Trademark Appeal Case
複合商標の要部抽出と類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2015−900361(T2015−900361/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5787268号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲(1)のとおりの構成からなり,平成27年3月9日に登録出願,第30類「奈良県吉野地方産の天日乾しの茶葉を焙じた番茶」を指定商品として,同年7月27日に登録査定,同年8月21日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第2433682号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲(2)のとおり,「嘉兵衛」の文字を横書きした構成からなり,平成元年12月4日に登録出願,第29類「茶,その他本類に属する商品」を指定商品として,平成4年7月31日に設定登録,その後,同14年8月28日に指定商品を第30類「茶,コーヒー,ココア,氷」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」とする指定商品の書換登録がされ,さらに,同24年7月17日には,第30類についてのみ商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから,同法第43条の2の規定により取り消されるべきものである旨申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
本件商標は,その中央に大きく「嘉兵衛番茶」の文字を縦書きしているところ,その指定商品は,「奈良県吉野地方産の天日乾しの茶葉を焙じた番茶」であるから,自他商品の識別標識として機能する部分は「嘉兵衛」の部分である。したがって,本件商標からは「カヘエ」の称呼を生じ,「嘉兵衛」という男性の名前を認識させる。
一方,引用商標は,「嘉兵衛」の文字よりなるから,「カヘエ」の称呼を生じ,「嘉兵衛」という男性の名前を認識させるから,両商標は,称呼,観念,外観において共通する類似の商標であり,また,指定商品も互いに抵触するものである。
4 当審における取消理由
当審において,平成28年3月31日付けで,本件商標権者に対し,通知した取消理由は,要旨以下のとおりである。
(1)本件商標について
本件商標は,右側に「天日乾し 無添加」の文字を縦書きし,中央には,上下を横線で挟んで「吉野銘茶」の文字を横書きしたものを上部に配し,その下に「極上」の文字を横書きしたものを配し,さらにその下に,最も大きな文字で「嘉兵衛番茶」の文字を縦書きし,その左側には,やや左方に傾けた縦長長方形の波線の輪郭内に「ほうじ」の文字を書し,その下に,縦長長方形の輪郭内に「独得製法」の文字を縦書きしたものを配した構成からなるものである。
そして,本件商標は,その構成中「天日乾し 無添加」,「吉野銘茶」,「極上」,「ほうじ」,「独得製法」の文字部分は,商品の製法,産地,原材料,品質等を表示するものであるから,これより自他商品の識別標識としての称呼及び観念は生じないものといえる。
また,本件商標の構成中において顕著に表された「嘉兵衛番茶」の文字部分は,「番茶」の文字が指定商品の名称を表したものであるから,自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は「嘉兵衛」の文字部分にあり,これよりは「カヘエ」の称呼を生じ,人名を表したものとして認識し理解されるものといえる。
そうとすれば,本件商標は,その構成中「嘉兵衛」の文字部分に相応し,「カヘエ」の称呼が生じ,人名としての「嘉兵衛」の観念を生ずるものというのが相当である。
(2)引用商標について
他方,引用商標は,「嘉兵衛」の文字を横書きしてなり,これよりは,「カヘエ」の称呼を生じ,人名としての「嘉兵衛」の観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標の要部といえる「嘉兵衛」の文字部分と引用商標とを比較すると,外観においては,両者は,書体の相違及び縦書きと横書きの相違があるものの,いずれも漢字の「嘉兵衛」であるから,外観上,近似した印象を与えるものである。
また,称呼及び観念においては,両商標からは,いずれも「嘉兵衛」の文字に相応して,「カヘエ」の称呼及び人名としての「嘉兵衛」の観念を生じるものであるから,同一の称呼及び観念を生じるものである。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれがある類似の商標ということができる。
さらに,本件商標の指定商品である第30類「奈良県吉野地方産の天日乾しの茶葉を焙じた番茶」は,引用商標の指定商品中の第30類「茶」に包含されるものであるから,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは,同一又は類似の商品である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 本件商標権者の意見
本件商標は,個別要素の選択,配置が一体として識別力を発揮するものである。したがって,「嘉兵衛」なる文字のみによって構成される引用商標と,6の個別要素が特定の位置に配置された本件商標とでは明らかに外観が異なる。したがって,引用商標を付した商品と本件商標を付した同一の商品との間で,需要者が誤認混同することはないから,本件商標と引用商標とは類似しない。
なお,本件商標について個別要素毎に識別力を判断するとしても,本件商標は,「嘉兵[衛]」([衛]は,いわゆる隷書体の一つを用いて特徴化した文字)なる文字を有するものである。「嘉兵[衛]」が人名であることに鑑みれば,どのような文字が使われているのかは,一般的に人々が注目する点であり,この点については,人名を有する商標であったとしても,変わりない。したがって,本件商標における「嘉兵[衛]」と引用商標「嘉兵衛」とでは,外観において,明らかに異なり,需要者においても,誤認混同を生ずるものではない。
さらに,「嘉兵[衛]」が人の名前であることに鑑みれば,「嘉兵[衛]」さんがつくった番茶を意味する「嘉兵[衛]番茶」について,名前である「嘉兵[衛]」のみを抽出するのは不自然であり,「嘉兵[衛]番茶(カヘエバンチャ)」なる一連の称呼が生ずるものである。「嘉兵[衛]番茶(カヘエバンチャ)」は人の名前を表す「嘉兵衛」とは明らかに異なることから,本件商標と引用商標とは類似するものではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
6 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標についてした取消理由は,妥当なものであって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
(2)本件商標権者の意見について
本件商標権者は,本件商標は,6の個別要素が特定の位置に配置されているものであり,「嘉兵衛」の文字からなる引用商標とは,明らかに外観が異なる。また,本件商標の「嘉兵衛」の「衛」が,いわゆる隷書体の一つを用いて特徴化した文字を有する旨主張する。
しかしながら,本件商標は,その構成中「天日乾し 無添加」,「吉野銘茶」,「極上」,「ほうじ」,「独得製法」の文字部分は,商品の製法,産地,原材料,品質等を表示するものであるから,自他商品の識別標識としての機能を有しないか,又は,極めて弱いものというべきである。
そして,本件商標の構成中において顕著に表された「嘉兵衛番茶」の文字部分についてみても,「番茶」の文字は,指定商品の名称を表したものであるから,自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は「嘉兵衛」の文字部分にあるといえる。
また,本件商標の構成中の「嘉兵衛」の「衛」の文字が,隷書体であるとしても,漢字の書体の一つであり,本件商標と引用商標とは,書体の相違及び縦書きと横書きの相違があるものの,いずれも漢字の「嘉兵衛」を表してなるから,外観上,近似した印象を与えるものであり,「カヘエ」の称呼を生じ,人名としての「嘉兵衛」の観念を生じるものである。
よって,本件商標権者の主張は,採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,商標法第43条の3第2項により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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