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Trademark Appeal Case

商標不使用取消と通常使用権

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2015−300188(T2015−300188/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第511396号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、昭和31年12月11日に登録出願、第20類「自転車及その部分品」を指定商品として、同32年12月18日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、平成20年1月30日に指定商品を第12類「自転車並びにそれらの部品及び付属品,自転車のベアリング,自転車の歯車,自転車のブレーキ」とする指定商品の書換登録がされたものである。

そして、本件審判の請求の登録が平成27年3月26日にされたものである。

2 請求人の主張

請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。

請求人が調査したところによると、本件商標は、その指定商品である第12類「全指定商品」について、本件商標の商標権者によって継続して3年以上日本国内において使用されておらず、現在も使用されている事実は見いだせない。加えて、商標登録原簿上において、通常使用権及び専用使用権の設定登録がなされておらず、使用権者が使用していることも考えられない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第23号証を提出した。

(1)本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権の通常使用権者によって、「自転車並びにそれらの部品及び付属品」に使用されている(商標法第2条第3項第1号、第2号及び第8号)。

よって、本件商標登録は商標法第50条第1項の規定に該当せず、本件審判の請求は認められないものである。

(2)本件登録商標の商標権者(被請求人)による使用について

本件商標は、昭和31年12月11日の出願日頃から現在に至るまで使用されており、他社製の自転車と識別するため、すなわち通称「アルプス自転車」であることを証明するための本件商標権者のハウスマークであり(乙1)、永年使用されているものである。なお、本件商標は白黒から構成され、実際に使用されている商標は色彩が付されているが、本件商標と社会通念上同一のものである。

具体的には、本件商標の商標権者であるアルプス自転車工業株式会社は、本件商標を株式会社富士マーク製作所(東京都千代田区在)に製作依頼し、本件商標を自転車前方のフレームに取り付けるステッカーとして使用している。なお、株式会社富士マーク製作所に製作依頼したのは、直近では約10年前にまとめて約1000個依頼した経緯があり、本件審判請求の登録前3年以内に製作依頼している事実はない。

しかしながら、アルプス自転車工業株式会社は、株式会社富士マーク製作所から納品された本件商標のステッカーを、本件商標の通常使用権者である有限会社大前事務所に約2年前に約100個を譲渡している。なお、アルプス自転車工業株式会社が運営する店舗は平成19年1月28日付けで閉店しているため、本件商標を指定商品である自転車、その部品等に付して譲渡はしていないが、本件商標と社会通念上同一のものを上記製作会社に製作依頼し、本件商標のステッカーを通常使用権者である有限会社大前事務所に譲渡しているものである。

(3)本件商標の通常使用権者による使用について

商標権者であるアルプス自転車工業株式会社(乙2)は、本件商標の全指定商品に関して、平成23年10月1日付けで有限会社大前事務所(乙3)と使用許諾の覚書を締結している(乙4)。当該事実から、有限会社大前事務所は、本件商標権の通常使用権者であることが明らかである。なお、アルプス自転車工業株式会社の取締役である萩原浩氏と有限会社大前事務所の大前仁氏は、当該覚書の締結後現在に至るまで、基本的に毎月月末に現状報告などの打合せを行い当該覚書の内容は継続しているものである。その事実を裏付ける資料として乙第22号証及び乙第23号証の雑誌の抜粋ページに現在に至るまで良好な関係を築いている事実が容易にうかがえる。

また、上記したように、アルプス自転車工業株式会社から約2年前に本件商標のステッカーを譲渡されており、未だ在庫が残っている状況である。乙第1号証は有限会社大前事務所が運営するオオマエジムショ内で撮影された写真(写し)である。

