結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 異議2014−900259(T2014−900259/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5680065号商標(以下「本件商標」という。)は、「スイートエンハンサー」の文字を標準文字で書してなり、平成26年1月30日に登録出願、第1類「化学品」、第3類「調合香料,精油からなる食品香料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),調味料,香辛料」を指定商品として、同年5月21日に登録査定、同年6月20日に設定登録されたものである。
登録異議申立人日本香料工業会(以下「申立人1」という。)は、本件商標について、下記(1)ないし(3)の理由により、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきであると申立て、証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証を提出した。
(1)商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、指定商品の需要者の大多数である飲食品や香粧品、医薬品等の製造メーカーにおいて、その指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する「スイート」の文字と、その指定商品の用途、効能を普通に用いられる方法で表示する「エンハンサー」の文字とを組み合わせたものにすぎず、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標が一連一体で分割する理由が存在しないとしても、単に「甘い香りを増強するもの」との観念しか生じず、これも当該指定商品の用途、効能を普通に用いられる方法で表示するにすぎない商標と考えるのが自然であるから、この場合も、同法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第1項第6号について
本件商標は、甲第12号証ないし甲第21号証において開示されているように、多数の者が同じ用途、効能を持つものを「スイートエンハンサー(sweet enhancer)」と称している事実があり、また、該語を日本語訳した場合に生じる「甘味増強剤」も広く使われている事実があることから、本件商標は、その需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標といえるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、「甘い」の観念を容易に生じる「スイート」の文字部分を有しているから、これに接する需要者は、これらの商品が「甘味を有する商品」であると認識する。そうすると、本件商標を「甘味を有する商品」以外の指定商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
登録異議申立人吉川稔(以下「申立人2」という。)は、本件商標について、下記(1)ないし(5)の理由により、商標法第3条第1項第3号、同項第6号、同法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第16号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきであると申立て、証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。
(1)商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、指定商品の需要者である香料の専門知識を有する者において、その指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する「スイート」の文字と、その指定商品の用途を普通に用いられる方法で表示する「エンハンサー」の文字を組み合わせたものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標が一連一体として、その自他商品識別力を判断すべき商標であるとしても、香料の専門知識を有する需要者にとって、「甘美な香りを増加するもの」との観念が容易に生じるため、これも当該指定商品の用途を普通に用いられる方法で表示するにすぎない商標と考えるのが自然であるから、同法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第1項第6号について
本件商標は、上記(1)のとおり、自他商品識別力を有さないものであって、香料の専門知識を有する需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標といえるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号について
