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Trademark Appeal Case

商標不使用取消と使用の同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2015−300093(T2015−300093/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5273507号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成21年6月4日に登録出願,第7類「金属加工機械器具,土木機械器具,自動倉庫,コンベヤー,荷役用選別機械器具,動力による回転式物品保管装置,動力による流動式物品保管装置,動力による移動式物品保管装置,パレタイジングロボット,その他の荷役機械器具,包装用機械器具,半導体製造装置,塗装機械器具,乗物用洗浄機,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。),集積回路製造装置,コンピュータからのピッキング情報又は仕分け情報を表示する表示板・台車の機構を備えた荷役用装置」及び第12類「鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,車いす,荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,牽引車,運搬車,無人搬送車,荷役用台車」を指定商品として,同21年10月16日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

そして,本件審判の請求の登録は,平成27年3月2日にされたものである。

第2 請求人の主張

請求人は,本件商標の指定商品中,第7類「土木機械器具,自動倉庫,コンベヤー,荷役用選別機械器具,動力による回転式物品保管装置,動力による流動式物品保管装置,動力による移動式物品保管装置,パレタイジングロボット,その他の荷役機械器具,コンピュータからのピッキング情報又は仕分け情報を表示する表示板・台車の機構を備えた荷役用装置」及び第12類「荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,牽引車,無人搬送車」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は,その指定商品中,第7類及び第12類に属する上記取消請求に係る指定商品(以下「取消請求指定商品」という。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人は,答弁書において,本件商標は,商標法第2条第3項各号に規定されている要件を満たす「使用」がなされているため,本件審判の請求は成り立たないと主張している。

しかしながら,名目的な商標の使用行為は「商標の使用」とは認められない。

(2)答弁書に記載されている被請求人商品は,天井に配置された搬送台車であり,指定商品「その他の荷役機械器具」に属する商品であることに異論はない。

(3)被請求人の「商標の使用」について

ア 乙第8号証

当該資料において,被請求人は,本件商標と同一の商標が商品に付され,使用されていると主張している。

しかしながら,一部不鮮明な部分はあるが,上段に「SPC−100」,下段に「SPACE CARRIERS」の文字が商品に付されていると判別できるところ,商品に付された上段「SPC−100」,下段「SPACE CARRIERS」の標章は,本件商標とはその称呼・外観において全く異なるものであり,社会通念上同一の商標であると認められない。

また,「アルファベット」+「−(ハイフン)」+「数字」は,さまざまな分野において商品の型番を表すものとして一般的に広く使用されている。このため,「−100」が追加されたことによって,需要者・取引者が「SPC−100」をただの型番が付与されていると認識するにとどまる可能性が高い。

加えて,商品名である「SPACE CARRIERS」(本商品の名称がスペースキャリアであることは乙第9号証から明らかである。)の文字が下段に付されているため,上段の「SPC−100」が特別な意味合いも持たない型番であるという印象をより強く与えている。

以上より,当該資料において使用されている標章と本件商標とは社会通念上同一とはいえず,本件使用をもって本件商標の使用を証明することはできない。

また,当該資料は,被請求人の社内における商品の試運転の模様を撮影した写真であると主張している。

しかし,提出された他の資料には商品の写真が多数記載されてはいるが,そのどれにも「SPC」及びそれに類する文字が付された写真はない(乙2,5,7,10〜12)。

イ 乙第9号証

当該資料は,「スペースキャリア」と称される天井に配されたレールを走行して積載物を搬送するための機械の説明書(オペレーションマニュアル)である。

当該資料のiiページには,「『スペースキャリア』(以後SPC)」との記載があり,被請求人が「SPC」を「スペースキャリア」の略称として使用していることは明らかである。さらに,iページには,「スペースキャリア」等片仮名で構成される4つの商品名が被請求人の登録商標である旨が記載されているが,本件商標についての記述はない。

当該資料において,商品名「スペースキャリア」の略称として「SPC」が複数回使用されていることに異論はない。しかしながら,このような名目的な使用は,商標法第2条第3項各号には該当しない。略称表示である「SPC」が商標の使用として認められるためには,その略称が自他商品識別標識として使用されている必要がある。

本件商標が使用されているのは,荷役用の大型機械であり,その商品名が需要者の間で日常的に言い交わされるものではない。

また,機械自体に本件商標と同一の商標が付されている資料は1つも提出されていない。

使用されていると被請求人が主張する標章は,本件商標と社会通念上同一とはいえず,型番のように使用されている資料のみでもって,本件商標が「使用」されていると主張している。このため,商品自体に本件商標と同一の商標が付されているとは考えられない。