有限会社大前事務所は、上記覚書を締結後、アルプス自転車工業株式会社の萩原浩氏から自転車およびその部品等に関するノウハウを細部に至るまで徹底的にたたき込まれ、約一年後の平成24年11月1日付けでオオマエジムショ(東京都台東区在)を開店した経緯がある。当該オオマエジムショでは、自転車及び自転車の部品、付属品などを販売するほかに、商標権者が以前に造った自転車を買取り、本件商標のステッカーやアルプスのシールを新たに取り付けなどオーバーホールして中古自転車として販売する業務、商標権者が以前に造った自転車の修理、部品の交換、塗装などを主に行っている。

乙第5号証ないし乙第7号証は、オオマエジムショの店舗を外から撮影した写真(写し)であり、乙第8号証は、オオマエジムショの店舗内を撮影した写真(写し)であり、有限会社大前事務所がオオマエジムショの店舗を構え、自転車、自転車の部品、付属品を修理及び販売等している事実が明らかである。

乙第9号証は、オオマエジムショ店舗内で本件商標と社会通念上同一のものを自転車前方のフレームに取り付けた状態の自転車の全体写真(写し)であり、乙第10号証ないし乙第12号証は、自転車前方のフレーム部分に本件商標と社会通念上同一のものを取り付けた状態の拡大写真(写し)である。当該事実から有限会社大前事務所が自らの店舗において、本件商標と社会通念上同一のものを自転車又は自転車の部品に取り付け販売、販売するために展示している事実が明らかである。

乙第13号証は、塗装会社であるZ−WORKSがオオマエジムショ宛てに発送した平成26年9月15日付け及び平成27年1月13日付けの納品書写しであり、新たに自転車を塗装する注文を受けた場合などは、塗装会社Z−WORKSに本件商標のステッカーを送り、当該ステッカーの取付けと共に塗装を依頼しているものである。また、品名の欄に「ALPS」「アルプス」と記載されているが、本件商標の商標権者が造った自転車を「ALPS」「アルプス」と称して使用している。これらの納品書から、有限会社大前事務所が塗装会社Z−WORKSに対して、本件商標の商標権者が造った「ALPS」又は「アルプス」の自転車のフレームなどの部品の塗装を剥がして新たな色を塗装依頼している事実が明らかであり、容易に想像できると思うが、自転車前方のフレームに本件商標と社会通念上同一のものを取り付けるには、塗装会社に塗装とともに依頼するものである。

乙第14号証は、平成27年2月2日付けの有限会社大前事務所が発行した御見積書写しであり、件名には「アルプス・オーバーホール一式(2台)」と記載されており、本件商標の商標権者が造った自転車をアルプスと称して、修理、部品の交換等している事実が明らかである。

乙第15号証は、平成26年8月18日付けの有限会社大前事務所が発行した御見積書写しであり、件名には「アルプス事故車修理一式」と記載されており、前記同様に本件商標の商標権者が造った自転車をアルプスと称して、自転車の色の塗替え、部品の交換をしている事実か明らかである。

乙第16号証は、平成26年4月28日付けの有限会社大前事務所が発行した御見積書写しであり、件名には「ALPSオーバーホール一式」と記載されている。

乙第17号証は、平成26年3月27日付けの有限会社大前事務所が発行した御見積書写しであり、件名には「アルプス24inオーバーホール」と記載されている。

乙第18号証は、平成25年6月2日付けの有限会社大前事務所が発行した御見積書写しであり、件名には「ALPS改装一式」と記載されている。

乙第19号証は、平成25年4月20日付けの有限会社大前事務所が発行した御見積書写しであり、件名には「アルプス・事故車お見積もり」と記載されている。

乙第20号証は、平成24年11月16日付けの有限会社大前事務所が発行した御見積書写しであり、件名には「ALPSディーラー回り調整一式」と記載されている。

乙第21号証は、平成24年11月11日付けの有限会社大前事務所が発行した御見積書写しであり、件名には「ALPS改装一式」と記載されている。

乙第14号証ないし乙第21号証から、有限会社大前事務所は、アルプス自転車工業株式会社が造った自転車、即ち、通称アルプス自転車のオーバーホール、修理、自転車の部品交換、フレームなどの色の塗替えをして、新調した自転車を組立て客に譲渡している事実が明らかであり、部品の交換、色の塗替えなどの際は本件商標と社会通念上同一のステッカーを新たに取付け直す必要があることを容易にうかがえ、有限会社大前事務所が本件商標と社会通念上同一のものを使用していることが明らかである。

