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Trademark Appeal Case

商標の使用意思と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2012−900096(T2012−900096/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5467862号商標の指定商品中、第29類「新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものを除く。),新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類の加工水産物」、第30類「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とする菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とするべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売された菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売されたべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ」、及び第31類「新潟県佐渡市尖閣湾及びその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものに限る。)」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5467862号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成23年4月12日に登録出願され、第29類「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものを除く。),新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類の加工水産物」、第30類「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とする菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とするべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売された菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売されたべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ」及び第31類「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものに限る。)」を指定商品として、平成24年1月20日に登録査定、同年2月3日に設定登録されたものである。

なお、本件商標は、渡辺栄樹が登録出願し、設定登録され、その後、本件商標権については、平成24年6月6日を受付日として、株式会社尖閣に特定承継による移転がされている。

2 登録異議の申立ての理由(要旨)

(1)商標法第3条第1項柱書について

本件商標の出願人であり、登録時の権利者である渡辺栄樹は、山梨県甲州市に居住し、キックボクシングジムを経営している者であり(甲3)、本件指定商品に係る「新潟県佐渡市尖閣湾」及び「沖縄県石垣市尖閣諸島及びその周辺」は、渡辺栄樹の居住地と関連性がないし、また、渡辺栄樹は、本件指定商品である水産物の漁獲(漁業)又はその加工品に関連する事業に従事していない。

さらに、渡辺栄樹自身、本件商標は自己で使用するのではなく、「尖閣諸島を守る会」という政治団体(以下「本件団体」という。)に委任するとしている(甲3)。また、本件団体の代表世話人である仲間均は、本件商標について「出願は、本件団体の仲間均代表世話人の依頼を受けて、会員でもあり有志でもある渡辺栄樹が行った。これは個人として商標登録したのではなく、本件団体の依頼を受けて行ったのであり、商標権者はあくまでも本件団体に帰属するものである。」と本件商標は渡辺栄樹が使用の意思をもって出願したものでないことを明らかにしている(甲4)。

以上のとおり、渡辺栄樹には本件指定商品に関する自己の業務はなく、商標としての使用の意思も、近い将来その開始の予定もないのであって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書所定の登録要件を満たしていない。

(2)商標法第4条第1項第7号について

ア 尖閣諸島の周辺海域は、マグロ類を中心に水産資源が豊富な好漁場であり(甲5)、登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、行政と一丸となって、同海域で漁獲された魚介類やその加工水産物を地域ブランドとして確立するため、品質基準を定め(甲11)、広告宣伝活動(甲6〜10、12〜14)や別掲2の構成からなる商標登録出願(商願2012−11665)を行っている。

一方、渡辺栄樹に本件商標登録を依頼したとする仲間均は、「『尖閣』の商標登録をするよう10年前から進言してきた。」旨述べているとおり(甲4)、「尖閣マグロ」等の商標が申立人の漁協組合員間で使用され、ブランド化のために申立人において登録が必要であることを熟知していた。そして、本件商標登録を公表後、仲間均は、「(尖閣)ブランドとして売るには品質管理が重要。漁協よりも民間企業に任せた方が管理を徹底できる。」などとして、「尖閣」の冠を付した水産物を販売する者からは、同氏が委託する民間業者が商標管理と称して商標使用料を徴収する旨を示唆しているため(甲15)、漁業関係者の間に不安感が広まっている。また、申立人の漁協組合員らの間には、尖閣諸島の漁業と関係を有しない者の商標登録により、地元ブランド魚としての販売が進められている「尖閣マグロ」等が使用できなくなる等の懸念が広まっており、本件商標登録に対する不満・不安の声が上げられている。

本件商標は、他人が使用する商標であることを知りながら無断で登録し、「尖閣」の冠を付した水産物から上がる利益の独占を図る意図でしたものといわざるを得ず、公正な競業秩序を害するものである。

イ 渡辺栄樹は、尖閣海域での漁業や尖閣魚のブランド化による地域振興計画と全く関係がなく、商標登録の目的も尖閣諸島の実効支配の実現といった商標法本来の趣旨とは全くかけ離れたものであるが、そのような渡辺栄樹による本件商標の登録は、同海域で実際に漁業を営む申立人や漁業組合員、及び石垣市が目指している「尖閣マグロ等の地域ブランド化を通じて八重山地域の漁業振興を図る」という公益的な目的の遂行を困難にするものである。

ウ したがって、本件商標を仮に、その指定商品中、沖縄県石垣市尖閣諸島及びその周辺海域に係る商品について使用された場合には、商標法第4条第1項第7号に定める「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第11号について