さらに,需要者が最も目にする頻度が高いと考えられる説明書には,その商品名「スペースキャリア」の文字が大きく記載されており,「SPC」はあくまでも略称として記載されているにすぎない。「以後SPC」のように記載されている場合,需要者は「SPC」の文字を「エスピーシー」と理解して読み進めるのではなく,「スペースキャリア」と読み替えて読んでいる可能性も高い。というのは,文字綴りのみ「SPC」に替えたとしても,需要者にとって,その商品の名称はスペースキャリアであり,「SPC」ではないからである。

一方で,本件商標は,機械の型番・品番のように使用されている実情があるため,ただ商品本体の型番が記載されているだけだと認識するに留まる可能性もある。

このような状況に鑑みると,当該資料における「SPC」の記載でもって,自他商品識別標識として本件商標を使用しているとは認められない。

ウ 乙第10号証ないし同第12号証

当該資料は,被請求人の商品の購入者の施設において,商品の稼働状況を撮影した写真である。本資料によって2002年から本商標が使用されていたことがわかると主張している。

当該資料は,2002年に撮影されたものであり,本件で立証する必要がある「使用の証明」の期間以前に使用されたものである。

さらに,当該資料は対外的な文書ではなく,被請求人の社内文書である。社内においてなされた商品の略称表示としての使用を,自他商品識別機能を有する商標としての使用であると認めることはできない。

加えて,当該資料に写る商品自体には「SPC」に類する記載は全く見当たらない。

以上より,当該資料でもって,本件商標の「使用」を証明することはできない。

エ 乙第2号証

本サイトに「SPC」の文字の記載があるのは事実である。

しかしながら,本ページは,「天井走行式モノレール『スペースキャリア』」の項目が付けられており,商品名が「スペースキャリア」であることが明らかである。ここでも,「SPC」は略称として表示されているにすぎず,自他商品識別標識としての使用は認められない。

さらに,当該資料は被請求人の自社ホームページにおける記載であり,使用時期が全く不明である。このため,「商標の使用」の証拠として認められない。

また,本ページには商品自体の写真も掲載されているが,この商品にも「SPC」に類する記載は一切ない。

オ 乙第4号証ないし同第7号証

当該資料は,「SPC更新計画」に関連し,取引業者2社と交わされた書類である。

乙第4号証については,2011年の資料であり,本件で立証する必要がある「使用の証明」の期間以前に使用されたものである。このため,乙第5号証ないし同第6号証に関連した資料ではあるが,「商標の使用」の証拠とはならない。

乙第5号証ないし同第7号証はすべて,審判請求日より3年以内に発行されたものであり,当該資料には,「SPC更新計画」等の「SPC」の記載が多数あることに異論はない。

しかしながら,乙第5号証4ページ目の「設備仕様」,乙第7号証5ページの「SPC本体仕様」の項目において,「SPC−100」との記載がある。これによって,需要者・取引者が,「SPC」とは商品の型番を表したものであるにすぎないと認識する可能性が高い。このような表示を,「商標の使用」と認めることはできない。

このように,型番の一部として使用されている実情があるため,「SPC更新計画」等の記載も自他商品識別標識として「SPC」が使用されているのではなく,商品の型番をただ記したものにすぎないと認識される可能性が高い。特に,当該資料は,新しく商品を導入するためのビジネス文書ではなく,すでに導入された商品のうち,本体のみを交換するための文書である。このように考えると,「SPC更新計画」が「SPC(型番の意味)更新計画」と理解されている可能性が高い。ゆえに,当該資料において「SPC」が自他商品識別標識として使用されているとは認められない。

(4)まとめ

提出された証拠書類において,被請求人は名目的に「SPC」の文字をビジネス文書等で使用しているだけであり,自他商品識別標識として本件商標を使用しているとは認められない。

ゆえに,本件商標について,商標法第2条第3項各号の規定の要件を満たす「使用」がなされておらず,本件商標の登録は,商標法第50条第1項の規定による取消しを免れない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし同第12号証を提出した。

被請求人は,本件審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に,日本国内で,本件審判請求に係る指定商品中,「荷役機械器具」に対して,以下のとおり,本件商標の使用をした。