FFIジャーナル(FFIジャーナル編集委員会発行)には、商標権者でない他人が香料について使用している「スイートエンハンサー」の記載があるから、「スイートエンハンサー」の文字は他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く知られている。そして、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして、当該需要者の間に広く知られている「スイートエンハンサー」の文字と同一の商標であって、その商品(香料)と同一又は類似する商品について使用する商標であるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標(登録第5009394号商標)に類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品について使用する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、「甘い」又は「甘味のある」との観念を容易に生じる「スイート」の文字部分を有しているから、これを、指定商品中、第3類「調合香料,精油からなる食品香料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)調味料,香辛料」に使用した場合、これに接する需要者は、これらの商品が「甘美な香り又は味覚がする商品」であると認識する。そうすると、本件商標を「甘美な香り又は味覚がする商品」以外の指定商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
当審において、平成27年1月28日付けで、商標権者に対して、本件商標の指定商品中、第3類「調合香料,精油からなる食品香料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」について登録を取り消すべき旨の通知をした。
その理由は要旨次のとおりである。
(1)広辞苑(第五版)の「スイート」の項目には「甘いこと。甘口。」などと記載されている(甲2)。
(2)ランダムハウス英和大辞典の「enhancer」の項目には「enhanceする人(もの)」と記載され、「enhance」の項目には「〈度合い・可能性などを〉高める、強める、いっそう良くする」などと記載されている(甲3)。
(3)学術用語英和対訳集によれば、「enhancer」の語は、「エンハンサー、増強剤、増強構造」を意味するものとして記載されている(吉川甲12)。
(4)「香りの総合事典」(1998年12月10日、株式会社朝倉書店発行)の「フレーバーエンハンサー Flavor enhancer」の項目には、「一般に比較的少量で、食品などの風味を増強する作用がある物質をいう。IOFI定義では、一般的使用量ではにおいがまったくないかわずかしかなく、その物質自体により直接得られるフレーバーの範囲以上に、ある種の食品成分のフレーバー効果を増強することを主目的とする物質をいう。その効果を示すものとして、マルトールやグルタミン酸ナトリウム(MSG)、5’−ヌクレオチド類などがある。」と記載されている(甲5)。
(5)「特許庁公報/周知・慣用技術集(香料)/第I部 香料一般」(平成11年1月29日発行)の「エンハンサー」の「(1)目的」の項目には、「天然香料、合成香料、香辛料、ハーブなどの香料ならびに香料関連物質の中には、賦香目的以外に香粧品香料や食品香料等に添加して調合香料全体をマイルドにし、こくを与え、より天然らしさとブースター効果を目的として使用するものがある。食品用、香粧品用、工業用などに使用する調合香料は多種類の成分を配合するが、香質を向上させ、全体をマイルドにし、こくと重量感を増加させ、更に天然感を付与することを目的とした配合素材のことを特にエンハンサーといい、このうちフレーバーに使われるものをフレーバーエンハンサーという。フレーバーエンハンサーの代表とされるL−グルタミン酸ナトリウムや5’−イノシン酸ナトリウムの作用メカニズムについては、その添加が香りの直接増強に寄与するわけではなく、その他のフレーバー特性である広がり、まるみ感、インパクト感、重厚感等々について増強する効果が総合的にはたらいて香りを含めたフレーバー全体の力価を増強しているということが判っているが、他のエンハンサーとして使用されるもののほとんどは、その効果は実証的に判っているものの作用メカニズムは未だ詳しく判ってはいないというのが実状である。」と記載され、「(2)エンハンサー・変調剤として使用される主な香料及び香料関連物質」の項目には、その代表例が表−1に、「天然抽出物」、「アミノ酸類」、「合成香料」別に掲載されているところ、「天然抽出物」には、例えば、「パセリ」、「フェンネル」、「クローブ」等があり、「アミノ酸類」には、例えば、「L−システイン」、「グルタミン酸」等があり、また、「合成香料」には、例えば、「3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノン(香料名:ソトラン)」、「3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン(香料名:マルトール)」等がある。また、同項の「使用方法」には、「エンハンサーは、調合香料全体の香調バランスを安定化させ、こくと重厚感、天然感を増幅させ香質を一段と高めるために使用される。通常は、合成香料、天然物抽出物やアミノ酸類を組み合わせて最も効果的に使用するのが普通であるが、極く稀には単独で使用することもある。」と記載されている(甲6)。
(6)「特許庁公報/周知・慣用技術集(香料)/第II部 食品用香料」(平成12年1月14日発行)の「(4)官能別フレーバ特性」には「食品の調理、焙焼などにより発生するフレーバーはさまざまであるが、官能別にみた化合物の1例を以下に示す。」と記載され、その中に、「甘い香り」が存在する(甲7)。
(7)特許庁ホームページに掲載の「標準技術集/香料」(掲載日:2007年3月14日)の「技術名称1−3−2−6 機能(エンハンサー)」には、「エンハンサーの例として、マルトール(ベルトール)及びエチルマルトール(ベルトールプラス)のエンハンサー機能としての『風味・甘味の増強』について、図表1に示す。」とあり、図表1には、例えば、「使用品目/フルーツドリンク」の場合、「特長/オレンジ、パイナップル、ストロベリーなどのフルーツの香りを引き立たせるのに最適である。」と記載され、また、「使用品目/コーヒー飲料」の場合、「特長/特にミルクリッチな乳飲料系のクリーミー感、ボディー感を増強させる。」と、「使用品目/あん、ジャム、ピーナッツクリーム、焼肉のタレ(甘口)」の場合、「特長/甘味を強め、こくのある味にする。」と、それぞれ記載されている。
