Trademark Appeal Case
著名商標の混同のおそれ
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2015−900307(T2015−900307/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5781247号商標(以下「本件商標」という。)は,「BIG MAC」の欧文字を標準文字により表してなり,平成27年3月11日に登録出願,第18類「皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,キャリーバッグ,折りかばん,肩掛けかばん,グラッドストン,こうり,書類入れかばん,スーツケース,手提げかばん,トランク,ハンドバッグ,ボストンバッグ,ランドセル,リュックサック,その他のかばん類,財布,お守り入れ,カード入れ,買物袋(車付きのものを含む。),がま口,キーケース,巾着,パス入れ,名刺入れ,その他の袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,皮革」を指定商品として,同年7月6日に登録査定,同月24日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は,以下のとおりであり,それぞれ現に有効に存続しているものである。
1 登録第2188711号商標(以下「引用商標1」という。)は,「ビッグ マック」の片仮名及び「Big Mac」の欧文字を二段に横書きした構成よりなり,昭和46年4月12日に登録出願され,第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成元年11月28日に設定登録されたものであり,その後,同21年7月22日に,第29類「肉製品」及び第30類「サンドイッチ」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第3190434号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成4年9月30日に登録出願され,第42類「飲食物の提供」を指定役務として,同8年8月30日に設定登録されたものである。
3 登録第5240023号商標(以下「引用商標3」という。)は,「BIG MAC」の欧文字を標準文字で表してなり,平成20年12月4日に登録出願され,第30類「サンドイッチ,ハンバーガー,ホットドッグ」を指定商品として,同21年6月19日に設定登録されたものである。
以下,引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
1 申立人は,ハンバーガーのマクドナルドとして全世界で広く知られているマクドナルド・グループのための商標の取得・維持・管理のために設立されている法人である。日本におけるマクドナルドのハンバーガー・レストラン・ビジネスは,申立人のライセンシーである日本マクドナルド株式会社により行われている。
2 申立人の「BIG MAC」の欧文字からなる商標が,申立人又はそのグループ会社である日本マクドナルド株式会社(以下これらを総称して「マクドナルド」という。)の商品及び役務を示すものとして日本において著名であることは改めていうまでもないところである。
特許庁の商標データベースを検索してみると,日本における「BIG MAC」の登録商標は,引用商標及び本件商標のほかには,登録第724516号(甲3)があるのみである。当該商標は,米国の百貨店であるジェイ・シー・ペニー・コーポレーション・インコーポレーテッド(以下「ジェイ・シー・ペニー」という)が1966年に指定商品第25類の「ズボン,ジーンズパンツ,オーバーオール,作業服,洋服」等について商標登録を得ているものである。
ジェイ−・シー・ペニーは,米国において1920年代ころからそのオーバーオールなどの作業服に「BIG MAC」の商標を付して販売してきたが,1990年ごろまでにはその販売を終了しており,以後は日本においてはインターネット等を通して年代物の商品がヴィンテージ商品として細々と輸入販売されているのみであり,ジェイ・シー・ペニーの「BIG MAC」商標を知る者は,年代物のオーバーオールなどのヴィンテージ商品に特別の興味を持つ特定の者に限定されている,というのが現状となっている(甲4及び甲5)。
したがって,日本における通常の需要者は,「BIG MAC」の商標からはマクドナルドの「BIG MAC」ハンバーガーを直ちに想起し,ジェイ・シー・ペニーの商品を想起する者はほとんど存在しない,というのが現状である。
3 「BIG MAC」をヤフー・ジャパンで検索すると,2億3100万件の項目が出てくる(甲6)。これらの項目のごく一部には,ジェイ・シー・ペニーの「BIG MAC」の古着の輸入販売のものが見られるが,その他は全てがマクドナルドの「BIG MAC」についてのものである。
また,マクドナルドの「BIG MAC」は,英国の著名な経済専門誌である「エコノミスト」により,1986年から「BIG MAC INDEX」(日本語では「ビッグマック指数」)として各国の経済力比較の指数として使用されている。この「BIG MAC INDEX」は,各国におけるマクドナルドの「BIG MAC」ハンバーガーの価格を基準として算出されているものであり,この指数は世界的に認知され,また著名となっている(甲7及び甲8)。ちなみに,この「BIG MAC INDEX」をヤフー・ジャパンで検索してみるとその検索項目は3270万件に上る(甲9)。
マクドナルドの「BIG MAC」商標の登録は,前述のとおり,商品及び役務の区分の第29類,30類及び42類の商品及び役務となっているが,「BIG MAC」と聞けば誰でもマクドナルドのハンバーガーを想起するのが日本における現状であり,マクドナルドの「BIG MAC」は誰でも知っている極めて著名な商標となっている。
4 このような著名商標と全く同一の本件商標を使用すると,本件商標を使用した商品がマクドナルド,その他のマクドナルドの商品・役務と何らかの関係を有するものであるとの誤認を需要者に与えるおそれがあり,したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることが明らかである。