乙第5号証ないし乙第21号証から、通常使用権者である有願会社大前事務所は、平成24年11月1日付けで店舗を構えて、自転車、自転車部品の販売修理などを行っており、当該店舗において、本件商標と社会通念上同一のものを自転車前方のフレームに取り付け、新たに塗り替えたフレーム、新品に交換した部品、修理した部品など新調した自転車を組立て客に譲渡、引き渡している事実が明らかである。

乙第22号証は、株式会社グラフィック社が2012(平成24)年11月25日付けで発行した雑誌「CYCLO TOURIST」の表紙と抜粋ページ写しであるが、当該抜粋ページには、有限会社大前事務所の大前仁氏が本件商標をヘッドバッジと称して本件商標と社会通念上同一のものが自転車前方のフレーム正面に取り付けられた写真を宣伝広告している事実が明らかである(商標法第2条第3項第8号)。

乙第23号証は、株式会社A(木偏に世からなる漢字を表す。以下同じ。)出版社が平成27年5月10日付けで発行した雑誌「旅する自転車ランドナー&スポルティーフの本」の表紙、裏表紙及び抜粋ページ写しであるが、当該出版社から雑誌の掲載記事について依頼を受けたのは約2か月前であり審判請求の登録前3年以内である。当該抜粋52、55、56、57、58ページには、有限会社大前事務所の大前仁氏が自転車の前方フレームの正面に本件商標と社会通念上同一のものを取り付けた写真を宣伝広告している事実が明らかである(商標法第2条第3項第8号)。

したがって、上記事実から、通常使用権者である有限会社大前事務所が、本件商標若しくは本件商標と社会通念上同一のものを「自転車並びにそれらの部品及び付属品」に付しており(商標法第2条第3項第1号)、本件商標を付した「自転車並びにそれらの部品及び付属品」を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのためにオオマエジムショの店舗内で展示している事実が明らかである(商標法第2条第3項第2号)。また、商品に関する広告に標章を付して頒布している事実も明らかである(商標法第2条第3項第8号)。

(4)上記したところにより、本件商標の通常使用権者である有限会社大前事務所によって、本件商標若しくはこれと社会通念上同一の商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、指定商品「自転車並びにその部品及び付属品」に使用していることが明らかである。

(5)結語

以上のとおり、本件商標は通常使用権者によって、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標に係る指定商品「自転車、自転車の部品及び付属品」について使用されている(商標法第2条第3項第1号、第2号及び第8号)。

4 当審の判断

(1)被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。

ア 商標権者(被請求人)は、自転車及び自動車並びに機械工具類の修理及び販売を業とする株式会社である(乙2)。

イ 有限会社大前事務所(東京都世田谷区在)は、出版物の編集・制作・発行、自転車の製造販売及び輸出入、自転車部品の製造販売及び輸出入等を業とする有限会社である(乙3)。

ウ 商標権者と有限会社大前事務所とは、本件商標をその全指定商品について、前者が後者に通常使用権を許諾する旨の「商標権についての覚書」を平成23年10月1日付けで締結している(乙4)。