さらに、「マルトール」に関し、「マルトールは、カラマツの樹皮やもみの葉から分離されたが、その後(1960年代)発酵法をベースにした工業的製法が確立された。マルトールは砂糖を含む一般菓子、コーヒー、ココア、醤油、大豆等、豆類を中心とする局品の製造過程における生成が確認されている。」、「・風味・甘味の改善/マルトール類を添加することにより甘味が強調され、砂糖、異性化糖の使用量を5〜15%低減することができる。あん、ジャム、焼き菓子、キャンディーでは、その風味を特に強く増強する。また、フルーツフレーバーのオレンジ、パイナップル、ストローベリー、メロンなどの香りを引き出させるのに最適であり、アイスクリーム、チョコレート、コーヒー、ココアなどのバニラフレーバーをより引き立て、増強する効果を持っている。」及び「・砂糖以外の甘味料の甘質改善/マルトールは砂糖を使った加工食品で自然発生するものであり、砂糖以外の甘味料と併用することにより、より味質が砂糖に近づくとされる。例えば、アスパルテームと併用することにより、トップの味が強調され、ボディー感がでる。また、糖アルコールやライティスを使ったシュガーレスキャンディーにおいても同様の効果が見られる。」と記載されている(甲8、吉川甲19)。
(8)「日経サイエンス」(2008年11月号)の「味を強める調味料」のウェブサイト(http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0811/200811_086.html)には、「・・私たちが口にしたときに感じる味を変えてしまおうという研究が進んでいる。すでにうま味を強める『うま味増強剤』が市販の食品に試験的に添加されており、来年には甘味を強める『甘味増強剤』を添加した食品が店頭に並ぶ予定だ。・・・味増強剤自体には味がない。甘味増強剤の役割は,甘味受容体と砂糖分子が結合する割合を高めることだ。砂糖分子が少ししか存在しないときでも、効率よく甘味受容体と結合するので、甘味を強く感じるというわけだ。味増強剤を使うことで、『おいしい食品』は『体によい食品』になる可能性がある。おいしい食品は概して砂糖や塩をたっぷり含んでおり、多量に消費すると健康問題、すなわち肥満や心臓病につながりかねない。味増強剤を使えば、食品の味を保ったまま砂糖や塩の量を減らすことができるのだ。カロリーや塩分を以前の数分の1に抑えた食品を食べているのに消費者はその違いに気づかないーー数年後にはそんな状況が実現するかもしれない。」と記載されている(甲11)。
(9)発明の名称を「風味増強剤及び香料組成物」(公告番号:WO2010074258A1)とする発明に関する明細書には、「本発明は、飲食品の風味増強剤、及び香料の持つ風味を増強した香料組成物に関する。・・本発明の風味増強剤を飲料に添加すると、飲料自体の香味に影響を与えることなく、配合した香料の風味を増強させるエンハンサーとして利用することができる。本発明の風味増強剤は、特に果実香料のエンハンサーとして作用し、果実の果実感、清涼感を増強させるので、例えば、中性の茶系飲料に果実香料を添加したような飲料の果実風味を選択的に増強させることができる。」と記載されている(吉川甲13)。
(10)「チャネリング・エンハンサー」のウェブサイト(http://senpuh.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-7ce9.html)(2013年5月17日)には、「Enhancer(エンハンサー):『その働きを高めたり、促進させるもの』の意味。食品分野では、『フレーバーエンハンサー』と呼ばれる、『香料』の種類がある。これを少量添加するだけで、その食品の『旨み』や『こく』がアップする。」と記載されている(吉川甲14)。
(11)「手軽にどこでもフレーバーウォーター」のウェブサイト(http://www.gvb.com/2013/02/post-653/)(2013年2月4日)には、「単なる水をカラフルに美味しく変身してくれるのがKraft Foods社より新発売された『MiO Liquid Water Enhancer($5.29)』。小さな卵型容器がなんとも可愛いMiOは、水に注ぐだけでフレーバーウォーターができるエンハンサー。エンハンサーが注目されている欧米では、『Tang』、『Metamucil』、『Crystal Light』といったパウダー式エンハンサーが市場に出回っていますが、このMiOは溶けやすい液体タイプ。さらに、約236mlでカロリーゼロ、炭水化物ゼロ、糖分ゼロ、遺伝子組み換え物質や人工香料、グルテン不使用。」と記載されている(吉川甲15)。
(12)セティ株式会社のホームページ「原料/食品添加物」のウェブサイト(https://www.sceti.co.jp/ingredients/additives/)には、「米国および欧州規制に適合した、天然・合成香料や天然由来の超臨界CO2抽出香料を、米国、ドイツより輸入しております。食品やデザートのエンハンサーとしてご使用いただけます。」と記載されている(吉川甲16)。
(13)「フレーバー分析と能」のウェブサイト(http://twn.main.jp/simoho/dokugin/1708fujimori/fujimori_1708.html)には、「フレーバー(食品香料)とフレグランス(香粧品香料)の世界では香料の調合は芸術であり科学ではないと言われている。・・キー化合物はしばしば大変微量な成分であり通常の分析方法では見つけられない。キー化合物は必ずしも強い香気を有しているとは限らないが、エンハンサー(匂い増強効果物質)として働く。」と記載されている(吉川甲18)。