そもそも,本件商標の出願人には「BIG MAC」の商標との関連性を想起せしめるものは何も見当たらず,マクドナルドの「BIG MAC」の顧客吸引力にただ乗りしようとして本件商標を出願したものであることが容易に推測されるところである。このような事実からは,本件商標とマクドナルドの「BIG MAC」商標とを混同させ,あるいは,何らかの関連性を想起させようとする本件商標の出願人の主観的かつ積極的な意図がうかがわれるのであり,このような事実からも本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反するものであることは明らかである。
5 以上に述べたとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性
申立人の提出に係る甲各号証からは,引用商標の使用時期,範囲,営業の規模,売上高及び広告宣伝回数などが不明であり,その使用の事実を量的に把握することができないが,「BIG MAC」の語をインターネットのヤフー・ジャパンで検索すると,膨大な件数がヒットし(甲6),職権により調査すると,申立人の業務に係る商品(ハンバーガー)及び役務(ハンバーガーを主とする飲食物の提供)に関するものが相当数見受けられること,さらに,「小学館ランダムハウス英和大辞典」(発行所 株式会社小学館)の「Big Mac」の項に,「1 《商標》ビッグマック:米国マクドナルドチェーンのハンバーガー」との記載及び「英和大辞典」(発行所 研究社)の同項に「《商標》ビックマック(米国McDoald’s製の大型ハンバーガー;3枚の丸パン(bun)に2枚のハンバーグなどをはさむ)」との記載があること,各国の経済力の比較の指数として「ビッグマック指数」(Big Mac index)があり,「マクドナルドが販売するビッグマック1個の価格を比較して各国の経済力や物価水準を測るための指数」(現代用語の基礎知識 2013,甲7)と紹介されていることを総合勘案すれば,引用商標は,申立人の業務に係る商品「ハンバーガー」及び同役務「ハンバーガーを主とする飲食物の提供」に使用された結果,申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時に需要者の間に相当程度認識されていたものということができる。
2 本件商標と引用商標との類似性
本件商標は,上記第1のとおり,「BIG MAC」の欧文字を標準文字により表してなり,これよりは「ビッグマック」の称呼を生じ,特定の意味を有しない造語と認められるから,特定の観念を生じないものである。
他方,引用商標は,上記第2のとおり,引用商標1は,「ビッグマック」の片仮名と「Big Mac」の欧文字からなり,引用商標2は,別掲のとおり,やや特殊な書体が用いられているものの「ビッグマック」の片仮名と「BIG MAC」の欧文字よりなるものと容易に理解されるものであり,引用商標3は,「BIG MAC」の欧文字よりなるものである。そうすると,引用商標は,「ビッグマック」の称呼を生じ,特定の意味を有しない造語と認められるから,特定の観念を生じないものである。
してみれば,本件商標「BIG MAC」と引用商標1の構成中「Big Mac」の欧文字部分及び引用商標2の構成中「BIG MAC」の欧文字部分並びに引用商標3「BIG MAC」とは,同一の綴り文字よりなる点において,外観において同一又は類似し,「ビッグマック」の称呼を共通にするものであって,いずれも特定の観念を生じないものである。
そうすると,本件商標と引用商標とは,観念においては比較し得ないものの,称呼を共通にし,外観上において同一又は類似する互いに紛れるおそれのある商標であるということができる。
3 本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品・役務との関連性
本件商標の指定商品は,上記第1のとおり,「皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,キャリーバッグ,折りかばん,肩掛けかばん,グラッドストン,こうり,書類入れかばん,スーツケース,手提げかばん,トランク,ハンドバッグ,ボストンバッグ,ランドセル,リュックサック,その他のかばん類,財布,お守り入れ,カード入れ,買物袋(車付きのものを含む。),がま口,キーケース,巾着,パス入れ,名刺入れ,その他の袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,皮革」であり,他方,引用商標の使用に係る商品・役務は,上記1のとおり商品「ハンバーガー」及び役務「ハンバーガーを主とする飲食物の提供」である。
そうすると,本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品・役務は,営業主体,産業分野が明らかに異なり,その品質(質),原材料,用途,販売(提供)場所,需要者等において大きく相違する関連性の極めて希薄な商品・役務ということができるから,本件商標の指定商品は,引用商標の使用に係る商品・役務と密接な関連性がある商品を有するものであるとはいえない。
また,引用商標は,申立人の業務に係るハンバーガーの中の一商品名又は飲食物名であって,申立人のいわゆるハウスマークではなく,職権により調査するも,申立人が多角経営を行っているといった実情や本件商標の指定商品に関連する業務を行っているといった事実も認められないことからすると,一般の取引者・需要者も,申立人が引用商標を使用するのは,商品「ハンバーガー」及び役務「ハンバーガーを主とする飲食物の提供」の範囲にとどまり,本件商標の指定商品あるいはこれと関連性を有する商品を取り扱っていると認識するとは認め難いものである。
4 出所の混同のおそれ
上記1及び3によれば,引用商標は,商品「ハンバーガー」及び役務「ハンバーガーを主とする飲食物の提供」の分野を中心に相当程度の周知・著名性を有するとしても,その業務の範囲は極めて限定的であって,引用商標の使用に係る商品及び役務と本件商標に係る指定商品とは密接な関連性があるものともいえないものである。
そうすると,商標権者が,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が引用商標ないしは申立人を連想,想起するようなことはないというべきであり,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
5 結論
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといえないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
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