特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。

なお、申立人は、本件商標はその構成中、中央の凸部を有する細長い三角形が他の部分よりも黒塗りされ明瞭に分離し得る旨主張しているが、本件商標は、その構成全体が同じ濃さの黒色で表されているものであって、かつ、その構成全体が分離することなく表されていることからすれば、引用商標の周知性を考慮しても、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと判断するのが相当であるから、かかる主張は採用できない。

イ 引用商標

(ア)引用商標1、2及び4は、別掲2のとおり、東京スカイツリーの外形形状のシルエット図形の上部周辺に濃淡の異なる水玉模様を配した構成からなるものである。

そして、該シルエット図形が上記(1)のとおり、需要者の間に広く認識されている商標であることを考慮すれば、引用商標1、2及び4は、「トウキョウスカイツリー」の称呼及び「東京スカイツリー」の観念を生じるものというのが相当である。

(イ)引用商標3、5及び6は、別掲3のとおり、東京スカイツリーの外形形状のシルエット図形からなるものであり、「トウキョウスカイツリー」の称呼及び「東京スカイツリー」の観念を生じるものというのが相当である。

ウ 本件商標と引用商標等の類否

そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、外観において、両者は、前者の左右対称に配された三日月形の有無という顕著な差異を有するから、十分区別できるものである。

次に、称呼及び観念においては、前者が特定の称呼、観念を生じないのに対し、後者は「トウキョウスカイツリー」の称呼及び「東京スカイツリー」の観念を生じるから、両者は、称呼及び観念においても相紛れるおそれのないものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。

なお、申立人は、過去の審査例を挙げているが、それら出願商標は、本件商標と構成態様を異にするものであるから、上述の判断に影響を及ぼすものではない。

また、本件商標は、上記と同様の理由により東京スカイツリーの形状等と非類似のものであって、別異のものということができる。

(3)商標法第4条第1項第7号該当性について

上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標及び東京スカイツリーの形状等(以下「引用商標等」という。)と外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似のものであって、別異のものである。

そうすると、引用商標等が申立人の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとしても、本件商標は、これに接する取引者、需要者が、引用商標等を連想又は想起するものということはできない。

してみれば、本件商標は、引用商標等の著名性及び顧客吸引力に便乗するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。

さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。

なお、申立人がどのような商品に対して、東京スカイツリーの外形形状等についての使用許諾を行っているのかは、本件商標の登録の適否の判断に影響を及ぼすものではない。

(4)商標法第4条第1項第15号該当性について

上記(2)のとおり、本件商標と引用商標等とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、本件商標は、引用商標等を連想又は想起させるものでもない。

してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標等を連想又は想起させることはなく、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。

(5)商標法第4条第1項第11号該当性について

上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。

また、他に両商標が類似するというべき事情も見いだせない。

そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。

(6)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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