1 本件商標の使用に係る商品

被請求人は,天井に配したレールに設置する,荷物を運ぶ天井搬送台車(以下「本件使用商品」という。)に対して,本件商標を使用している。

本件使用商品は,被請求人のウェブサイトで示されるとおり(乙2),天井に配されたレールに設置して,荷物を運ぶ搬送台車であり,上記ウェブサイトでは,当該商品に係る製品概要について,「SPCは天井にレールを設置して荷物を運ぶ天井搬送台車です。天井空間を有効活用してフレキシブルなレイアウトが実現可能です。搬送物や環境に応じたタイプがあり,配送センターでのピッキング棚への自動商品補充や出荷方面別仕分け,工場での部品の工程間搬送などさまざまな用途で活躍します。」と,紹介している。

上記ウェブサイトで紹介されているように,本件使用商品は,商品等を運ぶ役割及び性質を有している。

したがって,本件使用商品が,荷役に使用される機械器具,つまり「荷役機械器具」の一種であることは明らかである。

2 本件使用商品に係る商標の使用について

(1)商品の取引過程における商標の使用

被請求人は,取引者から本件使用商品の受注を受けた後に,原価表送付明細書により商品の納入に係る費用を提示し,契約仕様書又は見積仕様書を提示して商品の納入場所,納期,工程,設備仕様等に関する説明を行っている。その後,取引者に納入図を提示し,被請求人の工場で試運転を行った上で,本件使用商品が納入される運びになる。

上記の納入過程において,被請求人と需要者との間で複数の書面が取り交わされることになるが,当該書面には,以下のとおり,「SPC」の表示が多数使用されている。

ア 原価表送付明細書(乙4)

上記原価表送付明細書は,大日本住友製薬株式会社が以前購入した本件使用商品「天井搬送台車」の更新計画(Job.No.R0933901)(「更新工事」とは,単なる修理・保守を行うのではなく,新たな「天井搬送台車」を納品するための工事のことである。)に関連して,被請求人が2011年12月28日付で発行した明細書である。そして,当該明細書の物件名には,「SPC更新工事」(使用商標1)と表示されている。

なお,上記Job.No.R0933901は,下記に述べる契約仕様書(乙5)及び納入図(乙6)に共通する管理番号である。

イ 契約仕様書(乙5)

上記契約仕様書は,上記で述べた原価表送付明細書と同様に,大日本住友製薬株式会社の「SPC」更新計画(Job.No.R0933901)に関連して,被請求人が2012年3月14日付で発行した仕様書である。

例えば,契約仕様書の見出しには「SPC更新計画」(使用商標2)と表示され,契約仕様書第4頁には「SPC更新計画概要」(使用商標3)と表示され,稼働時間,工期,納期等,計画の概要が表示され,契約仕様書第5頁には「SPC本体更新」と表示されており,天井搬送台車本体の写真が掲載され,また,当該写真の左側には,「SPC−100」(使用商標4)と表示され,当該契約仕様書には,「SPC」の表示が多数使用されている。

ウ 納入図(乙6)

上記納入図は,上記原価表送付明細書(乙4)及び契約仕様書(乙5)と同様に,大日本住友製薬株式会社の「SPC」更新計画(Job.No.R0933901)に関連して,被請求人が2012年3月21日付けで発行した納入図である。

納入図の表紙には「SPC更新計画」(使用商標5)と表示され,目次の部分には「SPC」(使用商標6)と表示され,天井搬送台車本体の仕様図が掲載されている。図のタイトルとして「仕様図(SPC)」(使用商標7)と表示されている。

これら原価表送付明細書(乙4),契約仕様書(乙5)及び,納入図(乙6)は,被請求人が,大日本住友製薬株式会社に対して本件使用商品を納入する際の取引書類である。

よって,これら書類に「SPC」を表示して取引を行った行為が,「商品に関する取引書類に標章を付して頒布した行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当することは明らかである。

エ 見積仕様書(乙7)

上記見積仕様書は,日立物流コラボネクスト株式会社が以前購入した「SPC」の更新計画(Job.No.V0416501)に関連して,被請求人が2014年7月30日付けで発行した仕様書である。

見積仕様書の見出しには「SPC更新計画」(使用商標8)と表示されている。見積仕様書第6頁には,計画名称として「中部事業所SPC本体更新計画」(使用商標9)と表示され,計画内容は「SPC本体を更新する工事(7台)」と表示されている。見積仕様書第14頁には「SPC本体使用」(使用商標10)と表示され,天井搬送台車本体の写真が掲載されている。当該写真の左側には,「SPC−100」(使用商標11)と表示されている。