(14)食品・食品添加物研究誌「FFIジャーナル No,196」(2002年1月1日、FFIジャーナル編集委員会発行)の「呈味改善用の香料の紹介」の項目には、「近年の健康志向を背景に飲料や菓子をはじめとする嗜好品を中心に低糖、低カロリーをうたった食品が市場を賑わせるようになってきている。砂糖は古くから利用され親しまれている甘味料ではあるが、肥満や虫歯の原因となるということで敬遠される傾向にある。そこで砂糖に代わる甘味料としてエリスリトールやマルチトールなどの糖アルコールやスクラロース、アスパルテーム等の高甘味度甘味料が登場した。しかし、一般にノンシュガー及び低カロリー食品は甘味の後引きやコク味不足を感じることがある。そこで、砂糖の甘味により近づけるために各種甘味料を組み合わせる研究が行われている。」と記載され、呈味改善に効果のある香料として、「マルチハンサーNO.1」、「シュガーレス500」、「スイートエンハンサーNO.71393」及び「スイートエンハンサーNO.2101」が紹介されており、そのうちの「スイートエンハンサーNO.71393」は、「天然素材から抽出、濃縮して得られた素材を応用した香料。低カロリー、シュガーレス食品の風味改善に優れた効果が期待できる。」との説明が付され、また、「スイートエンハンサーNO.2101」は、「渋味、苦味、酸味、甘味の後引き感といった後味等の改善に効果がある。」との説明が付されています。なお、「マルチハンサー」については、「三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標です。」と付記されている(吉川甲20)。(15)発明の名称を「ゼリー入り飲料及びその製造方法」とする公開特許公報(特開2004−126、出願人:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)の「発明の詳細な説明」には、「0056/ゼリー液処方」及び「0057/飲料溶液処方」として「スイートエンハンサーNO.2101」が原料の一つとして記載されている(吉川甲23)。
そして、「エンハンサー」のうちフレーバーに使われるものを「フレーバーエンハンサー」と称しており、香料等を取り扱う分野においては、肥満や糖尿病といった生活習慣病の防止、あるいは、虫歯の予防などのために、砂糖等の甘味料の使用量を抑え、これに代わる食品の風味・甘み増強剤等の研究、開発が急速に行われている実情にあり、平成11年の時点において既に、「天然抽出物」、「アミノ酸類」、「合成香料」の各範ちゅうに属するエンハンサー・変調剤として使用される主な香料及び香料関連物質が「特許庁公報/周知・慣用技術集(香料)」に掲載されたこと、また、平成19年には、エンハンサー・変調剤として使用される香料及び香料関連物質の一つであるマルトール類について、これを添加することにより甘味が強調され、砂糖、異性化糖の使用量を5〜15%低減することができ、あん、ジャム、焼き菓子、キャンディーは、その風味を特に強く増強するなどとの確認がされている。
さらに、食品の風味や甘味を増強する香料として「スイートエンハンサーNO.71393」及び「スイートエンハンサーNO.2101」が使用されている事例もわずかではあるが存在すること(なお、「スイートエンハンサーNO.71393」及び「スイートエンハンサーNO.2101」は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社が使用しているものと認められるものの、これが商標としての使用であるかは不明である。)、などを認めることができる。
本件商標は、前記第1のとおり、「スイートエンハンサー」の文字を標準文字で書してなるものであるところ、上記2で認定した香料等を取り扱う分野の取引の実情よりすれば、その需要者をして、「甘い、甘いこと、甘味」などを意味する「スイート」と「香質を向上させ、全体をマイルドにし、こくと重量感を増加させ、更に天然感を付与することを目的とした配合素材」又は「調合香料全体の香調バランスを安定化させ、こくと重厚感、天然感を増幅させ香質を一段と高めるために使用される香料」を意味する「エンハンサー」の2語を結合したものと容易に理解させるものであって、全体として、「甘い香り・風味を増強する香料」なる意味合いを表したものと認識させるにとどまるものと認められる。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品中の「甘い香りを増強する調合香料,甘い香りを増強する精油からなる食品香料,甘い香りを増強する食品香料(精油のものを除く。)」について使用しても、単に商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから、自他商品の識別標識としての機能を有しないものといわなければならない。
また、本件商標をその指定商品中、「甘い香りを増強する調合香料,甘い香りを増強する精油からなる食品香料,甘い香りを増強する食品香料(精油のものを除く。)」以外の香料について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、その登録査定時において、その指定商品中の第3類「調合香料,精油からなる食品香料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」のうち、「甘い香りを増強する調合香料,甘い香りを増強する精油からなる食品香料,甘い香りを増強する食品香料(精油のものを除く。)」については、商標法第3条第1項第3号に該当し、それ以外の商品については、同法第4条第1項第16号に該当する商標であったというべきである。
以上のとおり、本件商標の登録は、第3類「調合香料,精油からなる食品香料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものと認める。
商標権者は、上記第3の取消理由の通知に対して、何ら意見を述べていない。