エ 乙第1号証は、有限会社大前事務所が運営するオオマエジムショ内で撮影された写真写しであって、商標権者が、株式会社富士マーク製作所(東京都千代田区在)に製作を依頼し、有限会社大前事務所に譲渡している自転車の前方フレームに取り付けるステッカーであるとするものであり、そこには、別掲(B)のとおりの形をした上下に取付け用の穴を有する金属製のステッカー(以下「使用商標」という。)が表されている。そして、乙第8号証はオオマエジムショの店舗内を、乙第9号証ないし乙第12号証はオオマエジムショ店舗内で自転車をそれぞれ撮影した写真写しとするものであって、乙第8号証には自転車、自転車の部品等が写っており、乙第9号証ないし乙第12号証には自転車前方のフレーム部分に使用商標が取り付けられていることが認められる。

オ Z−WORKS(東京都足立区在)が有限会社大前事務所に宛てた平成26年9月15日付け及び平成27年1月13日付けの納品書(写し)には、「品名」欄に「マーク貼り」、「金額」欄に「1000」などの記載がある(乙13)。

カ 雑誌「CYCLO TOURIST」(株式会社グラフィック社、平成24年11月25日発行)(126ページ及び127ページの抜粋)において、大前仁の文・写真として、「『アルプス』はメーカーだったと僕は思う 一人ひとりのための自転車」の見出しの下、「・・・2007年に『スポーツサイクル・アルプス』を自らの手で閉じたオーナーの萩原浩さんならそうは言わなかったはずだ。・・・アルプス閉店の5年後。僕は8人で甲子園に出ようとする離島の高校生のような気分で、マウンドに立つことにした。『マニアなら自転車屋をやれるなんて、そんなに甘くないぞ』。浩さんにはキツく言われた。しかしこの5年間でパーツの供給状況はほぼ変わっていないばかりか、僕は少しよくなったような気さえしている。・・・自転車の要であるタイヤは、パナソニック・ポリテクノロジーが作ってくれている。そしてハンドルは日東が、泥よけも本所工研が、そう、国産が手に入る。・・・」との記事とともに、使用商標が表された写真及び大前仁のプロフィール「・・・1995年よりツール・ド・フランスを現地取材。自転車レース報道20年、自転車ツーリング歴30年を数え、2012年10月に自らのショップをオープン。・・・」が掲載されている(乙22)。

キ 雑誌「旅する自転車 ランドナー&スポルティーフの本」(株式会社A出版社、2015年5月10日発行)(52ページないし59ページの抜粋)において、「40年前企画 その1 1975年の輪行ツーリング車を代表する名車 アルプス・クイックエースを組み上げる」の見出しの下、「2007年に惜しまれながら店を閉じた、東京・神田の名店、スポーツサイクル・アルプス。・・・今回は1975年製のアルプス・クイックエースを組み上げることになった。浅麓堂の・・・氏が『いつか完成車に』と温めていたフレームがオオマエジムショに届けられ、マンダリン・イエローに塗り替えられたのだ。じつをいうとオオマエジムショには、アルプスのフレームに貼る転写マークが受け継がれている。そして国内のパーツメーカー、日東や本所工研なども、アルプス専用モデルだったいくつかの商品を、当店に向け再生産してくれている。・・・」との記載がある。そして、55ページ及び56ページの自転車の写真において使用商標が自転車のフレームに取り付けられていることが確認できる。(以上、乙23)

(2)上記(1)で認定した事実を総合してみれば、有限会社大前事務所は、本件商標についての通常使用権者であると認められ、商標権者が製造、販売した本件商標に係る自転車のオーバーホールを行っていることが認められる。そして、有限会社大前事務所は、本件審判の請求の登録(平成27年3月26日)前3年以内である平成24年11月頃に日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品に含まれるオーバーホールされた「自転車」について、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を表示し、販売していたものと推認することができ、その行為は、「商品・・・に標章を付する行為」、「商品・・・に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、・・・する行為」(商標法第2条第3項第1号及び同項第2号)に該当するものと認めることができる。

なお、請求人は、前記3の被請求人の答弁に対し、何ら弁駁するところがない。

(3)むすび

以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者がその指定商品中の「自転車」について、本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をした事実を証明したものと認めることができる。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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