上記見積仕様書は,被請求人が,日立物流コラボネクスト株式会社に対して本件使用商品を納入する際の取引書類である。

よって,上記見積仕様書に「SPC」を表示して取引を行った行為は,「商品に関する取引書類に標章を付して頒布した行為」(商標法第2条第3項第8号)に当然該当するものである。

オ 試運転時の写真(乙8)

上記写真は,被請求人の滋賀事業所内で,納入前の本件使用商品の試運転の模様を撮影した写真であり,撮影日は2012年4月10日である。

上記写真から明らかであるように,本件使用商品には,別掲のとおりの構成からなる標章(使用商標12)が明確に表示されている。

上記の標章を本件使用商品に表示する行為が,「商品に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)であることはいうまでもない。

カ スペースキャリアオペレーションマニュアル(乙9)での商標の使用

(ア)当該資料は,本件使用商品の操作に関するマニュアルであり,乙第9号証第i頁に示すように,2012年4月に初版が発行されている。マニュアル中で,「SPC」の表示は,以下のとおり多数使用されている。

a 乙第9号証第2−1頁

天井に配置されたレールを走行して積載物を搬送するシステムがシステムの全体図と共に掲載され,システムの名称が目立つように「SPC」システム」(使用商標13)と表示されている。

図の見出しには,「SPCシステム各部(主要構成品)の名称と機能」(使用商標14)と表示されている。

さらに,SPCシステムを構成する主要構成品の名称と機能を掲載する表の中で,天井搬送台車の名称として「SPC」(使用商標15)が表示されている。

b 乙第9号証第2−2頁

天井搬送台車本体及び主要構成品の名称が,図と共に掲載されており,見出しに「SPC」(使用商標16)と表示されている。

図の見出しには,「SPC各部(主要構成品)の名称」(使用商標17)と表示されている。

(イ)上記オペレーションマニュアルは,本件使用商品の操作を説明するために作成及び頒布される資料であり,当該資料が本件使用商品に関する取引書類であることは明らかである。さらに,上記オペレーションマニュアルの内容より,「SPC」が本件使用商品の名称として使用されていることも明らかである。

以上より,上記オペレーションマニュアルに「SPC」を表示して頒布する行為は,「商品に関する取引書類に標章を付して頒布した行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するといえる。

(2)被請求人のウェブサイト上での商標の使用

乙第2号証で示すように,被請求人は自社ウェブサイトで,本件使用商品の写真を掲載し「SPC」(使用商標18)と表示している。

「SPC」については,「天井にレールを設置して荷物を運ぶ天井搬送台車」,「天井空間を有効に活用する搬送システム」と紹介している。

上記ウェブサイトは,本件使用商品の名称を「SPC」と紹介し,商品に関する説明を行っている。このようにウェブサイト上で「SPC」を表示する行為が,「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当することは明らかである。

(3)小括

上記(1)及び(2)により,被請求人が,本件使用商品に対して,使用商標1ないし同18を使用していること,当該使用が商標法第2条第3項各号に該当する「使用」であることは明らかである。

3 本件商標と使用商標との同一性

上記のとおり,被請求人は,本件使用商品に対して,使用商標1ないし同18を使用している。

本件商標と使用商標12は,同一の字体から構成されているため,同一の商標である。

使用商標1ないし同11及び使用商標13ないし同18は,本件商標と外観が完全に同一とはいえないものの,その違いは,ほぼ字体の太さの違いに留まるものである。そうとすれば,本件商標とこれらの使用商標とは,商標法第50条第1項が規定する「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」に該当する「社会通念上同一と認められる商標」である。

4 本件商標の使用時期

上記で示した本件使用商品に係る商標の使用例に基づくと,被請求人は,2012年3月14日(乙5),2012年3月21日(乙6),2012年4月10日(乙8),2012年4月(乙9),2014年7月30日(乙7)の時点で,本件使用商品に対して本件商標を使用している。

上記の日付は,何れも,要証期間内の日付である。

さらに,本件商標が要証期間内よりも以前から,今日に至るまで使用され続けた商標であることは,本件使用商品の納入先での稼働状況を撮影した以下の写真より明らかである。

(1)乙第10号証は,株式会社エバルス 広島物流センターでの本件使用商品の稼働状況を,2002年7月に撮影した写真である。

(2)乙第11号証は,大正製薬株式会社 岡山工場での本件使用商品の稼働状況を,2002年10月に撮影した写真である。

(3)乙第12号証は,ナガイレーベン株式会社での本件使用商品の稼働状況を,2003年1月に撮影した写真である。

以上より,本件商標が,少なくとも2002年から現在に至るまで,本件使用商品に対して使用され続けていたことは明らかである。

5 まとめ

上記より,被請求人が,本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を,要証期間内に本件使用商品に対して使用していることは明らかである。