本件商標は、上記第3の取消理由のとおり、これをその指定商品中の「甘い香りを増強する調合香料,甘い香りを増強する精油からなる食品香料,甘い香りを増強する食品香料(精油のものを除く。)」について使用しても、単に商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであり、また、その指定商品中、「甘い香りを増強する調合香料,甘い香りを増強する精油からなる食品香料,甘い香りを増強する食品香料(精油のものを除く。)」以外の香料について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、その指定商品中、第3類「調合香料,精油からなる食品香料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
商標法第3条第1項第6号は、同項各号の総括規定と解されているところ、本件商標は、上記1において述べたように、本件商標の指定商品中の「調合香料,精油からなる食品香料,食品香料(精油のものを除く。)」については、同法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
そうすると、該商品中に、その商品の品質、用途を表すものとして、自他商品の識別標識としての機能を有しないものがあるとしても、同法第3条第1項第6号を適用するまでもないものといえる。
一方、本件商標を「調合香料,精油からなる食品香料,食品香料(精油のものを除く。)」以外の指定商品に使用した場合には、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないとすべき事情を認めることはできないから、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
本件商標は、前記第1のとおり、「スイートエンハンサー」の文字を標準文字によって同書、同大、同間隔に書してなるものであり、これより生ずる「スイートエンハンサー」の称呼もよどみなく一連に称呼できるものである。
そして、本件商標は、前記第3の3のとおり、全体として、「甘い香り、風味を増強する香料」程度の一連の意味合いを認識させるものといえる。
そうすると、本件商標は、殊更「スイート」の文字部分と「エンハンサー」の文字部分とに分離して観察しなければならない特段の事情は見当たらないものというべきであるから、全体をもって不可分一体のものとして認識し把握されるというのが自然である。
してみれば、本件商標は、全体として、「甘い香り、風味を増強する香料」の観念を有し、「スイートエンハンサー」の一連の称呼のみを生ずるものというのが相当である。
他方、引用商標は、「ENHANCER」の欧文字と「エンハンサー」の片仮名を2段に横書きしてなるものであるから、これより「エンハンサー」の称呼を生じ、「〈度合い・可能性などを〉高めるもの、強めるもの」の観念を生じるものである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標と引用商標は、その外観において「エンハンサー」の文字を共通にするが、語頭において「スイート」の文字及び欧文字部分の有無という顕著な差異を有するから十分区別することができ、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
また、本件商標から生ずる「スイートエンハンサー」の称呼と引用商標から生ずる「エンハンサー」の称呼において、両者は、語頭において「スイート」の音の有無という顕著な差異を有するから、十分聴別することができるものであり、観念においても明らかに区別し得るものである。
そうすると、本件商標の指定商品中、第1類「化学品」と引用商標の指定商品中、第1類「化学品」が同一の商品であるとしても、本件商標は、引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といえるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。
申立人2は、前記第2 2(3)において、「本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして、当該需要者の間に広く知られている『スイートエンハンサー』と同一の商標であって、その商品(香料)と同一または類似する商品について使用する商標である。」旨主張し、証拠方法として、「FFIジャーナル第119号」(吉川甲20)及び「公開特許公報(特開2004−126)」(吉川甲23)を提出しているが、提出された証拠によれば、「スイートエンハンサー」の文字が掲載されていることは認められるものの、これが商標としての使用であるかは明らかでなく、これらの証拠によっては、本件商標が、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって、その商品について使用するものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえない。
以上のとおり、本件商標は、上記第3の取消理由のとおり、本件商標の指定商品中、第3類「調合香料,精油からなる食品香料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」についての登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
そして、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、その登録を取り消すべき理由がないから、同法第43条の3第4項の規定により、登録を維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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