ア 引用商標(登録831029号商標)

商標の構成 「千角」(縦書き)

登録出願日 昭和43年3月29日

登録設定日 昭和44年9月11日

指定商品 第30類「菓子及びパン」

イ 商標法第4条第1項第11号該当性

本件商標は、魚と波及び尖閣諸島と思われる島の図柄と「尖閣」の文字からなり、分離観察を行った場合、その文字表記より「センカク」の称呼を生じる商標である。この点、前権利者及びその関係者自身が「尖閣」の商標登録をしたと公表し、新聞も「尖閣」が商標登録されていたことを報じているとおり(甲3、4、15、16)、本件商標の「尖閣」の文字部分には明確な商標的機能がある。

一方、引用商標は、前記アのとおり、「千角」の文字からなり、「センカク」の称呼を生じる商標であるから、本件商標と引用商標は、「センカク」の称呼を共通にする類似の商標である。

そして、本件商標の指定商品のうち、「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とする菓子及びパン」及び「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売された菓子及びパン」は、引用商標の指定商品「菓子及びパン」と同一又は類似するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第16号について

本件商標は、「尖閣」という地名を含むものであり、尖閣諸島の図柄を含む構成よりなることから、「尖閣諸島」を看取させるものであるにもかかわらず、その指定商品には、「新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺で漁獲・生産・販売された商品」との表示が含まれているものであり、本件商標は、「商品の品質について誤認を生じるおそれがある商標」に該当する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

3 本件商標登録に対する取消理由 (要旨)

(1)商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないことについて(平成24年11月29日付け取消理由通知書)

甲第3号証及び甲第4号証によれば、出願人(渡辺栄樹)は、本件商標の登録査定時において、本件商標を自らが使用し、あるいは将来使用する意思があったものとは認めることができない。

したがって、本件商標は、その登録査定時において、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備していたものということはできない。

(2)商標法第4条第1項第16号該当性について(平成26年6月24日付け取消理由通知書)

本件商標は、沖縄県石垣市にある尖閣諸島を容易に認識させるものであるところ、その指定商品には、新潟県佐渡市尖閣湾で生産(漁獲を含む。)及び販売された商品を含むものである。また、尖閣諸島には上陸できず、そこで、生産(漁獲を含む。)及び販売をすることはできない。

そうすると、本件商標の指定商品中、第29類「新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものを除く。),新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類の加工水産物」、第30類「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とする菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とするべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売された菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売されたべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ」及び第31類「新潟県佐渡市尖閣湾及びその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものに限る。)」に使用された場合には、尖閣諸島で生産等された商品であるかのごとく、商品の品質について誤認を生ずる。

4 商標権者の意見(要旨)

(1)本件商標が商標法第3条第1項柱書について

ア 本件商標について、初めから渡辺栄樹一個人の使用意思に係るものではなく、尖閣諸島周辺海域で水揚げされるアカマチなどをブランドとして東京市場などに販売することが、本件団体の活動である尖閣諸島を守る活動につながることから、商標を取得することとし、商標登録後に設立される法人が使用するものとして、渡辺栄樹が出願したものである。渡辺栄樹は、2010年10月から本件団体の理事である(資料1、24、25 なお、以下、商標権者が提出する回答書に添付の資料23及び24については、それぞれ「資料24」及び「資料25」と読み替える。)から、その一員としての渡辺栄樹に使用する意思があったものと理解するのが取引社会の実情からみて自然である。

特に、起業にあたっては、核となる数人の活動を要する場合が多く、その場合に核となる数人の活動は、一個人の活動ではなく所属する会(組織)の一員としての活動である。したがって、これらの者の行為(活動)はワンセットで見るべきである。

イ 渡辺栄樹は、一般社団法人日本海洋資源機構の理事として本件商標を使用した尖閣諸島周辺で漁獲されたものを大阪あるいは東京に販路を作るため試食会等を開催するなどの活動をしている(資料12、13、24、25)。

起業化の第一段階は、会社組織を設立することであるから、本件団体自らが本件商標をその指定商品に使用しようとしていないということではなく、起業化の土台ができ、いよいよ本件商標のブランド化に向かって始動したと見るべきである。本件団体の代表世話人が監査役を務める、現在の商標権者である株式会社尖閣(資料4)は、八重島漁港及び伊良部漁港で水揚げされた尖閣諸島周辺海域の魚類を競り落とし東京等に販売したり(資料11、12)、菓子等の販売も手掛けている(資料17、18)。