第4 当審の判断

1 本件審判の請求は,取消請求指定商品に対してされたものであり,これに対し,商標権者である被請求人は,天井にレールを設置して荷物を運ぶ天井搬送台車(本件使用商品)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を要証期間内に使用していると主張して,乙各号証を提出したものである。

2 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば,次の事実を認めることができる。

(1)乙第2号証は,商標権者のウェブサイトの写し(2015年5月18日プリントアウト)とするものであり,商標権者の製品情報サイト中の「天井走行式モノレール『スペースキャリア』」の紹介に係るページ部分であると認められ,「天井走行式モノレール『SPC』」の表題の下,「天井空間を有効に活用する搬送システム」及び「製品概要/SPCは天井にレールを設置して荷物を運ぶ天井搬送台車です。・・・搬送物や環境に応じたタイプがあり,配送センターでのピッキング棚への自動商品補充や出荷方面別仕分け,工場での部品の工程間搬送などさまざまな用途で活躍します。」との記載がある。

(2)乙第4号証は,商標権者が大日本住友製薬株式会社宛てに発行した「原価表送付明細書」とするものであり,右上方に「2011年12月28日」の日付が記載され,「納入先:大日本住友製薬株式会社東京物流・・」,「物件名:SPC更新工事」及び「プラントNO.:R0933901」の記載のほか,「受注番号」として「R0933901」,「営業担当者」として「三橋」,「EG担当者」として「木村」の記載がある。

乙第5号証は,商標権者が大日本住友製薬株式会社宛てに2012年3月14日付けで発行した「東京物流センターSPC更新計画」に係る契約仕様書(抜粋)の写しであると認められ,1葉目には,「JOB No.R0933901」の記載のほか,営業担当者欄に「三橋」,技術担当者欄に「木村」の記載がある。また,4葉目には,「2.SPC更新計画概要」の項目名の下,「2.1 計画名称:大日本住友製薬株式会社殿 東京物流センター SPC更新計画」「2.6 納期:2012年5月7日」「2.7 稼働開始:2012年5月7日」「2.8 計画内容:(1)SPC本体を更新する工事(5台)」等の記載があり,5葉目には,「7.設備仕様」の項目名の下,「7.1 SPC本体更新」と題して,「SPC−100」の文字及び本件使用商品の写真が表内に表され,「(1)SPC本体交換のみで既設システムに対応します。」との記載がある。

乙第6号証は,商標権者が大日本住友製薬株式会社宛てに2012年3月21日付けで発行した「東京物流センターSPC更新計画」に係る納入図(抜粋)の写しであると認められ,1葉目には「JOB No.R0933901」の番号,2葉目には「目次」の表題の下,その内容欄に「SPC」の文字が記載されており,3葉目には本件使用商品の外観図が記載されているほか,「DRAWING DATE」として「2012/03/15」,「CUSTOMER NAME」として「大日本住友製薬株式会社殿」,「DRAWING TITLE」として「仕様図(SPC)」との記載がある。

(3)乙第7号証は,商標権者が日立物流コラボネクスト株式会社中部事業所宛てに2014年7月30日付けで発行した「SPC更新計画」に係る見積仕様書(抜粋)の写しであると認められ,1葉目には,「JOB No.V0416501(99−Z−28396)」の番号の記載,3葉目には「目次」として「2.更新計画概要/・・・/6.更新の内容/・・・」の記載があり,4葉目(6頁)には,「2.更新計画概要」の項目名の下,「2.1 計画名称:中部事業所 SPC本体更新計画」及び「2.5 計画内容:■SPC本体更新/(1)SPC本体を更新する工事(7台)」の記載,5葉目(14頁)には,「6.1.3 SPC本体仕様」と題して,「SPC−100」の文字及び本件使用商品の写真が表内に表され,「(1)SPC本体交換のみで既設システムに対応します。」との記載がある。

(4)乙第8号証は,商標権者の滋賀事業所内において,納入前の本件使用商品の試運転の模様を2012年4月10日に撮影した写真の写しであるとするものであり,その写真には,本件使用商品が写されており,そこには「SPC−100」の文字が表示されていることを確認できる。

