Trademark Appeal Case
地名商標の公序良俗・誤認
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2016−900042(T2016−900042/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5806809号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成27年5月29日に登録出願、第41類「パチンコホールの提供,その他の娯楽施設の提供,パチンコホール用機械器具の貸与,パチンコ玉補給装置の貸与,パチンコ台の貸与,その他の遊技用器具の貸与」を指定役務として、同年10月21日に登録査定、同年11月13日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、商標法第4条第1項第7号及び同第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証を提出した。
(1)申立人について
申立人は、1863年に設立されたモナコ公国の法律に基づく株式会社であり、現在、モナコ公国政府がその株式の約7割を保有するモナコ公国最大規模の半国営の会社である(甲5)。
そして、申立人は、モナコ公国において、カジノ、ホテル、湯治場、レストラン等を経営しており(甲6ないし甲10)、1863年から同国内におけるゲームに関する組織を独占する(遊戯特権)ゲームサービスを提供できる唯一の企業であることから(甲11)、本件商標の指定役務の分野において、モナコ公国における役務の提供事業者そのものといえる。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、別掲のとおりの構成からなり、その構成中、「モナコ」の語は、モナコ公国(通称モナコ)を意味する語として知られ(甲2)、また、モナコは「MONACO」と記載するため、本件商標の構成中の「MONAKO」とは5文字目のアルファベットが異なるが、片仮名部分と比較して欧文字部分は小さく、また、称呼も「モナコ」と同一であることから、本件商標が「モナコ公国」を意識して採択されたものであることは疑いなく、これに接した需要者等も「モナコ公国」を想起するものと考えられる。
そして、本件商標の指定役務「パチンコホールの提供,その他の娯楽施設の提供,パチンコホール用機械器具の貸与,パチンコ玉補給装置の貸与,パチンコ台の貸与,その他の遊技用器具の貸与」は、広義における「賭博」として同視し得る「パチンコ」に密接に関連する役務といえ、モナコ公国において広く知られている「カジノ」と広義において共通性を有するものと考えられる。
また、本件商標に係る「モナコボーイズ」の語は、「モナコ(公国)の少年」という程の意味を有し、モナコ公国の通称である「モナコ」の文字をその構成中に含む商標であって、かかる商標を「カジノ」と広義において共通性を有する「パチンコ」事業に使用することから、本件商標はモナコ公国の名称を営利目的で使用する商標といえる。
そうとすると、「カジノ」事業と広義において共通性を有する「パチンコ」事業につき、日本国の一企業である本件商標の権利者に営利目的で、自己の商標として登録し、独占的に使用させるべきではなく、本件商標の存在は、モナコ公国の国民の感情を害するおそれがあり、また、モナコ公国の尊厳を守り、ひいては国と国との信頼関係を構築・維持していくとの国際信義の観点からも、許容されるべきではない。
そして、我が国において、「モナコ」の文字を含む商標の独占使用を認めることは、「モナコ公国」ないしは申立人と本件商標の権利者との関係性を想起させ、カジノをはじめとするリゾート地域として著名な「モナコ」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある。
また、過去の審決例等でも、著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理・統制されている世界的に著名な地名に関する商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し登録できないと判断されている。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第16号該当性
本件商標は、別掲のとおりの構成からなり、「モナコ公国」を意味する著名な通称である「モナコ」という国家名を含むものである。
そして、本件商標の指定役務は、我が国における事業を前提としている以上、当該役務がモナコ公国において提供されることはない。
そうとすれば、本件商標の指定役務に「モナコ」の文字を含む本件商標を使用した場合、これに接する需要者において、世界的に著名な「Casino de Monte-Carlo」を有するモナコとの関連から、モナコとの何らかの関連性を有する役務であるかの如く認識させ、役務の質について誤認を生じさせるおそれがある。
また、過去の審決例等でも、著名な地名を含む商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する需要者が該商品の品質、原材料、産地について誤認を生じさせるものとして商標法第4条第1項第16号に該当し登録できないと判断されている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第16号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により、その登録を取り消されるべきである。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、別掲のとおり、全て赤字で、やや特徴を有する毛筆風の書体で「モナコボーイズ」の片仮名を横書きし、該片仮名の構成中「ナコ」の上部に「MONAKO」の、「ーイ」の上部に「BOYS」の欧文字を、該片仮名に比して小さく普通の書体でそれぞれ横書きしてなるものである。
本件商標の構成中、特殊な態様で顕著に書された片仮名部分の「モナコボーイズ」は、その構成中、「モナコ」の文字部分が「ヨーロッパ南部の公国(モナコ公国)」の意味を、また、「ボーイズ」の文字部分が「少年達」の意味を有する平易な片仮名語であることから、片仮名部分全体として「モナコ(公国)の少年達」ほどの意味合いを理解、認識されるものであり、これから生じる「モナコボーイズ」の称呼も冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
一方、本件商標の構成中、片仮名部分の上部に小さく配された「MONAKO」及び「BOYS」の欧文字部分は、辞書等に掲載されていない語であることから、観念を有しない造語と認められ、欧文字からなる造語は、我が国では一般に普及したローマ字又は英語の読みにより称呼されることから、本件商標の欧文字部分からは「モナコボーイズ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
そうとすると、本件商標は、その構成文字から「モナコボーイズ」の称呼及び「モナコの少年達」の観念を生じる一連一体の商標であると認識されるものである。
そして、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、申立人提出の証拠からは、本件商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くなどの事実、本件商標をその指定役務について使用することが、モナコ公国らとの関係において公正な取引秩序を乱し国際信義に反するものとすべき事情も見当たらない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第16号該当性について
上記(1)で述べたとおり、本件商標は、構成全体が一体不可分の商標として認識、理解されるとみるのが相当あって、その構成中の「モナコ」の片仮名文字は直後に続く「ボーイズ」と一体となって「モナコの少年達」の観念を生じさせるものであり、該文字部分をもって、役務の提供地等、役務の質を表示するものと認識、理解されるとは考え難いものであるから、本件商標をその指定役務に使用しても、役務の質について誤認を生じさせるおそれはないものといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するということはできないものである。
(3)申立人の主張について
申立人は、過去の審決例等においても、世界的に著名な地名に関する商標については、商標法第4条第1項第7号あるいは同項第16号に該当すると判断されていることから、本件商標についても同様に、同項第7号あるいは同項第16号に該当し、商標登録は取り消されるべきものである旨主張する。
しかしながら、申立人の挙げたこれらの事例は、いずれも本件商標とは、使用する商品又は役務が異なるものであるばかりか、商標の構成態様においても異なるものであるから、事案を異にするというべきであり、また、そもそも、他の事例の存在によって、本件の判断が左右されるものではない。
したがって、申立人の主張は、採用することができない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第16号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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