ウ 本件商標は、本件団体が法人格を有しない団体であることから、理事である渡辺栄樹を出願人として商標登録出願をし、商標登録を受けたものである。

エ 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しているというべきである。

(2)商標法第4条第1項第16号について

商標法第4条第1項第16号に係る前記3(2)の取消理由に対し、商標権者から意見の提出はなかった。

5 当審の判断

(1)事実認定

申立人の提出した甲号証、商標権者が意見書及び回答書の添付資料として提出した資料及び職権で調べた証拠によれば、以下の事実が認められる。

ア 尖閣諸島について

(ア)尖閣諸島は、石垣島の北、約170km、沖縄本島の西、約410kmに位置する島の総称であり、沖縄県石垣市に所在し、魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩及び飛瀬の各島からなるものである(外務省ホームページ)。

尖閣諸島は、警備・取り締まりや国有地としての管理が行われ、政府は、原則として、政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸等を認めていない(同外務省ホームページ及び第117回国会 答弁書第48号 平成23年2月15日)。

(イ)「尖閣」の語は、「尖閣諸島」の略称として使用されているものであり(甲3、7〜10ほか)、また、本件商標の構成中にある3個の島からなる図と同様の構図による写真を用いて尖閣諸島が紹介されている(甲6、20)。

イ 出願人らの業務について

(ア)本件団体は、尖閣諸島を守る活動をする団体として平成9年に設立され、その活動として尖閣諸島を国内外にアピールしていくことを位置付けている。その後休眠状態であったが、2010年(平成22年)10月に活動を再開した。仲間均を本件団体の代表世話人とし、最高顧問に片山さつき衆議院議員、顧問に新垣哲司沖縄県議会議員、事務局長に石垣宗政氏のほか、渡辺栄樹が理事の一人として選任されている(甲3、4、資料1、24、25)。

(イ)本件団体は、2010年(平成22年)11月12日に開催の会議において、尖閣諸島周辺海域で漁獲された魚等をブランドとして東京市場などに販売することが尖閣諸島のアピールになるとし、その業務を行う株式会社を設立するための手続を仲間均が行い、商標登録取得のための手続を渡辺栄樹が行うこととした(資料24、25)。

(ウ)平成24年2月6日に発売された雑誌「プレイボーイ」には、「『1.3尖閣上陸』の知られざる舞台裏」と題して、「渡辺栄樹は山梨県でキックボクシングジムを経営しているが、法律にも明るく、昨年来、特許庁に『尖閣ブランド』を商標登録する申請を出していた。かつて大分県が佐賀関で取れるさばやあじを『関さば』『関あじ』と商標登録して高級ブランド化に成功したように、仲間均と渡辺栄樹は『尖閣魚をひと口食べて島を守る』をキャッチコピーに、”物での実効支配”を考えたのである。」、「3月には承認された番号が渡される。渡辺栄樹はそれを仲間均が代表世話人の団体『尖閣諸島を守る会』(最高顧問は片山さつき参議院議員)に委任する。」、「仲間均は、・・・静岡県の熱海市に行き、売りに出ている近海船を購入できないかという交渉に入った。漁船よりサイズが大きい近海船なら船舶安全法に引っかからない。これを購入して遊覧船に改造し、尖閣観光ツアーを実現させて実効支配を既成事実化してしまおうという考えなのである。」旨の記事が掲載されている(甲3)。

なお、本件記事の取材について、仲間均は、2014年3月31日付け陳述書において、「プレイボーイ誌の記事については、記載されている記事の内容にある通りである。」、「ジャーナリストの木村氏が2012年1月下旬に直接取材したもの」と述べている(資料25)。

(エ)仲間均は、自己のブログに2012年3月5日付けで「尖閣諸島を守る会 代表世話人 仲間均」名の「『尖閣』商標登録について」と題する文章を掲載し、「尖閣諸島を守る会では、尖閣諸島周辺海域で漁獲されたカツオ、マグロ、アカマチなどの水産物をブランドとして東京市場などに売り込むために、このほど、文字入り図柄の商標『尖閣』を平成23年4月12日、特許庁に登録申請し、平成24年2月3日付で登録が認められた。」、「『尖閣』の商標登録については今に始まったことではない。10年前から八重山漁協などに・・・早めに商標登録をするよう進言してきたが、なかなか取り合ってくれず、長い年月が流れた。」、「今後は、『尖閣』ブランドとして、尖閣諸島周辺海域で獲れるカツオやマグロ、アカマチの食用魚介類だけでなく、加工水産物、加工水産物を原料とするお菓子などの特産物販売を展開し、尖閣諸島が日本固有の領土で有り、石垣市の行政区域であることを広く国内外にアピールしていくことにしている。」、「特許庁の出願は、尖閣諸島を守る会の仲間均代表世話人の依頼を受けて会員でも有り有志でもある渡辺栄樹氏が行った。これは個人として商標登録したのではなく、尖閣諸島を守る会の依頼を受けて行ったものであり、商標権者はあくまでも尖閣諸島を守る会に帰属するものである。」などと記載されている。