(5)乙第9号証は,商標権者の作成による本件使用商品の操作に係るマニュアル(抜粋)の写しと認められるものであり,表紙には,その中央に「スペースキャリア」「セルフコントローラ」「オペレーションマニュアル」の記載があり,2葉目には改訂履歴として「バージョン 1.00」「発行日 2012/04」の記載がある。そして,7葉目には,「2 各部の名称」と題して,「2.1 SPCシステム」の表題の下,「図2−1.SPCシステム各部(主要構成品)の名称と機能」と題するシステム図が表され,その図中の「2」に示された主要構成品の名称及び機能として,「SPC」及び「天井搬送台車」と記載されるとともに,「SPCは,AS/RSシステムのサブシステムであり,天井に配置されたレールを走行して積載物を搬送するシステムです。」と記載されている。同じく,8葉目には,「2.2 SPC」の表題の下,「図2−2.SPC各部(主要構成品)の名称」と題するSPC本体の図が表されている。

3 上記2で認定した事実によれば,以下のとおり認めることができる。

(1)商標権者は,「天井にレールを設置して荷物を運ぶ天井搬送台車」(本件使用商品)を「天井走行式モノレール『スペースキャリア』」あるいは「天井走行式モノレール『SPC』」と称して,本件の要証期間内より前から継続的に製造、販売していたことが推認される。

大日本住友製薬株式会社東京物流センターにおけるSPC更新工事が,本件の要証期間内である2012(平成24)年5月頃,商標権者によって実施され,それに伴い、本件使用商品が納入,販売されたことが推認される。

日立物流コラボネクスト株式会社中部事業所におけるSPC更新計画に係る見積仕様書が本件の要証期間内である2014(平成26)年7月30日付けで発行されており,その後本件の要証期間内において本件使用商品が納入,販売されたことが推認される。

そして,上記2件のSPC更新工事により納入、販売された本件使用商品には,「SPC−100」の文字・数字等(以下「本件使用商標」という。)が付されていたことが推認される。

また,本件使用商品は,荷役機械器具の範ちゅうに属する商品といえるものであり,この点に関し当事者間に争いはない。

上記のとおりであるから,商標権者は,日本国内において,要証期間内に,本件審判の請求に係る指定商品中の荷役機械器具の範ちゅうに属する「天井搬送台車」に本件使用商標を付して譲渡した(商標法第2条第3項第1号及び同第2号)と認められる。

(2)使用商標について

商標法第50条第1項は,「・・・登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)・・・」と規定しており,使用の対象となる商標は,登録商標と社会通念上同一と認められる商標も含むとされている。

「SPC−100」の文字・数字等からなる本件使用商標は,その構成中後半部のハイフンを介して表された「100」の数字部分が,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章を表したと理解され,それ自体としては出所識別標識としての特段の称呼や観念を生ずるものではないから,前半の「SPC」の文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえる。

そして,本件使用商標の「SPC」の文字部分は,本件商標の構成の基本を変更するものではなく,本件商標の有する識別性に影響を与えない範囲にとどまっているといえるものである。

したがって,「SPC」の文字部分は,本件使用商標の要部であると認められ,本件商標は,これと同一のものからなるものであるから,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。

(3)請求人の主張について

請求人は,「SPC」は商品名「スペースキャリア」の略称として表示されているにすぎず,「SPC−100」の記載の「SPC」は商品の型番を表したものと認識する可能性が高いことから,自他商品の識別標識として使用されているとは認められない旨主張している。

しかしながら,「SPC」の文字からなる標章は,ローマ字3字からなるものであり,本件使用商品において,それ自体が自他商品の識別標識として機能を有しないものであるという事情はないものであり,また,「SPC」の文字が商品の種別や型番を表す記号、符号の一部に使用されているものであると理解されることがあっても,そのことをもって,「SPC」の文字部分を自他商品の識別標識としての機能を果たす部分と認識することを否定することにはならない。「SPC」の文字が商品名「スペースキャリア」の略称として表示されているものであるとしても,同様である。

また,請求人は単にビジネス文書で名目的に「SPC」の文字を使用しているだけであるとも主張している。

しかしながら,取引があったことを証明するためには,必ず売上伝票や納品書が提出されなければならない訳ではなく,提出された証拠及び被請求人の主張を総合すれば,要証期間内に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したことを認めることができるものである。

したがって,請求人の主張は採用することができない。

4 むすび

以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者がその請求に係る指定商品中の「荷役機械器具」の範ちゅうに属する商品「天井搬送台車」について,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したといえる。

したがって,本件商標の登録は,本件審判の請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により,取り消すべきでない。

よって,結論のとおり審決する。

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