(オ)尖閣諸島周辺海域で漁獲された漁獲物の東京市場への販売について、渡辺栄樹が平成24年5月20日まで理事であった(資料5)一般社団法人日本海洋資源機構を仲介役として販路拡大が計画されていた(甲4)。

(カ)株式会社尖閣は、沖縄県石垣市字真栄里204番地129を本店所在地として、平成24年4月20日に設立された会社であり、同社の履歴事項全部証明書の目的欄には、「1、遊覧船による観光遊覧事業」「3、尖閣諸島周辺海域で捕れる魚の販売事業」「4、お土産の製造販売」等が記載されている。仲間均は、同社の監査役であり、渡辺栄樹は、同社の顧問である(資料4、17、25)。

なお、渡辺栄樹は、平成24年2月に本件商標の登録を受け、同年6月にその商標権を株式会社尖閣に移転した(資料11、24)。

(キ)株式会社尖閣は、平成24年9月10日に八重山漁協のセリ市場で魚釣島近海で漁獲されたアカマチなどの魚類を買い付け、東京市場に初出荷した。出荷品の外箱には、本件商標及び「一口食べて尖閣を守ろう!」の記載のあるシールが貼られた(資料14〜16)。

(ク)渡辺栄樹は、キーホルダー、ストラップ、菓子等の開発に取り組み、株式会社尖閣がこれらの商品について本件商標の構成態様の標章を使用して平成24年の年内に発売する計画であることが報道された(資料17、18)。

ウ 申立人について

申立人は、沖縄県石垣市にある漁業協同組合であり、尖閣諸島周辺で漁獲された魚介類のブランド化をすることとし、平成24年1月の理事会に尖閣ブランドに係る案件を図ることとした(甲12)。

そして、申立人は、別掲2の構成からなる商標を平成24年2月20日に登録出願し、当該商標登録出願は、第29類「沖縄県石垣市尖閣諸島の周辺海域で漁獲されるまぐろ(生きているものを除く),沖縄県石垣市尖閣諸島の周辺海域で漁獲されるまぐろを用いた加工水産物」を指定商品として、同年8月24日に設定登録された(商標登録第5516748号)。

(2)判断

ア 本件商標について

本件商標は、別掲1のとおり、真円内の上部を、青空を表すように彩色し、その中央に「尖閣」の文字を縦書きし、また、その左右には飛び跳ねた魚の図形を配し、さらに、下部には水色と白色で海や波を表した中に、3つの島を描いた図形からなるものである。そして、構成中の「尖閣」の文字は、沖縄県石垣市にある「尖閣諸島」の略称として使用されているものであり、同じく3つの島の図形は、尖閣諸島の特徴的な島の配置を描いてなるものであるから、当該文字及び図形部分は、「尖閣諸島」を容易に認識させ、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。

イ 商標法第3条第1項柱書について

(ア)商標法第3条第1項は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」を登録要件として規定しており、出願人が商標登録を受けるには、当該商標について、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品に使用をしているか、あるいは将来使用する意思があることが必要である。他方、新たに法人等を設立する場合には、その設立前から事業の準備が進められるものであり、また、その事業に使用する商標について事前に商標登録を受けることが必要となる場合がある。しかしながら、このような場合に、設立前の法人名では、商標登録出願をすることができないから、設立される法人が使用を予定する商標について、例えば、当該法人との間において、その設立準備に一定の責任を有する者である等の密接な関係が認められる自然人により登録出願をすることとなる。

このような商標について、出願人である自然人が使用し又は使用する意思がないことにより商標登録を受けることができないとすると、その新たに設立される法人の設立準備及びその後の経済活動に支障を生じることが考えられることから、当該法人が設立後に使用する商標であり、出願人自身に係る業務とはいえないものであっても、当該出願人において当該商標が「自己の業務...商標」に当たると評価できるものとみるべきである。

(イ)前記(1)によれば、本件団体は、平成22年11月12日に開催した会議において、尖閣諸島周辺で漁獲されたマグロなどの水産物に商標を付し、その商品を販売することにより、尖閣諸島をアピールしていくこととし、その販売業務を行う法人を設立すること及び商標登録を取得することを決定したことが認められる。

なお、本件団体は、法人格のない団体であって出願し商標登録を受けることができないため、理事である渡辺栄樹が商標登録出願を行うこととされた。

これを受け、渡辺栄樹が平成23年4月12日に本件商標を出願し、平成24年1月20日に登録査定を受けたものである。

そして、仲間均の陳述によれば、同年2月6日発売のプレイボーイに掲載された記事は、取材された内容のとおりであり、その取材を同年1月下旬に受けたことが認められる。

してみれば、本件団体は、本件商標の出願日前の平成22年11月に、本件商標を取得し使用することについて計画し、法人格のない本件団体に代わって、理事である渡辺栄樹が本件商標を出願したものであるから、渡辺栄樹に本件商標の使用の意思があったと評価し得るものである。そして、本件商標の登録査定の日は同年1月20日であり、この頃にされた週刊誌の取材において、仲間均が前記(1)イ(ウ)のとおり、事業の企画を説明していることからすれば、本件商標の登録査定時においても、渡辺栄樹自身に本件商

標の使用の意思があったとみて差し支えないものである。

更に、平成24年4月20日に株式会社尖閣が設立され、同年2月3日に設定登録された本件商標権が同年6月6日に渡辺栄樹から株式会社尖閣に譲渡された事実は、本件団体の上記決定のとおりであって、仲間均が同社の監査役及び渡辺栄樹が顧問となって密接な関連性を有するなど、上記推認の妥当性を裏付けるものとみることができるものである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備していたといえる。

ウ 商標法第4条第1項第7号について

申立人は、出願人が本件商標を尖閣諸島周辺海域で実際に漁業を営む申立人や漁業組合員が使用する商標であることを知りながら、無断で出願し、「尖閣マグロ」等の名称による利益の独占を図る意図で登録したものといわざるを得ず、公正な競業秩序を害するものであり、また、申立人及び石垣市(以下、これらの者を「申立人ら」という場合がある。)が、上記海域で漁獲されたマグロ等のブランド化を通じて八重山地域の漁業振興を図るという公益的な目的の遂行を困難にするため、本件商標を沖縄県石垣市尖閣諸島に係る指定商品に使用された場合には、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する旨主張する。

しかして、尖閣諸島の周辺海域は、相当の漁獲が実際に行われている漁場であり(甲5)、上記海域での漁獲に係る商品との関係において、前記(2)アのとおり、本件商標中に表された「尖閣」の文字と3つの島の図形は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。

そうとすると、「尖閣」の文字を有する本件商標に係る商標権が存在しても、本件商標の指定商品の分野において、他人が「尖閣」の文字を使用することを妨げるものとはいえないし、当該商標権を取得することにより、申立人が主張するような利益の独占の意図があったと認めることはできない。

更に、申立人らによる、上記海域で漁獲されたマグロ等のブランド化が八重山地域の漁業の振興を図る公益的な目的があるとしても、本件商標の存在が、申立人らの事業を妨げるものであるとする事情はうかがえない。

以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

エ 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中、「尖閣」の文字及び3つの島の図形は、前記(2)アのとおり、自他商品の識別標識としての機能を有するものではなく、本件商標は、全体として、出所識別のための称呼及び観念は生じないものである。

一方、引用商標は、「千角」の文字よりなるところ、「センカク」の称呼を生じ、「千個の角(つの)」、「千か所のとがった所」ほどの意味合いを認識させるものである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

オ 商標法第4条第1項第16号について

本件商標は、平成26年6月24日付け取消理由通知のとおり、その指定商品中、第29類「新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものを除く。),新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類の加工水産物」、第30類「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とする菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とするべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売された菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売されたべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ」及び第31類「新潟県佐渡市尖閣湾及びその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものに限る。)」については、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。

なお、本件商標のその余の指定商品については、品質の誤認を生ずるおそれはない。

(3)まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第29類「新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものを除く。),新潟県佐渡市尖閣湾およびその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類の加工水産物」、第30類「新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とする菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類又はそれらの加工水産物を原料とするべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売された菓子及びパン,新潟県佐渡市尖閣湾・沖縄県石垣市尖閣諸島およびその周辺で生産又は販売されたべんとう・すし・サンドイッチ・ハンバーガー・ホットドッグ」及び第31類「新潟県佐渡市尖閣湾及びその周辺並びに沖縄県石垣市尖閣諸島で漁獲されたかつお・まぐろ・あかまち・その他の食用魚介類(生きているものに限る。)」については、商標法第4条第1項第16号に違反してされたものと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。

しかし、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、取り消すべき理由が認められないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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